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支店長会議総裁開会挨拶要旨(2012年10月)

2012年10月22日
日本銀行

(1)世界経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退した状態が続いているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。

(2)わが国の経済は、横ばい圏内の動きとなっている。輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。設備投資は、企業収益が総じて改善するもとで、緩やかな増加基調にある。この間、企業の業況感は、海外経済減速の影響などを背景に、幾分慎重化している。

(3)先行きのわが国経済についてみると、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。

(4)物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっており、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。

(5)リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。

(6)わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。わが国の金融システムを取り巻く環境をみると、現状、わが国金融機関の資金調達に大きな影響は生じていないものの、欧州債務問題が金融資本市場の連関等を通じてわが国に波及するリスクなどには、今後とも十分な注意が必要である。

(7)日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。こうした認識のもとで、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。