総裁記者会見 2024年7月31日(水)午後3時30分から約65分
2024年8月1日
日本銀行
(問)
本日の金融政策決定会合の内容について、展望レポートの内容も含めて総裁ご説明の方をよろしくお願い致します。
(答)
今日の会合では、金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画を決定致しました。最初に決定内容の概要についてご説明します。まず、金融市場調節方針ですが、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標を、これまでの0から0.1%程度から0.25%程度へと変更致しました。また、これに伴い、補完当座預金制度や補完貸付制度等の適用利率を変更したほか、貸出増加支援資金供給については、今後、変動金利貸付に変更のうえ、実施することと致しました。なお、中村委員は、「次回の金融政策決定会合で法人企業統計等を確認してから金融市場調節方針の変更を判断すべきであり、今回はそうした考え方を示すにとどめることが望ましい」として、また、野口委員は、「賃金上昇の浸透による経済状況の改善をデータに基づいてより慎重に見極める必要がある」として、金融市場調節方針等に反対されました。次に、国債買入れの減額ですが、月間買入れ予定額を原則として、毎四半期4,000億円程度ずつ減額し、2026年1から3月に3兆円程度とするという計画を全員一致で決定しました。減額計画の詳細については、後ほどご説明します。
続いて、今回の金融市場調節方針の変更の背景にあるわが国の経済・物価について、本日の展望レポートに沿って簡単にご説明します。まずわが国の景気の現状ですが、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断しました。企業部門では、企業収益が改善することで、設備投資は緩やかな増加傾向にあるほか、家計部門では、個人消費は物価上昇の影響などがみられるものの、底堅く推移しています。賃金面では、春季労使交渉で前年を大きく上回る賃上げが実現した大企業だけでなく、幅広い地域・業種・企業規模において、賃上げの動きに広がりがみられています。先行きについては、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられます。前回のレポートと比較しますと、24年度の見通しが幾分下振れていますが、これは前年度の統計改定の影響が主因であり、景気に対する見方に変わりはありません。物価ですが、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているものの、賃金の上昇を販売価格に反映する動きが強まってきており、サービス価格の緩やかな上昇が続いています。企業や家計の予想物価上昇率も緩やかに上昇しています。先行きですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、2024年度に2%台半ばとなった後、25年度および26年度は、概ね2%程度で推移すると予想しています。前回と比較しますと、24年度が下振れ、25年度が上振れとなっていますが、これは政府のエネルギー価格関連の政策の影響が主因です。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想されます。見通し期間後半には、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えています。リスク要因ですが、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高く、金融・為替市場の動向や、そのわが国への影響を十分注視する必要があります。特にこのところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があります。このように、わが国の経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移しています。もっとも、輸入物価は再び上昇に転じており、先行き物価が上振れるリスクには注意する必要がある状況となっています。こうした状況を踏まえ、本日の会合では、2%の物価目標の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断しました。政策金利の変更後も、実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えています。
次に、改めて国債買入れの減額計画についてご説明します。日本銀行は、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切であると考えています。こうした観点から、前回会合で買入れの減額方針を決定し、その後、債券市場参加者会合などで市場参加者の意見も確認してきました。そのうえで、本日の決定会合において、月間の買入れ予定額を、原則として毎四半期4,000億円程度ずつ減額し、2026年1から3月に3兆円程度とすることとしました。また、来年6月の決定会合では、減額計画の中間評価を行います。中間評価では、今回の減額計画を維持することが基本となりますが、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、必要と判断すれば、適宜計画に修正を加える方針です。また、そのとき同時に、2026年4月以降の国債の買入れ方針について検討し、その結果を示すこととします。このほか、従来と同様、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施します。必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直すこともあり得ると考えています。
