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【挨拶】最近の金融経済情勢と金融政策運営徳島県金融経済懇談会における挨拶

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日本銀行副総裁 雨宮 正佳
2021年12月8日

1.はじめに

日本銀行の雨宮でございます。本日は、徳島県の行政および金融・経済界を代表する皆様とお話しする機会を賜り、誠にありがとうございます。皆様には、日頃より、私どもの徳島事務所および高松支店の様々な業務運営にご協力いただいております。この場をお借りして、改めて厚くお礼申し上げます。

新型コロナウイルス感染症の発生から、はや2年が経過しようとしています。この間、こうした意見交換は、オンライン形式での開催を余儀なくされてきました。本日は、こうして実際に当地を訪れ、感染症という厳しい状況の中にあっても、地域経済の活性化に向けて前向きに取り組んでおられる皆様と、直接向き合ってお話しできることを大変嬉しく思っています。

皆様との意見交換を始めるにあたり、まず、私から、経済・物価情勢に対する日本銀行の見方をご説明したあと、最近の企業を取り巻く金融環境と金融政策運営の考え方についてお話しします。

2.経済情勢

中心的なシナリオ

はじめに、経済情勢です。

内外における感染症の影響は、新たな変異株であるオミクロン株の発生もあって、まだまだ先行きを見通せる状況にはありません。また、後ほど申し上げるとおり、世界経済も、インフレなどの様々な問題があり、見通しにくい情勢にあります。こうした不確実性が高い状況ですので、以下では、まず、中心的と考えられるシナリオを申し述べたうえで、その中心的なシナリオから乖離し得るリスク要因について、詳しくご説明します(図表1)。

わが国の経済は、実質GDPの水準でみると、昨年4から6月期をボトムに水準を切り上げてきましたが、本年入り後は、足取りの鈍い状態を続けています。直近の7から9月期も、やや大きめのマイナス成長となりました。この背景としては、まず、夏場のデルタ株の流行により、飲食や宿泊などの対面型サービスを中心に、個人消費の低迷が長引いたことが挙げられます。さらに、東南アジアでの感染拡大に伴う部品調達の遅れから、自動車関連を中心に、従来堅調であった輸出や生産が弱い動きとなったほか、こうした供給制約が耐久財の消費や設備投資も一時的に下押ししたことも影響しています。もっとも、私ども日本銀行の中心的なシナリオとしては、来年にかけて、わが国の景気の回復傾向が次第に明確になってくると予想しています。そのように考える理由は、3点あります。

第1に、供給制約の影響は一時的であり、そのもとで企業部門の前向きな循環は維持されると予想されることです(図表2)。輸出や生産は、このところ弱い動きとなっていますが、これは、あくまでも、部品不足という供給サイドの問題に起因しています。海外経済は、先進国を中心に力強い回復を続けており、企業が直面している需要自体は、デジタル関連を中心に堅調です。このため、部品の供給が再開されれば、輸出や生産は、再びしっかりと増加していくと考えるのが自然です。実際、今回のサプライチェーン障害の直接の原因となっていた東南アジアの感染状況は改善傾向にあり、現地の工場では生産再開の動きが進んでいます。今後は、需要を満たすための挽回生産に加えて、大きく取り崩された在庫の復元に向けた動きも、先行きの生産活動を押し上げていくことが期待されます。こうしたもとで、既に感染拡大前の水準を回復している企業収益は、先行き一段と増加していくことが見込まれます。また、企業の設備投資も、デジタル化や脱炭素化に向けた取り組みもあって、積極化していくと考えられます。

