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【講演】ウィズコロナ、ポストコロナの金融政策読売経済フォーラムにおける講演

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日本銀行副総裁 雨宮 正佳
2021年3月8日

1.はじめに

日本銀行の雨宮でございます。本日は、読売経済フォーラムのオンラインセミナーでお話する機会を頂き、ありがとうございます。

ちょうど今週は、東日本大震災の発生から10年の節目となる日を迎えます。震災からの復興は、交通網を始めとする社会インフラの復旧や生活環境の整備といった面を始め、着実に進展しています。この間の復興にご尽力された関係者の皆様方に心より敬意を表したいと思います。もっとも、今も4万人を超える方々が避難生活を続けているという厳しい現実があるなど、解決すべき課題がなお多いことも事実です。日本銀行では、震災の翌月に導入した被災地金融機関支援オペなどを通じて、金融面から復旧・復興に向けた取り組みを後押ししてきました。昨年3月には、被災地オペを期限を設けずに継続することとしたほか、貸付期間も1年から2年に長期化するなど、必要な支援をしっかりと続けていけるように見直しを行いました。今後とも、被災地の復興に向けて、中央銀行の立場から貢献を続けて参りたいと思います。

さて、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し始めてから約1年になります。わが国でも先月からワクチンの接種が開始されるなど、前向きな動きもみられています。もっとも、感染症は、引き続き、社会経済活動に大きな影響を及ぼしており、この先も、経済・物価への下押し圧力は長期間継続すると予想されます。そうしたもとで、経済を支え、2%の「物価安定の目標」を実現する必要があります。そのために、まずは、感染症への対応が大事であり、「ウィズコロナ」の金融政策として、昨年3月以降、強力な金融緩和措置を実施しています。また、「ポストコロナ」も見据えて、やや長い目でみると、2%の「物価安定の目標」を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくことが課題となります。日本銀行では、そのための点検を行い、来週の金融政策決定会合で、結果を公表する予定です。そこで、本日は、まず、経済・物価情勢と日本銀行の感染症対応についてお話したうえで、今回の点検作業について、その問題意識や考え方を少し詳しくご説明したいと思います。

2.経済・物価情勢と日本銀行の感染症対応

経済・物価情勢

最初に経済情勢です。わが国の経済は、感染症の影響から引き続き厳しい状態にありますが、基調としては持ち直しています(図表1)。昨年10~12月の実質GDPは、前期比+3.0%と2四半期連続のプラスとなりました。外需の回復を背景に、輸出がはっきりと増加しました。また、民間需要も、設備投資が3四半期ぶりにプラスに転じたほか、個人消費も、Go Toキャンペーンなどの需要喚起策もあって11月頃まではサービスを中心に増加しました。実質GDPの水準を感染拡大前の2019年平均と比べると、昨年4~6月に、-10%と大きく落ち込みましたが、昨年10~12月には、-2.4%まで戻しています。

もっとも、足もとにかけては、昨年秋以降の感染症の再拡大の影響から、飲食や宿泊といった対面型サービス消費を中心に下押し圧力の強い状態が続いています(図表2)。対面型サービス業の活動水準は、昨年末の時点で既に下がっていましたが、高頻度データやヒアリング情報を踏まえると、本年入り後に一段と低下したとみられます。一方で、今回の局面では、幅広いセクターで経済活動が抑制された昨年春とは異なり、対面型サービス業以外の経済活動は相応に維持されています。個人消費の内訳をみても、サービス消費は1月にかけてさらに落ち込んだものの、昨年夏頃に比べてまだ高い水準にあるほか、「巣ごもり消費」を背景に財の消費は堅調です。また、外需も回復しており、大きく落ち込んでいた世界貿易量は、既にコロナ前の水準を取り戻しています。このような内外の財需要の堅調さを背景に、生産は増加しており、これが機械投資を中心に設備投資にも好影響を与えるという動きが続いています。

先行きについては、不確実性が高いものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、緩やかながらも改善基調を辿ると考えています。1月に公表した私どもの経済見通しでも、実質GDP成長率は、本年度は-5.6%と大幅なマイナスとなるものの、来年度は、今年度の落ち込みの反動に加え、政府の追加経済対策の効果もあって、+3.9%とはっきりとしたプラスとなるとみています。

次に、物価面です(図表3)。消費者物価の前年比は、昨年後半からマイナスで推移しています。もっとも、これには、既往の原油価格下落がラグを伴って電気代などのエネルギー価格を押し下げていることや、Go Toトラベル事業による宿泊料の補助が、統計上、値下げとして計上されていることも寄与しています。これらの一時的な下押し要因を除いたベースでみると、物価は小幅のプラスで推移しています。企業が値下げにより需要喚起を図る動きは広範化しておらず、経済の落ち込みに比べると底堅い動きが続いています。先行きについて、当面は、マイナスが続くとみていますが、その後は、一時的な物価下押し要因が剥落し、経済も改善するもとで、上昇率を高めていくと考えています。

