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【挨拶】 日本銀行・財務省共催G20シンポジウムにおける開会挨拶の邦訳

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日本銀行副総裁 雨宮 正佳
2019年1月17日

G20財務トラックの代理者や内外の研究者の皆様、東京へようこそお越しくださいました。本年、日本は初めてG20の議長国を務めます。本日のシンポジウムは、そのキックオフとなるイベントの一つです。共催者である日本銀行と財務省を代表して、本日ご参加いただいた皆様に、心より御礼を申し上げます。

日本議長国のもとで議論を行うG20の中長期的な政策課題の一つとして、我々は、「高齢化の課題・政策対応」を選びました。G20では、これまでにも、成長戦略やグローバル・インバランスといった他の政策課題の文脈で、高齢化について議論を行ってきたことがありました。本年、高齢化そのものに焦点を当て包括的に議論を行うことにしたのは、二つの理由があります。

第一に、高齢化はG20諸国に共通した政策課題であるからです。現在、日本はG20の中でもっとも高齢化が進んでいる国ですが、新興国も含め、多くのG20諸国では、日本と同じように、今後、高齢者の比率が高まっていくことが確実です。人口の減少や高齢化は、一国の経済活動やその成果の分配に対し、中長期的に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、人口動態の異なる国の間での資本や人の流れにも、少なからず影響を与えます。さらに、労働市場の状況や社会保障制度、経済政策には違いがあり、それらが、それぞれの国の経済や国民の経済厚生に与える影響は異なります。これらを踏まえると、各国のこれまでの経験を共有し、問題の所在や政策対応の余地について理解を深めておくことは、大変意義深いと考えられます。なにより、将来の人口動態はある程度の確度をもって予想することができるため、建設的な議論を通じて、中長期的な政策対応を準備することも可能になります。

第二に、政策対応次第で、経済に与える影響が異なってくるからです。高齢化は、今後中長期的にみて、経済活動に対してネガティブな影響を及ぼし得るという点で、重要なリスク要因です。一方、適切な政策対応によって、プラスの影響を生み出す機会となる可能性も考えられます。もとより、健康で長生きできるようになることは、すべての人にとって喜ばしいことであるはずです。医療技術の進歩と教育の普及という人類の努力によって勝ち取った長寿化という成果を、将来の人々も含めた経済厚生の改善に繋げていくために、経済政策や制度を変えていく必要があります。そして、それこそが、我々政策担当者の責任です。そういった思いも込めて、本シンポジウムのテーマは、「より良い未来のために:人口動態変動とマクロ経済面での挑戦」としています。

本日のシンポジウムでは、人口動態変動のマクロ経済への影響、財政や社会保障への影響、金融政策や金融システムへの含意について、それぞれ3つのセッションで議論が行われます。各セッションでは、世界のトップクラスの研究者や政策担当者に最新の知見や問題意識を提供してもらい、それらを踏まえて、参加者の皆様によって議論を深めていただきたいと考えています。こうした議論は、今後の様々なG20会合での政策討議に向けた、重要なインプットになると考えています。

皆様の間で活発で建設的な議論が行われることを期待して、私の挨拶とさせていただきます。

ご清聴ありがとうございました。