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総裁記者会見 2024年12月19日(木)午後3時30分から約75分

2024年12月20日
日本銀行

(問)
本日の決定会合の内容についてのご説明をお願いします。

(答)
今日の会合ですが、無担保コールレート・オーバーナイト物を0.25%程度で推移するよう促すという金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。田村委員は、経済・物価が見通しに沿って推移する中、物価上振れリスクが膨らんでいるとして、政策金利を0.5%程度に引き上げる議案を提出されましたが、この議案は反対多数で否決されました。

次に、経済・物価動向ですが、わが国の景気の現状については、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断しました。先行きですが、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられます。物価についてですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきていますが、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足元は2%台前半となっています。先行きの消費者物価ですが、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方で、基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想されます。展望レポートの見通し期間後半には、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えています。リスク要因をみますと、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高く、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を十分注視する必要があります。特にこのところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があります。

今後の金融政策運営ですが、先行きの経済・物価・金融情勢次第ですが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえますと、以上のような経済・物価見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。そのうえで、金融緩和の度合いを調整するタイミングについては、様々なデータや情報を丹念に点検したうえで、判断していく必要があります。この点、賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から、来年の春季労使交渉に向けたモメンタムなど今後の賃金の動向について、もう少し情報が必要と考えています。また、米国をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、米国の次期政権の経済政策を巡る不確実性も大きい状況が続いていると判断しています。

最後に、今回の会合で取りまとめました金融政策の多角的レビューについて申し上げます。多角的レビューでは、過去25年間のわが国の経済・物価・金融情勢について振り返ったうえで、非伝統的な金融政策運営の効果と副作用を点検し、先行きの金融政策運営の含意を整理しました。レビューの結果は、当面の金融政策運営に直ちに影響を与えるものではありませんが、やや長い目でみて、金融政策のあり方を考えるうえで貴重な材料を提供するものになったと考えています。レビューを進める過程では、有識者の先生方や市場関係者、企業の方々などに様々なかたちでご協力頂きました。この場を借りまして御礼を申し上げます。日本銀行は、本レビューの結果も活用しつつ、引き続き2%の物価安定の目標のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく方針です。

(問)
一つ目が、総裁は経済と物価が見通しに沿って進めば、利上げを検討されるというお考えを示されています。今回経済・物価がオントラックで進んでいく中、利上げを見送られた点、何を特に重視されたのか、お考えを伺わせて頂ければと思います。

もう一つが米国経済に関することです。影響を大きく与えるトランプ次期大統領の経済政策については、就任の来年1月以降も見通すのがなかなか難しい状況が続くと思いますが、総裁はこの先行きも含めてですね、どのようにお考えでしょうか。

(答)
まず今回利上げを見送った理由ですが、基本的な点として先ほど申し上げましたが、金融政策運営については、経済・物価の見通しが私どもの見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整していくということが基本的な考え方でございます。そのうえで、その緩和度合いの調整のタイミングですが、様々なデータや情報を丹念に点検したうえで判断していく必要があります。ご指摘のように、最近の経済・物価に関する各種の指標は、概ね見通しに沿って推移しています。ただ、賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から、来年の春季労使交渉に向けたモメンタムなど、今後の賃金動向について、もう少し情報が必要と考えました。また、米国をはじめとする海外経済の先行きも引き続き不透明であり、米国次期政権の経済政策を巡る不確実性は大きいと考えています。これらを踏まえて今回の会合では、金融市場調節方針、現状維持を決定致しました。

それから、まさに今申し上げたトランプ次期大統領の政策運営に関する見通しに関するご質問ですが、まずアメリカ経済そのものについては、昨日パウエル議長も記者会見で指摘されていましたように、堅調に推移しているとみています。ただ先ほども申し上げましたように、現時点では繰り返しになりますが、次期政権の経済政策を巡る不確実性が大きく、その影響を見極めていく必要もあると考えています。次期政権の財政政策、通商政策、移民政策等は、米国の経済・物価動向に影響を及ぼす可能性があるだけでなく、世界経済や国際金融資本市場にも大きな影響を及ぼし得ると思います。そうした観点から、わが国の経済・物価に与える影響についてよくみていきたいと考えています。そのうえで、今後これらの点を見極めていくための情報が徐々に明らかになっていくとみています。もとより、金融政策運営については、特定のデータやイベントを待たないと判断ができないというものではございません。毎回の会合において、その時点で利用可能な各種のデータや情報を丹念に確認し、適切に判断を行ってまいりたいと考えています。

(問)
今回利上げをされなかった理由について改めてお伺いしますが、まず現状賃上げのモメンタムについてどのようにお考えかという点をお伺いしたいのと、あと為替の物価への影響をどう評価するかということをお伺いしたいです。オントラックにもかかわらず利上げをしなかったことで円安が進んでいます。日銀が動かないことが円安、物価高を招きかねないっていうこともあると思いますが、この点をどう評価されるのかという点をお願いします。

もう一点は多角的レビューについてお伺いします。非伝統的な金融政策のツールとしては残すと、副作用を指摘しつつも残すという結論だったと思いますが、現状では1回利下げをしたらゼロに戻るということになると思います。その際、ETF買入れとかマイナス金利、YCC、いずれも選択肢になり得るのか、また濃淡があるのでしょうか。少なくとも導入当時よりは慎重に判断されるのか、その辺りをお伺いしたいです。

