総裁記者会見 2024年6月14日(金)午後3時30分から約65分
2024年6月17日
日本銀行
(問)
本日の決定会合の内容について、ご説明をよろしくお願い致します。
(答)
今日の会合では、まず無担保コールレート・オーバーナイト物ですが、0から0.1%程度で推移するよう促す、という金融市場調節方針を維持することを、全員一致で決定致しました。それから、次回決定会合までの長期国債およびCP・社債等の買入れについては、24年3月の決定会合において決定した方針に沿って実施致します。その後ですが、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されるよう、長期国債買入れを減額していく方針を賛成多数で決定致しました。今後、市場参加者の意見も確認し、次回金融政策決定会合において、今後1から2年程度の具体的な減額計画を決定します。その際、国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切と考えています。また、先行きの国債買入れの運営について市場参加者の意見を伺うため、金融市場局が債券市場参加者会合を開催することとしました。なお、中村委員は、長期国債買入れを減額していく方向性については賛成だが、7月の展望レポートで経済・物価情勢を改めて点検してから決定すべきとして、長期国債の買入れ方針に関する議案に反対されました。
次に、経済・物価動向についてご説明します。わが国の景気の現状ですが、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断しました。先行きについては、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えております。物価についてですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきていますが、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足元は2%台前半となっています。先行きは、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による経済対策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられます。この間、消費者物価の基調的な上昇率ですが、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想されます。展望レポートの見通し期間後半には、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えています。リスク要因ですが、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高く、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を十分注視する必要があります。
日本銀行としては、2%の物価安定の目標のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく方針です。
(問)
幹事社から二問質問させて頂きます。一問目は長期国債の買入れについてですが、今回、次回の金融政策決定会合で今後1、2年程度の具体的な減額計画を決めるということですけども、実際に減額を始めるタイミングについては、次回の会合終了後すぐに開始すると、そういうことでよろしいでしょうか。また、減額に当たってですね、日銀のバランスシートの規模を適正化するという観点から、かつ市場の大きな変動を避けながら、どのようなペースで減額を進めるのか伺えないでしょうか。また、国債買入れによるストック効果については概ね1%程度の長期金利の押し下げ効果があるということですけども、今後、国債の買入れを減額することによって、この金融緩和の度合いについてどのような変化があるのか伺えないでしょうか。
(答)
今日の会合では、3月に決定した枠組み見直し後の金融市場の状況を確認したうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されるよう、国債買入れを減額していく方針を決定したところです。その際、国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切であるという基本的な考え方も共有致しました。減額する以上、相応の規模となるというふうに考えていますが、具体的な減額の幅やペース、減額の枠組みなどについて、市場参加者の意見も確認しながら、しっかりとした減額計画を作っていきたいと考えております。金融市場局が開催する、先ほど申し上げました、債券市場参加者との会合を活用しつつ検討を進め、次回の会合において、今後1から2年程度の具体的な減額計画を決定し、速やかに減額を行う予定であります。今後、国債買入れを減額していけば、日本銀行の国債保有残高は償還に伴い減少していくことになりますが、国債買入れに伴う緩和効果、いわゆるストック効果は、引き続き相応に作用するとみております。