最後に、今後の金融政策運営です。金融政策運営は、先行きの経済・物価・金融情勢次第ですが、現在の実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえますと、今回の展望レポートで示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。日本銀行は、2%の物価安定の目標のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく方針です。
(問)
幹事社の方から質問させて頂きます。一問目が、説明にもありました長期国債の買入れ減額についてです。7月9日、10日の債券市場参加者会合の参加者からは、減額の幅やペースについて幅広い意見が出ましたが、この内容をどのように踏まえて今回の決定に至ったのか、そのプロセスについて、可能な範囲でもう少しご説明ください。
二問目は、追加利上げに関してです。3月の決定会合でマイナス金利政策を解除してから約4か月で今回政策金利の追加の引き上げを決めました。その背景となる基調的な物価や経済の動向についての現状認識と、懸念材料として個人消費の弱さを指摘する声などもありますが、これらについて総裁の見解を併せてお聞かせください。
(答)
最初のご質問ですけれども、債券市場参加者会合では、国債買いオペ減額の幅やペース、買入れ金額の示し方、臨時オペ・指値オペの位置付けなどについていろいろご意見を頂きました。頂いたご意見は、今回の減額計画にも反映されています。すなわち、先行きの国債買入れの予見可能性を求める声が強かったということを受けまして、一つには2026年3月までの各四半期毎の買入れ予定額を具体的に示すということにしましたし、また、残存期間別等の買入れ予定額についても、レンジではなく、ピンポイントで示すことにしました。一方で、市場参加者からは、先行きの市場環境等についての懸念も少なからず窺われました。この点も踏まえ、中間評価の実施など、国債市場の安定に配慮するための柔軟性も確保することと致しました。このように、市場参加者の意見を丁寧に確認することで、市場の現状と先行きを踏まえた、しっかりとした減額計画を決定することができたと考えています。会合に参加頂いた市場関係者の皆様には感謝申し上げたいと思います。
それから、後半のご質問ですけれども、今回の政策金利引き上げの背景ですが、まず、個人消費ですけれども、物価上昇の影響などがみられますが、底堅く推移していると判断しています。最近では、マインド指標にも底入れの兆しが窺われます。また、5月の毎月勤労統計では、一般労働者の所定内給与が伸び率を高めたほか、私ども本支店のネットワークを活用して、中堅・中小企業に対して実施したヒアリングでも、幅広い地域・業種・企業規模において、賃上げの実施を指摘する声が聞かれるなど、賃上げの動きが広がってきていることが確認できます。先行き、こうした動きが一段と進むことが見込まれ、賃金・所得の増加が個人消費を支えていくと判断しています。物価面ですが、サービス分野を中心に、年度初めの「期初の値上げ」が相応に広がったことが確認されたと考えています。企業ヒアリングでも、ばらつきを伴いつつも、賃金上昇を販売価格に反映する動きが強まってきている点が指摘されていまして、先行きも、賃金と物価が連関を高めつつ、緩やかに上昇していくと見込まれます。このように、わが国の経済・物価は、これまで展望レポートで示してきた見通しに概ね沿って推移しています。また、加えまして、これまでの為替円安もあって、輸入物価が再び上昇に転じていまして、物価の上振れリスクには注意する必要もあると考えています。こうした状況を踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現という観点から、今回、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整することが適切であると判断しました。先行きについても、先ほども申し上げましたが、経済・物価情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針です。
(問)
総裁、先ほどのご説明で個人消費は所得、賃金の増加で消費を支えると、そういうご説明がありましたけども、それでは、今回利上げした理由についてですけども、9月の会合まで待てば、7月の毎勤統計であるとか、4から6月期のGDPなど、新たなデータがあってですね、消費の強さであるとか賃上げの強さが確認できると思いますが、なぜ今回7月に利上げに踏み切ったのかということを伺えないでしょうか。
また、個人消費に弱さがみられる中でですね、政府は定額減税を行って、更に8月からは電気・ガスの補助金を再開したりとか、また秋には経済対策の策定を検討するということですけども、こうした政府の動きとですね、日銀が金融引き締めに動くというこの双方の動きについてですね、政策の協調、連携というのは取られているのかどうか伺えないでしょうか。
(答)
