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総裁記者会見 2024年9月20日(金)午後3時30分から約75分

2024年9月24日
日本銀行

(問)
本日の金融政策決定会合の内容について、植田総裁、ご説明お願いします。

(答)
今日の会合では、無担保コールレート・オーバーナイト物を0.25%程度で推移するよう促す、という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。

次に経済・物価動向についてご説明します。わが国の景気の現状ですが、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断しました。先行きについては、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられます。物価ですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきていますが、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足元は2%台後半となっています。先行きは、これまでの輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、来年度にかけては、政府による施策の反動等が前年比を押し上げる方向に作用すると考えられます。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想されます。展望レポートの見通し期間後半には、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えています。リスク要因をみますと、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高く、金融・為替市場の動向や、そのわが国経済・物価への影響を十分注視する必要があります。

最後に、金融政策運営についてですが、政策運営は、先行きの経済・物価・金融情勢次第ですが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえますと、以上のような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、米国をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、金融資本市場も引き続き不安定な状況にあります。当面はこれらの動向をきわめて高い緊張感をもって注視し、わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を、しっかりと見極めていく考えです。日本銀行は、2%の物価安定目標のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく方針です。

(問)
まず一問目なんですが、今、言及されました金融資本市場の置かれた状況について伺います。8月上旬にですね、株式市場が乱高下しましたけども、内田副総裁もその際に金融資本市場が不安定な状況では利上げすることはないと述べまして、今、総裁も引き続き不安定な状況にありますという認識示されましたけども、これはどういったところを背景にそういうふうにご認識されているのかということの確認と、また、それが落ち着きを取り戻したと判断できる条件として注目されるポイントは何でしょうか。

(答)
若干先ほどの繰り返しになりますが、金融資本市場では、アメリカをはじめとする海外経済の先行きを巡る不透明感が意識されていまして、引き続き不安定な状況にあると認識しています。当面は、きわめて高い緊張感を持って注視し、わが国経済の見通しやリスク、見通し実現の確度への影響を、しっかり見極めていく必要があると思います。政策判断に当たっては、内外の金融資本市場の動きそのものだけではなくて、その変動の背後にある、申し上げましたような米国をはじめとする海外経済の状況などについて、丁寧に確認していくことが重要であると考えています。この点、最近の為替動向も踏まえますと、年初以降の為替円安に伴う輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクは相応に減少しているとみています。従って、政策判断に当たって、先ほど来申し上げてきたような点を確認していく時間的な余裕はあると考えています。

(問)
質問の二問目なんですけれども、安定的な物価上昇を支えるうえで重要になるのが賃金の先行きだと思いますけども、当面どのような推移を辿っていかれると想定していらっしゃるでしょうか。来年の経済情勢がみえてくる年末にかけてですね、来年の春闘とか賃上げに向けた企業の姿勢も明らかになってくると思われます。来春の春闘に向けて、企業が更なる賃上げに踏み切れるのか、そういった経済環境がしっかり整っていくのか、見通しをお聞かせください。

(答)
ご指摘頂いたように、物価安定目標の持続的・安定的な実現のためには、それと整合的なかたちで賃金が上昇を続ける必要があります。最近の名目賃金の動きをみますと、春闘の結果が反映されるかたちで、所定内給与が伸び率を高めているほか、昨年の好業績を受けて、夏季のボーナスもしっかりと増加しています。先行きについても、賃金の上昇が継続していくとみています。労働市場をみると、人口動態も反映して、追加的な労働供給の余地は限られてきていまして、人手不足感は高まっています。マクロでみた企業収益が好調であることも踏まえますと、来年の春季労使交渉でもしっかりとした賃上げが続くことが期待できると考えています。

ただし、今後、海外経済の動向などが企業収益や企業行動に影響を及ぼすことがないか、丁寧に点検していきたいと思っています。また、賃上げの動きに広がりがみられてはいますが、中小企業の中には、直面する環境の厳しさを指摘する声も少なくないことも認識しておく必要があると思っています。持続的な賃上げが幅広い先で実現していくか、引き続き、丁寧に点検してまいりたいと思っています。

(問)
まず為替についてなんですけども、先ほど円安が修正されたことで上振れリスクが減ってきたというところですけども、日銀のシナリオ自体への影響を、つまり下押しのリスクですね、その辺りは影響はないのかどうか、今後、アメリカが利下げを進めていけば更なる円高圧力になってくると思うんですけども、それが日銀のシナリオに対してどのような影響を与えるとお考えかという点をお願いします。

もう一点がですね、先ほど金融市場動向を注視していくというところと、円安が修正されたので、利上げについての判断をする時間的な余裕が出てくるというお話ありました。そうすると年内に利上げをしていくという可能性っていうのは低くなってきたのか、それとも全く排除されないのか、その辺りもお願いします。

(答)
ちょっと一般的なお答えになってしまうかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、アメリカをはじめとする海外経済の先行きを巡る不透明感、これが昨今の金融資本市場の動きの背後にあると考えていますので、その全体を含めて、丁寧に分析して、われわれの見通しに対する影響を確認していきたいというふうに思っています。

その確認にどれくらいの時間がかかるかということですが、これは特定のタイムラインというか、スケジュール感を持って、ここまでに確認するというような予断は持っていません。もう少し申し上げれば、アメリカであれば、ソフトランディング的なシナリオに近い姿が実現していくのか、もう少し厳しめの調整になっていくのか、これを丁寧に見極めていきたいというふうに考えています。