(問)
二問目ですけども、総裁、展望レポートの見通しに沿って経済・物価情勢が進展していけばですね、金融緩和の度合いを調整するとおっしゃってますけども、次の利上げに当たって重視する判断材料というのは何か、伺えないでしょうか。また、円安が基調的な物価上昇率に影響する場合は、政策的に対応するとおっしゃっていますけども、現時点で物価の上振れリスクはどうみているのか伺えないでしょうか。
(答)
いつも申し上げていることですが、先行きの政策運営は、その時々の経済・金融・物価情勢次第という考え方が基本でございます。短期金利の水準ですが、毎回の会合で経済・物価の見通しやリスクを丁寧に点検したうえで、2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現するという観点から、適切に設定してまいります。先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。また、経済・物価見通しが上振れたり、見通しを巡る上振れリスクが高まったりする場合も、利上げの理由になると考えております。この点、為替相場ですが、経済・物価に大きな影響を与えるものでございます。特に、このところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があるということは、意識しておく必要があると考えています。最近の円安の動きは、物価の上振れ要因であり、政策運営上十分に注視しています。その動向や影響について、毎回の決定会合でしっかりと点検し、適切に対応してまいります。
(問)
まずは国債買入れの減額についてですが、金利の形成を市場に任せていくということですが、QTに入ると基本的には円高の要因になると思うんですけども、減額方針決定に当たって円安の影響というのは考慮されたのでしょうか。その点、お伺いします。併せて、前回の会合では、基調的な物価上昇率に対する円安の影響は大きくないとお話しになっていましたけども、その認識に変更はないかということもお願いします。
もう一点が、物価目標の達成に対する確度についてなんですけど、確度が高まれば調整していくということですけども、4月の段階では、夏から秋にかけて春闘の結果が物価に反映されて、目標達成の可能性がどんどん高まるというふうにおっしゃってましたが、現状でもその見通しは変わってないのでしょうか。そうすると7月以降はそういった局面に入ってくるのかというところをお伺いできればと思います。
(答)
まず、今回の長期国債買いオペの減額の決定の背景ですけれども、これは申し上げましたように、中長期的なタームでみて、市場における金利形成の自由度を高めていくという観点から実施したものでございます。次に、最近の円安と基調的物価上昇率との関係ということですが、これは常にわれわれは注意してみているところでもちろんあります。他の変数の基調的物価上昇率の影響についてもそうですけれども、為替について申し上げれば、為替変動の幅とか、その持続性とか、またそれが国内物価にどれくらい転嫁されていくのか、その後また賃金その他への波及がありますが、こういう各点について日々確認しながら、毎回の決定会合で、そこまでの情報を確認して進んでいくという姿勢でおります。
それから、見通し達成の確度を3月に100%でないと申し上げましたが、それが上昇していけば、あるいは別の表現でいえば、われわれの見通しに沿って基調的物価上昇率が上がっていけば、ということになれば、先ほど申し上げましたように、短期金利を調整していくということになります。ただ、それがどのタイミングで具体的に調整になるかということは、その時々までに集まったデータとか、情報を総合して決めることでありまして、それは現時点でどこのタイミングが一番重要だということを前もって申し上げられるようなものではないというふうに考えております。
(問)
次回の会合でですね、1、2年程度かけて国債の減額計画を決定されるということなんですけども、1、2年という期間を設定された根拠につきまして、1、2年で減額ステージをいったん終了するというイメージを持たれておられるのか、または、ある種中期的なですね、計画を示すことによって、段階的に減額をしていくというイメージがあるんですけれども、その辺、総裁、今の時点、どういうイメージを持たれているのか教えてください。
あと一点なんですが、長期金利についてなんですが、先般1.1%まで上昇しまして、13年ぶりの水準を付けました。今回、国債買入れのですね、減額方針を示したことを踏まえて、YCCも廃止されておられまして、日本の経済・物価情勢に照らせば、1%を超える長期金利というのは、これは自然な姿であるというふうにお考えなのか、経済・物価に与える影響も含めまして、総裁のお考えを教えてください。
(答)
