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総裁記者会見 2023年10月31日(火)午後3時30分から約70分

2023年11月1日
日本銀行

(問)
本日の金融決定会合の内容について、展望レポートの内容も含めてご説明をお願い致します。

(答)
今日の決定会合ですが、長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールについて、短期政策金利-0.1%、10年物国債金利の操作目標ゼロ%程度という水準を、いずれも現状維持とすることを、全員一致で決定しました。資産買入れ方針についても、現状維持とすることを全員一致で決定しました。そのうえで、イールドカーブ・コントロールの運用を更に柔軟化することを賛成多数で決定しました。具体的には、長期金利の上限のめどを1.0%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととしました。こうした運用のもとで、日本銀行としては、粘り強く金融緩和を継続する方針です。なお、中村委員は、長短金利操作の運用を更に柔軟化することについては賛成であるが、法人企業統計等で企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましいとして、イールドカーブ・コントロールの運用に関する議案に反対されました。

次に、本日は展望レポートを公表しましたので、最初に、経済・物価の現状と先行きについて簡単にご説明します。まず、わが国の景気の現状ですが、緩やかに回復していると判断しました。先行きについては、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみています。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで潜在成長率を上回る成長を続けると考えられます。物価ですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小していますが、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足元は2%台後半となっています。先行きは、来年度にかけて2%を上回る水準で推移した後、2025年度はプラス幅が縮小すると予想されます。こうした物価の見通しは、7月の展望レポートから上振れていますが、その主因は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いていることや、このところの原油価格の上昇です。今回の中心的な見通しでは、消費者物価の基調的な上昇率は、見通し期間終盤にかけて、2%の物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくとみていますが、その際には賃金と物価の好循環が強まっていく必要があります。引き続き、物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、賃金と物価の好循環など経済・物価情勢の変化を丹念に確認していきます。この間、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高く、金融・為替市場の動向や、そのわが国経済・物価への影響にも十分注視する必要があります。

以上のような経済・物価情勢のもとで、今回の決定の背景を改めてご説明します。先ほど申し上げたように、消費者物価の基調的な上昇率は、見通し期間終盤にかけて、物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくとみていますが、こうした見通しを巡る不確実性はきわめて高く、現時点では、物価安定の目標の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には、なお至っていません。ですので、イールドカーブ・コントロールのもとで粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針です。不確実性がきわめて高い状況が続く中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、イールドカーブ・コントロールの運用において、柔軟性を高めておくことが適当と判断しました。この点、現在の状況において、原則として、毎営業日1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、実質金利の抑制を介して、強力な金融緩和効果を持つ反面、副作用も大きくなり得ます。こうした判断から、今回、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととしました。

先行きの金融政策の基本方針は、これまで通りで変化はありません。日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を維持していくことで、賃金の上昇を伴うかたちで、2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指していく方針です。具体的には物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続します。引き続き、企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じます。

(問)
幹事社から二問質問させてください。YCCについてですが、7月にですね、運用柔軟化した際、総裁は指値オペの1%の水準を引き上げたことについて、長期金利が1%まで上昇することは想定していないと、念のための上限キャップと説明されましたが、今会合での更なる運用柔軟化はですね、想定外の金利上昇を受けた追加的な措置と考えてよろしいでしょうか。また、足元の国内金利の上昇は米国の長期金利の上昇、これによるところが大きいと思いますが、こういったことに対してですね、YCCの緩和効果と副作用のバランスをどう評価して、今回の更なる柔軟化に踏み切ったのかお教えください。また、新たにですね、長期金利の上限を1%をめどとしましたが、今後どこまで1%を超える水準を容認していくのか。今回の措置がですね、金融引き締めにつながるのか、つながらないのか、そういった点も含めて伺えないでしょうか。

二点目は、今回10月の展望レポートでですね、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が長引いてるっていう、そういう中でですね、夏場以降の原油高や円安の影響を含め、物価の更なる上振れリスクをどう評価されたのか、また総裁がおっしゃっている賃金と物価の好循環につながるような「第二の力」へのバトンタッチが、はっきりと視野に入ってきたかどうかを含めて、前回7月の見通しから2%物価目標の持続的・安定的な実現の距離感が動いたのかどうかを含めて伺えないでしょうか。

