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【挨拶】第94回信託大会における挨拶

日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年4月10日

はじめに

本日は、第94回信託大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。皆様におかれましては、常日頃より、信託の機能を活かした金融商品やサービスを提供されることで、日本経済の発展に貢献されています。こうしたご努力に対し、日本銀行を代表して改めて敬意を表したいと思います。また、皆様には、平素から、日本銀行の政策や業務運営に多大なご協力を頂いております。この場をお借りしてお礼申し上げます。

経済・物価情勢と金融政策運営

まず、経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営についてお話しします。

わが国の景気は、輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大しています。輸出は、中国向けの資本財や情報関連財を中心に、足もと弱めの動きとなっており、これが、最近の生産面の弱さにつながっています。もっとも、国内需要については、堅調な動きが続いています。企業収益が総じて良好な水準を維持するもとで、設備投資は増加傾向を続けており、個人消費も、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかに増加しています。このように、企業・家計の両部門において、所得から支出への前向きの循環が働くという景気拡大の基本的なメカニズムは維持されています。先行きのわが国経済も、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続けるとみています。国内需要は、引き続き増加基調をたどると考えられるほか、海外経済も、中国における景気刺激策の効果などから、総じてみれば緩やかに成長していくと見込んでいます。

続いて、物価の動きです。わが国の物価は、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いています。もっとも、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、このところ0%台後半の伸びを維持しており、最近では、原材料価格や人件費の上昇などを反映し、食料工業製品を中心に価格引き上げの動きが増えてきています。今後とも、プラスの需給ギャップが続くもとで、企業の価格設定スタンスが次第に積極化し、実際に価格引き上げの動きが拡がっていけば、企業や家計の予想物価上昇率も徐々に高まっていくとみられます。

このように、わが国の経済は緩やかな拡大を続け、消費者物価の前年比もプラスで推移していますが、2%の「物価安定の目標」の実現には、なお時間を要する状況にあります。海外経済の動向を始め、様々なリスク要因も存在します。こうしたもとでは、需給ギャップがプラスの状態ができるだけ長く続くよう、ベネフィットとコストの両方を考慮しながら、適切な政策運営を行っていくことが大事です。こうした方針のもと、日本銀行としては、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当と考えています。

信託業界への期待

次に、信託業界の皆様に期待する役割について、3点申し上げます。

第一は、社会のニーズ変化に応じた金融サービスの提供です。信託業界では、高齢化社会に対応して、「遺言代用信託」、「後見制度支援信託」など、円滑な資産承継や長期的な財産管理を後押しするサービスの提供や、「教育資金贈与信託」、「結婚・子育て支援信託」など、世代間の資産移転による経済の活性化に取り組まれておられます。こうした社会のニーズに応える商品を開発・提供していくことが、金融サービスの付加価値向上にもつながっていくものと考えられます。また、デジタル技術を戦略的に活用し、金融サービスのフロンティアを拡げていくことも重要です。

第二に、個人や年金基金などの財産の運用・管理を通じた、投資先企業等の持続的な価値向上への取り組みです。信託銀行では、「スチュワードシップ・コード」に基づく企業との建設的な対話や、「コーポレートガバナンス・コード」の改訂を踏まえた企業への助言に積極的に取り組んでおられます。こうした取り組みは、企業の競争力や生産性向上を通じて日本経済の成長力を引き上げ、家計の中長期的な資産形成を後押ししていく上でも重要です。

第三に、決済リスクの削減に向けた取り組みです。信託業界では、昨年半ば以降、信託勘定における外為取引への同時決済の導入を進めておられます。また、証券取引の決済期間短縮化では、皆様のご尽力もあり、上場株式等のT+2化決済が本年7月半ばの約定分から実施予定です。日本銀行としても、こうした取り組みを引き続き支援してまいりたいと考えています。

おわりに

最後に、信託業界のますますのご発展を祈念し、私のご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。