まず、長国オペの方ですけれども、7月に向こう1、2年の方針を示すというふうに申し上げた根拠ということですけれども、もちろん国債残高の大まかに5割を日本銀行が保有しているという状態ですので、長期的に望ましい状態にまで1、2年で到達できるというふうには思っておりませんし、それから、その長期的に望ましい状態での、例えば日銀の負債側でいえば、超過準備の水準がどれくらいであるかという点に関しても、現状では確固たることはなかなか言いにくいということだと思います。これは先んじて量的引き締めに入っている他の中央銀行の経験をみても、なかなか最適な量の水準というのは決めがたいという結論、結論というのは言い過ぎですけれども、状況に今あるかと思います。という中でしかし、ある程度の予見可能性を減額するプロセスにおいて担保したいということから、まず1、2年間分について、スケジュールを大まかに示すことができないかという判断に至ったというところでございます。
それから長期金利の1%前後の水準についての評価ということですが、細かく具体的なことは避けますけれども、この間、長期のインフレ予想がそこそこ上昇してきているということに照らしてみますと、長期の実質金利もかなり低い水準、マイナスの水準に概ねあると思いますけれども、今のところ十分まだ緩和的な状況であるというふうに考えております。
(問)
今日の運営方針の公表後にですね、ちょっと為替が円安に少し進んでいると。市場では、思ったよりこの国債の減額の方針が、具体性がなくて引き締め姿勢弱かったんじゃないかという評価がされていると思うんですが、率直に総裁、どう受け止めているかっていうのが一点です。
二点目が、7月の会合で具体的な減額計画出すということで、市場への影響それなりに出る可能性もありますけど、こうなってくると7月に同時にですね、追加の利上げをするのは難しくなるっていう考え方っていうのはあるものなんでしょうか、お聞かせください。
(答)
まず、今日ある種決定はしたけれども細部については予告にとどめて、次回細部を具体的に決定し発表するというプロセスを踏んだのは、先ほど申し上げましたように、市場参加者の意見等も伺って、丁寧に進めたいということでございます。ただ、丁寧に進めるということは、言い方難しいですけれども、ほんのわずかしか減額しないということではありませんで、先ほども申し上げましたように、減額する以上、相応な規模になるというふうに考えています。それがどれくらいかということは、7月にならないと申し上げられませんが。
それから、7月あるいは7月以降の短期金利の調節方針ですが、これは先ほど申し上げましたが、経済・物価情勢に沿って、先ほど申し上げたような方針で粛々と決定してまいりますが、もちろんその際に、長国買いオペの方でわれわれがすること、およびそれがどう市場で消化されていくかということは考慮したうえで、短期金利の設定をしていくということになります。
(問)
質問二点ございます。一つが国債買入れのことなんですけれども、先ほど減額について、1、2年で到達できるとは思っていないというふうなお話もあったかと思うんですけれど、この減額のフェーズっていうのは大体どのぐらいの期間続くというふうに見通されているのか、5年単位なのか10年単位なのか、その辺りの見通しをお聞かせ頂きたいのが一点。
あと、景気認識の部分なんですけど、こちらの個人消費については、底堅く推移してるっていうふうにご評価されてるかと思うんですけど、そこまでいい経済指標ってのはあまり示されてないように思うんですが、この点、その先行きの見通しと、あと足元トヨタなどの認証不正の問題がこういったところに及ぼす影響についてのお見立てをお願いします。
(答)
まずオペの方で1、2年の先、どれくらいの期間で適切と思う水準に到達できるかというご質問だったと思いますけれども、正直なところ、現状ではなかなかそこについて具体的な、何年後くらいというのを申し上げにくいと思います。まず1、2年、次回決定し公表するようなやり方でやってみて、それが市場でどう消化されるかとか、またそのときの経済・金融情勢とか様々なことを考慮して、その後の進め方を決めるということにならざるを得ないかなと思います。
それから、消費の現状をどう読むかということですけれども、おっしゃるように、一つは、おそらく物価上昇の影響で、特に非耐久財中心に、弱めのデータが出ているということとか、これもおっしゃいましたように、自動車の出荷停止の影響が直接消費にマイナスの影響を与えているという部分もありますし、後者の部分はもうワンラウンド来そうであるということも、ここまでに判明しています。ただ、出荷停止の、最近明らかになった部分については、1回目の出荷停止の影響よりは、今のところは小さいであろうというふうに私どもは判断しています。そのうえでですが、賃金が緩やかに増加していくというふうに考えていますので、一方で消費者物価総合は落ち着いてきていますので、インフレ率がですね、実質所得の伸び率の低下がだんだん止まっていって、消費が強めの動きに転じていくという基本的な見方については今のところ維持しているということでございます。
(問)
二点伺います。まず一点目、長期国債の買入れ減額なんですけれども、計画の策定スパン1年から2年程度とした理由について、債券市場での需給動向とか機能度を考慮するというのは分かるんですけれども、政府の具体的な国債の発行計画もにらみながら、減額幅とかペースを検討していくということなのか、前回の会見に続いて申し訳ないんですけれども、財政と金融政策の距離感のところを伺えればと思います。