以上が中心的な経済・物価の見通しですが、引き続き、下振れリスクが大きいと認識しています。ワクチンを巡る動きは心強いですが、普及のペースや効果には不確実性があります。当面、感染症の帰趨やその影響に注意が必要な状況が続くと考えています。

日本銀行の感染症対応

こうしたもとで、日本銀行では、昨年3月以降、感染症への対応として、「3つの柱」による強力な金融緩和を行っています(図表4)。具体的には、第1に、企業等の資金繰りを支援するための新型コロナ対応特別プログラム、第2に、金融市場の安定を確保するための国債買入れやドルオペなどによる潤沢かつ弾力的な資金供給、第3に、資産市場におけるリスク・プレミアムに働きかけることを目的としたETFおよびJ-REITの積極的な買入れ、の3つの措置を講じています。

こうした対応は、効果を発揮しています。内外の金融市場は、昨年春に大きく不安定化しましたが、落ち着きを取り戻しています。企業等の資金繰りにはなお厳しさがみられますが、日本銀行・政府の対応と金融機関の積極的な取り組みにより、外部資金の調達環境は緩和的な状態を維持しています(図表5)。今回のわが国の金融環境の特徴として、2つの点が指摘できます。1つ目は、リーマン・ショック時と比較した特徴です。リーマン・ショック後の2009年には銀行の貸出態度が大幅に慎重化し、また、投資家のリスク回避姿勢の強まりからCP・社債の発行残高が減少する中で、金融面から実体経済への下押し圧力が強まりました。一方、今回の感染症拡大局面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和的な水準を維持しており、銀行貸出残高やCP・社債の発行残高は、いずれも高い伸びが続いています。このように、今回、金融システムが全体として安定性を維持し、経済活動を支える機能を発揮していることが、金融と実体経済の負の相乗作用が生じたリーマン・ショック時との大きな違いです。2つ目は、米欧と比較した特徴です。金融機関の貸出スタンスをみると、感染症拡大後、米欧では厳しくなっていますが、わが国では積極化しており、違いが顕著となっています。このように、わが国では、米欧と比べて、金融機関からの借入環境が緩和的です。

日本銀行では、昨年12月の金融政策決定会合で、「特別プログラム」の期限を9月末まで半年間延長し、引き続き、企業等の資金繰りを支援していくことを決定しました。さらなる延長も、必要に応じて検討します。また、感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる方針です。

3.「点検」の問題意識と考え方

ここからは、「より効果的で持続的な金融緩和のための点検」についてお話します。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を実現するため、2013年4月の「量的・質的金融緩和」の導入以降、大規模な金融緩和を実施しています。2016年9月には、「量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果に関する「総括的検証」を行い、検証の結果を踏まえ、新たな枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。大規模な金融緩和により、経済・物価情勢は改善し、デフレではない状況となりました。しかし、2%の「物価安定の目標」の実現には至っていません。また、昨年春以降の感染症の影響により、経済・物価の下押し圧力はこの後も暫くの期間は継続し、2%の目標の実現には時間がかかることが予想されます。こうした状況を踏まえ、2%の目標を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行うこととしました。

点検の考え方のポイントは3つあります。第1に、2%の「物価安定の目標」の実現のためには、引き続き、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、緩和的な金融環境を継続させていくことが適当であるということです。そのためには、第2に、平素は政策のコストを出来るだけ抑える運営で持続性を高めることがポイントになります。それと同時に、第3に、経済・物価・金融情勢の変化により、必要が生じた場合には、機動的かつ効果的に対応できるようにしておくことが重要です。以下では、これらの3つのポイントに沿って、お話したいと思います。

(1)金融緩和の継続

最初に、第1のポイント、すなわち、緩和的な金融環境を継続させていくための枠組みである、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」についてお話します。この枠組みは、「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」を主な内容としています。まず、「イールドカーブ・コントロール」は、主として短期金利を操作対象としていた伝統的な手法とは異なり、長短金利の全体、つまりイールドカーブを操作目標とする金融市場調節の枠組みです。金融緩和の長期化が見込まれるもとで、緩和の効果だけでなく、副作用にも配慮しながら、適切な水準に長短金利をコントロールしていくことを狙いとしています。次に、「オーバーシュート型コミットメント」は、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を維持するという約束です。これにより、予想物価上昇率に関する期待形成を強めることを企図しています。このコミットメントは、物価上昇率の実績値が目標を下回る期間が続いた場合には、そうした状況を埋め合わせるべく、物価上昇率が目標を上回る期間を長めに保つよう金融緩和を行う、「埋め合わせ戦略」という考え方を実践するものです。FRBも、昨年夏に、この「埋め合わせ戦略」の採用を表明しており、日本銀行の考え方と軌を一にしています。