(答)
来年の春闘の賃金に関する現時点でのまず見通しということでございますけれども、現時点ではあまりに情報が少ないので、こうなりそうだということを申し上げるのは控えさせて頂ければなと思います。まさにその点について、もう少し情報がほしいなというのが、今回慎重な判断を下した一つの理由でもございます。それから、為替の物価への影響というご質問でございますけれども、もちろんこれは常に注意深くみているポイントでございますし、先ほども、一つの質問に対するお答えで申し上げた通り、場合によっては、為替の物価への影響が以前よりも大きくなっているという可能性もあるということに注意しつつみていきたいとは思います。他方で現状、輸入物価の対前年比でみますと、割と落ち着いているという状況であることも考慮に入れたところではございます。

それから、非伝統的手段について、今後、場合によって、利用することになるかもしれないときに、それぞれについて何か濃淡があるかとか、利用に当たってのハードルが上がったかどうかとか、そういうご質問でしたでしょうか。これはレビューの中でも書いていますが、現時点において、まず非伝統的政策手段を今後全く採用しないということを宣言するとかそういうことは全く考えておりません。申し上げるまでもなく、今回のレビューで検討したような副作用等を、採用するかもしれないときの経済・金融情勢に合わせて入念に点検しつつ、採用するとすれば、採用していくということになるかと思います。それぞれの手段についてどうかという点については、今回はここでは控えさせて頂ければと思います。

(問)
先ほど今回の利上げを見送った理由につきまして、賃上げの動向とですね、アメリカの政策、経済の不確実性の強まりという点を挙げられたんですけども、これらの条件について総裁の見通しをちょっと伺いたいんですけれども、来年1月の会合前にはですね、支店長会議が開かれて地方を含めた賃上げ動向という情報が収集されると思います。その中である程度賃上げに向けた自信というのが持てると思われているのかどうかということとですね。1月会合で、トランプ大統領が就任した場合、政策とその影響の見極めというのが就任直後、1月会合までにある程度明らかになるとお考えなのか、政策判断上、そこをどれだけ重視するのか、その辺を総裁のお考えを教えてください。

(答)
これは申し上げるまでもなく、春闘についてもトランプ新政権の政策についても、相当長い期間みないと全体像は判明しないということだと思います。他方で各会合においては、その時点までに得られたこれらの点に関する追加的な情報と、それから当然、各会合で行うことになるそのときまでのその他の通常の経済データに関するレビュー、分析をベースに総合的に判断していくということだと思います。従いまして、1月会合であれば、もちろん支店長会議の結果も参考にするということになりますが、そこまでにそれぞれある程度の情報は出ていると思いますが、それを参考にしつつ、1月の決定はするということで、そこは総合判断にならざるを得ないと思います。

(問)
トランプ次期政権の政策、不確実性が高いということですけども、既に就任前からトランプ氏がですね、中国に対しては10%の追加関税をかけるとか、メキシコ、カナダにも25%の関税をかけると既に表明をしてますけども、特にメキシコ、カナダには日本の自動車メーカーの生産拠点も多いですし、こうしたトランプの高関税政策が発動された場合、日本の企業収益や国内の経済にどのような悪影響を及ぼすか、この点どうみているのか、それとですね、日銀が持っている経済・物価の見通しにどういうふうに影響を及ぼすのかというのを、まず伺えないでしょうか。

もう一点はですね、多角的レビューですけども、過去25年にわたる非伝統的な金融政策の効果と併せて副作用についても詳細に検証されてますけども、今後再びゼロ金利制約に直面してですね、こうした非伝統的な政策を取らざるを得ないっていう場合にですね、今回のレビューで得た教訓めいたところっていうのはあるんでしょうか。

(答)
まずトランプ[次期]政権の関税政策の、特にわが国経済への影響ということですが、これは先ほどからの繰り返しになりますが、まずどの国のどういう財に関税がどれくらいかけられるかということがある程度はっきりしないと、分析のしようがないということだと思います。それがはっきりした時点で、場合によっては国際的なですね、産業連関表とかも使いながら、日本への影響、直接の影響、それからおそらく大きいのは、その関税政策あるいは、これまた不透明な話ですが、それに対する報復関税が出てくるかどうかというようなことも含めて、その他経済、そしてアメリカ経済がどう動くかということを踏まえたうえで、日本経済にどう影響が出るかということをみていかないといけないと思うんですが、現時点では、繰り返しになりますが、不透明なところが大きくて、定性的にも定量的にも、はっきりしたことは申し上げにくいということだと思います。

それからレビューの今後の活用、特に非伝統的な金融政策を再び利用するかもしれない際の活用方法というようなご質問だったと思いますが、これは当然、いつそういう事態になるか分かりませんし、もし、先ほど申し上げましたように、そのときの金融情勢・経済情勢次第で効果の大きさ、それから副作用がどういうものであるかということも変わってくると思いますので、何とも申し上げられませんが、そういうことを真剣に考える際に、この冊子を将来のそのときの金融政策の決定者が、そのときのボードメンバーということになりますが、参照して政策決定に当たって頂ける、参考になるような様々な材料が提供できているというふうには思っております。