まず賃金ですけれども、4月、5月の例えば毎月勤労統計等をみますと、先ほど申し上げた点ですけれども、春闘の結果が着実に反映されつつあるというふうに判断致しました。従って、この動きがここ数か月も続いていくであろうという予想が持てたということでございます。
それから、消費でございますが、これも先ほど申し上げましたように、すごい強いというわけではないですけれども、例えば、4月、5月の日銀の消費に関する指数等をみてもプラスに転じていますし、底堅いという判断をしております。そういう中での利上げですけれども、利上げといっても、これも先ほど申し上げましたが、金利の水準あるいは実質金利でみれば、非常に低い水準での少しの調整ということですので、景気に大きなマイナスの影響を与えるということではないというふうに思っております。加えて、政府とはこうした経済・物価情勢に関する基本的な見方について緊密に連絡を取って認識を共有しているというふうに考えています。
(問)
一点は金利の先行きの見通しについてです。日銀は物価見通しに沿えば、中立金利まで政策金利を引き上げていくという方針を示されています。過去30年、日本の政策金利は0.5%を超えたことがないわけですけれども、市場でも壁として意識されてます。総裁の中で0.5%以上の利上げを判断する材料としては、現状と比べて更に追加で必要な材料があるのでしょうか。それとも物価が見通し通りに推移すれば判断できるということになるのでしょうか。
もう一つが将来的なバランスシートについてお伺いします。今回の減額は、特に資産側、金融機関の国債の買入れ余力の見極めを重視したというふうに認識してます。一方で、その残高のゴールがなかなか見えない中で、将来的に資産・負債サイド、どういった点に着目して目指す残高を決めていきますでしょうか。総裁のお考えをお伺いできればと思います。
(答)
前段ですが、これも先ほど申し上げましたように、経済・物価の情勢が私どもの見通しに沿って動いていけば、今回、物価見通し、経済見通しもですけれども、ほとんど変更していないわけですが、引き続き金利を上げていくという考えでおります。その際に0.5%は壁として意識されるかというご質問だったと思いますが、そこは特に意識しておりません。
それからバランスシートの大きさですけれども、国債の保有残高ということで言いますと、約2年後に私どもの試算では、今回の計画によって7から8%程度減少するというふうに考えています。ただ、これはまだおそらく長期的に望ましい水準よりも高い水準であるというふうに思っています。そのうえで長期的に望ましい水準がどの辺かということは、他の中央銀行もそうですけれども、現在、量的緩和の後、皆さん模索状態にありまして、私どもとしても、海外の例も参考にしつつ、だんだんと見極めていきたいというふうに考えています。
(問)
一つ目が、今後の金融政策運営についてですけれども、最近では3月にマイナス金利解除で今回7月に利上げを決定しておりますけれども、年内にもう一段の利上げに踏み切る可能性についてどういうふうに考えてますでしょうか。また、利上げの影響っていうのを一定期間みてみたいというふうな思いはありますでしょうか。
もう一点が、利上げが経済に与える影響ですけれども、こちらは全体でみればプラスだとみていらっしゃるか、経済主体によってはプラスもマイナスもあろうかと思うんですけど、この辺りを整理して教えて頂けますでしょうか。
(答)
年内にもう一段の金利調整があるかどうかというご質問ですけれども、これは繰り返しになりますが、ここから先のデータ次第ということになるかと思います。従って、それが見通し通り、あるいは見通し対比、上振れるというような際には、短期金利の一段の調整があり得るということかと思います。ただ、その前提として、データや情報の確認ということになりますが、その際には、大した利上げではないですが、ここまで上げてきた利上げの影響についても確認しつつということに当然なるかと思います。
そのうえで、おそらく今回の利上げの影響というご質問だと思いますけれども、もちろん利上げを単体で取れば、一部の貸出金利が上昇するというような影響がございますので、そこは総需要にマイナスの影響が、それだけを取ればあるという可能性がありますけれども、背景として賃金や物価が上昇しているという中での動きですので、経済・物価がこれを契機に減速するというふうには必ずしもみていないということと、より長期的な観点から申し上げますと、非常に低い水準にある金利を経済・物価情勢に合わせて少しずつ調整をしておいた方が、先に行って慌てて調整するという事態に追い込まれたときに、ものすごい急激な調整を強いられるというリスクを減らすという意味で、全体としてはプラスになるという考え方もあり得るかなというふうに思っております。
(問)
まず一点目は、今後の政策金利のパスなんですけれども、4月の展望レポート公表のときの会見で日銀の見立て通りに経済が進展した場合の見通し期間の後半に、これ言い換えると多分25年の10月以降というイメージになるかと思うんですけど、政策金利はその中立金利の近辺にあると想定されました。マイナス金利を解除した3月と今回の利上げペースを、この先に延ばしていくと、日銀が4月の展望レポートで示した中立金利の推計幅の下限値とほぼつじつまが合います。今後もそうした金利パスのイメージで利上げを段階的に進められるのか、もしくはこれから多分短プラも上がる可能性があると思うんですけれども、政策金利を少しずつ動かしてその反応をみながら次の行動を考えていくことなのか、今の利上げスタンスについて教えて頂ければと思います。