「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、想定されたメカニズムに沿って効果を発揮してきました(図表6)。わが国の名目金利は、イールドカーブ・コントロールのもとで、海外金利が上昇した局面でも、きわめて低位に抑えられました。予想物価上昇率が「量的・質的金融緩和」の導入前を上回る水準で推移する中、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利はマイナス圏で推移しました。低い実質金利は、資金調達コストの低下や良好な金融資本市場などを通じて、金融環境を改善させました(図表7)。CPや社債の発行金利はきわめて低い水準となっているほか、貸出金利も既往ボトム圏で推移しています。金融資本市場では、為替相場が総じて安定的に推移し、株価は上昇基調を辿りました。この結果、経済活動は活発化しました(図表8)。需給ギャップは、2017年にはっきりとしたプラス、すなわち、需要超過に転じた後、プラス幅を拡大しました。企業収益が増加し、雇用環境も改善しました。失業率は、約30年ぶりとなる2%台前半まで低下し、有効求人倍率も全ての都道府県で1倍を超えました。こうしたもとで、デフレ期にはみられなかったベースアップが7年連続で実現するなど賃金も緩やかに上昇し、基調的な物価上昇率はプラスが定着しました。また、人手不足が深刻化した結果、女性や高齢者の労働参加が進み、企業は労働生産性を向上させました。このように、良好な経済情勢が続き、その中で、日本経済の中長期的な課題についても前向きな動きが進みました。

もっとも、物価上昇率が高まりにくい状況はなお続いています。その基本的な背景は、わが国では予想物価上昇率の形成が「適合的」であること、すなわち、実際の物価上昇率に影響を受ける傾向が強いことにあります。これは、実際の物価上昇率が低い場合、予想物価上昇率の引き上げに時間がかかることを意味します。さらに、この「適合的期待形成」は、その時点の実際の物価に影響を受けるだけではなく、過去の経験やその過程で培われた規範などにも影響を受けるため、より複雑で、粘着性が高いことも分かってきています。つまり、長期にわたるデフレの経験によって定着した、物価が上がりにくいことを前提とした人々の考え方や慣行の転換には、時間がかかるということです。これに加えて、弾力的な労働供給や企業の労働生産性の向上は、日本経済全体にとってプラスの動きですが、物価については上昇を抑制する方向に作用しました(図表9)。先程申し上げたとおり、2010年代半ば以降は、人手不足が強まるもとで、女性や高齢者を中心に労働参加が加速しました。このことは、人口減少に直面するわが国にとって望ましい動きです。その際、こうした労働者が働きやすい環境の整備も併せて進んだこともあって、賃金の大幅な上昇を伴わずに、多くの労働者が新たに労働市場に参加することとなりました。また、企業は、省力化・効率化投資などにより労働生産性を高めました。こうした取り組みは経済全体の生産性を向上させる前向きなものですが、コストの上昇圧力を吸収し、物価が上がりにくい要因となりました。

もっとも、こうした物価上昇率が高まりにくい状況は、時間はかかるかもしれませんが、経済活動が活発化するにつれ、いずれは解消に向かうものと考えられます。労働供給には限界がありますので、人手不足が続けば、賃金の上昇圧力は高まっていきます。また、「適合的期待形成」メカニズムが根強いということは、人々が物価上昇を実際に経験すれば、そうした物価上昇が人々の考え方の前提に組み込まれやすい、つまり予想物価上昇率も上がっていく可能性が高いということを意味します。

このように、2%の「物価安定目標」を実現していくためには、現在の金融政策の枠組みのもとで、緩和的な金融環境を粘り強く継続させていくことが適当だと考えます。

(2)持続性を高める運営

そこで、点検の2つ目のポイントである、金融緩和の持続性を高める政策運営について、イールドカーブ・コントロールを例にみていきたいと思います。イールドカーブ・コントロールは、これまで、海外金利の上昇や国債発行の増加などにより金利上昇圧力が高まる局面でも、柔軟な国債買入れを通じて、緩和的な金融環境をもたらす適切なイールドカーブを安定的に実現してきました。長短金利のコントロールが可能であったのは、日本銀行が、きめ細かく国債買入れのオペレーションを実行してきたためです。その際、特定の金利水準で無制限に国債を買い入れる「指値オペ」といった強力なツールも、必要に応じて活用してきました。