(答)
まず前半ですけれども、今回の措置は、先ほど申し上げましたように、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、今後の情勢変化に応じて、金融市場で円滑な長期金利形成が行われるよう、イールドカーブ・コントロールの運用において、柔軟性を高めておくことが適当との判断に基づくものです。現状において、原則として毎営業日1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなり得ると判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うことにしました。今後は1%の上限金利のめどのもとで、大規模な国債買入れを継続するとともに、長期金利の水準や変化のスピード等に応じて機動的にオペで対応することで、イールドカーブ・コントロールを運用していくことになります。その際、買入れ額の増額や臨時買入れなどの対応は、1%を下回る水準で行うこともあると考えています。また必要に応じて指値オペも活用することがあると思いますが、その利回りは金利の実勢等を踏まえて適宜決定致します。長期金利の厳格な上限は設定しませんが、こうした調節運営のもとで、長期金利に上昇圧力がかかる場合であっても、1%を大幅に上回るとはみていません。また、昨年以降、予想物価上昇率についても緩やかに上昇していると判断していまして、実質金利は短期・長期ともマイナス圏での推移を続けています。このため、十分に緩和的な金融環境が維持されているものと考えています。質問の中にありました今回の運用柔軟化は、想定外の金利上昇を受けた追加的な措置かという部分ですけれども、4月にみていたところから比べますと、可能性としては意識していたんですけれども、私どもの物価見通しが上振れてきたということ、それから、こちらの方が大きいかもしれませんが、米国の金利上昇が非常に大幅で、それがわが国の金利にも及んできたこと、こういうことも今回の措置の背景にございます。

後半のご質問ですけれども、今回の展望レポートでは、物価見通しが上振れています。ただ、その主因は、私ども「第一の力」、「第二の力」という表現を使ってきております。「第一の力」は輸入物価上昇が国内物価に及んでいくというところ、「第二の力」は国内の賃金と物価が好循環で回っていくというところを意味します。そういう用語法におきまして、今回の見通し、上振れの主因は、「第一の力」が長引いていることや、このところの原油価格の上昇であると判断しています。この間、「第二の力」の話に近い消費者物価の基調的な上昇率ですが、見通し期間終盤にかけて2%の物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくとみています。マクロ的な需給ギャップの改善が続くもとで、予想物価上昇率は緩やかな上昇傾向を辿ってきていまして、そうした中で、見通し実現の確度が少し高まってきていることは事実であります。引き続き、「第二の力」、すなわち賃金と物価の好循環が強まっていくか見極めていきたいと思います。ただ、こうした見通しを巡る不確実性はきわめて高く、現時点では、物価安定の目標の持続的・安定的な実現を十分な確度を持って見通せる状況には、なお至っていないと判断しています。日本銀行としては引き続き物価安定の目標の持続的・安定的な実現という観点から、賃金と物価の好循環など経済・物価情勢の変化を丹念に確認していく考えです。

(問)
今日の声明文の中で「1.0%の利回りで連続指値オペを実施し、長期金利の上限を厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなり得ると判断し」という表現があると思うんですけれども、ここでいう副作用なんですけど、債券市場の機能度等いろいろそういう部分があると思うんですが、ここの副作用という言葉、為替円安等についてはですね、意図があるのかどうかということを確認させてください。

(答)
債券市場を含めた金融市場のボラティリティ、その悪影響というふうに考えてございます。その点は7月と同じです。

(問)
二点伺わせてください。今回の長期金利の上限の見直しについては、先ほど不確実性が高いというお話があったんですけれども、その一方でその上限に辿り着く前に上限を見直していくということは、上限の持つ意味合いが形骸化していくということもあると思うんですが、その点をどう考えるかということが一つ。

あともう一つが、政府が経済対策を今実施しようとする中で、今回は長期金利が今までよりも動きやすい、上に行きやすい状況になった、この整合性についてどのようにお考えか、二点お願いします。

(答)
一点目ですけれども、上限に達していないのに何で動くんだというご質問だと思いますけれども、これも7月のときもほぼ同じだったと思うんですけれども、上限に張り付いて、強いオペを打って、連続指値オペですが、それで副作用が発生してからというよりは、その少し前の段階で動きたいという判断のもとに、今日も修正、更なる柔軟化を実行致しました。

それから、政府の政策の影響については、まだ政府の政策そのものの全体像がはっきりしておりませんので、それが出た段階で精査して、見通しを変える必要があるかどうかについては検討したいと思います。

(問)
総裁は就任前から金融政策運営でリスクマネジメント・アプローチの話をされてたと思うんですけども、4月に比べて7月、7月に比べて10月、物価上昇、見方が上方修正されてるんですけれども、その中でビハインド・ザ・カーブのリスクも変わってきてると思うんですけど、FRBの教訓も含めてですね、やはりここまで物価が上がってきてる中で、ビハインド・ザ・カーブのリスクの大きさ、変化の度合いは4月から7月、7月から10月と結構強まっている印象を持つんですけれども、その辺をできればお伺いしたいんですけど、よろしくお願い致します。

