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平成26年度入行式における黒田総裁挨拶

2014年4月1日
日本銀行

皆さん、日本銀行へのご入行、おめでとうございます。本店と支店、合わせて115名の新しい仲間をお迎えすることができ、大変うれしく感じています。日本銀行の役職員を代表して、心より歓迎の意を表したいと思います。

皆さんもご存知のように、日本経済が抱えている最大の課題は、15年にわたり続いてきたデフレからの脱却です。日本銀行は、今、全行員が一丸となり、持てる力を総動員して、このデフレと戦っています。昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、所期の効果を着実に発揮しており、日本経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっています。たしかに、長年にわたるデフレの中で萎縮した状態にある日本経済に活力を取り戻すことは、大きなチャレンジです。しかし、「物価の安定」を使命とする日本銀行は、どんな困難が待ち受けていようとも、デフレからの脱却を必ず実現させるという強い決意を持って、組織の力を結集して取り組んでいかなければなりません。今日から日本銀行の一員となった皆さんにも、是非、同じ決意を共有して頂きたいと思います。

そのうえで、皆さんが、日本銀行でキャリアを築いていくに当り、当面、意識して欲しいことを、三つ、述べておきます。

一つ目は、新たな課題に積極的にチャレンジしていって欲しい、ということです。

「物価の安定」と「金融システムの安定」という日本銀行の使命は変わりませんが、金融経済のグローバル化、金融商品や取引の多様化・複雑化、情報処理技術の進歩に伴って、日本銀行を取り巻く環境は変化し、取り組むべき課題は拡がっていきます。

日本銀行の職員の一人ひとりが、内外の幅広い人たちと積極的に交流していく中で、先入観にとらわれない洞察力を発揮して、世の中の動きを敏感に感じ取ること、そして、そこから見えてくる様々な課題の解決に向けて、前例にとらわれず、新たな政策や業務に積極的に挑戦していく姿勢が求められています。皆さんには、日本銀行がわが国経済の舵取りを担っていく、そうしたミッションに貢献するという気概をもって、日本銀行員としてのキャリアをスタートして頂きたいと思います。

二つ目は、「プロフェッショナリズム」と「チームワーク」を大事にして欲しい、ということです。

日本銀行は、わが国で唯一、中央銀行業務を担う組織です。中央銀行業務には、金融政策や金融システムの安定確保以外にも、発券、決済システムの運営、調査など多種多様な仕事があります。こうした業務の担い手である日本銀行の職員が備えるべき専門性は、金融や経済に止まらず、法律やシステムなど広範囲に及びます。また、それぞれの専門性を有機的に結びつけて業務のあり方を考え、実現する力が必要となります。皆さんは、学生時代の専門にしても、これまでの人生経験にしても、多様なバックグラウンドをお持ちだと思いますが、自らの関心領域を限定することなく、オープンな姿勢で学び、中央銀行業務のプロを志して努力して欲しいと思います。

また、日本銀行の仕事は、企画から現場の実務に至る、全ての段階の総合力を結集して進められます。そこでは、チームワークがとても重要な要素となります。そのチームワークをいかんなく発揮するためにも、やや逆説的になりますが、まずは一人ひとりが目の前の仕事に全力で取り組んで頂きたいと思います。それにより周囲の人の信頼を勝ち取り、少しでも早くチームの一員として活躍できるよう頑張ってください。

三つ目は、社会人としての「自己管理力」を養って欲しい、ということです。

社会人として、「スケジュールを守る」ことは、基本中の基本です。また、社会人として存分に能力を発揮するためには、心身が健康でなくてはなりません。とくに、社会人になり環境が変わると体調にも変化をきたしやすくなりますので、規則正しい生活を心がけ、健康管理には十分に注意を払って頂きたいと思います。

私からの話は以上です。皆さんの晴れやかな表情を拝見していると、私自身も、力が漲ってくるように感じます。日本銀行は国民経済の健全な発展に貢献するという高い使命感に支えられた刺激的な職場です。そうした使命達成に力を尽くす仲間として、一緒に頑張っていきましょう。皆さん一人ひとりが元気に活躍されることを祈念して、私からの歓迎の挨拶とさせて頂きます。