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【挨拶】 G20財務大臣・中央銀行総裁代理会議における挨拶の邦訳

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日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年1月17日

本年、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の共同議長として、麻生大臣とともに、皆様と一緒に仕事できることを、大変光栄に思います。

G20が設立されたのは、今から20年前の1999年のことでした。この年は、アジア通貨危機から2年が経過し、ユーロ通貨が導入された年でもあります。私は当時、財務官として、ベルリンで開催されたG20の設立会議に出席しました。当初の主な目的は、新興国を含む世界経済のシステム上重要な国・地域間で協力を促進し、安定的で持続的な世界経済の成長を実現するというものでした。その後、2008年の世界金融危機を受けて首脳会議も行われるようになり、G20は、危機への政策対応を各国で協力して実行するにあたり、大変重要な役割を果たしました。世界経済が危機から回復すると、G20は、「強固で、持続可能で、均衡ある、かつ、包摂的な成長(Strong, Sustainable, Balanced, and Inclusive Growth)」を促進するため、幅広い問題について議論するようになっています。

このようにG20の役割や議題は変遷してきましたが、その中にあっても一貫して重視してきた価値観として、私自身がG20に創設以来長年関わってきた経験を踏まえ、3点指摘したいと思います。

第1に、財・サービス・金融における国際的な取引の拡大は、各国にあまねく恩恵をもたらすということです。国際貿易や国際資本フローは、経済成長や生産性の向上をもたらします。そうした正の効果を多くの人々が享受できるよう、また、それらがもたらしうる負のインパクトを最小化するよう、政策を運営していく必要があります。

第2は、将来を見据えて、中長期的な政策課題への対応を準備しておく必要性です。例えば、今年の日本の議長国下では、高齢化への政策対応について議論します。日本は世界で最も高齢化が進んだ国ですが、遅かれ早かれ、他の国も同様の状況に直面します。高齢化社会に対応するためには、財政、金融、構造政策を含め、検討すべき多くの政策課題があります。G20は、こうした問題を議論し、相互に学び合う場として適しています。

第3に、成長の果実を公正かつ平等に社会全体に行き渡らせること、すなわち包摂的な成長という考え方の重要性です。これまで、G20では、低所得国の全体的な生活水準を持続的に向上させるための政策対応について議論してきました。最近の状況に鑑みると、これに加えて、先進国における不平等の拡大にも対処していく必要があります。

これから二日間、またそれに続くG20の会議で、6月に福岡で開催される財務大臣・中央銀行総裁会議に向けて、実り多い議論が行われることを願っています。今後の会議で、皆様と再会できることを楽しみにしています。

ご清聴ありがとうございました。