(答)
物価全体の動きをみますと、どんどん上方修正してきていますので、おっしゃるような印象が出がちだと思うんですけれども、先ほど申し上げましたように、物価全体の動きを「第一の力」による部分と「第二の力」による部分に分けて考えますと、上方修正の全部というと言い過ぎだと思いますけれども、かなりの部分は、「第一の力」の上方修正あるいはそれが予想以上に長引いてるということに依存して出てきた修正でございます。これに対して「第二の力」は、見通し自体には織り込んでいます。以前より、「第二の力」、だんだん強まっていくという姿は。ただその部分についての上方修正は、ここのところ大きくはしておりません。その「第二の力」は先ほど申し上げましたように、ある種、基調的な物価上昇率と呼んでるものに概念的に非常に近いもので、そこの見通しの水準あるいは、むしろそれ以上に確度がまだまだ不十分というふうに思っていますので、そちらから判断しますとビハインド・ザ・カーブになるというリスクは、いまだにまだそれほど高くないというふうに考えております。もちろんその前提として、「第一の力」は長引いてはいますけれども、いずれ近いうちに収束していくという見方を持っております。

(問)
再修正に当たってですね、為替の動向を意識した面というのはあったでしょうか。先ほどから「第一の力」というお話もありましたが、足元では原油価格が上昇していますし、それに加えて1ドル150円近辺という水準の円安もあります。そのコストプッシュ型の物価高が進む局面で、これは日銀にとっては多分望ましくないかたちの物価上昇だと思うんですが、そこで円安をどうにかしたいという思いもあっての政策変更なのかどうかというのをお伺いしたいのが第一点です。

また、もう一つ、今回は、長期金利が1%に近づいてきたところでのYCCの修正というかたちになりましたが、金利の水準が上がってくると日銀はYCCを徐々に変更していくんだというふうに市場に見透かされるといいますか、足元を見られるようなかたちになって、次の政策修正を迫るトライをされるのではないか、こういう懸念もあると思うんですが、そこはどうご覧になっているでしょうか。

(答)
最初に為替のところですけれども、これは常日頃申し上げてますように、為替レートについては、ファンダメンタルズに沿って安定的に動くことが望ましいと考えています。そのうえで、為替レートの変動が大きくなりますと、経済・物価に対する大きな影響を及ぼすということがあり得ますので、まずそこについて政府と緊密に連携しつつ、注視していきたいということと、われわれの物価見通し等に大きな影響が出るということであれば、それは政策の変更に結びつき得るということだと思います。そのうえで今回の柔軟化は、先ほどのご質問についてお答えした部分と重なりますけれども、前もって柔軟化しておくことによって、将来あり得るかもしれない金融市場のボラティリティの増大、あるいはそれに伴う副作用を防ぐという面がございます。そのボラティリティの中に7月同様、為替のボラティリティも含めているという面はあります。

それから長期金利の上限、厳格なものか、めどであるかは別にして、それを引き上げたりあるいは厳格なものからめどに変えるというような政策の柔軟化が却ってそういうことを更に引き起こすような投機的な動きを呼び込んでしまうのではないかというご質問だと思いますが、これも7月のこの席でお話ししましたように、言うは易く行うのは難しいですけれども、そういうある種、根拠が薄い投機的な動きによる金利上昇については機動的なオペで抑える、もう少しファンダメンタルズに伴った実勢のある金利上昇については多少の上昇を許すというかたちで、うまく対応していけたらなと思っています。

(問)
今もお話あったんですけど、上限の1.0[%]のめどの狙いなんですけど、投機的にみえるその金利上昇については抑えると。一方で、例えば経済、少し温まってきたとか、物価上昇とか、それに応じた金利上昇というのを市場が選んでいく場合には、日銀がそれを邪魔せずに、ある種金利のある世界を認めていく姿勢を示すもの、そういうふうにとらえてよろしいでしょうかというのが一点目です。

二点目は物価について、先ほど総裁もある種上振れの主因は「第一の力」だと。「第二の力」もだんだん上回ってきているというお話もありましたけど、総裁のおっしゃる目標達成に向けて、まだ距離があるっていうふうにおっしゃっていましたけど、その距離感っていうのがやはり全くまだ変わってないというふうにとらえてるのか、少し変わってきてるのか、その距離感について教えて頂ければと思います。

(答)
まず前半ですけれども、長期金利が上がっていく場合に、実勢をなるべく見極めて、単に投機的なものであればそれを許さないように抑え込んでいくという、そういう理解でよろしいのかというご質問だと思います。繰り返しになりますが、理屈のうえではそういう姿勢でございます。ただし、現実問題として、オペを担当する[金融]市場局が、あるいは執行部が毎日というような短期の次元でその両者を的確に識別することは、なかなか難しいというふうに思います。ですので現実の運用としては、やはりそのときの長期金利の水準とか上がっていくスピード、これをみながら、少しずつ適宜ブレーキをかけて、ある程度、時間がたったところで全部まとめてみてもう一回判断するということを繰り返していくしかないのかなというふうに思います。