(問)
段階的な利上げ局面における情報発信と、あと金融システムの安定の点で二点伺いたいんですけれども、一つが再利上げに関する日銀の発信で、例えば政策判断のタイミングですとか、今会合も含めて、一定のスパンでどの会合でもあり得る、別の角度から言うとちょっと明確さに欠くコミュニケーションのように感じます。こうした発信姿勢っていうのは政策判断で、ある意味裁量的な要素を意識的に強めているのか、金融政策運営で言われるルールと裁量みたいな観点も絡むのかもしれませんけれども、市場との対話の今の考え方をちょっと改めて教えてください。あとこれからも、今のようなこの政策の発信のしかたを続けていくのか、併せて伺えればと思います。

あともう一点が金融システムの安定の観点なんですけれども、最近、金融機関の不祥事がとりわけ目立ってまして、特徴として各業界の最大手ですとかマーケット管理者ですとか、今まで以上に幅広い先での事案が発覚してます。一方で、金利ある世界で預金が過去よりも動きやすく逃げやすくなっている環境が広がっています。リスク管理で、例えばレピュテーションリスクっていうんですか、評判リスクといった観点から、中央銀行のトップとして最近の事案をどのようにとらえていらっしゃるのか教えて頂ければと思います。

(答)
金利の引き上げペースが、引き上げが段階的だし時々ということで、いつ来るか分からないし、きわめて裁量的な政策になっていて不透明性も高いのではないかというご指摘だったと思いますけれども、ゆっくり進んでいる理由は、突き詰めますと、基調的物価上昇率の上昇が、やはりきわめてゆっくりである。あるいは期待インフレ率の上昇も、上昇は上下しながらも続いていると思いますが、割とゆっくりであるということに合わせて、利上げのペースを長い期間の中で適切に決めていこうということをしていますから、必然的にはっきりと毎回利上げしていくというようなパスにはなりにくいということだと思います。その中でどのタイミングで何会合後に、こういうデータが出たら、利上げをこれくらいしますという方程式がきちんと出せれば透明性は高まるわけですけれども、そういうことができるほど、私どもの外部も中央銀行内部も経済・金融に関する知識を残念ながら持ち合わせていないということだと思います。従って、その時点その時点で最良の判断を、不十分な知識と道具を用いてせざるを得ないという中では、毎回毎回少しずつ新しい情報、新しいやり方を追加しつつ、最善の方法を探っていくというアプローチをとっていますので、結果的に非常に裁量的である、あるいは予測しにくい不透明であるというふうに、残念ながらなりがちであるかと思います。そうではなくて、与えられた情報から機械的に最適政策金利は計算できてその通りやればいいということであれば、ある意味ちょっと極論かもしれないですけども、私どもの存在意義はなくて、AIにやってもらえばいいような世界になってしまう可能性もあるかなと思います。その点、人間としてできる最善のところを今尽くしているというつもりでございます。

それから、金融不祥事関係のご質問ですけれども、これは具体的なところには踏み込みませんけれども、基本的に信用ということを基礎とする金融機関にとっては大きな問題で、いくつか発生した事案は非常に遺憾であるというふうに思っています。内部統制をきちんと機能させて再発を防いでほしいというふうに思いますし、私どもの考査でもこういう点を確認していきたいというふうに思っています。

(問)
経済・物価の見通しがオントラックで推移している中で、追加利上げ目前に迫ってるんじゃないかという印象もあります。市場の見立てでは1月にもという予測も強まってますけども、それを妨げ得る、最も重要な懸念材料というのは何なんでしょうか。裏を返せば、どういった懸念がなければ追加利上げに踏み切る判断が整うのか。先ほどおっしゃっていたように賃上げのモメンタムが失われるようなデータがなければとかですね、あとマーケットの混乱がなければという、こういった事象が考えられるかと思うんですけども、その辺のお考えをお聞かせください。

(答)
具体的にどれというふうに申し上げるのはなかなか難しいわけですが、まずそもそもデータはオントラックでここ数か月きていますので、それを前提にしますと、私どもの見通しが実現していく確度は多少なりとも上がっているということだと思います。ただ次の利上げの判断に至るには、不正確な言い方ではありますけれども、もうワンノッチほしいなというところかと思います。そのもうワンノッチの中に、賃金上昇の持続性ということも入ってくるかと思います。それがより具体的には、来年の春闘のモメンタムをみたいという、先ほど来の私の答えにつながっています。他にもみたい点はいろいろありますけれども、取りあえず一つ具体的に申し上げるとしたらそういうことになります。

(問)
二問あるんですけれども、最初、中立金利を巡る議論なんですけれども、なかなかとらえづらい概念とは思いますが、一応、今展望レポートの見通し期間の後半には概ね中立金利に整合的な水準まで金利を引き上げていけるだろうという見通しですが、そうなると次の利上げのタイミングが遅れれば遅れるほど、その先の利上げのペースがだんだん速くなる、詰まってしまうというふうにも思うんですが、そういう考え方は取らないということなのか、そうであれば中立金利自体の水準が思っていたよりも低いのではないかという見方もできると思うんですが、その中立金利の考え方を今後の政策をみるうえでどうとらえればいいのかということをお願いしたいのが一点目です。

