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「金融取引の多様化を巡る法律問題研究会」報告書

――金融規制の適用範囲のあり方――

2016年6月28日
金融取引の多様化を巡る法律問題研究会

  • (注)2017年4月20日に「金融研究第36巻第2号」として公表しました。

要旨

本稿は、日本銀行金融研究所が設置した「金融取引の多様化を巡る法律問題研究会」(メンバー<50音順、敬称略>:飯田秀総、井上聡、大橋和彦、加毛明、神田秀樹<座長>、道垣内弘人、藤田元康、松下淳一、森田果、森田宏樹、柳川範之、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。

近年、金融取引が多様化しているなかで、それらに対する規制の適用範囲を適切に画定(線引き)することが課題となっている。すなわち、一方で、規制の潜脱を防止することも重要であるが、他方で、規制の適用範囲が過度に広汎になっていたり、不明確になっていたりする場合には、新たな取引を開発しようとする事業者に対して、委縮効果が生じかねない。その両方に配慮するためには、規制すべき取引を規制し、規制すべきでない取引を規制しないような法制度を整備していく必要がある。もっとも、革新的な事業が次々と生み出されるなかで、法制度が金融取引の多様化に対応しきれず、規制すべき取引と規制されている取引との間に、一定のギャップが生じることは避けられない。

こうしたなかで、法解釈がそのギャップを埋める役割を果たすことになるが、その際、規制する法規の文言を基礎とする解釈(文理解釈)を行うだけでは、不十分となるおそれがあるため、必要に応じて、規制が有する本来の趣旨・目的を踏まえた考察(目的論的解釈)を行うことも重要となる。しかし、そもそも金融取引に対する規制の趣旨・目的は、規制する法規の文言上では必ずしも明らかにされていない場合も多い。

以上のような問題意識を踏まえ、本報告書では、法学に隣接する社会科学から得られた知見をも参照しつつ、規制が設けられている趣旨・目的を明らかにすることを通じて、金融取引に対する規制の適用範囲に関して、より説得力のある法解釈や立法論的検討を導くことの可能性について、検討を行っている。

日本銀行から

本報告書の内容や意見は、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。
なお、本報告書に対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、日本銀行金融研究所(E-mail : imes-law@boj.or.jp)までお寄せ下さい。