それから、「第二の力」がどの辺まで上がってきてるのかという、後半のご質問ですけれども、申し上げましたように、そこそこ見通し期間終盤にかけて「第二の力」の強さも上がっていくというパスを置いております。ただ、これも申し上げましたように見通しに関する確度とか自信の度合いというものは、もう満足したから物価目標達成だというところにはまだちょっと距離がある。ただその中で、多少先ほども申し上げましたが、前回に比べれば少し前進しているということは言えるかなと思います。様々なデータ等をみてということですが。

(問)
二点お願いします。一点目は、市場では来年1から3月頃にマイナス金利が解除されるのではないかという見方が広がっていて、今回の措置もYCCの形骸化ではないかというレポートもみられます。市場のこうしたマイナス金利解除の見方というのは、これまでの総裁のお話を伺っているとちょっと早いのかなという気もするんですけれども、今、描いている展望レポートのパスで考慮した場合、もう少し時間がかかりそうなのか、その辺りを是非お願いしたいのが一点目です。

二点目はそれと関連するんですが、YCCをやめる条件とマイナス金利をやめる条件っていうのは違うのか、違うとすればどう違うのか、お願い致します。

(答)
前半部分も後半部分も、私どもの目標達成の見通しが、どういうときに得られるかということに関連したご質問だと思います。それで、それは「第二の力」が十分強くなったときというふうに概ね言い換えられると思いますけれども、もう少し具体的にどういうことかというふうになりますと、いくつかあるかと思いますが、基本的には物価上昇が、今年既に一回ありましたけれども、賃金上昇に跳ね返るということ、これが続いていくということ。それから裏側で、賃金が上がったことが、物価、特にサービス価格等をまた引き上げていくこと。この両方がぐるぐる、物価でいえば2%に近いところで回り続けるということが必要、あるいはそういうふうになりそうだという見極めが必要かと思っています。ですのでそういう観点からは、取りあえず今後については、来年の春季労使交渉は一つの重要なポイントでありますし、その前後、ここまで上がってきた賃金が物価にどれくらい跳ねているかということを丹念に確認するという作業も、引き続き必要になるというふうに考えています。

そのうえで、目標達成の見通しが出そうな場合に、YCCの撤廃とマイナス金利の解除、これの時間的な順序はどうなのかとか、そういう趣旨のご質問だったと思いますけれど、そこは今のところ、そういう時点での経済・金融情勢次第で決め打ちはしていない、ただし、目標達成の見通しが立つまでは両者とも継続をするという姿勢でいるということです。

(問)
今お話のあった賃上げについてお伺いします。連合が24年は5%以上の賃上げを求めておりまして、他の企業でも既にいろいろなかたちで賃上げを表明する動きが広がっています。現在の国内の賃上げの動きをどのように評価されているのか、そして、春闘の途中経過や最終結果が出る前に、物価2%の目標達成を見極めることができるのか、改めてご見解を伺います。

(答)
連合方針そのものについてはコメントを差し控えたいと思います。ただ、労働市場の需給が、構造的に引き締まっていること、それから少なくとも第2四半期まで、そして足元の決算発表が続いていますが、企業収益が全体としてはかなり好調であること等を勘案しますと、ある程度来年の賃金について期待できるということは言えるかと思います。更に、私どもの見通しの中の「第二の力」に関して見通しを置いてる部分については、来年の賃金上昇率がそこそこのものになるということは前提として置いております。そのうえでそこが確認できれば、物価目標が見通せたということかどうかというご質問でしたでしょうか。

(問)
後半の部分は春闘の途中経過みたいなものが何回かに分けて出てきたり、最終結果が夏以降に出てくるわけなんですけども、そういった結果の数値を待たずに物価目標の達成を見極めることができるのかという点を伺いたいです。

(答)
それは完全なデータを得るまでには、来年も相当先まで行かないと入ってこないということが一方にあるかと思います。その前の段階でどれくらい来年の賃金上昇を見通せるかっていうのは、賃金のデータ、それからヒアリング情報を含めまして経済情勢次第だと思いますし、ちょっとご趣旨と違うかもしれませんが、賃金だけで目標達成の見通しが立つというわけではなくて、同時に賃金から物価への波及も順調に進んでるかどうかという点も重要ですので、それを含めて総合的に判断するということですが、それはいつ確認できるかということは、先見的に今このあたりだというふうにはなかなか申し上げられないということだと思います。