二点目はトランプ新政権を巡る不確実性というのは、分解すると様々な要因があると思うんですが、一つはアメリカの経済にとって非常にインフレ的な政策が多い点がありますが、一方で関税の措置というのはアメリカ経済、世界経済にとっても基本的には成長率にマイナスの影響を及ぼすと思います。全体をとらえてどちらのリスクが大きい、日銀、日本経済にとってはどちらがより懸念しなければならないリスクなのか、その辺りお願いします。

(答)
まず中立金利と当面の政策運営ですけれども、おっしゃるように中立金利があるところに決まってあるとしまして、当面の政策運営で利上げをしていくというタイミングが遅れれば遅れるほど、中立金利に到達するタイミングが一定であれば、そこへのペースは結果的に早くならざるを得ないという点は、当然私どもも意識しています。そういうことも考えたうえで、毎回の利上げをするかどうかという判断をもちろんしているということをまず申し上げます。そういう中で、先ほどのご質問にもお答えする中で申し上げましたが、一応、基調的物価上昇率とか、インフレ期待の動きがだいぶ高いところまでは来ていますけれども、2%と整合的なところまではもう少し距離があるという中でゆっくりしているということが、私どもの政策金利の調整をゆっくりさせる余裕を生んでいるという理由でもあるということを繰り返し申し上げておきます。

それから、トランプ[次期]政権のご質問の趣旨を完全にはとらえてないかもしれませんけれども、例えばトランプ[次期]政権が関税政策を発動したときに、インフレ率が上がるという効果もありますし、直接経済にマイナスの作用を及ぼすものなので、それは回り回って、経済活動を低下させて、結果的にインフレ率にマイナスの影響を及ぼすという経路も考え得る。それを合わせてどうかというご質問かと理解しましたけれども、それは現時点では何とも申し上げにくい。関税政策全体として、どういうスキームが採用されるのか、それからその他の部分ですね、財政政策であったり、移民政策であったり、あと大きなものとしては規制緩和周りでどういうことが起こるのか、こういうことを総合して少なくともアメリカ経済への影響、インフレ率への影響が決まってくるもので、なかなか分析、予想は難しいというふうに今の時点ではみています。

(問)
二点ございます。一点は、先ほど追加利上げの判断に当たってもうワンノッチほしいというお話でしたけれども、例えばその春闘のモメンタムでいうと、年末年始には経営者の賃上げに対する姿勢が聞かれるようになるかと思います。経済・物価データがオントラックに推移するという意味では、追加利上げの判断時期が近づいているというふうに以前おっしゃっていましたけれども、今も同様の認識でしょうかというのが一点です。

もう一点は、Fedが慎重に利下げを進める方針になりまして、日米の金利差が今後も縮まりにくい構図が予想されます。足元では、10月末時点と比べても3円ほど円安に振れてます。この為替円安が物価上振れをもたらすリスクというのは10月時点と比べて高まっていると思われますでしょうか。二点お願い致します。

(答)
前半については、これまでお答えしたことの、若干繰り返しになると思いますけれども、春闘のモメンタムについて、次回会合までにある程度の情報は入ると思いますけれども、これも繰り返しですが、大きな姿が分かるのは例えば3月とか4月とか、そういうタイミングになると思います。そのどこで政策に関する判断ができるかということは、その他の情報とセットで考えるということに当然ならざるを得ないと思います。その他のデータを、例えば、次回の展望レポートでチェックして、次回の展望レポートには、1月の末までに、耳に入ってくる春闘に関する新たな情報全部は入れることはできないと思いますので、展望レポートがあって、春闘に関する情報があって、場合によってはトランプ[次期]政権の政策についても何かコメントが出て、そういうのを総合して、将来についてどういう姿を描けるかということだと思います。それは、ワンノッチ見通しの確度を上げるのに十分かどうかということは、現時点では何とも言えませんし、各会合毎に当然その点に最終的には集中して分析をし、判断をしていくということになるかと思います。

それから、当面内外金利差が大きいままで推移しそうである、その為替への影響、そしてそれが日本の物価、インフレ率に与える影響に関するご質問ですが、これは当然、先ほどもちょっとお答えしましたが、常に物価の見通しに関してみている要素でございます。ただ現時点では先ほどの繰り返しになりますが、取りあえず対前年比でみた輸入物価の上昇率が落ち着いているということも考慮に入れたうえで、為替の物価見通しへの影響を判断していくということになるかと思います。

(問)
総裁、今年最後の決定会合ということで、ちょっと振り返りつつ伺いたいんですけれども、今年はドル円相場が20円も上下に動いた年だったんですけれども、総裁からは以前、円キャリーポジションの積み上がりとその解消などが背景にあったとのご説明を頂きました。一方でですね、この激しいボラティリティを巡っては、円の信認そのものが揺らいでいるのではないかという、こういう不安を覚えた国民も多かったようです。来る年はプラザ合意から40年の節目の年でもあるんですが、長い目でみてですね、この円の信認というのは本当に揺らぎつつあるのではないかというこうした声に対する総裁のお考えを教えて頂けますでしょうか。

あと付随してもう一点なんですが、わが国の人口減少が加速してきてますけれども、日本の国力の低下ということと、円の信認にはどのような関係があると考えられるのか、経済学者でもあられる総裁のお考えをお聞かせ願えればと思います。