あともう一点なんですけれども、中央銀行の長期国債の買入れについてなんですが、1年前のこの会見で長期金利の形成を市場に委ねていくと示されて、今回国債買入れの減額を決められました。一連のこの政策の流れをみてると中央銀行の長期国債購入を何か否定してるようにも感じられるんですけれども、総裁ご自身は、政策ツールとしてはどのように位置付けられているのか、伺えればと思います。
(答)
一点目は短期政策金利の到達点ないしそこに行くまでのペースというご質問だと思いますが、到達点に関しては従来から申し上げておりますように、中立金利に関して大幅な不確実性があるという点は認識が変わっておりません。ですから、本当に中立金利の傍まで行ったときに、どの辺で利上げをストップするのかという問題は、大きな課題として依然として残っていると思います。この点については、これまで申し上げてきたことですが、分析を深めるということと同時に、今回は二度目の利上げになりますので、先ほども申し上げましたが、その影響をみつつ、歩きながら考えるということかなと思います。ただ、現状では、その不確実な範囲よりはかなり下にあるという点で、そこの範囲での調整であるということは申し上げられるかなというふうに思います。
それから、長期国債の買入れのようなものを政策ツールとしてどう評価するかというのが、後半のご質問だったと思いますけれども、申し上げるまでもなく、大規模緩和の際にはこれを政策ツールとして使っていたわけですけれども、大規模緩和が必要なくなったという情勢のもと、現状では、短期の金利を調整するということを金融政策の主たる政策手段として位置付けるというスタンスにシフトしたところでございます。
(問)
今回追加利上げと国債の減額を同時に決定されました。基本的には、政策ツールとしては短期金利ということは理解したうえでですけれども、長期金利も短期金利も上昇圧力がかかるという影響についてどのようにお考えかということをお伺いしたいです。
もう一点は、展望レポートの物価見通しについて、円安が基調的な物価に与える影響についてどのように評価されたのか、またそれが今回の利上げの決定においてどの程度考慮されたのかという点も併せてお願いします。
(答)
今回短期金利の引き上げと買いオペ減額の両方を決定したという点ですけれども、まず買いオペ減額の方は大きな枠組みないし話としては6月にアナウンスさせて頂いていましたので、具体的な姿は別として、かなりの程度織り込まれていたのかなというふうには思っております。そのうえで今回、お話ししたような姿での買いオペ減額が例えば長期金利にどれくらいの影響があるのかというご質問だったと思いますけれども、時々申し上げておりますように、私どもが保有する国債の残高が大きいということからくる長期金利を下げるという方向での残高効果ないしストック効果が少し減ることになりますけれども、先ほど申し上げたように残高の減少は2年先でも7から8%程度であるということから、そこからくる金利上昇圧力は大したものではないというふうに考えております。
それから、円安と私どもの[物価]見通しと政策変更の関係という点に関するご質問ですけれども、まず例えば年初来あるいは昨年末来の円安ですけれども、これは消費者物価見通しはほとんど前回と比べて動いていないということですので、[物価]見通しのところに大きな影響を与えたということではないということだと思います。しかし、先ほど来申し上げておりますように[物価]見通しに対して現実が上振れるというリスクとしては、かなり大きなものであるというふうに評価したうえで、そこまで含めて政策的な対応を今回は打ったということでございます。
(問)
二点あるんですけれども、今後オントラックであれば、利上げを継続していくということでありますけれども、これまでは賃上げの広がりですとかサービス価格への労働コスト上昇の転嫁が進んでるかというところがポイントになって政策判断をされてたように思うんですけれども、今後、利上げをしていく過程で特に注目していく経済・物価情勢をみるうえのポイントというのは変わってきたのか、引き続き、これまでの利上げの判断の際、特に重要だった点をみていくということなのか。今後の利上げの判断上、重要になるポイントについて可能な範囲で教えて頂ければと思います。
あと二点目は、展望レポートの概要のところに、為替の物価への影響について、企業の価格設定行動の変化のために以前より影響が高まっているというふうにありますけれども、これは円安の場合は輸入コストの上昇につながるというふうに分かりやすいんですが、逆に円高になった場合も同じことが言えるのか。今足元ではちょっと円安から逆に円高の方向に振れていることからもわかるように、為替、結構大きく動くものだと思いますので、先行きの経済・物価への影響を判断する場合、為替の変動、円安だけでなく、円高についてもどう考えるのか教えてください。
(答)
先行き注目する指標等というご質問ですけれども、これはどういう種類のデータをみていくかという、あるいは情報をみていくかという点については大まかにこれまでと同じというふうに考えています。従いまして、賃金であったり物価、特に賃金の影響が出やすいサービス価格の動向、それからインフレ期待の動向、総需要ないしGDPギャップの動向、更には先ほど来申し上げてますように、金利上昇が経済にどういう影響を与えているかという点について幅広い観点からみていくというようなことかなと思います。
