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【挨拶】 TCFDサミット2021における挨拶の邦訳

日本銀行総裁 黒田 東彦
2021年10月5日

日本銀行の黒田でございます。本日は、TCFDサミット2021でお話しする機会を頂き、ありがとうございます。

気候変動問題は、将来にわたって社会・経済に広範な影響を及ぼしうるグローバルな課題となっています。本サミットの議題である気候関連の情報開示の促進は、社会・経済を構成している各主体が気候変動問題への対応を行ううえで、重要な要素の一つです。開示を進めることによって、例えば、投資家は、気候変動に関するリスクを的確に認識して投資することが可能になります。こうした動きが拡がれば、企業は、気候変動に対応した生産活動や研究開発を積極化させるでしょう。したがって、各主体が、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による推奨内容などを踏まえた開示の質と量を充実させていくことや開示された情報を適切に活用していくことは、重要な課題です。

日本銀行は、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行の使命に沿って気候変動に関する取り組みを進めるため、本年7月に包括的な取り組み方針を決定しました。本日は、この取り組み方針に関連して、気候関連の情報開示について、三つお話しします。

一つ目は、金融政策面での対応です。日本銀行としては、中央銀行の立場から民間における気候変動への対応を支援していくことは、長い目でみたマクロ経済の安定に資するものと考えています。こうした観点から、日本銀行は、金融機関が気候変動対応に資するための取り組みの一環として実施する投融資をバックファイナンスする新たな資金供給オペレーションを導入することとしました。この新たなオペでは、何が気候変動対応に資する投融資かという見極めを金融機関の自主的な判断に委ねつつ、金融機関に対して、TCFDによる推奨内容などを踏まえた一定の開示を求めることとしています。このように、TCFDなどに基づく開示は、日本銀行の新しい資金供給オペにおいても、市場からの規律を働かせることで、気候変動対応に真に資する投融資を促すための重要な役割を担っています。

二つ目は、金融システム面での対応です。日本銀行は、気候関連金融リスクの把握や管理に関する金融機関の取り組みを積極的に後押ししていくことなどを通じて、金融システムの安定確保と金融仲介機能の円滑な発揮を目指します。このために、日本銀行は、金融機関に対し、考査・モニタリングにおける深度のある対話などを通じて、TCFDなどに基づく開示の充実を促していきます。

三つ目は、日本銀行自身による対応です。日本銀行も、ひとつの事業体として業務を運営するにあたって、温室効果ガスの排出削減や省エネルギーへの配慮など、気候変動への対応を意識した取り組みを行っていきます。こうした取り組みを分かりやすく伝えるため、TCFDによる推奨内容を踏まえた開示を行うほか、気候変動に関する日本銀行の取り組み全般について、対外説明を充実させていきます。

日本銀行は、今後も、気候変動に関する情勢変化を適切に把握するとともに、内外関係者と密接に情報交換を行ったうえで、各種の施策について、不断に検討を重ね、対応していく方針です。

本日のサミットには、気候変動に関する先進的な取り組みを進めている世界のリーダーが参加されていると伺っています。開示の充実などについて活発な議論がなされることを祈念して、私からのご挨拶と致します。

ご清聴ありがとうございました。