あともう一点が金融システムに関して、5月下旬に農林中金が保有外債の含み損処理とかで1兆円規模の資本増強の考えを公表されたんですけれども、総裁以前、審議委員時代に日銀の広報紙で農中の幹部でいらした方と対談をされていたと思うんですが、今回の増資をどうみられてるか。加えて資産規模はD-SIBsという国内でも結構重要な規模だと思うんですが、金融システムに与える影響とか、最近は地域銀行で国有化もありましたけれども、現状、金融政策も含めてどう認識されているのか教えて頂ければと思います。
(答)
前半ですけれども、一方で私どもが買いオペをどうしていくかという話があって、もう一方で財務省あるいは理財局の発行計画ないし国債管理政策があるかと思います。そこの役割分担みたいなことになりますけれども、この計画をよく聞いてそしゃくして、向こう1、2年間のわれわれのオペを考えていくというよりは、われわれの向こう1、2年間のオペの大まかな姿を明らかにして、そのうえで政府の方で国債管理政策等を決めて頂くという姿勢かなと思っております。
それから二番目の金融システムの話ですけれども、個別の金融機関の状況についてはコメントを差し控えたいと思います。ただ日本の金融システムは、現状十分な資本基盤を有していて安定的であるというふうに判断しております。
(問)
かなり丁寧に進めていきたいということはよく分かったんですけれども、今回動かなかったことによって今日になって円安が進み、158円台になっているということもあります。この7月まで動かないことのリスクについては、総裁どうお考えなのかというのをお伺いしたいのが一つです。
あとは市場の金利形成の自由度を高めるために政策の予見可能性を高めていくというのは、非常に重要なことだと思うんですけれども、それによって市場に事前に政策が織り込まれ過ぎて、それで円安が進む展開のようにもみえるんですが、この市場との対話の難しさについては、今どう感じていらっしゃるでしょうか。
(答)
具体案の発表は1か月先になるわけですけれども、その間の不確実性を極力避ける意味で、今日は不十分かもしれないですけれども、私どもの減額に当たっての基本的な考え方をご説明しているところです。もうちょっと長いタームで考えますと、先ほど来出ていますように、どこが最適点か分からないですけれども、望ましい国債保有残高とか超過準備の水準に到達するまでにはかなりの時間がかかることですので、ちょっと極端な言い方になりますけれども、短期的に1か月、2か月先になるということ自体のコストはそれほどないというふうに思っております。
市場とのコミュニケーションについては、常日頃から丁寧に私どもの考え方が伝わるように努めていきたい、丁寧に説明していきたいということに尽きるかと思います。
(問)
二点あるんですけれども、一点目は、7月に国債買入れの長期的な減額のプランを出すということで、それはすなわち7月の利上げはないだろうというふうな市場の見方が一部にあるんですが、確認なんですが、仮に経済・物価情勢から判断して、7月に利上げするのがふさわしいということであれば、同時に決めるっていうことがあるのか、それとも市場の動揺がやっぱり大き過ぎるのでそこはちょっと考慮に入れるっていうことなのか、その辺のご見解を伺いたいのが一点目です。
あと二点目は、最近、企業物価指数等みてますと、円安の影響等でまたコストプッシュ型のインフレ圧力が再加速してるようにみえます。また、企業レベルでのサービス価格の動向をみても、「第二の力」の方の広がりが出ているようにもみえます。これを総合すると、基調インフレ、少し上振れ気味になっているのではないかとも思えるんですが、4月の決定会合以降のこうした物価の動きについて、総裁のご見解をお願いします。
(答)
まず7月の短期金利に関する判断の方ですけれども、これは7月に同時に長期国債買いオペに関する具体案をお示しするということでありますけれども、おっしゃいますように、そのときまでに出てきます経済・物価情勢に関するデータないし入ってくる情報次第で、短期金利を引き上げて金融緩和度合いを調整するということは当然あり得る話だというふうに考えております。
それから二番目の物価の動きに関するご質問ですけれども、これまで暫く、だいぶ前に始まった輸入価格上昇の国内物価への転嫁に伴うインフレ圧力、「第一の力」については、だんだん減衰してきている。一方で、賃金上昇がサービス価格等に波及するという「第二の力」の部分については、少しずつ上昇してきているという説明をしてきたところで、その点に大きな変更はございません。ただし、これもおっしゃいましたように、ここのところの円安も含めて、輸入物価等に若干の再上昇の気配がみえる。ある種、「第一の力」の第二ラウンド目が少し始まっているかもしれないというようなところについては、今後、基調的物価上昇の判断をする際に注視してみていきたいと思います。
(問)