第2は、個人消費が、長らく続いてきた厳しい局面を脱し、ようやく持ち直しつつあることです(図表3)。ワクチン接種率が米欧を超える水準まで上昇し、感染者数も減少する中、10月からは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった公衆衛生上の措置が解除されています。こうしたもとで、景気ウォッチャー調査や携帯電話の位置情報など、速報性に優れたデータによれば、個人消費は、飲食や宿泊などの対面型サービスも含め、10月以降、回復に向かっています。この間、雇用者所得は、正規雇用の増加や人手不足感の強い業種の賃金上昇を反映して、増加に転じています。また、感染症下で消費活動が制約された結果として、家計部門全体でみれば、かなりの額の貯蓄が蓄積しています。こうした所得や貯蓄が、これまで抑制されてきた対面型サービス等を中心に消費支出に向かっていけば、消費関連企業の売上の増加とそこで働く人々の賃金上昇をもたらし、これがさらなる消費の増加を後押ししていく、という前向きな循環に繋がっていくと期待されます。

第3は、先月に策定された政府の経済対策の効果です。具体的にどの程度経済を押し上げるかについては、今後、補正予算の内容なども見極めながら精査していくことになりますが、金融政策と財政政策の相乗効果、いわゆる「ポリシーミックス」の観点から、次のようなことが言えます。すなわち、日本銀行は、現在、長短金利の水準が低位で安定的に推移するよう、強力な金融緩和政策を推進しています。こうした状況において、政府が財政支出を拡大しても、基本的に金利の上昇は抑制されますので、景気の刺激効果は大きくなります。今回の経済対策についても、このような効果が働いて、景気を下支えすることが期待されます。

以上をまとめますと、来年にかけては、これまで下押しに作用してきた供給制約と感染症の影響が和らいでいくに伴い、経済対策の押し上げ効果も加わってきて、経済全体の回復傾向は次第に明確になっていく、というのが中心的な見通しです。

リスク要因

もっとも、こうした見通しについては、冒頭述べたように、きわめて不確実性が高いことも事実です。そこで、以下では、どういうリスクを意識すればよいか、そのポイントを述べたいと思います。

第1に、ウィズコロナのもとで、サービス消費の持ち直しが順調に進むかどうか、依然として不透明感があります。先ほど申し上げたとおり、飲食や宿泊などの対面型サービス消費は、持ち直しつつありますが、企業への聞き取り調査などによれば、人々の感染症への警戒感は根強く、大人数での忘年会や団体旅行は手控えられている模様です。また、欧州の一部諸国等では、ワクチン接種の進捗にもかかわらず、感染が再び急拡大しているほか、新たな変異株であり感染力が強いとされるオミクロン株の発生も報告されています。わが国家計の高齢者を中心としたリスク回避姿勢の強さを踏まえると、消費の回復力には引き続き注意が必要です。

第2は、供給制約の影響が拡大したり、長期化したりするリスクです(図表4)。先ほど申し上げたとおり、東南アジア発の部品不足の問題は、解消に向かっています。もっとも、デジタル関連財を中心に、需要の急激な拡大に供給能力が十分に追い付いていない、という根本的な問題は残っています。この問題の解決には、設備投資によって供給能力を高める必要があり、ある程度時間がかかる可能性があります。とくに半導体については、5G通信や自動車の電動化といった従来から続くデジタル化のトレンドに、感染症をきっかけとしたオンライン需要の拡大が重なったため、需給はかつてないほど逼迫しています。このため、今後期待される挽回生産が、半導体などの部品不足により制約される可能性を意識しておく必要があります。このほかにも、グローバルには、海上輸送などの物流の停滞や、米国等における人材不足など、様々な供給制約が発生しています。基本的には、感染症の影響が和らぐにつれて、需要の偏りや生産・流通面でのボトルネックも解消に向かうとみていますが、供給制約がどのぐらい残るのか、注意深く点検していく必要があります。

第3に、海外経済の動向です。海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつも、先進国の積極的なマクロ経済政策に支えられて、全体として堅調な回復を続けていくと予想しています。もっとも、米欧では、高めのインフレが当初の予想以上に長引いており、市場では、金融緩和の縮小が前倒しされる可能性も意識されています。IMFは、直近の世界経済見通しの中で、世界のインフレの先行きには「大きな不確実性がある」と警鐘を鳴らしています。中国経済についても、不動産セクターの債務問題に加えて、中長期的な成長力の低下が懸念されています。こうした動きが、国際金融市場への波及等も通じて、海外経済の下振れに繋がらないか、注意が必要です。

