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【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策

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兵庫県金融経済懇談会における挨拶要旨

日本銀行政策委員会審議委員 布野 幸利
2016年3月23日

目次

1.はじめに

日本銀行の布野でございます。本日は、兵庫県の行政および経済界を代表する皆様方にご多忙の中お集まり頂き、誠にありがとうございます。また、皆様には、日頃から私どもの神戸支店がご支援を頂いており、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

まず私から、経済・物価情勢を概観した後、日本銀行の金融政策などを説明させて頂き、最後に、兵庫県経済について触れさせて頂きたいと思います。その後、皆様から、当地経済の実情に関するお話や忌憚のないご意見を承りたく存じます。どうぞよろしくお願い致します。

2.最近の経済・物価情勢

(1)海外情勢

まず、国際金融市場や海外経済の動向についてお話し致したいと思います。国際金融市場では、昨年末から本年にかけて、原油価格や中国株価の下落を受けて、リスク回避姿勢が強まる展開となりました。こうしたもとで、海外経済は、緩やかな成長が続いていますが、新興国を中心に幾分減速しています。但し、先行きについては、先進国の景気回復の好影響が新興国にも徐々に波及するもとで、海外経済の成長率は緩やかに高まっていくと想定しています。今年1月に公表されたIMFによる世界経済の成長率見通しでも、昨年10月時点の見通しから幾分下方修正されましたが、成長率が緩やかに高まっていく見通し(2015年プラス3.1%→2016年プラス3.4%→2017年プラス3.6%)に変わりはありません(図表1)。

主要地域別にみると、米国経済については、家計支出に支えられて回復傾向にあります。雇用が総じて堅調に拡大する中、個人消費は増勢に幾分鈍化がみられますが、着実に増加しています。また住宅投資も緩やかな増加基調をたどっています。先行きについては、当面、新興国減速の影響などにより製造業は力強さを欠くものの、緩和的な金融環境のもと、堅調な家計支出に支えられた民間需要を中心に成長が続くとみています。ユーロ圏経済については、緩やかな回復を続けています。輸出は新興国の減速の影響などから弱めの動きとなっていますが、個人消費が労働市場の改善などに支えられて増加傾向を続けています。先行きも、緩和的な金融環境のもとで、雇用・所得環境の改善などを背景に緩やかな景気回復を続けるとみています。中国経済は、総じて安定した成長を維持しています。但し、製造業の過剰設備や在庫の調整圧力が根強いほか、IT関連財の需要一服などから外需でも弱めの動きがみられており、輸出・生産面を中心に幾分減速しています。こうした状況の中で、当局は財政支出を中心に景気の下支えに向けた施策を積極的に講じています。先行きは、当局の景気下支え策もあり概ね安定した経路をたどると考えています。新興国経済は、輸出・生産面を中心に減速しています。アジアでは景気刺激策の効果もみられていますが、中国を含む新興国での過剰設備や在庫の調整、IT関連財の需要一服から、輸出や生産が弱めとなっています。また資源価格の低迷は、ブラジルやロシアなど資源国の景気を下押ししています。先行きは、当面、国・地域によるばらつきは残るものの、先進国の景気回復の波及や、景気刺激的な財政・金融政策などを背景に、減速した状態から次第に脱して行くと考えられます。ただ、持ち直しのペースは総じて緩やかなものに止まるとみています。

今後のリスク要因としては、中国をはじめとする新興国や資源国経済の動向に、引き続き不透明感が強いことに加え、資源価格下落の影響もあって、世界経済の成長ペースの不確実性があります。また、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融市場に及ぼす影響、ヨーロッパにおける債務問題の展開や景気・物価動向、又、中近東などにおける地政学リスクなど、先行きのリスク要素は多岐にわたっており、幅広い視点から注視していく必要があると考えています。

(2)日本経済・物価情勢

経済情勢

次に、こうした海外経済のもとでの日本経済についてです。わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けています。実質GDPの成長率は、7~9月は国内民間需要の増加を主因に前期比年率プラス1.4%と潜在成長率を上回るプラス成長となりました。10~12月は暖冬等の影響もあり、前期比年率マイナス1.1%となっています(図表2)。

先行きは、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられますが、家計・企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加していくとみています。このため、わが国の経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えています。すなわち、わが国経済は、2016年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想されます。2017年度にかけては、消費税引き上げ前の駆け込み需要とその反動などの影響を受けて潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持するとみています。具体的な数値で申し上げると、日本銀行が1月に発表した展望レポートにおける政策委員の成長率見通しは、2015年度プラス1.1%、2016年度プラス1.5%、2017年度プラス0.3%となっており、昨年10月時点の見通し対比では、概ね不変となっています(図表3)。