一点目は長期国債の買入れの点について、先ほど、他社の質問ともちょっと若干かぶるかもしれないですけど、今回は予告にとどめたようなかたちにして次回具体策を決めるというような話でしたが、今後例えば政策金利の方は、短期金利を動かす場合とかでも、こういうかたちでその事前に予告して市場に織り込ませてやるという、次の会合でやるみたいなかたちにするというケースは想定されてるんでしょうか。それとも、今回はあくまで例外的に、市場参加者の意見を確認するために行ったということなんでしょうか。まず一点目はそれをお聞かせください。
(答)
基本的には例外的な措置だというふうに考えております。もちろん具体策決定までに、様々な人の情報を、しかもある種、公なかたちで収集してそれから具体策を決めないといけないというような、何か金融政策に関する新たなスキームを考える際には、予告して暫らく後に実施するということはあり得るとは思いますけれども、通常の短期金利の調整のときにそういう手段を使うということは、なかなか考えにくいかなと思っております。
(問)
あともう一点目は、減額の具体策、次回会合で決めるということですけど、総裁から先ほど何回か相応の規模という、ある程度、総裁の中では規模についてのイメージがあるのかもしれないんですが、それが例えば市場参加者の意見と大きく開いてた場合とかに、市場参加者の意見を尊重するのかそれとも日銀としての考えを最終的に原案書くときに尊重するのか、その辺はどういうイメージで次回決めるということなんでしょうか。
(答)
それは市場参加者の意見を伺ったうえで、私どもの会合で決定するということにもちろんなるかと思います。
(問)
予想物価上昇率に関して、現状では大体1%から1.5%と言われてるかと思うんですけども、以前、物価の基調に関して委員の見通しが重要であるっていうような発言をされてるかと思うんですけれども、4月時点だとコアコアが1.9[%]、1.9[%]、2.1[%]で、大体2%の物価目標には当たってると思うんですけれども、その委員の見通しと市場で今言われている予想物価上昇率の乖離のところをどういうふうにご覧になるのか。やはり現状だと、まだ2%を安定的・持続的に達成するには自信がないということなのか。もし自信がないということであれば、どういう状況であれば、更なる2%の達成の自信が強まるのか、その辺のお話しできる範囲でお願い致します。
(答)
私どもの委員方の見通しは、概ね来年度、再来年度2%前後になっています。一方で、ご質問にはなかったですけど、基調的物価上昇率は2[%]をちょっと下回っているという言い方もしていますし、おっしゃるように、いくつかのインフレ予想の指標は、2[%]よりもまた少し下にあるということのギャップは何かというご質問だと思いますけれども、当面の物価見通しの中に一部、まだ一時的な部分が入っているということだと思います。例えば、だいぶ減衰してきていますけれども、既往の輸入物価上昇が、例えば食料品価格が上昇したことが、外食に跳ね、外食費の増大に跳ねて、それがある種サービスを上昇させてきている。こうした部分が、まだ少しずつ落ちていくという部分が落ちきっていない部分が、見通しの中にある程度入っている。それは落ちていくであろうと。一方で賃金上昇が今後広がっていく中で、それがサービス価格に跳ねていくという動きは、もう少し強まっていくであろうと。そういう二つの、ざっくり申し上げれば、力の拮抗がどういうふうになるかということをもう少し見極めたいというのが、割と正直なところでございます。
(問)
ちょっと改めてになりますが、今回、この国債の買入れの減額の予告をしている、この決定はですね、なぜこのタイミングでの決定だったのかについて、総裁のお考えをお知らせください。3月に大規模な金融緩和を終了して、その時に、一度にやると影響があるというふうに判断されてのことなのか、そういった点を踏まえて考えをお知らせください。
(答)
これは基本的には、3月以降申し上げてきましたように、3月にあの大きな政策の枠組みの変更を致しましたので、その変更を金融市場がどういうふうに消化するかということを少し丁寧にみたいという気持ちで4月以降みておりました。それがある程度確認できたという判断のもとに、今回減額を決定し、更に丁寧に市場の意見も伺いつつ、7月に具体案を発表するという手順を踏んでいるところでございます。
(問)
一点目が改めてになってしまうんですが、国債のこの買入れについてですね、マーケットでも具体的な額の提示などが既に織り込まれている印象が強かったのですが、なぜ具体策を先送りにしたのかというところを改めて教えてください。
二点目がちょっと広い質問なんですけれども、日銀が為替政策のために金融政策を行うことはないとは承知しているんですが、今1ドル158円台となっていまして、この円安局面を転換するためには何が必要だとお考えなのか、ちょっと総裁のご見解をお聞かせ頂ければと思います。
(答)
具体的なオペ減額の提示を1か月先送りしたのはなぜかということですが、基本的には先ほど来申し上げてますように、丁寧にその決定のプロセスを進めたいということでございます。その中で、最初にちょっと申し上げましたが、減額を進める際に、一方で、ある程度市場にとって予見可能なかたちでスケジュールを提示したいという気持ちと、それから、減額のプロセスで長期債市場に不安定的な動きがこの理由で大きく起こるということは避けたいなと。そのため、オペの若干の柔軟性を担保したいということとのバランスをどう取るかというのは、なかなか難しい問題であります。繰り返しになりますが、そこのところの判断を的確にするためにも市場参加者の意見も聞いてみたいということで、1か月かけようということになりました。