(問)
FRBが0.5%の利下げをしました。アメリカの経済の軟着陸の可能性を高めるために動いたという説明ですけれども、総裁の今の米国経済に対する認識を伺えればと思います。また米国経済が軟着陸するのであれば、アメリカが利下げに動くこと自体は、今後、日銀が見通し期間後半にかけて中立金利に引き上げていくというシナリオに影響を与えないという理解でよろしいでしょうかというのが一点目です。

もう一点が先行きの物価認識について伺いたいと思います。為替による上振れリスクは7月時点と比べて抑えられていると思いますけれども、個人消費を今回判断を上方修正したことないしまた価格転嫁の継続などを踏まえると、一時的な上振れリスクというよりは基調的な物価の上振れが生じる可能性が上がってきていると言えるのではないでしょうか。そこの総裁のご認識と今後どう政策対応していくかを伺えたらと思います。

(答)
まずアメリカですけれども、大まかに申し上げて、判断が難しい部分があるかなと思います。というのは、消費を中心に支出面はかなり好調が持続している。これに対して、労働市場のデータをみますとやや弱めというか、これまでの超過需要が非常に強いという状態から、需給均衡かあるいは失業率はちょっと上昇するような状況になってきて、その間に若干のギャップがある中で、インフレ率ははっきりと低下を続けているということだと思います。これをまとめて、ソフトランディングになっていくのかあるいはもうちょっと減速が強まるのか、その中でFRBが減速傾向を食い止めるためにどれくらいの利下げをしていくのか、この辺の全体像はまだちょっと、先ほど来申し上げておりますように、みえていないっていうところですので注意してみていきたいと思いますし、そのわれわれの見通しに対する影響を引き続き、丁寧に確認していきたいというところです。

それから二点目は日本の消費に関するご質問だったと思いますが、今回、若干判断を上方修正していますけれども、データ的には私ども消費活動指数が第2四半期は増加に転じた、それから7月も増加が続いている、更にその後の動きについてもヒアリングや高頻度のデータでは、緩やかな増加基調が続いているということがまず一点です。それから猛暑とか台風と自然災害でちょっといろいろ揺れていますけれども、そういうことがありますが、根っこのところで賃金が着実に上昇してきて所得環境の改善が続いている。こういう辺りを総合して少し判断を引き上げたということです。そのうえでそれが基調的物価上昇の判断にどう影響するかということですが、この消費のデータも含めまして、7月に申し上げたことと若干重なりますが、その後のデータをみてもわれわれの見通し通りに経済は足元動いてきているというふうに、日本経済ですね、みています。これは若干なりとも、基調的物価上昇率に対する判断を上げてもいいような材料ですが、他方で、先ほど来申し上げているような海外経済、特に米国経済の動きが先行きに関して若干不透明性を高めている。それが何か相打ちのようなかたちに足元なっているというふうな認識をしております。

(問)
今しがた経済・物価はオントラックと、そういうふうなお話をされたわけですけども、今回は政策を維持されまして、日銀としてはオントラックであれば、利上げを進めていくと、そういう方針を示されておられまして、オントラックが続く中ではですね、例えば半年に1回とか、3、4会合に一度はですね、そういった方針を示されている以上、コミュニケーション上もですね、利上げが必要になるという考え方もあると思うんですけども、このオントラックを前提とした政策パスに関して総裁のご見解を教えてくださいというのが一点です。

もう一点が中立金利についてなんですが、田村審議委員が最低でも1%程度というふうに見方を示されました。日銀は自然利子率につきまして、各手法に基づいた推計を公表しておられます。それからも中立金利は少なくとも1%という見立てができると思うのですが、総裁はそうした見方について違和感があるのかどうか、その辺の総裁のお考えを教えてください。

(答)
データ等がオントラック、見通し通りに推移していけば、基本的な姿としては少しずつ利上げをしていくという考え方には変わりはありません。ただ、どれくらい見通し通りの動きが続けば、次の利上げの判断に至るのかということについて、決まったスケジュール感とか決まったペース感があるというわけではなくて、ある程度まとまった情報が得られたと判断できたところで、都度、次のステップに移るということにならざるを得ないのかなと思っています。

それと関連して、後段のご質問ですけれども、中立金利についてですが、これはこの記者会見でも何回か私の考え方をお話ししていますが、今のところお話ししてきましたように、中立金利の推計はかなり幅のあるもので、その中のどこかというもっともらしいところ、あるいはもっともらしい範囲にそれを狭めるというところにはまだ残念ながら至っていないというふうに申し上げざるを得ないかなと思います。様々な分析を引き続き積み重ねるとともに、これまで、今年は2回利上げをしていますので、それの経済への影響をみつつ、今後徐々に中立金利に関する考え方を深めていくというまだ段階ですと申し上げるしかないかなと思います。