それから為替が物価に影響を与える程度、いわゆるパススルーですけれども、ここまでのインフレあるいは基調的な物価ないしインフレ期待の上昇等で、企業行動が変わって大きくなっている可能性があるというようなことを私ども言っておりますけれども、これが円高になった場合も同じパラメータでいくのかというご質問だと思いますが、そこはちょっと何とも申し上げられないと思います。対称的なのか、それとも足元このパススルーの程度が少し上昇してきているようにみえるわけですけれども、これはインフレ基調が続いてきたあるいは基調的インフレ率が上がってきたからなのかもしれないですし、従って円高になって逆方向にいくというときには、同じなのか、元の少し小さい程度に戻ってしまうのかという点は、面白い問題だと思いますが、ちょっと今直ちに答えないし分析結果が手元にあるというわけではございません。
(問)
先ほど利上げに踏み切った理由の部分でですね、利上げするリスク、それから利上げしないリスクを少しお話し頂けたと思うんですが、その辺りちょっと詳しくお伺いしたいと思います。低い水準の金利を調整しておいた方が、慌てて急激に上げなくて済むというところが、一番今回の追加利上げの判断に影響したのかなと思うんですけれども、一方ですね、景気の腰折れリスクみたいな部分をどう考えられたかというところです。というのも、先週発表されました東京都区部の消費者物価指数をみてみましても、物価の基調がみやすいところの生鮮食品とエネルギーを除く総合の部分は、市場の予想を下回っていますし、サービス価格の部分も鈍化していることが確認されています。そうした中でも、今回利上げをして、日本経済問題ないということなのでしょうか。
あともう一つはですね、植田総裁が書かれた御本の『ゼロ金利との闘い』をみていますと、一番最後のあとがきの最後に書かれていたのが、量の削減に着手してから、比較的速やかにはっきりとプラスの金利に持っていくのが自然と思われる、ということでした。これでみると、量の削減に着手して、もう一段階その後になるべく早めにプラスの金利に持っていくのが自然だというご認識でいらっしゃったと思うんですが、今回は同時ということになりましたので、何か急ぐ必要があったのかどうかというところです。アメリカの利下げが始まる前になど、何か同時に行う理由があったのかどうか、そこも教えてください。
(答)
前半ですけれども、まずこの辺で金利を引き上げておいた方がいいという際の、その理由ですけれども、それはおっしゃったように中長期的な意味で、持続的・安定的な2%の物価目標をちゃんと実現するという観点からは、少し早めに調整をしておいた方がいい、というのが一つ大きな理由になったかと思います。他方でそれは、景気腰折れのリスクを高めてしまうのではないかというご指摘ですけれども、これは、先ほど来申し上げてますように、25bpsに上がったといっても、非常に低い水準ですし、実質金利で考えれば、非常に深いマイナスであります。従って、強いブレーキが景気等にかかる、というふうには考えていないということです。その関連で、東京CPIですけれども、私もちょっとみると、少し弱めかなと思ったんですが、いろいろ分析してみますと、一時的な要因を除いたところでは、必ずしも弱くなく、サービス価格等の着実な上昇がみえている、というふうに判断しています。
それから、後段の私の本のところですが、すいません、20数年前に書いたので、そのときどういうことを考えて、量の削減と金利引き上げの順番付けに関するコメントを書いたのか、ちょっと思い出せないので、またの機会にお願いできればと思います。思い出したら何かお伝えします。
(問)
総裁、二点お願いします。一つはですね、今回の決定会合前に首相や自民党幹事長から、金融政策の正常化を進めていくことを容認するような発言が続きました。今回の追加利上げに関し、こうした発言について意識はされたでしょうか。
もう一つが、今後の利上げ判断に関することです。先ほど、物価見通しに沿って物価が推移していけば、緩和度合いを調整する考えを示されましたが、今回の利上げは、マイナス金利解除から約4か月が経っています。次の利上げ判断に際しても、物価動向の点検期間として、少なくとも、今回と同程度の期間、4か月程度はみたい、というようなお考えはあるでしょうか。
(答)
前半ですが、いろいろな方々から、私どもの政策について事前にコメントを頂いたんですけれども、個別のご発言にコメントさせて頂くのはなし、とさせて頂ければなと思います。私どもはあくまで2%の目標の持続的・安定的な実現という観点から、適切な金融政策のスタンスを今回決定したということでございます。そのうえで申し上げれば、政府とは、日ごろから緊密に情報交換をしておりまして、経済・物価情勢に関する基本的な認識は共有しているというふうに思っています。
それから、次の利上げのタイミングは何か月後か、というご質問だったと思いますけれども、4か月後なのか、もっと短いのか長いのか、というようなことだと思いますが、それは前もって何か月毎にということを決めてパスを思い描いているわけではなくて、先ほど申し上げたような様々な指標を確認しつつ、ある程度まとまって見通し通りであるということが判断できれば、そこで次の判断をしていく、ということになるかと思います。それがどういうタイミングになるということは、事前にはなかなか申し上げにくいというふうに思います。
(問)
二点お願い致します。先ほど見通しには大きな影響はないとおっしゃっていましたけれども、円安によって物価を想定以上に押し上げるリスクが高まったということも利上げのトリガーになったという理解でよいでしょうか。その点、少し詳しく教えて頂きたいです。
(答)
円安ですか。
(問)
はい、円安によって物価が想定以上に押し上げられるリスクが高まったということ。
