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支店長会議総裁開会挨拶要旨(2012年1月)

2012年1月16日
日本銀行

(1)わが国の経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、持ち直しの動きが一服している。すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても底堅く推移している。一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響もあって、横ばい圏内の動きとなっている。企業の業況感については、内需関連業種に底堅さがみられるものの、全体としては、改善の動きが鈍化している。

(2)先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きになるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。

(3)物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっており、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。

(4)景気のリスク要因のうち、最大の要因は、引き続き、欧州ソブリン問題である。この問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れをもたらす可能性がある。このほか、新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。海外金融経済情勢を巡る以上の不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。
 物価面では、国際商品市況の先行きについては、上下双方向に不確実性が大きい。また、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。

(5)この間、国際金融資本市場では、引き続き緊張度の高い状態が続いているが、資金市場では、6中央銀行による協調対応策やECBによる3年物のオペの実施などを受けて、短期のドル調達金利が低下するなど、幾分改善する動きもみられる。

(6)わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。わが国金融機関の資金調達にも問題は生じていない。もっとも、欧州ソブリン問題が金融資本市場の連関等を通じてわが国に波及するリスクをはじめ、わが国金融システムを取り巻くリスク要因には、今後とも十分な注意が必要である。

(7)日本銀行は、資産買入等の基金の規模を累次にわたり大幅に増額し、そのもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めている。また、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」1に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針を明らかにしている。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。

  1. 「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」