(問)
ちょっと先ほどのお話と重なっちゃうかもしれないんですけども、6月、7月と賃金が順調に上がって消費が緩やかに増加している中で、価格転嫁も引き続き続いてるというようにみれるんですけども、サービス価格の方もしっかりしていると。しかしその中で、10月の価格改定に向けてサービスのところは事前にはなかなかつかめないということですけれども、やはり最近の企業の価格転嫁、賃上げみてると、10月の価格改定それなりにその蓋然性が高まってるというか期待してもいいような感じもするんですけども、そこから先行きのその来年の賃上げとか「第二の力」の強さのところを現状でどういうふうにみてるかということをお伺いしたいのが一点。

もう一点は、民間企業で人手不足に悩んでますけども、日銀の中でも中堅の人が結構民間のシンクタンクとか金融機関に転職してる人が多いようなんですけども、日銀がなかなか賃金を決めるっていうのは人事院が決めるんで、日銀では賃金のところは決められないと思うんですけど、やはりその中堅の方々が流出していることに関しての対応策というか、もしありましたらお伺いしたいんですけど、よろしくお願いします。

(答)
まず前半は、今後の経済データに関する注目点のようなご質問だと思いますけれども、おっしゃるように10月を中心とするサービス価格の、そこが一つの改定時期に多くの企業で当たりますので、そこで好調な賃金動向がどれくらい反映されるかというのは、強い関心を持っている一つの点です。それに加えまして、もう少し先、同じくらいの時期ですが、もう一つ最低賃金が上がり始めますので、それのパート賃金等を通じた賃金への影響にも関心がありますし、また、おっしゃったように、来年の春闘に向けてどういう動きが始まるのかという点も注意深くみていきたいと思っています。

それから、後段の日銀の若手中堅職員が辞めていくケースが増えているようだけれども、というお話ですけれども、それは当然私どもも認識していまして、労働市場全体の流動性の向上という意味ではある種いいことかもしれませんが、私どもにとっては痛い話で、給与についてできることはなかなか限りがあるということですので、働きがいを向上させるような仕組みとか努力か何かできないかということは、引き続き考えていきたいと思っております。

(問)
前回の7月の会見では、総裁の発言内容ですね、市場がサプライズと受け止めたこともあって、8月頭のマーケットが大きく動く一つのきっかけになったんではないかとの指摘も出ています。日銀によるこの市場とのコミュニケーションについて、総裁は課題があるとお考えでしょうか。もし何かお考えがあるようでしたら、課題をどのように改善していったらよいとお考えなのか、具体的に教えて頂きたいです。

そしてもう一点が4月の総裁会見時には160円手前まで為替円安が進みましたけれども、今日は140円台前半、142円ほどの水準で推移しています。だいぶこの円安が修正されたことについては、どのように受け止められているかもお願い致します。

(答)
コミュニケーションの方ですけれども、おそらく3月の記者会見から申し上げていると思いますけれども、基調的物価上昇率が上昇するとか、あるいはわれわれの物価見通しの確度が上がるということがあれば、適宜、金融緩和の度合いを調整していくということは繰り返し申し上げてきたところですし、7月の政策変更もそれに沿った線の動きというふうに私どもは考えていました。そのうえで、7月の会合後の市場の乱高下の一因として、やはり私どもの考え方が十分伝わっていなかったのではないかと、市場等に、という批判があることは承知しています。引き続き、私どもの経済・物価情勢に関する認識と、それに基づいてどういうふうに政策運営をしていくかという考え方を丁寧に説明していくということに心掛けたいと思っております。

それから、7月会合後の為替レート変動についてですけれども、為替の水準等について、具体的なコメントをすることは避けたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、7月時点で指摘していました輸入物価の上昇を通じる物価見通しの上振れリスク、これはこの間の動きによって相応に低下したというふうに考えています。

(問)
先ほどの質問の関連なんですけども、市場とのコミュニケーションについて二点伺います。現状の政策金利の見通しについて、中立金利の推計が絞り切れないとおっしゃられてはいますが、日銀が展望レポートですとか、政策委員の発言で示すイメージと、市場の予想との乖離が目立つようにみえます。例えば、足元の長期金利をとったとしても1%を現状下回っています。今後こうした見通しの開きは、ゆっくりと縮まるとみていらっしゃるのか、もしくは、場合によってはコミュニケーションによってその溝を埋めていくお考えなのか。逆にこのいずれでもない場合は、8月のような市場の混乱をまた招くリスクがあると思うんですけれども、今のご認識を伺えればと思います。

関連して、多角的レビューで今検証されているイールドカーブ・コントロールについて伺います。設計上、政策を手じまう局面で、市場をある意味出し抜かなければいけない、そうした対応を重ねることで、中銀トップの発言が信じられなくなったりですとか、言葉を軽くしてしまったというそういう副作用をどうとらえてらっしゃるのか。前総裁から引き継がれた政策ですけれども、市場との認識齟齬が結構目立つようにもみえるんですが、改めてお考えを伺えればと思います。