二点目がですね、金利のある世界は多くの人にも馴染みがなく、住宅ローンの支払いが増えるなど若い世代にとっては不安も多いと思います。景気を冷やす懸念はないのか、はたまた賃上げなども進む想定なのか、低金利慣れした日本に馴染むのかなど、総裁のお考えをですね、どのような生活になるかということを教えて頂けますでしょうか。
(答)
円安のまず物価への影響ですけれども、これは先ほど申し上げましたように、私どもの中心的な見通しを動かすというかたちでは見通しに織り込んでないわけですけれども、それが動くかもしれないという情報にですね、重要なリスクとして認識して、政策判断の一つの理由としたということでございます。
それから、住宅ローン金利周辺に関するご質問ですけれども、確かに、今回利上げを致しますと、短期プライムレートが場合によっては少し動いて、それが変動金利型の住宅ローンの金利に跳ねるということも考えられます。ただし、これは一方で、賃金上昇が続くという見通しの中でこういう利上げの判断になっているということと、変動金利型住宅ローンについて、いわゆる5年ルールのようなものがありまして、金利自体が上がっても[元]利払い額は5年間据え置かれるというものが多いというふうに認識しています。そうしますと、5年間賃金が先に上がっていって、その後、利払い額が上がるということで負担もかなり大きく軽減されるというふうに認識しています。
(問)
利上げのタイミングに関して一問お伺い致します。今後、9月以降、次回以降の決定会合では、例えばですね、9月に自民党の総裁選があったり、11月にはアメリカの大統領選があったり、国内・国際情勢でもある種の不確実性というものが出てくるような段階かと思います。総裁、先ほど2%物価目標達成の観点から、少し早めに金利の調節をしておいた方が良いというお話頂きましたけれども、いわゆるこの国内外の情勢リスクの高まりの可能性というものは、7月、今回利上げ判断をするに当たってどの程度影響したのでしょうか。
(答)
選挙と政治的な動きの影響ですけれども、これは常々申し上げてますように、それによって政策が変わる等の経済に大きな影響があるということが起これば別ですけれども、そうでない限り政治的な動きとは関わりなく、適宜適切に金融政策を決定していくということです。
(問)
先ほど来からの質問と重なってしまうかもしれないんですけれども、総裁の心象風景として、今後の利上げのタイミングについて、データ次第ということであるということは、今年中にもう一度利上げがあることも総裁としては排除されていないという理解でよろしいんでしょうか。
(答)
それはデータが見通し通りに、先ほど来お話ししていることの繰り返しですけれども、出てきて、それがある程度、蓄積になれば、当然、次のステップに行くということになるかと思いますけれども。
(問)
今後の経済・物価の変動とか見通しの変更に関しては政策金利で対応されるということですけれども、足元、今日利上げしたとしてもまだ0.25[%]で、アメリカのように5%、4%の水準がない中でですね、今後、海外経済のショック、海外経済の景気循環等によって日本経済に下振れが生じたような場合に、0.25[%]だとなかなか対応する難しい局面も来るかと思うんですけども、そうなってきたときには結局、短期金利を中心にされるのかそれとも、結局、長期金利を下げることによって、周りの金利を下げるようなかたちで景気を支えていくのか、その辺のところを伺いたいんですけど、よろしくお願い致します。
(答)
経済・物価見通しがはっきりと下振れ方向に行ったときの政策対応ですけれども、当然、そのときどういう水準に短期金利があるか分からないですけれども、まず考えることは、短期金利を下げることが適当かどうかということだと思います。それでもどうしても足りないっていう場合には、非伝統的な金融政策手段を再び利用するということも排除するものではありません。
(問)
先ほど来、同種の質問が出ておりますけれども、今回の利上げの結果ですね、家計の部門について考えますと、これは正味プラスなのかマイナスなのか、これに関する総裁の考えをお聞かせください。住宅ローン金利が上がるですとか普通預金の金利も上がっていくとか、こうしたものを総合しますとどういうことなのかという点について、総裁のお考えをお教えくださいますでしょうか。
(答)
借り手としての家計は、金利が上がるとすれば、多少は、固定金利か変動金利か、いつ借り換えるかとかいろんなことに依存しますけれども、多少のマイナスを被るということでしょうが、貸し手としての家計、つまり預金者としての家計は、預金金利がある程度、若干でも上がることからプラスを受けるということですし、基本的にネットでは貸し手であるというのが家計の特徴かと思います。ただ、それは両方を比較する際には、貸出金利と預金金利がどれくらい政策金利ないし市場金利に連動するかというポイントがあるかと思います。そのうえで全体が、先ほども申し上げましたように、賃金等が上がっていく中で起こっている動きであるということも加味して、家計部門への全体的な影響を考えるということになるかと思いますけれども。
(問)
今日の追加の利上げの背景を伺っていても、価格転嫁の広がりですとか、賃上げの広がりの出てきているというふうに、順調に出てきてるっていうふうに捉えられていて、これを聞いてるとデフレ時代というものがですね、かなり過去のものにも感じてくるんですが、総裁としてこの今の日本経済の変化、いろいろ感じられてると思うんですけど、この日本経済がデフレから脱却した、もしくはその脱却がかなり近いというか、どういうご認識でいらっしゃるか教えてください。