このほか、海外経済に関連するリスク要因として、資源価格上昇の影響にも触れておきたいと思います(図表5)。このところ、資源価格は、原油や天然ガス、銅など幅広い品目で、はっきりと上昇しています。この間、為替相場が円安方向の動きとなっていることも、円建てでみた資源価格の押し上げに作用しています。資源の多くを輸入に頼っているわが国では、資源価格の上昇は、その点だけをみれば、所得が資源の輸出国に流出することを意味します。しかし、これだけでは、資源価格上昇の影響の一面しか捉えていません。日本経済全体への影響を考えるうえでは、資源価格の上昇がなぜ生じているか、その背後の経済環境にまで遡ることが重要です。例えば、資源価格の上昇が、世界経済の回復を契機とした需要の拡大を伴っているのであれば、グローバルに展開する企業は、輸出の増加や海外収益の改善を通じて、プラスの影響を受けることとなります。また、これらのグローバル企業が、設備投資や従業員への賃金の支払いを増やせば、日本経済全体にもプラスの影響が波及していきます。この点、今回の局面における資源価格上昇については、様々な要因が作用しています。日本銀行スタッフの定量的な分析によると1、産油国の減産など「供給要因」も資源価格の押し上げに作用していますが、基本的には、世界経済の回復に伴う資源需要の拡大という「需要要因」の影響が大きくなっているように窺われます。もとより、こうした分析の結果は、相当な幅を持ってみる必要がありますが、IMFなどの国際機関が今年の世界経済について、長期平均を大きく上回る成長を見込んでいることとも整合的です。したがって、日本経済全体でみれば、世界的な需要拡大によりプラスの影響を受けやすい製造業を中心に、収益の改善基調は損なわれないとみています。もっとも、収益への影響は、業種や企業規模のほか、個々の経済主体によっても異なります。例えば、内需型企業の多い非製造業や中小企業では、輸入コストの上昇を通じたマイナスの影響が大きくなりやすいと考えられます。日本銀行としては、最近の資源価格の上昇が、こうしたマイナスの影響を受けるセクターの収益の悪化などを通じて、わが国経済の回復基調に悪影響を与えないか、注意深くみていく考えです。

  1. 詳細は、日本銀行『経済・物価情勢の展望』(2021年7月)のBOX2を参照。

3.物価情勢

次に物価情勢に話を移します(図表6)。

ただ今述べた資源価格の上昇に、グローバルな財需給の引き締まりも加わり、わが国の企業間で取引される財の価格動向を表す国内企業物価は、10月には前年比+8%と、1981年初の第2次オイルショック時以来の高い上昇率となっています。一方、わが国の家計が直面している価格動向を捉えた消費者物価を、生鮮食品を除くベースでみると、エネルギー価格上昇の影響を受けているにもかかわらず、最近ではゼロ%程度となっています。これは、米国の消費者物価が前年比+6%程度、欧州が+5%程度の上昇となっていることと比べると、際立って低い伸びと言えます。

わが国の消費者物価の弱さの理由を探ってみると、そもそも、需要の回復が、個人消費を中心に、米欧よりも遅れていることのほか、わが国特有の構造的要因も作用していることが分かります。まず、わが国の企業は、米国などと異なり、感染拡大時にも、雇用調整助成金等も活用しながら、正規雇用者を中心に労働力を企業内に維持し続けました。このため、日本企業には、需要が回復しても、速やかに製品やサービスの供給を増やす余地が残っています。また、わが国の企業や家計において、過去のデフレ期に定着した、「価格は上がりにくい」という考え方や慣行が、今なお根強く残っていることも指摘できます。

それでも、基調的な物価上昇圧力は、わが国においても、徐々にではありますが、高まっています(図表7)。例えば、携帯電話通信料は、本年春の大手キャリアによる低価格プランの導入などにより、消費者物価全体を-1.5%ポイント程度押し下げています。こうした一時的な要因を除いてみれば、消費者物価は、緩やかにプラス幅を拡大しているとみることが出来ます。