(答)
前段は、先行きの物価や、政策金利のパスについての、具体的な点は別にしても、私どもと市場との間にあるかもしれないギャップということだと思いますが、一般論としては先ほども申し上げましたように、私どもの政策姿勢や経済に対する見方を丁寧に説明していくということしかないのかなと思いますが、そのうえで一つあるとしますと、長い間ゼロ近辺のインフレ、ゼロないしマイナス金利が続いてきたところから、プラスの領域、もちろん3月にマイナスから、若干のプラスに移したわけですけれども、もう少し本格的にプラスに移るようなところでは、市場の期待を変えていく際になかなか普段以上のいろんな努力をしていかないといけないのかな、という点は改めて認識しています。例えば、今年のジャクソンホールの会議での論文の一つにあったんですが、2021年から22年にかけて、インフレが高進する中で、Fedは22年に利上げに踏み切るわけですが、踏み切る前からインフレがかなり高くて、利上げの可能性が高かったにもかかわらず、マーケットがそれを織り込み始めたのは、利上げが始まってからであるという論文があったかと思います。そういうような難しさも認識しつつ、丁寧な発信に努めていきたいと思いますし、私どもの当面の政策運営に大きく影響するのは、抽象的ないつも申し上げてる表現ですが、物価見通しの確度が目に見えて高まったかどうかという点だと思いますが、こういう点に関する情報発信をもう少し丁寧に、場合によっては少し頻繁にできると良いかなと考えたりしています。

それからすいません、後半のYCCに関するご質問がちょっとよく理解できなかったんですが。

(問)
イールドカーブ・コントロールを解除する過程ですけれども、総裁もサプライズにならざるを得ない、そのような近い表現でおっしゃってたと思うんですけれども、市場の見立て、はっきり言ってしまうと、投機筋が動いてしまって結果的にマーケットが混乱してしまうといいますか、ちょっと表現といいますか発言ですとかに、かなり慎重を期しつつ、場合によっては、出し抜かなければいけないっていう戦略をとらざるを得ないっていうところだと思うんですけれども、そういった中でそういうトップの発言ですとかが信じられなくなってしまったり、もしくは関連しますけど、中銀のトップの言葉が軽くなってしまった、そういうご認識は、現時点であるのかないのか、っていうところも含めて伺えればと思います。

(答)
YCCに関しては、私どもが考えていたことは、こういうふうに申し上げたことがあったかどうか、ちゃんと記憶してないですけれども、仮にYCCをやめちゃったとしますね、やってる時点で。そうしたら市場金利がどれくらいになるかっていう金利の姿を思い浮かべてみます。それが大きく上昇する前に、YCCの上限をフレキシブルにする、あるいは少し引き上げるということによって混乱が避けられるのではないか、という意図を持って、去年は2回調整をしたというふうに記憶しています。

(問)
総裁、先ほど金融市場についてはですね、引き続き不安定であって、その動向については高い緊張感を持って注視するということですけども、この金融市場の乱高下がですね、日銀の経済・物価に与えた影響というか、例えば逆資産効果でですね、個人消費を押し下げたりとか経営者の心理を冷え込ませて設備投資を下押しするような、こういった実体経済のリスクというのはあったのかないのか、またはファンダメンタルズは現時点で大きく変わってないのかっていうのをまず一点伺えないでしょうか。

あともう一つ、中立金利についてですが、幅があって不確実性があるということではあるんですけども、今後、日銀が今0.25%短期金利の誘導目標ですけど、これを0.5%、更に0.75%と引き上げていった場合、どの辺りでその不確実な中でもその幅の下限、それを意識して政策運営をしていくことになるのか、その辺の総裁のお考えを伺えないでしょうか。

(答)
まず8月初めの市場の混乱の実体経済への影響ということですけれども、株価についてみますと、大まかには一時的な動きだったということもありまして、消費や設備投資への影響あるいは金融システムへの影響は小さかった、小さいあるいは無視できる程度のものだったというふうに今のところは判断しています。

それから、今後の金利水準の評価ですけれども、もう少し上がっていった場合に中立金利に関する見方の下限に近づいていくのか、あるいは近づいてきたときにどういうことを考えるのかというご質問だと思いますが、特定の水準を申し上げることは控えさせて頂きますが、中立金利の幅の中に入る可能性が高くなっていけばいくほどより注意深く、必ずしもゆっくりやるということではないですけれども、利上げの及ぼす影響を見極めつつやっていくということに当然なるのかなというふうに思います。

(問)
二問お願い致します。一つ目は物価についての評価を伺えればと思うんですが、今日CPIも出まして2.8%っていうことで、米とかチョコレートとかって、日銀が重視する部分とは違うかもしれないんですが、足元の物価はちょっと想定より少し上振れしてるんじゃないかと思うんですが、それをどうお考えかっていうのと、先行きの物価の見通しも改めて伺わせて頂ければと思います。

もう一点目は、次の利上げ判断するに当たって、決まったスケジュールとかペースとかはないというふうに先ほどおっしゃられたんですけれども、そのうえで都度判断していくうえで、特に重視したいデータだとか指標とか、その辺りを伺わせて頂ければと思います。

(答)
まず今朝方のCPI等からみえる物価の姿ですけれども、特に今朝のデータで申し上げれば、少し前にみていたより強めであるということは、そうかなと思います。その要因として、指摘頂いたように、米の値段とか、それから一部の輸入財のところが、7月までの円安の効果もあって、値上がりしているというようなところで、こういう部分については、全部ではないですけれども、かなりのところ、今後、消えていくというふうにみていますし、その他の一時的な要因の中にも消えていくようなものがまだあって、これはインフレ率を少し押し下げる方向に働くとみています。他方で、今朝の物価の中、特にサービス価格の一部には、引き続き賃金の上昇を転嫁するという動き、物価・賃金の好循環に沿った動きですが、これもみられていまして、こちらは引き続きインフレ率に上方の圧力をかけるというふうにみています。こういうのを総合して先行きの姿が決まってきますし、そこに先ほど来申し上げてますような、海外発の様々な不確実性が、金融資本市場を通しての影響も加わって、更に追加的な要因として乗ってくるっていうのが、今後の見通しを決める際の大きな構成要素といいますか考えるポイントかなと思います。