物価情勢

次は、物価情勢です。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格の下落幅と、エネルギー以外のプラス幅とが概ね相殺し、全体として0%程度で推移しています(図表4)。消費者物価の基調的な動きを捉える指標として、生鮮食品とエネルギーを除く指数の前年比をみると、28か月連続でプラスが続いており、最近ではプラス1%を上回る水準で推移しているほか、消費者物価を構成する各品目の前年比について、上昇品目の割合から下落品目の割合を差し引いた指標をみると、昨年春以降、振れを伴いつつもはっきりと上昇しています(図表5)。

物価の先行きについては、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられますが、物価の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくとみています。この間、原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、エネルギー価格のマイナス寄与は次第に剥落していきますが、この前提のもとでは、消費者物価の前年比が、物価安定目標であるプラス2%程度に達する時期は、2017年度前半頃になると見込まれます。具体的な数値で申し上げると、1月の展望レポートにおける政策委員見通しでは、消費者物価の前年比(除く生鮮食品)は、2015年度プラス0.1%、2016年度プラス0.8%、2017年度は消費税率引き上げによる直接的な影響を除いたベースでプラス1.8%となっています(図表3)。なお、昨年10月時点の見通しとの対比では、2016年度は下振れ、2017年度は概ね不変となっています。物価見通しの下振れは、原油価格の想定1を下振れさせたことが背景です。

  1. 各政策委員は見通し作成にあたって、原油価格(ドバイ)は、1バレル35ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて40ドル台後半に緩やかに上昇していくと想定しています。その場合の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比に対するエネルギー価格の寄与度は、2015年度で-0.9%ポイント程度、2016年度で-0.7%~-0.8%ポイント程度と試算されます。また、寄与度は、2016年度後半にマイナス幅縮小に転じ、2017年度前半中には概ねゼロになると試算されます。

3.経済・物価見通しを巡る主な留意点

以下では、こうした経済・物価見通しが実現していくに当たって私自身が注目しているポイントを含めて、経済・物価見通しに関する留意点をお話ししたいと思います。

(1)雇用・所得環境

まず、雇用・所得環境ですが、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに増加しています(図表6、7)。雇用面では、労働力調査の雇用者数は増加しており、女性やシニア層の労働参加も高まっています。そのもとで有効求人倍率は着実に上昇しており、短観の雇用人員判断DIにおける人手不足感も強まっています。失業率も、振れを伴いつつも緩やかに低下しており、このところ3%台前半で推移しています。先行きも、労働需給は着実な改善を続けていく可能性が高いとみています。賃金面では、特に、労働需給の影響を受けやすいパートの時間当たり名目賃金が、最低賃金引き上げの動きもあって、このところ改善が明確となっています。先行きは、労働需給が引き締まり、予想物価上昇率の高まりが明確になるにつれて、賃金には基調的な上昇圧力がかかっていくと考えています。

このような雇用面・賃金面の見通しのもとで、先行きの雇用者所得は、増加ペースを緩やかに高めていくとみています。もっとも、企業収益が高水準にある中、失業率が3%台前半まで低下していることとの対比でみると、これまでのところ賃金の改善の程度は幾分鈍く、労働分配率も低下傾向を続けている点には留意が必要です。

(2)輸出動向

次に、輸出動向についてお話しします。輸出は、足もとでは持ち直しが一服しています(図表8)。具体的には、中国を含む新興国経済の減速の影響などから資本財で弱めの動きが続いているほか、IT関連ではスマートフォン関連が下振れています。但し、自動車関連は、基調的には生産拠点の国内回帰の動きもあって、米欧向けを中心に増加しています。先行きの輸出は、当面、新興国・資源国の期待成長率の低下や資源価格の低迷長期化、それに伴う素材・エネルギー関連の過剰設備の存在を踏まえると、下振れし易い状況にあり、留意が必要と考えています。自動車関連は、先進国向けを中心に、しっかりとした増加を続けるとみられる一方で、資本財やIT分野は、新興国経済の減速の影響から鈍い動きとなり、持ち直しが一服した状態が続く可能性があります。今後とも、世界経済の動向を注視していきたいと思います。

(3)設備投資動向

次に、設備投資動向についてお話しします。企業収益が高水準で推移するなかで、設備投資は緩やかな増加基調にあります(図表9)。12月短観における本年度の事業計画をみると、新興国経済の減速にもかかわらず、設備投資計画は総じて堅調さが維持されています。先行きは、(1)高水準の企業収益、(2)低金利や緩和的な貸出スタンスといった投資刺激的な金融環境、(3)製造業による国内投資の積極化を背景に、緩やかな増加を続けると見込まれ、先行指標となる機械受注統計も緩やかに増加しています。これまで企業は、期待成長率の伸び悩みから、高水準の企業収益との対比で見て、抑制的な設備投資スタンスを維持してきたように窺われますが、今後、期待成長率が緩やかに上昇し、収益力も持続的に改善するもとで、投資スタンスは徐々に積極化していくとみています。もっとも、このところの国際金融市場におけるリスク回避の動きが、企業マインドひいては企業の設備投資姿勢に与える影響にも十分留意していく必要があると考えています。