この間、企業の価格設定スタンスにも変化がみられ始めています。日本銀行の短観で、企業の仕入価格と販売価格に対する認識をみますと、過去には、仕入価格が上がっても、販売価格はなかなか思うように上げられない局面もみられましたが、最近ではそうした状態は緩和されているように窺われます。すなわち、今次局面では、需要が堅調な海外市場を含め、従来と比べれば、仕入コストの上昇を販売価格に転嫁できている企業も増えてきています。鉄鋼などの素材業種では、かねてより、仕入コスト上昇分の一定割合を価格転嫁する慣行が定着していますが、その他の業種でも、こうした動きがどの程度拡がっていくかに注目しています。

4.企業を取り巻く金融環境と日本銀行の金融政策運営

金融環境

ここからは、日本銀行の金融政策運営についてお話しします(図表8)。

まず、金融政策の効果波及の出発点である、企業を取り巻く金融環境から、ご説明します。昨年の感染症の拡大直後には、先行き不透明感の高まりから、予備的な資金需要が急速に増加するとともに、売上の減少から、企業等の資金繰りは大幅に悪化しました。また、内外の金融市場の動きも、大きく不安定化しました。こうした状況に対応するため、日本銀行は、昨年3月以降、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の潤沢かつ弾力的な供給、(3)ETF、J-REITの買入れの「3つの柱」による強力な金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めています。このうち、特別プログラムでは、感染症対応融資を行う金融機関に対し、有利な貸付条件で資金を供給するオペレーションと、CP・社債等の買入れの大幅な増額という、2つの時限措置によって企業等の資金繰りを支援しています。

こうした日本銀行の対応に加え、政府の資金繰り支援や金融機関の取り組みも相俟って、企業の資金調達環境は、全体として緩和的な状態が維持されています(図表9)。大企業の有力な資金調達手段であるCPや社債の市場では、短観のCP発行環境判断等にみられるように、発行環境はきわめて良好です。貸出市場では、銀行の貸出残高の増加ペースは鈍化していますが、これは、大企業を中心に感染拡大後に予備的に確保した借入金の返済が進んでいるためであり、企業の資金繰りの落ち着きを示す動きだと考えています。

一方、中小企業を取り巻く金融環境にも、改善傾向が窺えますが、一部では、資金繰りに厳しさが残っています(図表10)。とくに、感染症の影響を強く受ける対面型サービスの中小企業は、資金繰りの改善が遅れており、短観の資金繰り判断の指標は、全産業と異なり、なおマイナスとなっています。これは、資金繰りが「苦しい」と答える企業の割合が、「楽である」と答える企業の割合を、上回っていることを意味します。こうしたもとで、企業からみた金融機関の貸出態度は、大企業・中小企業向けともに積極的であり、民間金融機関は、本年3月末に無利子・無担保融資の新規申込みが終了した後も、貸出運営などを通じて、取引先企業の資金繰り支援を行っていると認識しています。

以上のように、企業を取り巻く金融環境は、対面型サービス業など一部の中小企業になお厳しさが残っていますが、全体としては改善しています。日本銀行の特別プログラムの期限は、来年3月末となっていますが、その後の対応については、12月短観等を含め、企業金融の動向等を点検したうえで、適切に判断していきたいと考えています。

金融政策運営

そのうえで、先行きの金融政策運営の考え方についてご説明します(図表11)。

先に申し上げたとおり、基調的な物価上昇率が徐々に高まってきているとはいえ、わが国のインフレ率は2%の「物価安定の目標」を大きく下回っています。先行き、日本銀行の見通しでは、現在の見通し期間の終盤である2023年度まで、日本の消費者物価の上昇率は、1%程度にとどまると予想しています。日本銀行としては、今後も、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、強力な金融緩和を粘り強く続けていく方針です。また、当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる姿勢にも変わりはないことを強調しておきたいと思います。