(答)
大変難しいご質問ですけれども、まず短期的な話として、例えば今年ですと7月に向けて円安の方向のポジションが積み上がっていったときに、それが日本の後半でおっしゃったような国力の低下に対する懸念と相関していたかどうかというご質問だったと思いますが、そこはそういう要素はあまりなかったのではないかというふうに取りあえず判断しています。と申しますのも、もしそうであれば、日本の国力に対して不安を持っているということですので、例えば株価でみれば、どんどん下がっていくという方向の動きになっても不思議はなかったということだと思いますが、そこは株価も上がっていったというところですので、というふうにまずお答えしておきます。

それから国力の、より長い目でみて、日本の経済力の低下と円の信認というご質問だと思いますけれども、これは一つの大きなポイントは、国際収支の動向かと思います。現状ではGDP比4%前後になりますかね、ちょっと微妙に違ってるかもしれませんが、経常収支黒字を維持していまして、こういう状態が短期的に大きく変わるというふうにはみておりません。そういう黒字を続けている国の通貨に対する信頼が直ちに低下するということではないというふうにみております。

(問)
先ほどからの質疑で出てます海外経済、特にアメリカの次期政権を巡る政策の不確実性について改めてお伺いしたいんですが、これは待てば晴れるというわけでは当然ないと思います。1月になれば次期政権が始まって実際政策が遂行されることによる影響も出てくるわけで、その意味では12月でも1月でも不確実性の中身は違えどリスクの総体っていうのは変わらないのではないかという指摘もあります。そうした中で海外経済を見極めたいという点で、なぜ1月まで待つということを選んだのか、その待つことのメリットみたいなところをもう少し詳しくご説明頂きたいというのが一点です。

もう一点はそうした状況の中で、場合によっては1月も利上げを見送る判断というのが仮にされて、更に利上げが後ろ倒れる可能性というのも当然あると思うんですけれども、例えばそれが3月以降の判断になったとしても、現状これビハインド・ザ・カーブに陥るリスクというのは小さいのか、じっくりみていく余裕というのはまだあるのかと、この二点についてお伺いさせてください。

(答)
まず結局いつまで待っても不確実性は消えないのではないかというご指摘だと思いますが、それはそうだと思いますけれども、一方で時間が経つとともに、いずれにせよ新政権、向こう4年しかないわけですから、だんだん情報が入ってきて、それを見通しに織り込むことができるようになるということも確かかと思います。そのうえで、現状では例えば私どもの見通しに織り込もうにも、定量化する前提となるものがまだ出ていないということだと思います。例えば関税をどこに対してどれくらいかけるか、かけそうか、まだ現状では、多少トランプさんがおっしゃっていますが、本気でそれをやるかどうかはまだみえていないというとこだと思います。そういう意味で時間の経過とともに、もう少し真剣に見通しに織り込むことができるような情報は徐々に出てくるとみていますし、各会合毎にそういう意味で出てきた情報を織り込んで政策を決めていくということだと思います。

そうして待っている間にビハインド・ザ・カーブになるというリスクは当然あるわけですが、当然そういうリスクを考慮したうえで、そこで例えば利上げをしないという判断をするんであれば、利上げ判断しないで大丈夫かどうかということを考えて決定致しますということでございます。

(問)
先ほどからお話が出てる基調的なインフレ率のことなんですけども、政策反応関数の一つとして言われる期待インフレ率で、現状では大体日銀は1.5%という推計を出してるかと思うんですけども、今年の4月の展望レポートのボックスの中でも家計、企業、専門家が大体1.5%、合成予想上昇物価率も大体1.5%なんですけども、この推計っていうのは23年の第1四半期までのデータをもとにまとめられたかと思うんですけど、そうすると最近ですともう大体2年近く経ってるんですけど、足元ですとその刈込もそれから中央値も加重平均値も6月ぐらいからずっと低下傾向なんですけど、その辺を加味して足元の基調インフレ率の数字というか推計がどのようになっているかをお伺いしたいんですけども、よろしくお願いします。

(答)
おっしゃってるのは、基調的な物価上昇率の一つの指標として、私どもの発表しております刈込平均[値]とか、加重中央値(注)とか、三つくらいあったと思いますけれども、それのデータの推移についてどう考えるかという。

(問)
それが下がってるプラス、足元で1.5%という推計っていうのはその2023年1四半期までのデータをもとに推計されている数字だと思うんですけど、それから2年近く経過しているわけで、その辺の変化も含めて、足元の認識をお伺いできればと思ってます。

(答)
まず、その刈込平均等のデータの推移ですけれども、本当の具体的な推移はちょっと厳密には忘れてしまいましたが、どこかでピークを打ってだいぶ下がっているという姿になってるかと思います。これは、結局このデータが、私どもが常日頃言っています基調的物価上昇率とは、かなりずれたものであるということになってるかと思います。すなわち、前から申し上げてます古い表現で恐縮ですが、「第一の力」、「第二の力」ということで申し上げたとしますと、「第一の力」で上がったインフレ率の影響が、この刈込平均等にもかなり出ていて、それで上がって、「第一の力」は今だいぶ弱まってきているわけですが、それとともに下がってきているという動きに対応しているかと思います。これに対して、国内の賃金・物価の好循環がどれくらいのところで回ってるかというのが基調的物価上昇率に近いわけですが、それは少しずつ上がってきているというイメージでとらえています。それからもう一つの期待インフレ率について、23年第1四半期までのデータで推計した結果というのをちょっと私が失念してしまったんですけれども、毎回私ども、様々な経済主体のデータやサーベイに表れた期待インフレ率をみまして、それを場合によっては合成して、どれくらいかということを短期や長期に分けてみております。これは、非常に大まかに言えば、少しずつ上昇を続けている。ただし2%というわれわれの目標のところと整合的かというと、まだそこまではちょっと距離があるというふうにみております。

