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【挨拶】第96回信託大会における挨拶

日本銀行総裁 黒田 東彦
2021年4月14日

はじめに

本日は、第96回信託大会にお招き頂き、誠にありがとうございます。皆様におかれましては、常日頃より、信託の機能を活かした金融商品やサービスを提供されることで、日本経済の発展に貢献されています。こうしたご努力に対し、日本銀行を代表して改めて敬意を表します。また、平素から、日本銀行の政策や業務運営に多大なご協力を頂いており、この場をお借りしてお礼申し上げます。

経済・物価情勢と金融政策運営

まず、経済・物価情勢と金融政策運営についてお話しします。

わが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にありますが、基調としては持ち直しています。対面型サービス部門は下押し圧力の強い状況にありますが、全体では、3月短観の業況判断が3四半期連続の改善となるなど、持ち直しの動きが維持されています。先行きは、感染症の影響が徐々に和らぐもとで、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果もあって、改善基調を続けるとみられます。

物価面をみると、消費者物価の前年比は、当面、マイナスが続くものの、既往の原油価格下落の影響といった一時的な下押し要因が剥落し、経済が改善するもとで、プラスに転じ、上昇率を高めていくと考えています。

もっとも、こうした経済・物価見通しについては、感染症の影響を中心に、東京や大阪などに適用された「まん延防止等重点措置」の影響を含めて、引き続き下振れリスクが大きいとみています。

政策面では、今後とも、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムを始めとする強力な金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていきます。

そのうえで、日本銀行は、先月、2%の「物価安定の目標」を実現するため、持続的な形で、金融緩和を継続するとともに、情勢の変化に対して、機動的かつ効果的に対応していくことが重要と判断し、主に3つの政策対応を決定しました。

第1に、金融仲介機能への影響に配慮しながら、機動的に長短金利の引き下げを行うため、「貸出促進付利制度」を創設しました。第2に、平素は柔軟なイールドカーブ・コントロールの運営を行うため、10年物国債金利の操作目標「ゼロ%程度」について、その変動幅が±0.25%程度であることを明確化しました。同時に、必要な場合に強力に金利の上限を画すため、「連続指値オペ制度」を導入しました。第3に、ETFの買入れについて、感染症の影響への対応の臨時措置として決定した約12兆円の年間増加ペースの上限を、感染症収束後も継続し、その上限のもとで、市場の状況を見極めながら、必要に応じて、買入れを行うこととしました。

日本銀行は、今回の対応で持続性と機動性を増した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、強力な金融緩和を粘り強く続けていく考えです。

信託業界への期待

次に、信託業界の皆様に期待する役割について、2点申し上げます。

第1は、社会のニーズ変化に応じた金融サービスの提供です。信託業界では、これまでも高齢化社会に対応して、円滑な資産継承や長期的な財産管理を後押しするサービスの提供のほか、「教育資金贈与信託」、「結婚・子育て支援信託」など、世代間の資産移転の支援に取り組まれておられます。また、最近では、感染症を受けた行動様式の変化などに伴い、信託機能の活用が求められる領域も広がっています。例えば、オンライン参加によるバーチャル株主総会や議決権行使の電子化など、デジタル技術も活用して、コロナ禍における株主総会運営を積極的にサポートされてきました。今後とも、変化する社会のニーズに的確に応えながら、付加価値の高い金融サービスを提供されていくことを期待しています。

第2に、信託機能を通じたサステナブルな社会・経済の実現への貢献です。既に信託業界では、ESGの観点を考慮した運用にも取り組まれているほか、昨年3月の改訂においてサステナビリティの考慮が明記された「スチュワードシップ・コード」に基づき、企業との建設的な対話を進めておられます。気候変動問題など社会・経済の持続可能性への関心が高まるもとで、機関投資家として資産運用業務を担う信託業界の役割は、今後もさらに大きくなるものと考えられます。こうした取り組みを通じて、わが国経済の持続的な成長へ貢献されていくことを期待しています。

おわりに

最後に、信託業界のますますのご発展を祈念し、私のご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。