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【挨拶】第88回信託大会における挨拶

日本銀行総裁 黒田 東彦
2013年4月15日

目次

はじめに

本日は、第88回信託大会にお招きいただき、誠にありがとうございます。信託業務に携わる皆様方におかれましては、日頃から、企業や家計の様々なニーズに応えた、きめ細かな金融サービスの提供を通じ、日本経済の発展に貢献されています。こうしたご努力に対し、日本銀行を代表して、心より敬意を表したいと思います。また、皆様方には、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なご協力を賜っています。この席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

経済・物価情勢と金融政策運営

折角の機会ですので、私からは、まず、最近の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営について簡単にお話しします。

わが国経済は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられています。先行きについては、堅調な国内需要と海外経済の成長率の高まりを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。物価面については、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、足もと、前年の耐久消費財の動きの反動から小幅のマイナスとなっていますが、予想物価上昇率の上昇を示唆する指標がみられています。また、ここ数か月、グローバルな投資家のリスク回避姿勢の後退や国内の政策期待によって、金融資本市場の状況は好転しています。

日本銀行は、今月初の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」を導入しました。日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現します。「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できます。これらは、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えています。

信託業界への期待

次に、信託業界の皆様方に期待するところを申し上げます。

信託という機能は、リスクの遮断や財産管理といった多様な金融ニーズに対応する仕組みを作り出せるという柔軟性を備えています。こうした特性を活かしながら、企業の再生支援や資金調達の多様化など、企業が直面する経営課題に応じた解決策を積極的に提供したり、少子・高齢化社会の金融ニーズを背景とした新たな信託サービスを展開していくことにより、わが国の成長力の強化に貢献されることを強く期待しています。

もちろん、こうした機能を存分に発揮する上では、金融機関としての適切なリスク管理が前提となります。わが国の金融システムは、全体として安定性を維持していますが、国際金融市場は依然として不安定要素を抱えていることから、市場環境の変化に備えたリスク管理体制を、平時から構築しておくことも重要です。

冒頭申し上げたとおり、日本銀行は、今月初め、従来とは量的・質的に次元の異なる新たな金融緩和策を打ち出しました。こうした金融緩和の効果をわが国の経済成長に繋げていくには、金融機関の皆様方が、金融面から企業や家計の活動を支援していくことが不可欠です。皆様方の積極的な取り組みとご協力を期待しています。

おわりに

最後に、皆様方のますますのご発展を祈念し、私のご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。