(問)
足元ですね、日米の株価が今回大きく下落したタイミングだったと思います。今日日経平均も一時700円以上値下がりする場面がありましたけれども、今日のこの状況というのは、日銀にとって不安定ということにはなるんでしょうか。またこうした日銀が政策変更を決める直前のこの金融市場の動きというのも、今回の現状維持の判断に影響したのかも重ねてお答え頂きたく思います。

(答)
常日頃申し上げてることですけれども、短期的な市場の動向については具体的なコメントは差し控えさせて頂きます。ただ、いずれにせよ株価動向を含めまして、様々な資産価格の動向は注意深くみていますし、その経済・物価見通しに与える影響、あるいは金融市場の安定性に与える影響等、常に注意してみているところでございます。

(問)
市場では、次回1月会合での利上げというのが織り込まれ始めています。今日は田村委員がですね、物価上振れリスクが膨らんでいるとしまして、利上げの議案を提出しました。それだけに今後はそろそろ利上げしないリスクについて意識していく必要があるというふうに認識していらっしゃるでしょうか。利上げをしないリスク、それから利上げをするリスクについての総裁の現状認識を教えてください。

(答)
これはこういうふうに申し上げようと思いますが、田村委員は公表されていますように、現状物価に上振れリスクがあるということで、利上げ議案を提出されました。ボードメンバーで審議した結果、採決をしまして、1対8で利上げをするということは、今日の時点では否決されました。その審議がどういうものであったかということは、簡単な要約になりますが、数日後に発表される主な意見で公表していきたいというふうに思っております。

(問)
政府の予算編成とかですね、与野党の税制改正の議論が同時に進んでると思うんですけれども、そこのどういうところに注目されているのか、予算規模だったりとか、税収との絡みによってはいろいろ物価への影響もあるのかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

(答)
これは当然今議論されていることは、税周りであれば可処分所得であったり、労働供給であったり、それからそれも含めてその他の政策、総需要にどういう影響があるか、更に財政にどういう影響があるか、それぞれに興味があるところではございますけれども、まだ細部がはっきりしていないところもありますし、政府・国会でこれからお決めになることですので、私どもからの具体的なコメントは差し控えさせて頂きます。

(問)
以前の会合でですね、時間的余裕という言葉を使って金融資本市場とかがですね、不安定なときには利上げを含めてそういった調整はしない、時間的な余裕があるとおっしゃったんですけれども、またこの昨今ですねトランプ次期政権のもとでの不安定さだとか、こういった為替も今円安になりつつありますけど、こういった状況でやはりまた再び時間的余裕があるという状況になってきているんでしょうか。

(答)
直近で時間的余裕という表現を使った際には、確か10月の記者会見で申し上げたと思いますけれども、夏に起こりましたアメリカの景気下振れ懸念に由来する金融資本市場の不安定性、こういうものがどれくらい解消したかを見極めていくということの関連で使っていたわけでございます。そこの関連、ひも付けがあまり強くなり過ぎたということと、アメリカの景気下振れ懸念に伴うマーケットの混乱、こちらのリスクは十分低下したということから、その表現を再び使うということ、その表現の継続的な使用をやめるということを前回申し上げたところでございます。しかし時間的な余裕的なことは、ある意味考えてみれば、常にいろんなことについてあったりなかったりするわけかと思います。基調的な物価の上昇率、先ほど来申し上げていますが、あるいは期待インフレ率の上昇がゆっくりしているときは、いろんなことを見極めていくということは可能であるということかと思います。取りあえず今回は様々なリスクの行方を見極めるために、金利を引き上げるということはせずに、金利を据え置くという判断をしたところでございます。

(問)
ということは時間的余裕ということが再びあるわけではないということでよろしいでしょうかね。

(答)
そういう固有名詞的に使うこと、あるいは特定のリスクにひも付けて使うことはやめたいなということでございます。

(問)
総裁、もう少し賃金の動向、春闘のモメンタムをみたいということなんですけども、このもう少しというところには1月にもそれが判断できる可能性があるという認識をしていいのかどうか。

それとまた逆の話なんですけれども、物価の基調が非常に緩やかに上がっているということであれば、例えば利上げが、今、市場が予測しているような1月でなくても、3月もしくはそれ以降でも特に今の時点では問題ないとご覧になっているのかお願いします。

(答)
これは繰り返し申し上げてきましたけれども、賃金について1月末ですか、次回会合までにどれくらい分かるかということは、現時点ではなかなかこの種の方々が何かおっしゃるだろうということは予想できても、どういう内容になるかということまではなかなか予想しがたいことですので、それは出てきたコメントをみながら他の情報と合わせて賃金の先行きを予想していくということになりますし、それの政策決定へのつながりということは、その他のデータ、情報との総合的な判断の結果になるということになります。