その場合にもう少しデータとの関連で何を先行きみていくのかという点については、先ほどご質問がありましたように、賃金、順調に上昇してきているんですが、これが秋以降、動きが続いていくかあるいは最低賃金の引き上げの影響が出てくるのかどうか、それから引き続きサービス価格への転嫁が続いていくのかどうか、それから来年の春闘に向けての動き、それからサービス価格が上がっていくかどうかという点を決める一つの大きな要因として、消費がある程度堅調であるということが必要かと思いますので、消費の今後の姿にも強い関心を持っています。

(問)
一点目は自民党総裁選の影響について伺います。一部の候補からは討論会などで、今は利上げするべきではないとの意見が出ています。これについての総裁の受け止めと、今後新たな政権が誕生するわけですが、金融政策への影響ですとか経済運営についてどのように連携していくかのお考えを教えてください。

もう一点すいません。今回の会見で出てたら申しわけないんですけれども、先ほど冒頭で円安の修正によってですね、上振れのリスクが減って、物価のですね、時間的な余裕があるというふうにおっしゃってましたけれども、円高方向に行ったことによって物価の下振れリスクについてはどのように考えてますでしょうか。

(答)
まず自民党総裁選ですけれども、一人一人の候補の方々の個別のコメント、特に金融政策周りについて、コメントすることは差し控えさせて頂ければと思います。ただ、いずれにせよ新政権とはこれまでと同様、十分に意思疎通を図っていければというふうに考えています。

それから、ここまでの、8月以降ですが、円高の動きと今後の物価見通しというご質問だと思いますが、もちろんそこは強い関心を持ってみていきたいと思いますが、最初から申し上げてますように、その背後にアメリカ経済がどうなっていくのかという全体を動かしている大きな要素がありますので、これについての見極めの中で、為替レートの動きおよびそのわが国の物価見通しに与える影響についても判断していきたいと思います。取りあえずの姿は、10月の展望レポートでまずまとめるということになるかと思います。

(問)
先ほど総裁、重視していく点としてですね、賃金ですとか消費の動向ですとか来年の春闘への動き、そういったものを重視なさるというお話なさっていましたけれども、以前重視している点の中でですね、需給ギャップのことも挙げられていたと思います。最近総裁から需給ギャップについてなんかこう言及されることが減っているなと思うんですが、そこについても変わらずみていらっしゃるのか、それとも最近はそうでもないのかというところをちょっとお伺いしたいなと思ったのが一点。

あと市場とのコミュニケーションのところなんですけれども、次の利上げのヒントを知りたい中でですね、公表文からは先行きの金融政策運営についての言及がなくなっています。これ先ほど総裁が口頭では言及を冒頭なさっていましたけれども、ただ手掛かりとしてですね、公表文の中にその言及がないというのは、市場とのコミュニケーションのスタイルとして問題がないのかどうか、そこを教えてください。

(答)
需給ギャップですけれども、当面、需給ギャップの供給サイドで大きな予期せぬ動きが起こるというふうにはあまり考えていませんので、総需要のサイドをみることによって需給ギャップの動きが大体分かっていくというふうに思っています。従いまして、もちろん輸出等もありますけれども、消費と設備投資を丹念にみていくということが一番大きいかなというふうに思います。

それから、公表文に金融政策運営方針の記述がないという点に関するご質問だったと思いますけれども、今回新たにそうしたということではなくてですね、確か6月のときも、公表文では、先行きの金融政策運営に関する記述を省いています。考え方として、展望レポートの回に、従って3か月に1回に、展望レポートの中で一番終わりのところに、そこまでの経済についての見方とかリスクについての考え方を記した後、金融政策についての基本的な考え方を書き入れるということにして、それについての変更がない限りは、展望レポート以外の回では特に記述をしないという方針に致しました。これで暫くいきたいと思いますけれども、コミュニケーション上問題がありそうだということであればもちろん元に戻すとか、あるいは違うかたちを考えるということは、努力していきたいとは思います。

(問)
二点お願いしたいんですが、一点目は声明文の一番最後に、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があると、これ7月の展望レポートでも既に記述があったと思うんですが、この声明文に残した背景について考える際に、前回も質問してしまって恐縮なんですが、円安の影響が輸入物価の上昇を通じて物価全体に出てくるということを、直感的にはイメージするんですが、今のように足元円高がかなり進んだ場合の影響というのは、どのように物価を考える際、みていくべきなのかという点について、足元の動向と今回声明文にこの記述が入ったことを踏まえて伺いたいのが一点目です。

二点目は、他中銀の多くがFed含め利下げに転じている中で、日銀が今、まだ実質金利が非常に低いとはいえ利上げに入っていくことで市場の変動を増幅してしまうリスクがあると思うんですけれども、この点について日本経済、物価を考えるうえでどれぐらい大きなリスクと考えていらっしゃるのか、政策上、意識しなければいけないポイントなのかについて教えてください。

