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入行式における黒田総裁挨拶

2019年4月1日
日本銀行

皆さん、おはようございます。日本銀行への入行、おめでとうございます。今年も、160名の新しい仲間を迎えることができ、大変嬉しく思います。日本銀行の役職員を代表して、心から歓迎します。

来たる5月には改元が予定されていますので、皆さんは、「平成最後の入行者」ということになります。振り返りますと、平成の約30年間は、情報通信関連をはじめとする技術革新や金融経済のグローバル化が、想像をはるかに超えるスピードと拡がりを持って進展した時代でした。企業活動や人々の交流は国や地域を超えて地球規模で拡大し、情報通信技術の進歩は金融をはじめ様々な分野におけるイノベーションに結び付いています。こうした変化は、経済の成長力を高め、新たな製品やサービスの創出を通じて人々の生活をより豊かにするものです。平成の時代の世界経済は、それらの恩恵も受けながら、発展し成長を遂げてきました。その一方で、これらの変化は、ある国や地域で生じたショックが、短期間のうちに世界的な拡がりを持って伝播するリスクを高めるといった側面も持ち合わせています。アジア通貨危機やリーマン・ショックといったグローバルな金融危機が発生し、国内外の金融システム安定化への対応を迫られたのも、平成の時代を象徴する出来事でした。加えて、わが国は、バブル崩壊とその後の金融システム不安、さらには、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった未曾有の大災害を経験するなど、予期せぬ様々な困難にも直面しました。

しかしながら、こうした困難な出来事が生じた際も、人々は、それぞれの持ち場で懸命に取り組み、力を合わせてそれを乗り越えてきました。日本銀行も、金融経済環境が絶えず変化し、多くの課題に直面する中にあっても、「物価の安定」と「金融システムの安定」を維持するため、全力を尽くしてきました。金融政策面では、デフレの克服に向けて、資産買入れ等の「非伝統的」とされている政策を含め、様々な金融緩和措置を講じてきました。その効果もあって、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなりましたが、引き続き、2%の「物価安定の目標」の実現を目指して、強力な金融緩和に粘り強く取り組んでいます。金融システム面では、国内外の金融危機への対応、それを踏まえた国際金融規制を巡る議論への参画など、国内のみならず、グローバルな視点でもその安定化に向けて取り組んできました。また、金融イノベーションの世界的な進展がみられる中、FinTechが金融インフラの効率化や金融サービスの向上に資するよう、様々な調査・研究も行っています。

皆さんが今後日本銀行で働いていく中では、諸先輩が平成の時代において経験したのと同様、未知の出来事に直面することが数多くあると思います。日本銀行の使命は、「物価の安定」と「金融システムの安定」を通じて、国民経済の健全な発展に資する、というものです。以下では、本日、中央銀行員としての第一歩を踏み出す皆さんに、未知の出来事への対応も含め、この使命を果たしていくために心掛けてほしいことを3点、お話ししたいと思います。

1点目は、「日々の業務遂行を通じて、中央銀行員としての基本動作を身につけてほしい」ということです。日本銀行が、その使命を適切に果たしていくためには、職員一人ひとりがプロフェッショナルとして、自らの役割をしっかりと果たさなければなりません。皆さんがこれから携わる仕事は、いずれも国民生活に深く関わるものである、ということを自覚してほしいと思います。外部の方々から信頼を得られるよう、まずは配属された職場において、日々の業務に精励することを通じ、中央銀行員としての基本動作をしっかり身につけてください。

2点目は、「周囲の声に真摯に耳を傾け、チームワークを大事にして仕事に取り組んでほしい」ということです。日本銀行の仕事は、非常に幅が広く、また、それぞれが深く関連しています。一人で全てをカバーすることは難しく、チームワークが必須です。上司・先輩をはじめ周囲の人の意見によく耳を傾け、そこからできるだけ多くのことを学び取ってほしいと思います。

最後は、「環境変化を的確に捉え、チャレンジ精神を持って新たな課題に取り組んでいってほしい」ということです。いつの時代においても、環境変化は起こるわけですが、その速度や複雑さは年々増しているように思われます。中央銀行は、そうした環境変化にも適切に対応し、使命を達成していかなければなりません。そのためには、皆さん一人ひとりが、アンテナを高く張り、状況を的確に捉えるとともに、中央銀行として対応するべき新たな課題に、チャレンジ精神を持って取り組むことがとても重要です。今、皆さんは、フレッシュな意欲と気概にあふれていることと思います。その気持ちを大切にしながら、これからの仕事に取り組んでいってください。

本日、皆さんの晴れやかで希望に満ちた表情を拝見し、日本銀行は今年も若く頼もしい仲間を迎えることができた、との思いを強くしました。中央銀行員として、これから一緒に頑張っていきましょう。皆さんが元気に活躍されることをお祈りして、私からの歓迎の挨拶とさせていただきます。