それから、基調的物価上昇率の上昇が足元ゆっくりしているということであれば、何となくどこまででも利上げを延ばすことができるんではないかという、ちょっと極端に申し上げてますが、ご質問だと思いますが、それは足元そうであっても強い緩和的な状態が長く続くと先行きどこかで急上昇するというリスクは常にありますし、場合によっては、そのリスクを拡大させてしまうという可能性もあります。そういうことを考えたうえで各時点での利上げをする、しないという判断になるということだと思います。

(問)
多角的レビューについての総裁のちょっとご説明をお願いしたいんですが、大規模な金融緩和についてですね、導入当初に想定したほどの効果を発揮せずとレビューに分析結果が載ってるんですけれど、これは2013年に始めたときにですね、マネタリーベースを2倍にして2年で物価を2%っていう日銀が説明された波及経路を聞いた当時の記憶からするとですね、当時もどうしてそこまで断定できるのか不思議だったんで、この結論には異論がないんですけれど、ここにも説明があるようにマクロモデルでですね、消費者物価への押し上げ効果が0.5から0.7%ポイントっていうふうにこれはその都度計算、試算できるものだと思うんですけれど。要は先ほど総裁が多角的レビューの意義としておっしゃったですね、将来の政策決定の判断材料になってほしいということであればですね、いわゆる異次元緩和を始めた意図は一応よしとしてですよ、2年間経っても当初見通した効果が出ていなかったっていう時点でですね、何らかの見直しをすべきだったっていう結論になると思うんですけど、それについて総裁はどういうふうにお考えなんでしょうか。

(答)
おっしゃるように、当初期待されていたほどの効果が直ちには出なかったということであるかと思います。その場合に、例えば2年でというふうに言っていたんで、2年経ったところで見直すべきであったのではないかということについては、私の口からこうすべきであったということは、現時点では申し上げることは差し控えさせて頂きたいというふうに思います。

(問)
自然利子率についてお伺いしたいんですけれども、多角的レビューで日銀のスタッフの方の推計ということで自然利子率は-1.0から0.5%程度ということで、これ六つのモデルで推計したもので、それぞれについて幅を持ってみる必要があるということを承知したうえでご質問なんですけれども、足元に実質金利が非常に深いマイナス圏であるにもかかわらず、景気・物価があまり浮揚感がないという状況下で、自然利子率の実際のところっていうのは推計値よりも低いんではないかと、こういう見方がありますが、総裁はどのように考えてらっしゃるでしょうか。

(答)
おっしゃるように、結局、基調的物価上昇率みたいなものがなかなか加速はしていかないということの一つの解釈が、自然利子率がだいぶ低いところにあるんではないかと。もちろんものすごい低いということでなくても、推計の範囲の中の下の方にあるんではないかというのが一つの解釈だと思います。ただ、より私どもが可能性がありそうだなと考えているのが、物価・賃金が上がりにくいことを前提にした賃金・価格設定行動、あるいはもうちょっと単純に言ってしまえば、基調的なインフレ期待のようなものですが、これがなかなか変わらなかったのが少しずつ変わっている、しかしそこがゆっくりとしかまだ変わっていないというところかなというふうに思っております。

(問)
多角的レビューの中でですね、この2013年以降の大規模緩和について、全体としてみればわが国経済にプラスだというふうに総括してます。副作用についても言及をされてますが、プラス・マイナス総じて見ればプラスだったというご評価ですが、もし、植田総裁が2013年4月にですね立ち戻って、さらから金融政策を判断するということになったら、また同じことやったんでしょうか。

(答)
これをお答えするのは何かある種公平でないと言いますか、つまり私はレビューをみていますので今、その知識を持ったうえで答えるということになるのに対して、2013年当時の政策担当者は、そういうレビューの結果を当然みていないわけで、そのみていない、あるいはやったらどういうことが起こるかということが十分には分からない中で、今でも分からない面は多いですけれども、決断しなければいけなかったということ。

(問)
レビューをみた植田総裁が、タイムマシーンで2013年4月に戻ったときにどう判断されるかという質問です。

(答)
そういうご質問ですか。それは、先ほど来のご質問と重なると思いますけれども、ある種、将来同じようなことをするかどうかという点に関わってくると思いますけれども、そのときの経済情勢次第であるというふうに言わざるを得ないかなと思います。ただ、申し上げられることは、大規模緩和のようなことをやった場合に、期待物価上昇率に与える効果のところは特に思っていたほど確実ではなくて不確実であるということを認識しつつ、それから副作用もいろいろある、しかも現状まだ全部は出きっていないかもしれないと。そういうことを認識しつつ、決定していくということになるかと思います。

(問)
今後の点検ポイントとして挙げられた春闘のモメンタムについてお伺いします。連合は、回答の引き出しのヤマ場を3月の11日から13日に設定しています。3月の決定会合は18日、19日に予定されています。ヤマ場より前に、経営者の発言などがあるにしても、集計データとして春闘全体のモメンタムを確認できるのは、このヤマ場の時点が最初になるのではないでしょうか。