(答)
最初の企業の賃金・価格設定行動の変化が為替変動の物価に及ぼす影響というところですけれども、確かにこれまでのところ円安局面で為替の変動が物価に及ぼす影響が、過去の平均的な姿よりも少し強めになっているということは、言い出されてきたわけですけれども、8月以降、円高になってこれが仮に続いた場合に同じ程度の上昇した大きさで、今度は物価を下げる方向に働くのかという点は難しい問題だと思います。現在分析中といいましても円高になってから1か月強しか経っていませんので、それほどデータはあるわけではありませんが、過去のいろんな局面と比較することはできると思いますので、もう少しきちんと分析をして、はっきりした結果が分かればそれはお伝えできるかと思います。

それから、後半は海外の金融政策のサイクルみたいなものと、日本のそれが乖離しつつあるということに伴うある種困難について、どう考えるかということだと思いますが、一般論として各国の金融政策はそれぞれ自国の経済・物価を安定化させるということを目指して決定されていきますので、その結果として経済・物価を動かす要因が各国で異なれば、金融政策のサイクルが違ってくるということは当然あり得るという前提で、国際金融制度や各国の金融政策がつくられているんだと思います。今後、現在の局面でそれが日本経済についてどういうふうに作用してくるかということは、先ほど来ご質問頂いて、一部お答えしている点ですけれども、アメリカは利下げサイクルに明らかに入ったとみられますけれども、それが経済のソフトランディングを伴うものであれば、そんなに強いマイナスの影響を日本に及ぼすものではないというふうに考えていますし、そうではなくてもう少し厳しめの調整になるということであれば、また見方は変えていかないといけないという辺りを予断を持たずに判断していきたいと思っています。

(問)
日米の金融政策の方向性が逆を向く中で、金利差に着目するのであれば、基本的には円高方向に今後あるのかとみておりますけれども、その場合、円高が過度に進めばですね、企業収益の圧迫、輸出企業を中心に圧迫されて、場合によっては、総裁、先ほど来ご説明してくださっております賃上げの動向についても、何らか影響が出てくるのではないかという懸念もあるかと思います。総裁、この点に関してどんなふうに今みていらっしゃるのかという点をお知らせください。関連しますけれども、その場合、賃金と物価の好循環という日銀の土台となる方針にも影響、ないし変調が出る可能性はあると思いますけども、その場合にはどういうふうに日銀のシナリオに影響が出てくるのか、ということについても併せてお知らせください。

(答)
これは先ほど来申し上げていますけれども、アメリカの金融政策を受けて為替が動くかもしれませんが、更にその背後には、アメリカ経済の今後の動きがあって、それを受けてアメリカの金融政策も動き、アメリカの経済の動きが直接日本に影響を与える部分もあるということだと思いますので、その全体が、日本の物価・経済見通しに与える影響を丁寧に分析して、私どもの金融政策を考えていくということかなと思います。その見通しに与える影響の中で、当然、例えば来年の春闘での賃金の決定にどういう影響があるかという点も分析するということになるかと思います。

(問)
先ほど出た自民党総裁選の関連の質問で、個別の候補のコメントには、ということでしたけれども、そこに触れずに、大きな政策議論の話でいうと、いわゆる金利のある世界っていうのを所与のものとして政策を考えようという見方と、消費が、マインドが回復して需要が供給を上回るインフレになるまで、緩和的な環境を続けた方がいいのではないかと、大きくこの二つに大別されると思うんですが、この後半の、いわゆる高圧経済の実現という観点から、経済・物価情勢をみて、緩和的な金融環境を十分に長く続けた方がいいんじゃないかという、この必要性については、総裁、現状どのような見方でいらっしゃいますでしょうか。

(答)
基本的には、2%の目標を持続的・安定的に実現していくという観点に立ったときに、どういう金融政策のパスが一番望ましいかということで判断するということにならざるを得ないと思います。

(問)
中小企業の厳しい状況があるというふうなお話を先ほども総裁少しされていましたけれども、やはり中小企業なかなか生産性が上がらなかったり、その中で人手不足、対応するために賃上げしなきゃいけなかったりで、なかなか苦しいところに、更に円高がまた進んでくると、やはりより価格の転嫁をしにくくなるっていうふうな不安を抱えていると思うところも多いと思うんですけれども、経済が二極化してきている中で、中小企業、どういうふうに今後の金融政策の判断に影響を与えてくるのか、お聞かせください。

(答)
例えば、中小企業の賃金動向ということでみてみますと、毎月勤労統計等を規模別にみてみますと、必ずしも中小企業は弱いという結果にはなってなくて、規模次第ですけれども、中小のところが全体を上回る姿に読み取れるということもあるかなと思います。ただし、よくみていくと、ボーナスの寄与度が高くて、解釈としては、全体的に賃金が上がっていく中で、人手不足もあるし、追い付いていくためには賃上げをしないといけないけれども、所定内ではなくて、ボーナスで払っている中小企業がそこそこあるということかな、と思いますが、というようなことから、その持続性はどうかという問題が出てくるわけですが、その点も含めて、中小企業の動向については、注意深くみてまいりたいと思っています。