(4)物価動向

次に、物価上昇率を規定する主な要因であるマクロ的な需給ギャップと予想物価上昇率について、お話しします。第一に、マクロ的な需給ギャップについては、輸出・生産の持ち直しを受けた製造業稼働率の上昇や労働需要の更なる改善などを反映して、改善方向に向かうとみています(図表10)。2016年度は、駆け込み需要による成長率の加速も見込まれるもと、景気拡大に伴う生産要素の稼働状況の高まりを反映してプラス幅を拡大していくと見込まれます。第二に、中期的な予想物価上昇率についてです。マーケット指標や各種のアンケート調査などをみると、このところ弱含んでいますが、企業の価格設定や家計の支出行動をみると引き続き、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみています。企業の価格・賃金設定スタンスには明確な変化がみられており、消費者側も、雇用・所得環境の改善などを受けて、企業の価格改定の動きを受容していると思われます。労使間の賃金交渉においては、一昨年以来、企業業績や労働需給を反映して、賃上げの動きが拡がっています。先行きについても、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、物価安定目標であるプラス2%に向けて次第に収斂していくとみられます。なお、引き続き、原油価格の下落等の影響が、企業や消費者の物価見通しに与える影響については、十分に注意していく必要があると考えています。

4.金融政策運営

次に、金融政策についてお話しします。

日本銀行では、今年1月の政策決定会合において、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しました(図表11、12)。日本銀行は、約3年前の2013年4月に、できるだけ早期にプラス2%の物価安定目標を実現することを約束しており、そのために必要な施策として「量的・質的金融緩和」を導入しました。この「量的・質的金融緩和」は、大規模な長期国債買入れによってイールドカーブ全体にわたって金利低下を促すとともに、プラス2%の物価安定目標に向けた明確なコミットメントとこれを裏付ける大規模な資産の買入れを継続することにより、企業・家計の投資・消費活動を活性化させていくことを主な波及経路としています。また、一昨年の10月末の政策決定会合では、この「量的・質的金融緩和」の拡大を決定しました。さらに、今年1月には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入し、これまで実施してきた「量的・質的金融緩和」に、金利面での緩和オプションを追加し「量」・「質」・「金利」の3方面での緩和手段を駆使することを可能としました。

今年に入り、新興国・資源国経済に対する先行き不透明感や、金融市場の不安定な動きがみられていたところです。こうした動きを背景として、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、これまで着実に改善してきた物価の基調に悪影響が及ぶリスクが高まっていました。このような認識のもと、日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、プラス2%の物価安定目標に向けたモメンタムを維持するため、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定したところです。

日本経済の将来のためには、長きにわたりデフレが続いてきた中で定着してしまったデフレマインドを払拭する必要があります。従って、現状では、金融緩和がもたらす様々な影響について目配りしつつも、プラス2%の物価安定目標の実現に向けて、金融緩和をしっかりと推進していくことが、より重要と考えています。

プラス2%の物価安定目標への道筋は、なお道半ばにあります。こうした状況を踏まえると、今後も物価安定目標の実現をめざし、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を着実に推進することが重要と考えています。また、プラス2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することが私どもの目標ですが、持続的かつ安定的に達成することを考えた場合、物価の上昇とともに賃金も増えていくなど、経済全体がバランスのとれた好循環を維持するなかで、物価目標を達成していく必要があると考えています。日本銀行は、今後ともプラス2%の物価安定目標の実現を目指し、「量」・「質」・「金利」の3つの次元の緩和手段をすべて動員して、しっかりと金融緩和を推進していきたいと思います。

5.日本経済の課題

次に、私なりに、より長期的な視点から、日本経済が置かれている状況を考えてみたいと思います。長きにわたりデフレが続いてきた日本経済が全体として取り組んでいくべき課題は、成長力の強化であると考えています。わが国の潜在成長率は、日本銀行の推計によると「0%台前半ないし半ば程度」にまで低下しています(図表13)。潜在成長率が低下してきた背景には、(1)設備投資の先送りによる資本ストックの伸び率低下、(2)人口高齢化や労働時間減少による労働投入の減少、(3)イノベーションの停滞による生産性の伸び率低下、などが指摘されています。潜在成長率を引き上げるためには、こうした要素を引き上げる取り組みを着実に進めていくことが重要と考えています。

