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大規模金融機関におけるストレステスト

:ストレステストの現状とテスト結果の集計に関する論点
(日本銀行仮訳)

2000年3月22日
国際決済銀行・グローバル金融システム委員会

日本銀行から

 報告書の全文は、こちら (bis0003a.pdf 167KB) から入手できます。

 なお、報告書の原文は、BISのホームページ(http://www.bis.org/)(外部サイトへのリンク)より入手できます。

プレス・ステートメント

グローバル金融システム委員会による
ストレステストに関する報告書の公表について
(BISグローバル金融システム委員会ワーキンググループ報告書)

 BISは本日「大規模金融機関におけるストレステスト:ストレステストの現状とテスト結果の集計に関する論点」と題する報告書を公表する。この報告書は、グローバル金融システム委員会(注)の下に設置されたワーキンググループにおける検討結果をとりまとめている。ワーキンググループは、大規模金融機関におけるストレステストの現状を調査し、金融機関によるストレステストの結果の集計が、中央銀行および金融規制当局、民間部門の実務家にとって有益な情報を提供する可能性を検討することを求められた。

 ワーキンググループは、国際的に活動している金融機関20先以上のリスクマネージャーとのインタビューを行い、ストレステストが大規模金融機関のリスク管理戦略上、重要な要素となっているとの結論に至った。報告書の第1章では、ストレステストの現状についてまとめるとともに、その限界について議論している。ワーキンググループでは、ある理想的な状況の下では、ストレステストの集計が多くの分野で有益な情報を提供する潜在的な可能性を持つ一方で、そのような理想的な状況が実現するかどうかは明らかではないと結論づけている。第2章では、ストレステストの集計を実施する際に考慮されるべき点、および集計結果の潜在的な有用性の限界が検討されている。

 報告書では、リスクマネージャーが現在用いているシナリオに関する一度限りの調査を実施することが提案されている。これは、ストレステストが大規模な金融機関のリスク管理戦略上の重要な要素となっており、ストレステストの実務に関するより踏み込んだ情報が、金融システムの直面するリスクを考察する上で有益であるとの認識に基づいている。そのような調査は、比較的低い報告負担で、リスク管理プロセス全体の透明性を高め、金融機関による情報の共有を進めるものと考えられている。

 報告書本文は、BISのウェブサイト(http://www.bis.org)(外部サイトへのリンク)から入手することができる。

  • グローバル金融システム委員会は、G10諸国の中央銀行総裁により設立された中央銀行のフォーラムであり、金融政策および金融システムの安定化といった中央銀行の責務を果たす上で有益な政策提言を行うため、金融市場および金融システムに関する広範な課題についてモニターおよび検討を行っている。こうした使命を実現するため、委員会では、総裁たちを補佐していくうえで、特に金融市場やグローバル金融システムの安定に対する脅威を認識し、分析し、対応していくことに重点を置いている。

 この報告書を作成したワーキンググループの議長は、米国連邦準備制度理事会のアラン・フランケルであり、その他のメンバーについては報告書中のリストに掲載されている。

エグゼクティブ・サマリー

大規模金融機関におけるストレステスト:
ストレステストの現状とテスト結果の集計に関する論点

 近年、国際的に活動している大規模金融機関の業務内容は、一段と複雑かつ多様になっている。こうした複雑さの高まりは、必然的に、各種の異なったリスクを計測しモニターする手法の開発を伴ってきた。過去数年にわたり、金融実務家および規制当局の関心を集めたリスク管理技術の一つが「ストレステスト」である。ストレステストとは、例外的だが蓋然性のあるイベントが発生した場合のリスクファクターの変動が金融機関の財務状況に与える潜在的な影響を検証する手法と定義することができる。

 この報告書は、グローバル金融システム委員会(The Committee on the Global Financial System)の下に設置されたマクロ・ストレステスティング・ワーキンググループの検討結果をとりまとめたものである。同委員会は、グローバルな金融市場の安定性に影響を及ぼす環境変化に関する中央銀行の理解を深めるという使命を負っている。こうした使命に従い、ワーキンググループは、大規模な金融機関が行うストレステストの現状に関する調査を実施することを求められた。ワーキンググループ名の中の「マクロ」という用語は、グループのもう一つの使命を示している。すなわち、金融機関のストレステストの結果の集計が、中央銀行や他の金融規制当局、民間部門の実務家にとって有益な情報を提供する可能性を検討することも、ワーキンググループのもう一つの使命である。

 グループのメンバーは、国際的に活動する大規模な金融機関20先以上のリスク管理者に対して、自国およびフランス銀行で開催されたグループ会合においてインタビューを実施した。これらのインタビューから、ストレステストの設計および実用化に関する最先端の技術(state of the art)と、企業レベルでのリスク管理に関する意思決定においてストレステストが果す役割について、重要な基礎知識を得た。

 こうした知識に基づいて、個々の金融機関で実施されているストレステストの結果を集計することに関わる幾つかの論点を考察した。その結果、ある理想的な状況下では、ストレステストの集計結果は幾つかの分野で有益な情報を提供する潜在的な可能性を秘めているという結論が得られた。ストレステストの集計結果は、金融機関が投資戦略のリスクを評価するに当って、ストレス下での市場流動性リスクを事前に見極めておくための手助けとして用いることができよう。中央銀行や規制当局は、金融市場におけるリスクテイクやリスク仲介状況に関する全体像について、より効率的にモニターするためにストレステストの集計結果を利用できる。しかし、そのような理想的な状況が実現するかどうかは明らかではないという点も、グループは認識している。特に、報告対象となる適切な母集団を選択できるかどうか、現在金融機関で実施されているストレステストが他の金融機関のストレステストと合算可能なものであるかどうか、得られた情報は報告負担を正当化するものかどうかといった点は明らかではない。

 報告書では、結論として、ストレステストが大規模な金融機関のリスク管理戦略上の重要な要素であること、ストレステストの実務に関するより踏み込んだ情報は、金融システムが直面している脆弱性を考察する上で有益であることを指摘している。この結論を基に、報告書では、リスク管理者が現在用いているシナリオに関する一度限りの調査を実施することを提言している。

 報告書の構成は以下の通りである。第1章では、ストレステストの現状をまとめるとともに、その限界について議論する。第2章ではストレステストを集計することの潜在的な有用性について検証し、実際に集計する際の方法論について議論した上で、ストレステストの集計に伴うトレードオフについて予備的検討を行う。第3章ではシナリオ調査(センサス)を提案し、それに関する検討を行う。報告書には3つの付属資料が付されている。参考文献、ストレステストの集計が市場流動性リスクに関して示唆する点についての概念的検討、およびストレス下での市場の振る舞いのうちダイナミックな側面が喚起する論点である。