それから、為替の動きが、円安の動きがどこで円高に転換するのか、そのドライバーは何かというご質問だと思いますが、これについては申し訳ありませんが、市場の動向に関するコメントということで差し控えさせて頂ければと思います。
(問)
長国の買入れ減額のいわゆる位置付けの認識についてお伺いしたいんですけれども、総裁も先ほど他国の事例を引き合いに出すときに量的引き締めというような言葉を使われましたけれども、市場では今後保有残高が減少していく見通しになったことで、事実上の量的引き締め局面に移行するというふうにとらえられてますが、他方で、総裁は4月の会見の際も、能動的な金融政策の手段としてはこれを使いたくないということもおっしゃっておりまして、理解としては、これは量的引き締めだというふうにわれわれは理解していいのかという点についてお伺いさせてください。
(答)
そもそもこのオペの金額を減らしていく最大の理由は、最初に申し上げましたように、金融市場における自由な価格形成を促進していくということでございます。私どものやり方としては、フローで買っていく量について減らしていく、どこまで減らしていくのか、というかたちでコミュニケーションをしていきたいということですが、もちろんその結果として、私どもが保有している国債の残高は、満期保有している国債が満期になるペース次第ですが、だんだん減っていくということになります。これについて、これも今日申し上げたかどうかあれですが、3月以降申し上げてますように、能動的な金融政策の手段としては用いないようにしようということで考えております。そうしませんと、長期債あるいは長期金利に関わることですので、政策的にこれの購入量を、短期的にどんどん動かすというようなことになりますと、市場において先読みの様々な投機的な動きを惹起させてしまうということで非常に運営が困難になるというリスクを抱えているものでありますので、なるべく予見可能なかたちで、金融政策的な色彩は無し、ないしきわめて最小化させたうえで運営していきたい。一方で、金融政策的な調節は、短期金利の調整を主な手段として今後行っていくということでございます。
(問)
個人消費に関して、財政政策の影響、政府による財政政策の影響がどういうふうに絡んでくるのかということについてお伺いしたいんですけれども、最近、個人消費、消費心理が冷え込んでるっていう背景に円安もあると思うんですが、これからガソリン補助金が廃止されることであったりとか、先行きの家庭の負担感が高まってくるってことがどれだけ影響するのかということについて、どう分析されているのかっていうことと、「第二の力」ってのが先ほどおっしゃられてましたけれども、それをもし支えるのが一時的な財政政策、定額減税であったりとかっていうものだと、なんとなく持続的でないような気もしてですね、「第二の力」が財政政策にどれだけ支えられているのか、あるいは本当に賃金の上昇によって高まっているのかっていうのを、どういうふうに見極めるように考えていらっしゃいますか。
(答)
エネルギー関係の補助金がだんだん縮小されていくという動きは、もちろん家計のエネルギー関係に対する支出を増大させる要因になりますので、それは当然消費には、それだけをとればマイナスの影響ということはあるかと思います。ただそれをオフセットする意味も込めて、減税政策が決定され実行されつつあるということだと思います。そのうえで今後の「第二の力」の主な動きを作り出す要因ですけれども、それは今のようなところではなくて、むしろちょっとおっしゃいましたように、賃金が継続的に上昇して、それが物価に波及し、更にまた賃金が上昇するという好循環が続いていくという姿を念頭に置いています。
(問)
先々の政策金利の水準についての見方をお伺いさせてください。4月の記者会見で、物価が見通し通りに推移すれば、見通し期間終盤にかけて政策金利は中立金利の近傍にあるとの展望を示されました。その見通しは今も変わっていないでしょうかということと、あと中立金利は幅があると思いますが、日銀の自然利子率からの推計で考えると1から2.5%程度と考えられます。少なくとも1%以上は短期金利を上げるっていう理解でよろしいでしょうかっていうのを教えてください。
(答)
長期的な中立金利に関する考え方は変わっていません。そのうえで、そこが1から2.5[%]くらいの幅になると計算されるから、最低1%くらいなのかというご質問ですけれども、やや技術的になって恐縮ですけれども、1から2.5という幅は五つか六つの推計結果の範囲を示しています。技術的なのはその先ですけれども、例えば1という一番下の推計値も、自信を持って1という推計値ではなくてですね、統計的に推計するとき、平均的には1と考えられるというふうに出ていても、その周りに1±αという信頼区間というふうに呼びますが、そういうものが必ず付いています。ですから1といっても、これは仮にですけれども、最低0.7、0.6かもしれないし、1.3、1.4かもしれないというような幅がそれぞれについているものでありますので、必ず1.0が、こういう推計だけをみたとしても、最低の数字であるというふうには必ずしも言えないということかなと思っております。