(問)
二点伺います。一点目はYCCの再修正についてです。今回の見直しで上限に関しめどですとか指値オペの利回りの決定ですとか、結構曖昧な表現が目につきます。一方で、許容変動幅は撤廃されました。こういった変更内容を踏まえると、政策の意図として、政策委員会のディレクティブを緩めて、逆に日常的にマーケットと向き合う金融市場局ですとか執行部の裁量をより広げる手法で、市場調節の機動力を高めようとしてるのか、この運用見直しの狙いをより具体的に伺えればと思います。

もう一点はちょっと金融政策から離れてしまうんですけれども、中銀デジタル通貨について伺います。ECBは発行への準備フェーズに進むことを決めましたし、日銀もパイロット実験の段階にあります。一方で来年の7月には新日銀券の発行も控える中、決済周りで全銀システムでの障害も発生しました。国内外の情勢を踏まえて、日本の決済の未来像といいますか、そういったものは現時点でどうお考えなのか、今のご所見をお聞きできればと思います。

(答)
まず、今回のYCCの見直しによって、厳密な意味で1%を死守するというような部分がなくなって、やや曖昧さが上昇している、その狙いは何かというご質問だったと思いますが、[金融]市場局の裁量あるいは執行部の裁量の部分を増やそうというのはもちろん狙いではありません。ただし、曖昧な部分が増えてるということは事実ですので、的確に運用していく際に、そうしたオペをする部隊の負担が増えるということは事実かと思います。先ほどもご議論がありましたように、実勢に応じた金利の上昇なのか、単純に投機的な上昇なのかということをできれば識別してオペを打っていきたいということの判断の負担もあるということかなと思います。むしろ狙いは、はっきりとした上限を置いておくことが、やはりそこに近づいたときに副作用を高めるということをなるべく避けたい、あるいは裏返して言えば、多少なりとも市場機能の回復につながることがあればいいなということも狙いの中に入ってございます。

それから、後半のCBDCないし決済周りのご質問で、どうお答えするのがいいか難しいですが、ご案内のように日本銀行としては現状、あるいは日本全体としてはCBDCをまだ導入するという意思決定をしているわけではなくて、技術的な可能性を探り続けていると、それがだんだん少し前に行きつつあるという段階だと理解しています。その際のポイントとしては、民間部門でいろいろ広がりつつある様々な決済の仕組み、これとの相互運用性とかを注意しつつ、民間と中央銀行あるいは公的な部分と両方で、日本全体にとって良い決済制度を作り上げていければなという、ちょっと曖昧な答えで恐縮ですが、姿勢でいきたいと思っております。

(問)
総裁、先ほどの発言でですね、物価見通し実現の確度が少し高まっているというご発言ありましたけれども、もちろんまだ確度を持って言えることではないということは十分理解してるんですけれども、それはイコールそのマイナス金利解除への距離が少し近づいているという理解でいいのかどうか、まずその一点。

あとその為替について、もし為替が物価見通しを大きく変えるようであれば政策変更につながるという趣旨のご発言あったと思いますが、そこはその「第一の力」ということではなかったのでしょうか。

あと為替が、日銀が金融緩和を続けることによって、今その金利差に注目集まる中で円安というのが続いてしまっていますけれども、そこについて総裁はどういうふうに感じてらっしゃるのか、お願いします。

(答)
最初は、「第二の力」についての評価で、私が先ほど多少はこれまでの「第二の力」に関するわれわれの見通しのコンフィデンスのレベルが上がったという話をしたので、それはマイナス金利解除ないし物価目標が見通せるという状態に近づいたのかどうかというご質問だったと思います。答えとして曖昧になってしまいますけれども、その可能性が例えばX%からX+5%になったとして、もちろん残りは縮まっているわけですけれども、その縮まった絶対値が大事というよりは、ある程度以上のところに来てほしいという、その閾値みたいなところにまだ達してないのかなという感じでございます。

それから、二番目の円安の影響ですけれども、ここはおっしゃるように微妙で、直接輸入する財の国内価格への影響というところで言えば、「第一の力」の範疇に入るような話ですが、本来円安は輸出数量等に影響して、それが総需要を持ち上げて、物価全体を持ち上げていくという需要面から作用する可能性もあるわけで、そこは「第二の力」の方にどちらかといえば近いかと思います。それから、「第一の力」の部分もそれは長引けば、まさに今そういうことがここ2年ですかね、起こりつつあるわけですが、「第一の力」を契機としてインフレ期待のようなものが上昇して「第二の力」が上昇していく力となるという部分もあると思いますので、それらを総合して判断していくということになるかなと思います。