このように申し上げると、米欧の中央銀行は最近、金融緩和の修正に向けた動きを示しているのに、日本はその必要がないのかとのご指摘を受けることがあります。幾つかの中央銀行は、資源価格上昇や供給制約に由来する物価上昇にどのように対応するかという、古くて新しい問題に直面しています。物価の上昇が一時的なものであれば、中央銀行はこれを許容し、金融緩和を続けて景気のサポートに専念するのが基本的な考え方です。一方、エネルギー以外の製品やサービスの価格が幅広く上昇したり、賃金や予想物価上昇率等への、いわゆる「2次的な波及」が懸念されたりする場合には、中央銀行はこれを抑制すべく、金融緩和度合いを縮小することも考えられます。この点、米欧の中央銀行は、インフレ率が目標を上回って高止まりする中で、現行の金融緩和を維持して景気の回復を引き続きサポートするか、2次的な影響を抑えるべく金融緩和の縮小に転じるか、難しい選択に迫られているのが実情です。これに対し、これまでみてきたようなわが国の物価情勢に照らせば、日本銀行は、今のところ、大規模な金融緩和を修正する必要はないことがお分かりいただけると思います。このように、各国の中央銀行がそれぞれの国・地域の経済・物価情勢に応じて政策運営を行うもとで、金融政策の内容や方向性に違いが生じるのは当然であり、このことはむしろ、各国の経済ひいては世界経済の安定に資するものと考えています。

5.徳島県経済の現状と展望

最後に、徳島県経済について申し上げます。

現在、徳島県の景気は、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐもとで、持ち直しています。個人消費は持ち直しの動きがみられるほか、生産も増加しています。先行きについては、感染症動向など不確実性が高い状況にありますが、引き続き持ち直しが続くと見込んでいます。

徳島県経済を巡っては、中長期的には、他の地域と同様に、人口減少や高齢化の進展といった構造的な問題に加え、デジタル化などコロナ禍が浮き彫りにした課題などに直面しているほか、世界規模で関心が高まっているSDGsを意識した取り組みも求められています。地域が持続可能な発展を実現していくためには、これら課題への対応が必要ですが、当地では、時代を先取りする形で逸早く実践され、先進的モデルとして国内外で注目を集めている取り組みが幾つもあります。

例えば、国内屈指の光ブロードバンド環境の整備によって、IT関連企業がサテライトオフィスを開設する動きが県内各地に拡がっていると聞いています。また、「葉っぱビジネス」で有名な上勝町では、18年前の2003年、日本の自治体で初めて、ごみをゼロにすることを目指す「ゼロ・ウェイスト」宣言を行い、現在も「環境問題を学べる町」として注目が集まっています。

このほか、当地は、省エネ・省電力化への貢献が大きいLEDの関連企業が150社余り集積する、世界有数のLED先進地域でもあります。LEDを中心とする産業振興と新産業創出、人材育成に向けて、企業や大学が連携して取り組みが推進されています。ジェンダー平等の観点では、企業経営者や管理職のほか、審議会委員における女性の比率が全国トップクラスにあるなど、徳島県は女性が広く活躍している地域と言えます。

徳島県の経済の歴史を振り返ってみますと、気候風土を活かした産業として、かつて藍産業や製塩業が隆盛を誇りました。これらは時代とともに変化を遂げ、藍が栽培されていた地域では今でも農業が盛んに行われています。化学工業は、製塩時の原料加工技術等をルーツの一つとしており、当地経済を代表する産業となっています。このように当地には、時代の変化に合わせて革新を図り、サステナブルな発展を遂げてきた歴史があります。徳島県経済が、今後も時代を先取りした取り組みを推進し、益々発展していくことを願っております。

日本銀行としても、徳島事務所や高松支店を通じて情報収集や意見交換を行い、地域活性化に向けた様々な取り組みに少しでも貢献できるように努めてまいります。ご清聴ありがとうございました。