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日本銀行発券局 総務課改刷グループの仕事 国民の安心を支える改刷、改鋳プロジェクト(2021年12月24日掲載)

2021年9月1日、2024年度上期をめどに発行を開始する予定の新しい一万円券の印刷が始まり、併せて、五千円券、千円券のデザインが披露されました。加えて、11月1日には新五百円貨(新貨)の発行がスタートし、少しずつ従来の五百円貨に代わって日常生活に広まっています。財務省や国立印刷局、造幣局と連携しながら、日本銀行内における改刷、改鋳プロジェクトの中枢を担うのが発券局総務課改刷グループです。最新の技術を採用した新しい銀行券(新券)、新貨の特徴や世間で流通するまでの段取り、さらにはこれらを日々推進している改刷グループの職員の業務をご紹介します。


偽造抵抗力の強化と使いやすさの追求のため最新技術を駆使

「日本銀行券は財務大臣が様式を定めて告示し、それにもとづき国立印刷局が製造して、日本銀行が発行します。2019年に公表され、2021年9月1日に印刷が始められた新券発行プロジェクトの司令塔として、関係各部署と連携しながら、2024年度上期をめどとした発行開始に向けた業務を進めているのが、発券局総務課改刷グループです」

そう説明するのは、グループ長で企画役の中畑孝一さん。現在5名の職員が要となり、新券発行に向けて各種調整を重ねています。

「改刷プロジェクトは長期にわたる上、財務省、国立印刷局のほか、日本銀行内の幅広い部署が関わりますので、スケジュールをきちんと組み立て全員の足並みをそろえることが肝心です。改刷グループは、国民の皆さまの生活に密接に関わることとなる新券の特徴や改刷の意義を広く伝える役割も担っており、非常にやりがいのある仕事です」

約20年ぶりとなる今回の改刷の意義について、中畑さんはこう語ります。

「この20年で、印刷技術は大きく進歩を遂げました。また世界的に見ると、銀行券も、目の不自由な方などに配慮したユニバーサルデザインを強く意識するようになっています。こうした状況を踏まえ、現行よりも偽造しにくく誰もが使いやすい銀行券を目指したのが今回の改刷です。たとえば偽造抵抗力の強化のために、銀行券としては世界初となる3Dホログラムや、より高精細なすき入れ模様を導入。額面の数字を見やすいように大型化し、指の感触で銀行券の種類をより識別しやすくなるような数々の工夫を施しています」

  •  【一万円券】
    新一万円券の表と裏の画像
  •  【五千円券】
    新五千円券の表と裏の画像
  •  【千円券】
    新千円券の表と裏の画像

偽造抵抗力を強化するため、数々の工夫が施された新しい銀行券。発行後の不具合は絶対に許されないという緊張感の中、発行開始を目指して今後も検証作業が続く。

世の中ではキャッシュレス化が進んでいますが、現金の使用は依然として多く、実際、銀行券の発行高は増加の一途をたどっているのだそうです。

「日本における現金へのニーズの高さの背景には、低金利で現金が預貯金に向かいづらい、将来の不安から予備的に現金を保有しているといった、諸外国でも見られる事情に加えて、店舗・ATMなどの現金ネットワークの充実、クリーンで偽造の発生件数が少ない現金への信頼性の高さといった、日本特有の事情もあると考えられます。近年では災害時の決済手段として、あらためて現金の重要性が注目されるようにもなっています。こうした世の中の現金へのニーズがある限り、日本銀行はこれに応える責任があり、偽造抵抗力を強化した新券を発行することは国民全体の利益につながるものと考えています」

  • 1990年度から2020年度までの、銀行券発行高(金額ベース)の推移を示した棒グラフ
  • (出所)日本銀行「時系列統計データ検索サイト」
    キャッシュレス化が進む中でも、銀行券に対するニーズは高く、発行高は増加の一途をたどっている。