それから、ここまでの金融緩和と円安の関係というご質問だったと思いますが、それは教科書的な答えになって恐縮ですけれども、やはり内外金利差が為替レートに影響するという議論は昔からありますし、そういう面は現実にもあるかと思います。現実問題としては、ここまでのところは外国の金利の動向の方が、支配的な為替レート変動要因だったように思います。

(問)
今回、YCCの再修正を行いましたが、長期金利の上昇の影響が大きいと思うんですけども、これまたアメリカの金利上昇の影響でということだと思うんですけども、これがちょっといったん落ち着けば下がる可能性もあると思うんですけども、そうした場合、今回再柔軟化を図ったと思うんですけど、また厳格化に戻すとかそういう選択肢っていうか可能性ってあるんでしょうか。

(答)
仮に、これまでアメリカの金利の上昇で、日本の金利も上がった部分がある程度あるとしまして、そのうえで、今後、アメリカの金利が何らかの理由で大きく低下したときにどうなのかというご質問だと思いますが、それは上がってきたときと同じことが逆向きで起きれば、国内金利、長期金利含めて、低下圧力がかかることになるかと思います。それが普通に起こるようなフレームワーク、枠組みになっている。つまり、金利からみれば、下方の動きに対しても柔軟に対応というのも変ですけれども、それが起こるようなことを許容する仕組みになっているということで、その際に上限を無理に厳格なものにもう一回変えるという必要は、それだけであればないというふうに思っています。

(問)
個人消費についてお伺いします。展望レポートでは、物価上昇の影響を受けつつも、賃金上昇率の高まりなどを背景としたマインドの改善などに支えられて、緩やかな増加を続けるとみられるというふうに書いてあるんですけれども、日銀のアンケートでもですね、暮らし向き判断D.I.はリーマンショック後ぐらいの悪い状況で悪化していると。他にも身近な物価なんかは上昇しているんですけれども、なぜ[個人消費が]緩やかな増加を続けると判断されているのか、またその物価高による個人消費の腰折れ懸念についてはどう考えていらっしゃるのか教えてください。

(答)
おっしゃるように、物価上昇が少なくとも一部の消費者の消費、あるいは一部の財・サービスに対する消費姿勢を慎重化させているという動きはみえるかと思います。ただ全体としてみますと、家計調査はちょっと弱いですけれども、その他の消費に関するデータ、指標は概ね緩やかに改善を続けているということを示唆していますし、いくつかの消費マインド調査もそんなに悪くないというふうに判断しています。その背景としては、ペントアップ・ディマンドがまだ続いているということ、それから、マインド改善の背景として、実質賃金はまだにしても、名目賃金が春から上昇し始めたということも影響しているかなというふうに思います。こういうことから考えまして、消費の今後ということで申し上げれば、来年の名目賃金が引き続き上昇するかどうかということは大きなポイントとなると思っていますし、私どもの見通しの中では、まだ確度を自信のある水準にまで引き上げることはなかなかできていないわけですが、そこそこの可能性で起こるというふうにみて、それが消費を支えるというふうにみております。

(問)
ちょっとたらればの話で恐縮なんですけれども、前回、上限と指値オペの水準1%ということでカチッと固められたということで、そのときの印象もですね、やはりその1%で絶対行かせないとかですね、1%は絶対行かないだろうという何か確信めいたものがあった背景で、その1%って固めたのかなという勝手な類推なんですけども。そしたら、例えばその当時の表現で1%程度というふうな表現にしていれば、今回とあまり変わらないようなこともあり得たのかなと思ってまして、そのときに程度を入れるか入れないかっていう判断というのは、何が左右されたのかなと。改めてちょっと振り返って頂きたいです。

(答)
当時1%程度ということを、1%めどですか、という議論をした覚えはないんで、むしろどちらかと言えば、7月の時点では、そうすぐには1%には接近しないというふうに考えていたんだと思います。それにもかかわらず、昨日までの時点で0.9[%]近くまで来てしまったということの最大の背景としては、最初の方で申し上げましたように、やはりアメリカの長期金利の上昇の程度が予想以上であったということが一番大きかったと思います。

(問)
総裁に一点お尋ねします。大規模緩和を続けることによる家計へのコスト負担についてです。依然として物価安定目標実現へ見通しが立っていないというところで、大規模緩和の枠組みを維持されているわけですが、その間もやはり円安による物価高というかたちで家計には大規模緩和のコストがかかり続けています。見極めに時間がかかればかかるほど、家計の負担も増える可能性がありますが、総裁は政策を判断するうえでそういった家計への負担やコストというのをどのように考慮されていますでしょうか。