(問)
2%インフレ目標について伺いたいと思います。なぜ日銀が2%インフレ目標を掲げるかということについて黒田前総裁のときはですね、のり代、下方バイアス、グローバルスタンダードという三つの理由を挙げられてたわけですが、今もう消費者物価の上昇率がですね、29か月連続で2%を超えているときに、のり代論とかですね、下方バイアス論ってあんまり説得力を失ってると思うんですが、改めて植田総裁はなぜ今、2%インフレ目標が必要だというふうにお考えでしょうか。

(答)
2%目標の根拠としては、おっしゃったような点であるという見解に私も同意します。現在2%目標を達成するために、利上げを2回していますけれども、おそらくまだ中立金利より低い状況にあって、あるいは実質金利がかなりマイナスにあって金融は緩和的な状態を維持しているのは、2%を超えている消費者物価総合の上昇率をもっと上げようとしているわけではなくて、基調的物価上昇率がまだ2[%]を下回っていてもう少し上がることが、物価目標との関係で望ましいというふうに考えているからです。いつも同じことを申し上げて申し訳ないかとは思いますが、そういうふうに考えています。

(問)
総裁、先ほど7月の利上げまでのコミュニケーションについての批判があるということは認識されているってことでしたけれども、今、日銀が次の利上げに向けてどういったコミュニケーションしていくかというのは市場、注目高まっています。その中で総裁、もちろん見通し通りいくならば利上げということは再三おっしゃっているんですが、その一方で先ほど上振れリスクが低下したことによって、政策判断する時間的余裕があるということをおっしゃいましたけど、そうすると10月の利上げはないというふうにみる市場の向きが出てくると思うんですけれども、そういったことについてどういうふうにお考えになるかどうかお願いします。

(答)
特定の会合について、そこで金融政策変更があるかないかを事前に申し上げるということは避けたいと思います。毎回その会合までに、前回会合の後、出たデータとか様々な情報をベースに見通しあるいはその周りのリスクを判断して、政策をどうするかを決定していくという点に今後も変わりはありません。

(問)
先ほど来、日本の経済・物価情勢に与える要素としてアメリカ経済の重要性を盛んに強調されている中で、従来と比べるとやや慎重な見方をされたような印象も受けたんですが、おそらくまだアメリカ経済がソフトランディングするというのがメインシナリオにされてるかとは思うんですが、そういう理解で正しいのか。更にメインシナリオにしている中でもその確度は従来の見方よりやや下がっているというご認識なのか、その辺りについてお聞かせください。

(答)
端的に申し上げればソフトランディングをメインシナリオとみているという点には変わりはないです。ただし、8月初め以降のアメリカ経済に関するデータは少し弱いものが続いたりしていますので、リスクは少し高まっているかなと。これはソフトランディングの方にまとまっていくのか、もう少し調整が強まる方向にまとまっていくのか、ソフトランディングにしてもFedの大幅な利下げを必要とする、したうえでのソフトランディングなのか、この辺を見極めていきたいと思っています。

(問)
もともと輸入物価上昇率について「第一の力」という説明をされていて、国内でも賃金上昇などによる好循環によるものを「第二の力」としていたと思います。そのもともとのお話だと「第一の力」が「第二の力」に影響したりあるいは転化しようとしていくというような言い方をされてたと思いますが、これに従うと、現在は「第一の力」が弱まり始めたという言い方ができると思いますが、結局この1年弱を「第一の力」と「第二の力」という概念を使った場合に、この「第一の力」と「第二の力」がどういうふうに影響し合っていって今のような状況になっていて、今の状況だと「第二の力」がメインになりつつあるっていうふうに言うことができるのかどうかという、総裁のご認識について改めてお伺いできればと思います。

(答)
この1年くらいをみますと、インフレ率という意味では「第一の力」はプラスで推移してきたわけですが、それはだんだん弱まり続けている。ただし、その中で7月に向けての円安の動きが、もう一度、若干なりとも「第一の力」を上向きの方向に持ち上げる可能性があったというところかと思います。ただそのリスクは、先ほど来申し上げているように、相応に低下したということです。「第一の力」は弱まりつつあるわけですけれども、そこまでの「第一の力」、その他の影響もあって「第二の力」は引き続き、少しずつですが強まりつつあって、今後のインフレ率の動きをみる際の主なポイントになっているというふうにみています。

(問)
この会見でもですね、再三コミュニケーション、市場とのですね、の問題が指摘されているわけですけれども、私は一つに思うには、為替レートを意識して金融政策を行っておられることは市場の一致した見方であるにもかかわらずですね、それに対して、インフレにどのように影響を与えるのかという観点からのみしかですね、なかなか為替レートについて説明できないことがですね、将来のコミュニケーションのギャップを生む大きな理由になりかねないのではないかと思います。先ほども、円高によってですね、インフレのリスクが軽減されているという認識を示されたんですけれども、円高になればですね、想定レート、企業の想定レートは140円台、あるいは150円台のところもありますよね、置いているところもあるわけで、明らかに減益要因で、株にはですね、大きな影響を与えやすい。となると所得効果を伴ってですね、最も重視しておられると言っておられる消費にもですね、大きな影響が出てくる話。為替をコントロールできるような金融政策でなければ、先ほど総裁がおっしゃっておられたようなですね、一国の経済を安定させる金融政策を取っていくのが本来的な目的であると各国のですね、に資することはできないのではないでしょうか。日銀法の縛りがあることは分かりますけれども、多くの、とりわけ現時点で言えば、為替の問題についてもっとストレートにはっきりと説明をし、それが経済にどのように影響を与えているのかについて説明をなさるようにすることが、金融政策を有効なものにしていくコミュニケーションではないかと思うんですけれどもいかがでしょうか。