過去の経験を振り返りながら長期にわたり進められる改刷のプロジェクト

主査の加藤紀行さんには、改刷プロジェクト全体の流れを聞きました。

「2019年の公表以来、われわれは財務省、国立印刷局と連携しながら様式や偽造防止技術などについて、銀行券としてふさわしい品質を確保しているかの確認を逐次行ってきました。また、これと並行して、改刷に向けて今後検討すべき課題を漏れなく把握するため、前回の改刷の検証を行いました。過去の資料を参照するだけでは、当時の詳細な様子までは確認し切れず困っていたところ、ベテラン職員から経験談を募ったことで状況をリアルに認識でき、取り組むべき課題も見えてきました。苦労話や喜びが昨日のことのように語られ、20年を経ても記憶が鮮明によみがえるほどインパクトの大きい業務だと実感し、プロジェクトに取り組む大きなエネルギーにもなりました」

新たな偽造防止技術については、期待感がふくらむ一方で苦労もあったそうです。

「一枚一枚の完成度はもとより、年間何十億枚もの大量生産において安定した品質を保てるのかどうか、何度も検証を重ねました。ものづくりは皆、同じだと思いますが、ことお金だけに発行後の不具合は絶対に許されません。常に緊張感があっただけに、印刷開始式が各種メディアに大きく取り上げられた際には、苦労が報われた思いがありました。とはいえ、この後もATMやお店のレジ、自動販売機といった金銭機器が問題なく新券を処理できるかどうかなど確認すべき事項は多々あり、発行開始までさらに2年を超える歳月が費やされます。最終的に、国民の皆さまが実際に手に取った際に何の不便もなく使用していただくことが、われわれの目指すところです」

先駆けて発行された新五百円貨のノウハウが改刷に活きてくる

新しい五百円貨の表と裏の画像

少しずつ日常生活に広まっている新しい五百円貨。発行までの準備作業だけではなく、発行後の日々の輸送や備蓄などへの慎重な対応があって初めて、人々が毎日安心して利用できることとなる。

2021年11月1日に発行が開始された新貨にも、新たな偽造防止技術が組み込まれていると話すのは企画役の反保勇さんです。

「新貨の大きな特徴は、三種類の金属を組み合わせたバイカラー・クラッド(二色三層構造)です。縁のギザを一部異なる形状に細工する『異形斜めギザ』の採用は、通常貨幣では世界初の試み。縁の内側には、『500YEN』『JAPAN』の微細文字の加工も施されました」

反保さんが担ったのは、改鋳を進める上で前提となる需給予測。全国32店舗ある日本銀行各支店と綿密なコミュニケーションを取りながらその詳細を検討してきました。

「改鋳時に限らず、本支店の金庫の現金備蓄を勘案し、必要な量をタイムリーに輸送するための回送計画を策定するのも発券局の重要な役割。日々の業務が、国民の皆さまの毎日の安心につながっていると心に刻みながら仕事に取り組んでいます」

2021年度で2億枚、その後も多くの新貨が発行されていく中、改刷も控えているため、今後、日本銀行各店の現金備蓄を巡る事情はより複雑になるのだとか。

「各店の金庫があふれ出さないように、情報をきちんと共有して現金輸送のスケジュールを適切に組み立てていく必要があります。改鋳後の現在は、各店で新貨の備蓄をさらに進めつつ、大量に戻ってくる旧五百円貨を造幣局にお返しするという両面から具体的な段取りを検討・計画しています。苦労は多いものの、改鋳での経験は、改刷準備で直面するであろう新旧の銀行券の入れ替えという課題に対し、確実に活きてくると思います」

日本全国各地で異なる新貨の需要動向を踏まえ支店と密に連携を図る

改鋳にあたり、日本銀行各店の備蓄計画・発行方針の検討を進めてきたのは企画役補佐の永田佳久さんです。

「全国津々浦々、少しでも早く国民の皆さまに新貨を手に取っていただくための仕組みをつくる上でのポイントは、各店での備蓄の確保と、取引先の金融機関にいかに早く支払うかということ。11月1日の発行を目指してまずは貨幣の製造量の検討から始まり、備蓄、支払い当日の事務処理体制の構築など、各店の担当者とともにぎりぎりまで準備を進めました」