(答)
先ほど来申し上げている表現で言えば、「第一の力」によるかなり大幅な物価の上昇が家計あるいは中小企業の方々の大きな負担になっているということはよく認識しております。ただ、「第一の力」が近い将来弱まっていくということをずっと言い続けて、ちょっと外れ続けて申し訳ないとは思いますが、これは近い将来、収束していくというふうにみています。そのうえで私どもの目標は、「第二の力」を育てて、それが目標水準程度までにいけば、賃金と物価の好循環が生まれる。それから得られる、家計だけではないですが、経済全体のプラスが大きなものである。そちらのプラスの方が、証明は難しいですけれども、足元のマイナスを上回っているという判断で、大規模な金融緩和政策を続けております。

(問)
総裁の物価見通しと政策運営についてお尋ねします。今回もそうですが、展望レポートではこのところ毎回のように物価の見通しを引き上げています。日銀の想定以上に物価高が続く中、国民の負担も続いています。日銀は先行きの物価上昇を適切に評価できておらず、それに基づく政策運営が誤っている可能性はないでしょうか。総裁の見解をお聞かせください。

(答)
「第一の力」が予想以上に長引いているというのが正直なところでございますけれども、その背景として、「第一の力」の主なところは輸入物価の国内価格への転嫁ですけれども、その率が思った以上に高いということだと思いますけれども、あるいは広がりが広い。その背景として企業の賃金・価格設定行動に変化がみえる、あるいは予想物価上昇率が高まりつつあるということがあるとしますと、これは「第二の力」を持ち上げることにもなりますので、そこの判断を見誤らないようにしたいというふうに思います。

(問)
YCCの再修正なんですけども、1%を大きく超えることはないと先ほどおっしゃってですね、厳格なこれまでの1.0%の運用はもうしないという話だったんですが、とはいえ前回もですね、1%を超えることがない、念のためと言いつつこうやって上がってきているわけでして、1%を大きく超えないという認識ではありつつも、じゃあそれが5%とか6%とかそこまでみてらっしゃるとはとても思えないので、実際総裁の中でですね、申し上げづらいとは思うんですが、今回再修正して更に運用を柔軟化したことで、どの程度が実質的な防衛ラインとみているか、またどの程度が長期金利の市場に委ねた場合の適正な金利で、上昇する可能性がある幅と考えているのかお聞かせください。

(答)
その辺はいろいろな分析を実施していますけれども、大規模な国債買入れを続ける、それから必要に応じて連続指値オペではないですけれども、前もってアナウンスした水準での機動的なオペを、その中には指値オペも場合によっては含まれますが、打つという前提では、1%を大きく継続的に超えるということはないというふうに考えております。

(問)
先ほど総裁、政府の経済政策との整合性の質問に対して、まだ全体像が分からないから答えられないというお答えでしたが、その答えでは全く納得できません。少なくともですね、詳細が分からないまでも、岸田政権が所得税減税を柱とする大規模な経済対策をやる方針は固めておりますし、これでおそらく兆円単位の、場合によっては十兆円単位の国債増発圧力になりますし、あるいは少子化対策とか防衛予算についての財源のめどがまだ全く立ってない段階で、今後著しい国債の増発が予想される中でですね、今、YCCを撤廃しないということは、その政府の国債増発を支えるというメッセージにならないでしょうか。共同声明の中でですね、共同声明にある2%目標にこだわるんであれば、同じように共同声明の中に載っています持続可能な財政構造の確立ということにも、もっと責任を持つべきではないんでしょうか。財政構造の確立について総裁はどういうご認識でしょうか。

(答)
まずYCCを撤廃しない、現在していないという点は、財政に対する配慮ではないかというご質問が含まれてたと思いますが、それはそうではなくて、私どもはYCCを継続するか、あるいは大きく修正するか撤廃するかというところの判断は、掲げている物価に関する目標に対する到達度次第であるというふうに前々から考えて、そういうふうにご説明しているところでございます。一方で、政府の財政・経済対策については、これもいつも申し上げてることですが、政府・国会の責任で行われることですので、私どもとしてはコメントを差し控えたいと思います。ただ、物価高への対策という面のところに限りますと、物価・賃金の好循環への動きを途切れさせないように、企業、家計の負担を一時的に軽減する目的の措置が考えられつつあるのかなとは理解しています。ただそのうえで、中長期的な財政健全化について、政府サイドは市場信認を確保していくということが非常に重要だというふうに考えております。

(問)
先ほどの質問と被るところなので短く質問したいと思います。今回1%を超える大幅な上昇は想定しないというところで、固定型の住宅ローンについてもどの程度まで上がるかどうかってすごい関心のあるところなんですけど、大幅な上昇っていうのは具体的に1.5%とかなのか、2%なのかっていう総裁のお考えはいかがでしょうか。これは固定型になるんですけど、一方変動型の場合ですね、これからマイナス金利、今日物価の見通しが出てマイナス金利解除がこれから視野に入ってくるということなんですけども、最終的な日銀のゴールっていうものに関連してですね、例えばFRBとか中立金利を決めてるとは思うんですけども、この住宅ローンとか組むうえで変動金利の人はすごい参考になると思うんですが、日本銀行としてそのゼロ金利解除で最終的なゴールなのか、それとも中立金利を示してませんけども、今後示す予定などあるんでしょうか。