このように、長短金利をきわめて低位で安定的に推移させる効果に必然的に伴う副作用として、イールドカーブ・コントロールは国債市場の機能度に影響を及ぼします(図表10)。実際、イールドカーブ・コントロールの導入後、多くの指標が、国債市場の機能度が低下したことを示しています。こうしたもとで、市場機能の維持と金利コントロールの適切なバランスを取ることが、イールドカーブ・コントロールの持続的な運営の観点から重要になります。そうした工夫の余地はあると考えています。金利の大幅な変動は、望ましくない結果をもたらす可能性がありますが、一定の範囲内であれば、金融緩和の効果を損なわずに、国債市場の機能度にはプラスに作用する可能性があるからです。

2018年7月の金融政策決定会合において、金利が経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるという点を明確にしたのは、まさにこうした狙いによるものです。その後、実際の金利変動のレンジが再び狭くなることもありましたが、この考え方自体は、今も変わりがありません。また、超長期金利の過度な低下は、保険や年金などの運用利回りの低下などの影響を及ぼす可能性があるとの認識にも変わりはありません。もっとも、現在は、感染症の影響が経済に打撃を与える中で、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させることが重要な状況であり、当面、この点を念頭にイールドカーブ・コントロールの運営を行っていく必要があると考えていることも申し上げておきたいと思います。

(3)機動的かつ効果的な対応

最後に、3つ目のポイントである、情勢の変化に応じた機動的かつ効果的な対応について、お話します。金融緩和を粘り強く続けるためには、持続性を確保する手立てに加え、実体経済や金融市場に大きなショックが加わるなど、必要な場合に、効果的な対応を行えるような機動性を備えておくことが重要です。2つの例を挙げたいと思います。

第1に、長短金利の引き下げです。追加緩和の手段として、長短金利の引き下げは重要な選択肢の一つです。日本銀行では、感染症の影響に注意が必要な間、長短金利の水準については、「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移する」という指針をはっきりと示しています。すなわち、必要な時に、長短金利の引き下げを的確に行う方針です。もっとも、さらなる低金利は、金融仲介機能に影響を及ぼす可能性があります。さらに、市場には、そのことを理由に、長短金利の引き下げは困難との見方があるのも事実です。これらの点を踏まえると、長短金利の引き下げは、金融仲介機能に及ぼしうる影響にも配慮しつつ実施できるようにしておくことが適当だと考えられます。また、こうした認識を市場参加者や様々な経済主体と共有することによって、追加緩和の選択肢としての長短金利の引き下げの実効性を、より高めることになるものと考えています。

第2に、ETF・J-REITの買入れです。これについては、昨年春の感染症への対応の経験が参考になります(図表11)。当時、金融市場が大きく不安定化したことを受けて、日本銀行では、ETF・J-REIT買入れの年間増加ペースの上限を約12兆円および約1,800億円としたうえで、積極的な買入れを行うこととしました。思い切った買入れは、大幅に悪化した市場心理を緩和するという点で、大きな効果を発揮しました。ETF・J-REITの買入れの目的は、株式市場などのリスク・プレミアムに働きかけることを通じて、金融市場の不安定な動きなどが、企業や家計のコンフィデンス悪化に繋がることを防止することで、経済・物価にプラスの影響を及ぼしていくことにあります。民間のサーベイをみても、日本銀行のETF買入れについては、株価が下落し、ボラティリティが高まるなど、市場が不安定な局面では、市場にとってプラスと評価されています。昨年春のケースも含め、これまでの経験から、金融市場が不安定化した際に大規模な買入れを行うと効果が大きいということが分かってきています。局面による効果の違いをさらに分析したうえで、必要な時に、思い切って積極的な買入れを行うことで、最大限の効果を上げる運営を行っていくことができないか、考えたいと思います。メリハリのある買入れを行うことは、金融緩和の持続性を高めることにもつながると考えています。

4.おわりに

以上、より効果的で持続的な金融緩和のための点検について、問題意識や考え方をご説明してきました。キーワードは「持続性」と「機動性」です。つまり、平素は政策のコストを出来るだけ抑える運営で金融緩和の持続性を高めつつ、情勢変化に対して機動的かつ効果的に対応できるようにしておくことです。来週の金融政策決定会合では、こうした観点から議論を行い、点検の結果を公表したいと考えています。

さて、2013年に「量的・質的金融緩和」を導入して約8年が経過しました。長期戦になっていますが、この間に経済が大きく改善し、デフレではない状態になったのは確かです。枠組みに磨きをかけ、粘り強く緩和を続ければ、2%の「物価安定の目標」の達成は可能だと考えています。また、日本銀行が導入したイールドカーブ・コントロールの背景にある考え方や、オーバーシュート型コミットメントによって実践している「埋め合わせ戦略」は、他国の中央銀行でも検討の俎上に上がっています。先進国が、低成長、低インフレ、低金利という共通の課題を抱える中で、金融政策の有効性や信認を高めるための工夫を、日本銀行を含め多くの中央銀行が追求しています。他国における成果も参考にしながら、日本銀行の使命である物価安定の実現のため、今後も建設的な議論を行っていきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。