第一に、設備投資については、企業は、将来を睨みながら品質基準や付加価値を見て厳しく選別したうえで、生産を国内回帰させる動きをみせているほか、同時に研究開発分野の拡充も進めています。グローバルなリスクに晒されている多くの日本企業は、リスクを管理しながら持続的に成長する為に、投資を複数の分野にバランス良く且つ戦略的に配分して、独自の競争力のあるサプライチェーンを構築していく過程にあると思われますが、そのもとで日本の重要性が再認識されつつあると見ています。即ち、「日本企業にとって日本でしか出来ないことがある」との見方が広まって来ていますので、こうした観点を踏まえた投資行動が、より積極化していくことを期待しています。

第二に、労働投入については、労働需給が逼迫した状況が続いています。最近では、製造業、非製造業共に「人手不足がネックとなって、製品やサービスを十分に供給できない」との声も聞かれます。この背景として、労働力人口の不足や労働市場の硬直性、さらには教育訓練体制の不十分さなど、日本の労働市場を取り巻く構造的な課題が存在しており、解決に向けた取り組みが求められます。こうした中、子育て世代の若い女性やシニア層の労働参加率が高まってきていることは、課題解決に向けた一歩として好ましい動きとみています。

第三に、生産性については、製造業のみならずサービス業等の非製造業も含めてイノベーションを起こし生産性向上に繋げていくことが重要であると考えています。この点、企業の提供する製品・サービスに関して言えば、コモディティ化した製品は競争が激しく価格競争にも巻き込まれやすいため、先端技術を折り込んだ資本財や資材・部品、又ブランド価値の高いユニークな高付加価値の商品やサービスなどを生み出す努力が必要です。なお、外資企業の生産性は日本企業より高いとの指摘が多くみられることを踏まえると、日本企業の生産性向上には伸び余地があると考えられるほか、外資企業を日本に呼び込む対内投資の取り組みも生産性の向上に寄与すると思われます。

以上のこうした課題への取り組みには企業の努力がまず重要です。人口減少などわが国経済の構造変化に過度に悲観的になるのではなく、構造変化を踏まえつつ、成長力を高めるための前向きな取り組みが必要です。日本銀行としても、緩和的な金融環境を最大限に活かして貰えるように、「貸出支援基金」を設けて、低利かつ長めの資金供給を行っています。さらに、日本銀行では、昨年12月の政策決定会合において「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業に対するサポート」に関する措置も決定しました。「量的・質的金融緩和」導入以降、企業や家計のデフレマインドは転換してきており、既に設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業も増えていますが、本措置によりそうした動きがさらに拡がっていくことを期待しています。

経済の好循環を持続させていくためには、成長力強化に向けた様々な取り組みを進めていくことが重要です。政府による成長戦略の推進に加え、こうした日本銀行の設けた仕組みもまた有効に活用されることにより、成長力強化に向けた取り組みが一層進捗することを強く期待しています。

6.おわりに ―― 兵庫県経済について ――

以上、経済・物価情勢や金融政策運営などについてお話ししました。最後に、兵庫県経済についてお話ししたいと思います。

当地は、阪神・淡路大震災の発生から21年が経過しましたが、今日の復興は、皆さまの官民一体となったご努力の結果であることは言うまでもなく、近年は、世界に先駆けてiPS細胞を使う臨床研究の舞台となった「神戸医療産業都市構想」など、新産業育成に向けた取り組みとその成果も目立っています。さらに最近では、養父市が中山間地農業の改革拠点として国家戦略特区に指定されたことにより、規制緩和措置を活用した農業の競争力強化に向けた取り組みが進んでいると聞いています。また、国のエネルギー基本計画で「水素社会の実現」が掲げられる中、当地では官民が協力して水素サプライチェーンの構築を目指しており、来年度以降、液化水素の輸送技術実証プロジェクトがスタートするなど、わが国産業の高度化を牽引していく拠点として、益々その存在感を高めていくことが期待されます。観光面では、当地には世界遺産の「姫路城」を始めとする数多くの歴史遺産や豊かな自然のほか、大型クルーズ船の寄港に適した神戸港など多彩な観光資源があります。中でも姫路城は、半世紀振りの「平成の大修理」が行われ、一般公開が再開された昨年3月以降、国内外の観光客で大変賑わっており、当地ホテルの宿泊稼働率が上昇するなど、高い経済効果をもたらしていると聞いています。

この間、地域金融機関においても、「神戸医療産業都市」への企業進出を対象とした融資制度の創設や農林漁業分野での6次産業化ファンドの設立、地方創生に係る県内市町の地方版総合戦略の策定などへの関与、取引先企業へのコンサルティング機能の強化など、地域経済の活性化に積極的に取り組まれていると聞いています。

こうした多くの方々のご努力が実を結び、兵庫県経済が一層発展していくことを心より願っております。ご清聴ありがとうございました。