(答)
デフレ経済という言葉には何か特別な思いが込められることがありますので、もう少し私どもの普段の表現で申し上げれば、いわゆる、そうですね基調的な物価上昇率は、だいぶ前はゼロ近辺であったのが、はっきりとゼロからは離陸してプラスの領域に入って、むしろ2%へ向かって上昇するという動きを続けているということだと思いますし、近づいてきている、ただもう少し距離がある、ということであるかと思いますけれども。
(問)
中小企業への影響っていうことについてお伺いしたいんですけれども、この先の物価の見通しがオントラックで進んでいく場合は更なる追加利上げもあるっていうことでしたけども、中小企業、中には防衛的な賃上げっていうことを強いられてる企業も多かったりとか、ゼロゼロ融資の返済に追われている企業、なかなかこう苦しい企業が多い中で、この先追加的な利上げに耐えられるのかどうか、あるいは耐えていけない企業はどういうふうになっていくと想定されるのか、その辺のお考えをお聞かせください。
(答)
ひとくちに中小企業といっても、すごいばらつきがあって、場合によっては大企業よりも元気な中小企業もあるということだと思います。賃金の引き上げ率に関しても、ヒアリング等によりますと、平均的には去年よりもしっかりとした動きになっているということでありますが、中にはついてこれない零細企業もあるということだと思います。私どもはこのばらつきについては注意してモニターしていきたいと思いますし、ついていけないところの企業の労働者たちが、より生産性が高い他の企業にうまく移れるような様々な仕組みや努力が続いていくかどうかという点についてもモニターしていきたいと思います。
(問)
今回の利上げの判断、また繰り返しになってしまうんですけども、物価・経済の見通しがですね、オントラックにあるということを常々おっしゃっているんですけども、とはいえ基調的物価上昇率にですね、これだけの一連の今一段落したとはいえ、為替円安が影響したということもおっしゃっていて、端的に言って一連のこの歴史的な円安というのは今回の利上げにとってですね、最も大きな判断材料の一つだったと言えるんでしょうか。
(答)
今回の利上げということで申し上げれば、主な理由としては、経済・物価データがオントラックであったということであります。それに加えて、足元の円安が物価に上振れリスクを発生させているということもあって、政策変更に至ったということでございます。
(問)
では、為替が今回の利上げについて判断材料の最大の要因だったというわけではないということでいいんでしょうか。
(答)
繰り返しですが、必ずしも最大の要因ではなかったというふうに申し上げました。
(問)
この1か月ぐらいの間にですね、閣僚とか与党首脳とか財界トップから相次いでその利上げを催促するような発言が出てます。これは物価の番人としてものすごく恥ずべきことではないかと思うんですけども、それとここまで超円安が進んで物価が上がっているのはある意味日銀に相当程度責任があるのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
(答)
政府要人のご発言については先ほど申し上げました通り、そういう発言があったということは承知致しておりますが、個別の発言にコメントすることは差し控えさせて頂ければなというふうに思います。私どもは2%目標を持続的・安定的に達成するという観点から政策を決定しております。そのうえでデータをみますと、消費者物価総合ないし除く生鮮が2%を超えている期間も既に2年をかなり大幅に超えているということで、このやや長期化している高いインフレ率が人々に大きな負担を強いているということは申し訳なく思っております。ただ、そこは私どもの判断は、繰り返し申し上げてきていますように、持続的・安定的に2%を達成するためには、基調的なインフレ率が2[%]に到達していかないといけない。そこはまだ2%よりは下にあるという判断のもとで広い意味での緩和基調を維持してきているというところでございます。ここに、難しい点ではありますが、ご理解を頂ければなというふうに考えております。
(問)
情報発信についてお伺いします。決定会合開催中の報道というのが常態化して、また今回13時手前に日銀のウェブサイトもアクセスできないような事態も発生しています。海外からの注目度も含めて非常に高い中で、発信のあり方の改善としては、例えばブラック[アウト]期間よりもっと前にボードメンバーの意見の表明の機会を増やすとか、また決定の公表については時間を決めるなど、何か改善の必要があるかと思うんですが、その点どうお考えでしょうか。
(答)
現状のルールの中で、私どもの情報管理をきちんとしているという認識でございます。時々出る報道については、観測報道であるというふうに理解していますが、より良いやり方があるかどうか、引き続き検討してまいりたいと思います。
(問)
先ほど、今回の利上げに関して、中立金利の不確実な範囲よりもかなり下の方にあるなかでの調整というふうにおっしゃられましたけれども、では、どの程度ですね、利上げすれば不確実な領域に入るのか、ということなんですが、例えば、0.5%を超えれば意識する必要があるのか、それともあと数回はですね、そういった領域に入らないので大丈夫そうなのか、その辺の総裁のイメージとして持たれていることがあれば、お願い致します。
(答)
あまり具体的なことは申し上げにくいですが、以前から申し上げてるような中立金利に関するレンジを前提としますと、まだ暫くそういうところには入ってこないというふうには認識しております。