(答)
固定金利の住宅ローンについては、長期金利の上昇に伴ってある程度上昇するということはあり得ると思いますが、おっしゃったような水準までの長期金利の上昇を今みているということでは全然ないです。それから変動型の住宅ローンについては、短期金利連動ですので、当面、物価目標が見通せない限りはマイナス金利の維持ということですので、変動しないということで考えております。もっとも長期の中立金利がどの辺かということは非常に興味深いテーマで、私どももいろいろ分析していますが、今回はちょっと具体的な話をするのは避けさせて頂ければと思います。

(問)
粘り強く金融緩和を続けた結果ですね、日本の安全保障政策にも悪影響を及ぼしていることの受け止めをお伺いしたいんですが、円安で輸入装備品の調達の費用が増大して、防衛費がですね、実質1兆円減という見出しの記事も出てですね、これは明らかに国益を損ねてる植田総裁は国賊と呼ばれてもおかしくないような事態を招いている受け止めをお伺いしたい。岸田総理、木原防衛大臣と対応を協議するお考えがあるのかも含めてお願いします。

(答)
ご質問の点は、先ほど来複数回出ています「第一の力」によるインフレがすごい進行している中で、なぜ大規模な金融緩和を続けるのかという質問というふうに受け取りました。その点はお答えしましたように、ちょっと「第一の力」が下火になるところのタイミングの見通しを誤っていますけれども、これはいずれにせよ下火になっていくというふうに考えています。そのうえで「第二の力」による持続的・安定的な2%インフレの達成に向かって努力しているところでございます。

(問)
展望レポートの最後に、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方、ノルムについて言及がありますが、今の現状ですね、総裁からご覧になられて、現状のこのノルムの評価、この慣行って変わってきたのかどうか、あるいは変わりつつあるのか、ご認識をお伺いさせてください。

(答)
それは時々申し上げていますけれども、変わり始めているという、あるいは変化する芽が出てきているというふうには考えています。ただ、2%のインフレと整合的なところまでちゃんと変わったかというと、そこにはまだ距離があるというふうに判断しています。

(問)
度々で恐縮なんですが、今回の金利政策の柔軟化について、総裁のご説明で、背景には米国の長期金利の上昇があって、今後の副作用について予防的な措置というのが大きな理由かと思うんですけれども、総裁がお話しされたように需給ギャップが改善していたりですとか、予想物価上昇率が徐々に上がってきていると。こういう前向きな状況を考慮して、経済・物価情勢にあわせて1%を超えるということを容認すると、そういうような前向きな側面はございますでしょうか。

(答)
そういう前向きな側面が、一段と期待物価上昇率を上げたり、「第二の力」を強めていったりする可能性は、将来あるかと思います。その分も、不確実性に備えるという中の、不確実性の一つとして入っているというふうにご理解頂ければと思います。

(問)
YCCの柔軟化について、おっしゃった金利上限を示す弊害というのは理解できるんですが、これまで国債買入れを量や金利の目標を明示してきたことに対して、今回指値オペは状況次第で、日銀は一体どこで動くのかという思惑が生まれて市場の不確実性を増すのではないかと思われます。先ほど市場機能の回復の必要性をおっしゃったんですが、これは回復までのプロセスなんでしょうか。

(答)
申し上げましたように、今回の措置でも大規模な国債買入れあるいは機動的なオペを随時、必要に応じて打つということを前提にして、1%の上限をめどとするという運用ですので、完全に市場機能が回復するということではもちろんないというふうには思っています。

(問)
為替と物価見通しの関係をちょっと確認したくてですね、7月から比べると対米ドルでおよそ10円ほど円安が進んで、今回物価見通し引き上げたところについて、足元円安水準がいわゆる「第一の力」にも影響しているとは思うんですけれども、特に今回、来年の物価見通しを引き上げられたっていうところで、この見通しの引き上げについて、為替水準がどれぐらいその引き上げに関して、その見立てに影響をしたのかどうかというご見解をお伺いできればと思います。

(答)
直接には輸入財の価格が上昇するという部分があり、それがコスト上昇となって他の財に及んでいくというところがまずあります。これについては円安に限れば、そこが物価への影響ということになりますけれども、23年度と24年度、コアコアとコアそれぞれについて若干その部分を織り込んでいます。

以上