(答)
春闘のモメンタムというふうに申し上げてますのは、春闘全体の姿が、例えばかなりの程度3月におっしゃるように判明するんだと思いますけれども、そこまで至らなくても今年、来年になりますが、の春闘はどれくらいの勢いかっていうことがその手前である程度分かる可能性ということも考慮に入れたうえで、こういう表現を用いております。

(問)
多角的レビュー読ませて頂きまして、なぜかスカートの丈が短くなると景気が良くなると、100年ぐらい前に流行ったのかな、経済理論を思い出しましたけど、日銀総裁は日本経済の主治医であられると思うんですが、レビューからちょっと私は受け取りにくかったのは、日本経済の病状です。金融政策を正常化されているわけですから、当然回復はしてきてるんだろうと思いますけれども、完治されたのか、それとも回復途上なのか、あるいは急性疾患からはですね、回復したんだけれども、例えば糖尿病のように慢性疾患に陥りつつあるのかどうか、もし慢性疾患なんだというような例えが使えるのであれば、これはもう使えない薬があるということになるわけですが、今回レビューされたものも含めて、金融政策の中に日本経済には使えないものが出てきていると言えるんでしょうか。病状を教えて頂けたらと思います。

(答)
病気と投薬ということだと思いますけれども、病気の中で私どもが治療の対象としたいというふうに考えておりますのは、物価の安定性を病気といいますか、こういうふうにしたいというふうに考えているのは物価の安定性を取り戻すということでございます。それは2%のインフレ率を持続的・安定的に維持する状態になるかどうかということでございます。これに対して、他の病気も当然日本経済にはあって、生産性上昇率が十分かどうかとか、人口成長率がマイナスであるとか、そのもとで社会保障はどうなのかというようなことがいろいろあるかと思います。こちらには金融政策の様々な手段ではほとんど効果がなかったり、少ししか効果がないということであるかというふうに思っております。

(問)
日銀のコミュニケーションポリシーについてお聞きしたいんですが、7月の利上げの後のマーケット混乱を受けて、日銀の市場の対応についていろんな批判的な議論があって、9月の決定会合では様々な論点も示されました。ただその後、今回の日銀の12月の決定会合に向けた利上げの予想の織り込み度合いもすごく揺れたりしてですね、必ずしも日銀の意図が正確に伝わってない印象を受けます。一連の問題の所在はどこにあって、日銀としてはどういう対応策が必要で、どういうことをされようとしているのか。その辺りについてちょっとお聞かせ頂けますでしょうか。

(答)
基本的には当然決定会合の結果は、決定会合の日にならないと分からないわけですし、若干事前に分かっても、それを事前に何らかのかたちで発表するということは法律違反にもなりますので、そういうことではなくて、コミュニケーションの基本は、私どもの物価・経済見通し、あるいは物価・経済に関する認識をきちっと伝えていくこと、それから[政策]反応関数を具体的にきちっと書くことはできないというふうに最初の方で申し上げましたが、そうであっても、金融政策の基本的な考え方を丁寧に誤解が生じないように説明していくということしかないのかなというふうに思っています。そのために既に発表はしていると思いますが、ボードメンバーによる講演等について、時期を平準化するとか、スケジュールを早期公表するというようなことで情報発信が途切れない、あるいはどっかに偏らないようにするような工夫は少しずつしてきておりますし、記者会見でもどういう指標に注目しているかというようなことについても、これまで以上に少しずつ丁寧にお話しするように心掛けているつもりですが、引き続き努力したいと思っております。

(問)
最近と先行きの供給制約とですね、物価の関係について伺いたいんですけれども、この先賃金と物価の好循環が強まらずに供給制約が高い水準で維持あるいは強まるということで物価上昇圧力が高まった場合、つまりその景気がそんなに上回らなくても物価上昇率が高まった場合も、利上げというのは選択肢となり得るのか、その点について考えを教えてください。

(答)
これは単純なケースで申し上げますと、人手不足はある種の供給制約になるわけでございます。これが賃金上昇の一つの要因になってることは、否定できないと思います。そうしたことによる賃金上昇、あるいはそれが物価に影響を与えていくということが、ある程度起こってると思いますが、それは当然私どもの物価安定の観点から考慮して、場合によっては対応していくという現象であるというふうに思っております。

(問)
少し先の話で恐縮なんですけれども、0.5%よりもその先の利上げについてどう考えていらっしゃるのかということについてお伺いしたいと思います。過去30年にわたって政策金利の最高到達点は0.5%で、そこから先の利上げというのは、0.5%までの利上げとは局面が異なるという指摘があります。総裁は7月の会見で0.5%は壁として意識していないとおっしゃっていましたけれども、こうした指摘を踏まえても、なお引き続き壁として認識していないという考えに、今も変わりはないのでしょうか。その辺りのお考えをお願いします。

(答)
0.5%という水準に特に意識は持っていませんけれども、金利を引き上げていくにつれて、当然中立金利を一定としますと、中立金利に近づいていくわけで、近づいていけばいくほどいろんなことに気を配って、その先利上げをするのかどうかということは考えていかないといけない。一つ一つ利上げをしていくときにその影響を常に注意してみていますが、一層注意深くみていかなくてはいけない段階に入るところがどっかで来る、あるいは徐々に来るということは常に意識しております。

(注)会見では「加重平均」と発言しましたが、正しくは「加重中央値」です。

以上