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【挨拶】全国信用金庫大会における挨拶

日本銀行理事 衛藤 公洋
2019年6月19日

はじめに

本日は、全国信用金庫大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。はじめに、昨日の地震により被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。

信用金庫業界の皆さま方におかれては、地域とともに歩む金融機関として、中小企業のサポートや地域経済の活性化に積極的に取り組んでおられます。こうしたご努力に対し、日本銀行を代表して改めて敬意を表したいと思います。また、皆さま方には、日頃より、日本銀行の政策や業務運営に多大なご協力を頂いています。この場をお借りして厚くお礼申し上げます。

本日は、はじめに経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営についてお話しし、次に金融システム面の話題について申し上げたいと思います。

経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営

まず、わが国経済についてお話しします。日本銀行は、前回4月末の金融政策決定会合において、わが国の景気は、当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、先行き、基調としては緩やかな拡大を続けると判断しています。物価については、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて弱めの動きが続いているものの、先行き、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることなどから、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を示しました。もちろん、こうした中心的な見通しには、海外の経済情勢や中長期的な予想物価上昇率の動向など、様々な不確実性があることにも十分な注意が必要です。

本日から明日にかけて金融政策決定会合が行われますが、日本銀行としては、いま申し上げた点を含め、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて、引き続き、適切な政策運営に努めていく方針です。

金融システム面の話題

次に、金融システム面の話題について、お話しします。

わが国の金融システムの現状をみると、全体として安定性を維持しており、金融機関は資本と流動性の両面で相応の耐性を備えています。金融仲介活動は貸出を中心に引き続き積極的な状況にあり、企業や家計の資金調達環境はきわめて緩和した状態にあります。こうしたきわめて緩和的な金融環境が続くもとで、総与信の対GDP比率がトレンドから上方に乖離して推移するなど、金融循環の拡張的な動きが継続していますが、金融経済活動全体としてみると、1980年代後半のバブル期のような過熱感は窺われていません。

もっとも、一部に注意を要する変化も見られています。金融機関の不動産業向け貸出は、賃貸業向けなど貸出が長期のものが中心であるため、貸出全体を上回る高めの伸びが続いており、その対GDP比率は、トレンドからの乖離幅がバブル期以来の水準となっています。地価や不動産業の設備投資動向など幅広い情報から総合的に判断すると、現時点で不動産市場全体が、過度に楽観的な成長期待に基づく過熱状態にあるとは判断していませんが、今後も不動産市場の動向とその金融機関経営への影響については、注意深く点検していきたいと考えています。

この間、金融機関の経営環境をみると、地方を中心に人口や企業数が減少し、それに伴う企業の成長期待の低下が資金需要を下押ししています。実際、実質無借金企業の比率は年々上昇しており、近年では4割にも達しています。こうした構造的な要因に加え、低金利環境の長期化も相まって、国内預貸業務を中心に金融機関の基礎的収益力は低下傾向を続けています。先行きも、人口減少などの構造要因が収益力を下押し続けるとみられますが、その度合いは人口減少が著しい地方においてより厳しいものとなると考えられます。したがって、地域における新たな需要創出や生産性向上などへの取り組みを通じて、地域経済の成長力や成長期待を高め、地域経済の持続的な発展に繋げていくことが重要です。同時に、経営効率の抜本的な改善にも取り組んでいく必要があります。

地域が抱える課題解決にあたって、地域に根差している信用金庫が果たし得る役割は大きいと思います。具体的には、地域の企業においては、人口減少などの環境変化に対応していく過程で、商圏や事業領域の拡大、新たな技術開発、ビジネスマッチング、M&A、事業承継などに関連する様々な金融サービスへの需要が出てくると考えられます。また、家計においても、人生100年時代を見据え、資産形成や世代間の円滑な資産承継などへのニーズが高まっています。信用金庫は、face to faceの人的ネットワークや地域の様々な情報を集積していることから、こうしたニーズを的確に汲み取り、対応していくことが期待されます。この際、デジタル技術の活用は、顧客チャネルを広げ、金融サービスのフロンティアを切り拓く有効なツールです。また、過疎地において、金融サービスの維持とコスト削減の両立を実現するものとなり得ます。

こうした期待に対し、信用金庫業界では、「しんきん『共創力』発揮3か年計画」において、地域や顧客の課題解決に向けた価値ある提案やきめ細やかな支援を通じて、地域経済の成長に貢献していくことを掲げられています。その際、ITやフィンテックの戦略的活用を進めていくほか、信用金庫業界の総合力を発揮するため、業界ネットワークをさらに活用していく方針としておられます。この点、既に、事務の共同化や事業法人と連携したキャッシュレス決済への取り組みが広がっているほか、信金中央金庫を中心に、業界ネットワークと事業会社、行政機関、専門家などを連携させた新たな企業支援プラットフォームの構築が展望されています。こうした取り組みは地域経済を活性化し、ひいては、信用金庫自身の収益力向上や経営基盤の強化に繋がっていくものと考えています。

日本銀行としては、今後とも、考査やモニタリング、各種セミナーの開催などを通じて、皆さまの取り組みを支援していきたいと考えています。

おわりに

最後に、信用金庫業界が今後ますます発展していかれることを祈念いたしまして、私からのご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。