(問)
同じく中立金利に関する質問ですけれども、前回4月の会見で中立金利の推定の範囲をなるだけ絞っていきたいということだったんですが、それが少しずつ絞られている、そういう作業が進んでいるのかどうかということと、それに関連してそれを目がけて段階的に短期金利を調整していくということになると思うんですが、先ほど言及されたように輸入物価が上がってそういった意味での物価上昇はみられるということだったんですが、これはその金利の上げていくときのパス、金利のペースを速めていく、そういう可能性があるというふうにお考えか教えてください。
(答)
r*の推計値については、いずれにせよ何度も節目節目で計算し直して絞れるものであれば絞っていきたいとは考えています。ただその作業が、当面の短期金利の経路を決めていく際に役に立つほど早めに終了するとはなかなか思えないと思ってますし、それは他の中央銀行でも同じかなというふうに思っています。泥臭いやり方になりますけれども、経済に関する新しい情報を手に入れつつ、また1回金利を引き上げたらどういうことが起こったかというのを確認しつつ、遠い先ですけれども、r*が、あるいは経済の金利引き上げに対する反応の度合いがどれくらいかということを確認しながら、あるいは自分の持っている見方を適宜修正しながら進めていくということにならざるを得ないかなと思っております。
(問)
先ほど7月にデータ・情報次第では、当然利上げあり得るという趣旨のご発言をされましたけど、4月にまず物価がオントラックできている、今回の会合でもオントラックできている、7月にもしそういった姿が確認できるならば、利上げしてもおかしくないという判断があり得るという、その確信が高まっているということなんでしょうか。
あともう一つ、総裁、国債買入れについて先ほど相応の規模の減額になるとおっしゃいましたけど、相応というのは非連続的なものになり得るということなんでしょうか。今、足元大体6兆円ぐらい買っておりますけれども、それから結構大きな減額になり得る可能性があるということなんでしょうか。
(答)
4月以降の金融・経済・物価情勢に関する判断、特に基調的物価上昇率周りの判断ですけれども、新年度入り後の様々なデータが出つつあるところですので、もう既に6月ですけれども、ようやく4月のデータが大体出そろい、これから5月のデータが出てくるというところですので、これまでのところは私どもの見通しに概ね沿ったデータの出方になっておりますが、そういうことでいいかどうかもう少し確認したいというところでございます。そのうえで7月の短期金利をどうするかということは決定したいということでございます。
それから、オペに関して相応のというのは具体的にどれくらいなのかというご質問だと思いますが、これは申し訳ありません、7月をお待ちください、ということになるかと思います。
(問)
総裁、2%目標を掲げて緩和状態を続けるというのは、賃金と物価の好循環を目指すからだというご説明をこれまでされてきました。しかし、その賃金と物価がスパイラル的に上がっていく状況というのは、一般的にはほとんど悪循環になると思います。今の日本でも、既に25か月連続で実質賃金がマイナスなわけですから、ある意味、悪循環が起こっているということだと思いますけれども、もし好循環に繋がるというんであれば、生産性上昇につながるメカニズムが前提になっているはずですけれども、そういうものが果たしてあるんでしょうか。植田総裁は、以前、インフレが経済の新陳代謝や資源配分でプラスになる可能性について言及されたこともありますけれども、そういうことは経済理論で証明するものがあるんでしょうか。あるいは、日銀のオリジナルなんでしょうか。
(答)
非常に難しいご質問ですけれども、まず基本的には、私どもがこれまでしてきたところは、ほぼゼロ近辺のインフレ率およびインフレ期待の状況から、2%の定常状態を目指して、インフレ率、インフレ期待それから賃金上昇率が上がる環境をサポートしてきたということでございます。当然おっしゃったように、これが行き過ぎれば、賃金・物価の悪循環に転換するっていうことは外国の例をみてもいくらでもありますので、それがちょうど良い2%のところでうまく止まるように、私どもは金融緩和度合いをこれから調整していくということになるかと思います。そのうえで、それが更に本当の好循環につながるかどうかは生産性上昇率次第であるということで、通常はこれは、私どもとしては、物価安定の状態を作り出すことによって、人々、企業が働きやすい環境を作り出す、そういうことがまわりまわって生産性の上昇につながるだろうという、日銀法の作りにあった説明をしております。加えて、ここのところ、ここ1年くらいですかね、0%のインフレ率の状態から2%に移ること自体が多少なりとも生産性上昇に寄与するような効果をもたらす可能性があるという立論をところどころでしておりますが、これがご質問にありましたように、経済学でものすごいきちっと裏付けられた話かどうかについては、必ずしもまだ何とも言えないと思いますが、仮説の段階にとどまっている面があると思います。