(答)
大変大事なご質問だと思いますけれども、私どもの考え方は、為替を直接安定化させる、あるいはコントロールするために金融政策を用いるのではないということです。おっしゃったように、為替の動きが、経済・物価見通しに影響を与えるということがあるという場合に、金融政策を発動するという考え方で一貫して金融政策運営をしてきております。その結果として、為替レートと金融政策の二つだけに着目した場合は、その相関がはっきりしなかったり、あるときとあるときで違っているということは発生するんだと思います。ただし、私どもの考え方は一貫して、為替に直接反応するんではなくて、物価見通しに与える影響を通じて反応するということであります。

(問)
先ほどの発言で、経済見通し通りに推移していれば、基本的な姿としては少しずつ利上げをしていく考え方に変わりはないとおっしゃっていまして、会見の発言でも声明文でも、今のところオントラック、見通し通りだということだというふうに理解しているんですけども、そうすると現状では年内利上げはもう一度できそうでしょうか、それともできなさそうでしょうか。

(答)
これはどなたかのご質問のときにお答えしたと思いますけれども、足元の日本経済のデータは見通しに沿って推移しています。ただし、何度も出てきていますように、米国経済を中心とする世界経済の不透明感、あるいはそれを映じた金融資本市場の動きが今後の見通しに不透明感を与えています。それを総合すると、直ちに見通しの確度が高まった、従ってすぐ利上げだということにはならないというふうに考えています。

(問)
先ほど金融政策と為替との関係についてのお答えで、更にお伺いしたいんですが、日銀法という法律議論もあることながら、総裁が考える金融政策が為替を目的にすることのデメリットというのは、どんなことですか。

(答)
それは結局のところ、物価コントロールができなくなるということだと思いますけれども。例えば、完全に対米ドルで円を安定化させようとした場合には、単純な解決方法は日本の金利はアメリカの金利と全く同じにするという政策になります。すると、5%前後の短期金利、それで物価が安定化できるかという問題になってくるかと思います。

(問)
時間的余裕とおっしゃったことについて、7月、8月と比べて時間的余裕ができたということだと思うんですけれども、振り返ってみると、3月に量的・質的金融緩和を終えてからですね、矢継ぎ早に6月には国債の買入れ減額の方針を示されて、7月にはその具体的な計画と追加利上げを決定されたわけですが、この3月から7月の期間に過去と比べて矢継ぎ早に政策を打ち出してきた、このときの時間の感覚と比べると余裕があるというそういう理解でよろしいんでしょうか。

(答)
例えば3月から7月の4か月間と比べてどうかという、そこでの政策変更の頻度と比べてどうかというご質問だと思うんですけれども、そういう特定の長さの時間を念頭に置いているわけではなくて、先ほど来申し上げてますように、経済はわれわれの見通し通りに足元推移してるんですけれども、先行きの不透明性が高まっているという中で、もう少し時間をかけて、その見通しがどういう方向に固まっていくかみていきたいということに尽きます。

(問)
重ねてなんですが、年内の追加利上げの可能性について、改めてお伺いしたいんですけれども、7月のこの場の会見ではデータ次第というような言い方をされたと記憶しています。今日の段階では、年内の追加利上げの可能性は、7月のときよりも遠のいているのかどうか、そのお考えを確認させて頂きたいです。

(答)
引き続きデータ次第という点には当然変わりはないわけですが、その際に国内のこれまで申し上げてきたようなデータに加えて、米国経済動向に関するデータ、これまでもみてきてはいるわけですが、一段と注意してみていって、その総合で考えたいということでございます。

(問)
市場との対話についての質疑で、植田総裁、十分に伝わっていなかったのではないかと批判があることは承知しているとおっしゃいました。ただですね、やはり今日の記者とのやり取りを聞いていても、中立金利の評価はどうしても曖昧なかたちになってしまいますし、オントラックなら少しずつ利上げという表現も抽象的でして、やはり記者、市場関係者にしてもなかなか将来の政策へのイメージ持ちにくいかと思うんですね。7月の会合後の市場の乱高下を踏まえて、市場との対話について反省すべき点、改善すべき点というのはどういうところだったのか、それを踏まえて今後どういう工夫をしていこうと考えていらっしゃるのか、植田総裁の率直なお考えをもう少し丁寧にお聞かせ頂けますでしょうか。

(答)
先ほど来いくつか申し上げてきたと思いますが、見通しとか考え方を抽象的に丁寧に説明するということはありますけれども、当面の政策運営をかなり大きく動かしていくのは、見通しの確度がどれくらい高まったかというような点ですので、これに関して大きな動きがあるときには、情報発信をきちんとこれまで以上に丁寧にしていくということは、私なりに気をつけていきたいと思います。ボードメンバー全体としてということも言えるかと思います。それから中立金利、つまり行き着く先についての不確実性が残るということはあるわけですが、これは当面、消しようがない不確実性として残らざるを得ないと思いますが、一段と分析を深めていきたいというふうに思っております。

以上