(問)
一点ご質問で政策金利の今後の推移について伺いたいんですけれども、総裁は以前展望レポートの見通し期間の後半に、政策金利がこの中立金利近辺になっているんではないかというお話をされてました。今回改めて例えば追加利上げ、それからインフレリスク、物価のですね上昇リスク、あるいは展望レポート改定されたものも含めて、総裁のこの政策金利のパス、従前と変更ないかどうかお聞かせください。
(答)
先ほど申し上げたんですが、行き着く先の、それこそ中立金利について、ものすごい絞り切れてるという状況ではないので、はっきりとしたパスを将来まで引いたうえで今この辺を走ってるというのではなく、走りながら考えているというところかなと思います。ただ、先ほど直前のご質問にあるようなところを今の状況で走ってるということは言えるかと思います。
(問)
先ほどの中小企業の関連についてなんですけれども、賃上げについてこれないところの労働者がより生産性の高い他の企業にうまく移れるような仕組みについてもモニターしていきたいということをおっしゃっていましたが、そうすると労働者が移ってしまった企業はどうなってしまうのか。端的にいえば、利上げについていけない中小企業っていうのがどうしても発生してくると思うんですけれども、ここマクロとミクロの違いで難しいところだと思うんですけれども、この辺の中小企業への影響、利上げの影響っていうのはどのようにお考えかお聞かせ頂けますでしょうか。
(答)
難しい問題ですけれども、利上げあるいは賃金上昇についていけない中小企業が、一方でデフレ圧力を発生させ、あるいはうまく生産性の高いところに移れれば経済全体の生産性の向上につながる。どちらの側面が強く出てるかっていうことは両方の可能性があるということを認識しつつ、きちんと点検していきたいと思います。
(問)
今回ですね、見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げる方針を示されました。一方で、米国の方はですね、近々利下げが見込まれる中ですね、この関係性で為替とかの変動も見込まれると思うんですけれども、短期、中期でこの関係性がですね、どのような影響が物価の基調に与えるか、あと政策運営上どういった点に留意されていくのか教えてください。
(答)
これはアメリカのひょっとしたらあり得るかもしれない利下げが、どういうアメリカ経済の環境の推移とともに実現していくのかということ次第かと思います。以前も申し上げたと思いますが、うまくソフトランディングしながら、少しずつ利下げになっていくということであれば、経済実態はそれほど悪くならない中での利下げということで、利下げが円高につながるかもしれませんが、一方でアメリカ経済が強いということが、何がしかのサポートを日本経済にも与えるだろうというような観点もあり得ると思いますので、そうした総合的な判断をしながら、アメリカの、例えば利下げの影響を、日本への影響および政策への影響を考えていくということになると思います。
(問)
端的にお聞きしますが、今回、金利の正常化を更に進め、かつ量的緩和の正常化にも着手されるということで、異次元緩和の正常化に残るピースは質的緩和のリスクアセットの部分だと思うんですが、なかんずく、保有ETFの扱いが関心を集めるところですが、総裁はかねて時間をかけて検討すると言っておられるわけですけども、この質的緩和の正常化についての現在のお考えをお聞かせください。
(答)
これは短いお答えになってしまいますが、申し訳ないんですがもう少しお時間を頂きたいと思っております。
(問)
追加利上げを行ってからの更なる利上げとなると、長らく日本経済が経験していないことだと思います。次の追加利上げこそが正念場だという指摘もありますが、今回の金利引き上げと比較して、総裁自身、この後の利上げの難しさ、日本経済への影響をどうお考えか教えてください。
(答)
今のところ、先ほど来何回か出ているご質問に対するお答えと重なりますが、金利水準、名目でみても実質でみても、非常に低い中での調整というふうに考えております。
(問)
今回の利上げの判断についてたくさん質問も出て同じような回答というか質問もいっぱい出て大変恐縮なんですけれども、なぜ、今利上げを判断したのかというところをもう少し分かりやすく教えて頂きたくてですね、今利上げを判断しなければ経済にどういうリスクにさらされるという、先ほどからオントラックっていうふうにおっしゃってますけれども、オントラックでなぜ利上げをしなければならないのかと、今回利上げをしなければ、やはり物価が2%よりも高い水準に上振れていってしまうということを重視されて、今回利上げの判断をしたということなのか、その辺りの認識をちょっと改めて教えて頂けますでしょうか。
(答)
まず一つには、新年度入り、別の表現で申し上げれば4月以降のデータがある程度まとまって評価できる時点に達したということかなと思います。それからもう一つは、それでも焦って上げなくてもいいんじゃないかというご質問だと思いますけれども、それに対しては、一点としては先ほど来申し上げてますように、少しずつでも早めに調整しておいた方が後は楽になるという話と、それからもう一つ別のことを申し上げれば、先ほども出てましたけれども、2%を超えるインフレはかなりもう長く続いている。その中で利上げの一つの理由として申し上げたような上振れリスクも認識しているということですので、2%から更に上にいってしまうリスクもあるということも考えると、この辺でということかなと思った次第でございます。
以上