(問)
また国債買入れの減額のお話に戻ってしまうんですけれども、国債の保有残高を減らしていくことに多分なると思うんですけど、長期的な話としてどれぐらいまでその保有残高を減らしていくつもり、10年先、20年先、異次元緩和前の状態まで戻すことを理想として考えていてやっていくのか、それともやっぱりそのときの経済状況に応じて、ある種多くの人たちが日銀が多くの国債保有残高を持っていることに慣れ切っているような環境ではあるので、もうそこは特に昔に戻ることまでは理想にはこだわらずっていうようなかたちで対処していくか、その辺りの大きなイメージ、総裁どういうふうにお持ちかお伺いできればと思います。
(答)
長期的な姿ですけれども、excess reserveゼロの状態が望ましいという前提では考えてないです。それがプラスの状態になりがちだなというようないくつかの要因があるということを考えつつ、今後決めていきたいと思っております。
(問)
記者会見の運営についてですね、非常に不満を持ちましたので、少し嫌味な質問をさせて頂きますけれども、丁寧にするために市場関係者と会合を設けるとおっしゃってるんですけども、金融市場局は今までそういうことを、これほど重要なことについてですね、ヒアリングをしてこなかったってことなんですか。そんなわけないですよね。ですから、政策担当部局による時間稼ぎですよね、これは。そうじゃないんですか。そう思ってるから円安になってるわけでしょ、市場が。お答え頂きたいと思います。
(答)
これはオペ減額の方針を決定する際、それに伴うヒアリングということですので、なかなかそういう決定がないもとで、いろいろな個別の金融機関とヒアリングで意見を聴取するということが難しい性質の問題かなと思います。最初に減額をしますということをみんなにアナウンスしたうえで、ヒアリングをするというステップを踏まないと、それこそ情報リークみたいなリスクを引き起こしてしまう問題にもつながりかねないということで、今回のようなプロセスを踏んでおります。
(問)
今の質問をもう少し丁寧にご説明頂きたいんですけれども、国債減額の計画を決めるに当たって、市場参加者の意見を聞く場をわざわざ設けるということの意義なんですけれども、やはり市場関係者からは、今までこういう機会がなかったのに、なぜ今回はこれを開くのかという、やはり日銀が市場に政策の責任を転嫁してるんじゃないかというような不満の声が早速出てるんですけれども、ちょっともう少し丁寧にご説明頂けましたらありがたいです。
(答)
もちろん常日頃から市場とは意見交換をしているわけですが、先ほど申し上げましたように、非常にセンシティブな問題ですので、先に方針を公表したうえでヒアリングをしたいということですし、その中で私どもがこれまでつかめてない情報も入ってくるということだと思います。そのうえで、更に決定の責任は当然日本銀行にあるということになります。
(問)
中央銀行のバランスシートという話についてお聞きしたいんですけども、4月の決定会合の主な意見に、ETFについて時間をかけてもゼロにすべきだという意見が記されていました。通貨の信認の裏付けのあるバランスシートにエクイティのようなものを載せないという考え方があるのだと思いますが、一方で、一部の識者の間に中央銀行のバランスシートというのは、実際に存在する金融市場になるべくニュートラルなものの方が望ましいという見方もあると思います。とすると、エクイティのようなものは、なるべく小さくした方がいいにせよ、ゼロにする必要は必ずしもないんじゃないかっていう見方もありますが、この辺り、中央銀行のバランスシートがどのようなものであるべきかという総裁のお考えをお聞かせ頂けますでしょうか。
(答)
これはバランスシートの規模、内容、両方ですが、特にエクイティについて、中央銀行の保有をどう考えるかというご質問だと思いますけれども、時間をかけて検討していきたいというところで今日はとどめさせて頂ければと思います。
(問)
国債買入れの減額計画を、次回会合で今後1、2年の計画を示されるということで、いったん決まったこの計画というのは厳守して計画通りに淡々と買入れの減額を進めていくということなのか、あるいは経済・物価情勢が変化して、あるいは金利が急騰するなどリスクが出てきたときには、いったんその計画を見直したり、取りやめたり、そういったこともあり得るのか、これについてお考えを聞かせてください。
(答)
そこは最初の方で申し上げました予見可能性と柔軟性のバランスというところで、適切なところに決めたいということです。ただ若干の柔軟性を持たせるといっても、マクロ的な金融政策として能動的に使うというところはなるべく避けようということですので、金融市場の構造とか仕組みでわれわれはみえていないことがあって、このペースでの減額はなかなか難しいというときに調整する余地をどれくらい残すかということになるかと思います。
以上