貨幣の備蓄で一番大切なのが、先々の動向を的確に読むこと。

「コロナ禍の影響がある現在、需要動向の見通しを立てるのはかなり難しいものがありました。さらには各店で受払の偏りや金庫のスペースの余裕度合いが異なりますので、過去の実績を見ながら従来の五百円貨の受払の動きを予測し、どこまで新貨を備蓄できるか、各店ごとに調整を重ねました。2021年夏には九州をはじめ西日本各地で起きた豪雨の影響で流通経路が遮断され、予定していた新貨の備蓄が幾分遅れたこともありました。ですから無事に発行を迎えられ、われわれの努力が、国民の皆さまのお手元に問題なく新貨が届くという結果に結び付いたことをうれしく思っています」

最新の偽造防止技術をきちんと活かすため重ねられた検証

改刷、改鋳において改刷グループと連携しながら、銀行券自動鑑査機など機械面からの銀行券、貨幣の品質確認を担当している、システム統括グループの主査の早川朋宏さんにもお話を聞きました。

「改刷に向けて、品質確認用のサンプル券(試作品)が完成する前から銀行券自動鑑査機の改修対応に関する検討は始まりました。方針の策定後は、開発・設計、製造、実験(テスト)、メンテナンスなど多くの段階を着実にこなしていかなくてはなりません。この先を見通してそれぞれに要する日程を組み立てるためにも、まずは今回搭載される最新技術をきちんと理解した上で、行内、国立印刷局、委託業者など多数の関係者との調整を重ねています」

サンプル券が完成した後にも、臨機応変な対応が必要だったといいます。

「高度な偽造防止技術が数多く搭載されているため、銀行券の品質確認においては、国立印刷局からのサンプル券が届くたびにデータを取得し、機械で問題なく読み取れるかを何度も確認しながら、追加検証を随時行ってきました。結果と真摯に向き合い、対応策の検討と検証を繰り返す作業を幾度も重ねてきただけに、銀行券の偽造防止技術の搭載などに問題がないことを確認でき、当初の予定どおりに印刷開始式が迎えられたときにはほっと胸をなで下ろしました。とはいえ、今後は、銀行券自動鑑査機以外の現金取扱機器の改刷対応も本格化するため、引き続き関係者が一丸となって準備を進めていく必要があることには変わりはありません」

改鋳に向けたシステムや機械の準備では、コロナ禍の影響を受けたそうです。

「改鋳に向けた準備は、改刷と比べて準備期間が短く、さらにはコロナ禍により日本銀行を含む全国的な業務縮退期間があったため、その分、平時よりも密な情報共有や調整に努めました。そうした中で、無事に各機械のバイカラー・クラッド貨への対応を進めて、新貨の円滑な流通に貢献できていることには、大きな喜びを感じています」

改刷、改鋳の意義を広く伝えるために積極的に続けられる情報発信

写真

プロジェクトメンバーによる打ち合わせの模様。現金が人々の日々の暮らしと密接に関わることを常に意識しながら議論を重ねている。

改刷グループの業務には、改刷、改鋳に関する広報活動もあります。ポスターや新聞など紙媒体がメインだった20年前と大きく変わったのは、インターネットの活用だと中畑さんは語ります。

「今回は日本銀行のホームページに、改刷、改鋳に関する最新情報を掲載し、そこにご案内するため、SNSも積極的に活用しています。新券のデザイン公表の際には、われわれが思っていた以上の反響があり、大変驚きました。もちろん、紙媒体も配布に向けて今後準備を進めることとしており、例えば子ども向けパンフレットには大きな文字やフリガナを採用するなど、読みやすい工夫を行っていきます。同時に、お金で悲しい思いをしていただきたくないというのが、お金を扱うわれわれの願いでもあります。新券発行を悪用した詐欺が生じる可能性もあり、偽造防止技術の詳細や注意喚起を含めて、タイムリーに正しい情報発信を重ねていきたいと思っています」


改刷、改鋳に携わる職員が共通して喜びを感じているのは、自分たちがお金を介して国民とつながり、それぞれの業務が日々の暮らしを支えていること。新貨、新券を手に取った際には、改刷グループの職員をはじめ、日本銀行内外の数多くの人が関わっていることに思いを馳せていただけると幸いです。

(肩書などは2021年9月末時点の情報をもとに記載)