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BIS国際銀行統計ワーキング・グループ報告書

(日本銀行仮訳)

2000年 9月
国際決済銀行・グローバル金融システム委員会

日本銀行から

 全文は、こちら (bis0009c.pdf 50KB) から入手できます。

第1章:要旨および提案

要旨およびWGの検討課題

 ここ数年間に亘り、グローバル金融システム委員会(the Committee on the Global Financial System)は、BIS国際銀行統計について、中央銀行の立場から指導的な役割を果たすことが期待されてきた。CGFSでは、同統計が国際金融市場の動向を把握する上で重要な公表された情報源であり続けるためには、適時適切な見直しが必要と考えている。こうした考えに基づき、CGFSは、グローバルなデリバティブ市場に関する3年毎の調査(1995年から開始)といった新しい取組みを支持してきた。

 CGFSは、このほか既存のBIS国際銀行統計の改善、例えば、データの収集・公表の迅速化、国際与信統計の四半期化、同統計における最終リスク・ベース計数の作成、についても推進してきた。こうした中、CGFSは、1999年秋にワーキング・グループ(WG)を設置し、BIS国際銀行統計の適切な見直し案、特に、近年銀行の対外与信全体に占める比率が無視できないほど大きくなっているデリバティブ与信の把握や、統計を利用する公的機関から寄せられている同統計の内訳項目の拡充、について検討することにした。WGに与えられた検討課題は、以下のとおり。

グローバル金融システム委員会からWGに与えられた検討課題

 国際金融市場の動向を把握する上で重要なデータ・ソースとして位置付けられる国際銀行統計の有用性を維持していく責任があるとの観点から、WGは、

  1. (i)CGFSが承認したPatat Groupの提案(国際与信統計のデータへの銀行のデリバティブ与信の追加および所在地ベース<immediate borrower basis>で収集されている項目について内訳の拡充)を踏まえ、
  2. (ii)さらにPatat Groupの提案事項以外に、WGが検討すべき新たな項目を追加する必要性について検討し、
  3. (iii)現在収集されているデータの内容を考慮しつつ、統計を改善するための具体的な選択肢を提示し、
  4. (iv)非公式なファクト・ファインディング・サーベイを実施し、統計の改善案が実行に移された場合の費用対効果を評価するために必要な情報を収集し、
  5. (v)費用対効果に関する評価を行い、その結果を踏まえて、優先順位を付けた統計の改善に向けたプロセスを提案すること。

議論の概要

 WGは、1999年10月および2000年1月の2度に亘り会合を開催し、BIS銀行統計の改善についてコンセンサスを形成した。議論の始めの段階から、BIS銀行統計の改善点としてどのような項目を組み入れることが適切かという点については、デリバティブ与信の追加が最も重要であることなど、大筋で合意があったことは明らかであった。このため、討議の中心は、報告負担に対する懸念と公的資源を利用する場合の効率性を考慮しつつ、責任を持って統計を改善するために実際的かつ実現可能な計画を如何に策定するかという点に集中した。

 こうした取組みを行う上で重要な判断材料の1つは、統計作成の原データを提供する銀行との非公式な意見交換であった。WGのメンバーは約50行の報告銀行と面談を行ったが、こうした面談を通じて、統計の改善により市場の透明性を強化していくことについては、総じて銀行の理解を得ることができた。同時に、銀行からは、統計作成のために収集されるデータは、内部のリスク管理を目的として集められた情報から作成され得るデータとしてほしいとの強い要望が寄せられた。これにより、銀行にとっては、報告負担が軽減されるだけでなく、マクロの統計と内部のリスク管理計数がより整合的になる結果、個別行でのリスク管理プロセスにおける統計の有用性が向上するとみられる。

 また、WGにおける議論では、欧州銀行監督委員会(BSC)の報告書「EU銀行のエマージング諸国および発展途上国に対する与信動向("EU Banks' Credit Exposures toward Emerging and Developing Countries")」も議論の方向付けに大きな役割を果たした。この報告書には、所在地ベース(immediate borrower basis)および最終リスク・ベース(ultimate risk basis)それぞれを報告基準とするEU銀行のカントリー・リスクに関するデータが集計されていたが、後者の最終リスク・ベースのデータは、同報告書のために特別に実施された調査に基づいたものであった。この最終リスク・ベースのデータを基に、BISに現在提出されているデータでは十分に把握できていない公的および民間部門の保証といった項目の重要性が明らかになった。また、報告書では、債権者銀行の与信に関する統計を作成する上で、偶発的な与信(contingent credit)のデータが重要であることを示すほか、デリバティブ取引から生じるエマージング諸国市場向け与信が総じて小さいことも判明した。

 議論の過程において、WGでは、BIS国際与信統計の最終的な目的(goals)は何かという議論を行った。そこでは、まず、統計は出来るだけ広く利用されることが求められる一方で、統計を全てのニーズに合うように工夫しようと試みても、統計としては複雑すぎるものになってしまう結果、統計作成過程の管理が行き届かず、計数の信頼性が低下したり、統計の予想される利用者にとって、統計がかえって利用しにくくなってしまうといった問題が生じ得るとのコンセンサスが得られた。こうした考えを踏まえ、WGでは、国際与信統計は、国際的に活動する銀行のカントリー・リスクに関する重要な情報源となるべきとの結論に達した。この背景には、市場に関するマクロ情報の改善に当たっては、最終リスク・ベースで収集された内部データに基づく分析が用いられている個々の債権者銀行自身のリスク管理手法との整合性を重視すべきであるとの判断もある。

 同時に、WGは、所在地ベースの情報の重要性も認識している。こうした情報は、例えば、国別対外債務統計を作成する際に、債権者側のデータから債務者側のデータをチェックするためにも重要である。ただ、WGは、国際与信統計の優先課題は、債権者が抱えるリスク感応度を考慮したポジションの把握にあるとの結論に達した。

提案の内容

 WGは提案を策定するに当たって、2つの考え方を重視した。すなわち、BIS銀行統計を銀行の個別国に対する与信の把握という観点から充実させること、また、銀行統計を金融統計として利用しやすくすべきであるとの考え方である。

 こうした考え方に基づき、WGでは、以下の提案を決定した。

  • BIS国際与信統計は、十分な数の報告国の協力が得られた段階で、最終リスク・ベースを報告基準とする統計に組み替えられるべきである。一方でBISは、所在地ベースを報告基準とする統計の作成・公表も継続すべきである
  • 最終リスク・ベースに報告基準を切り替える際に生じる報告者および統計作成者の負担を緩和するため、新しいデータ・セットによる統計を開始する時期は2004年末を目標とすべきである。
  • 第3者による保証、偶発的な信用ファシリティの未実行分、オフバランス・シートの金融取引を含めて、どういったデータ・シリーズを実際に収集するかについての具体的な計画は、提案されるデータ・シリーズに関する報告者からのコメント(特にデータの利用に関するフィードバックが重要)を踏まえた上で、2001年末までに準備されるべきである。同時に、データの収集に関しては費用対効果も考慮に入れる必要がある。
  • WGは、現在中央銀行から提供されているコミットメントのデータを精査した後、これが有事における借り手の資金調達(すなわち信用リスク)の大きさを判断する指標としての重要性をより明らかにするよう、BISによるコミットメントのデータに関する公表方法を見直すことを提案する。同時に、2004年末計数から効果が生じる統計の構造的な見直しが行なわれるまでの間、BISがデータの利用者に対して現在の国際与信統計における最終リスク・ベースの統計のカバレッジが不十分なことについて注意喚起していくことが重要である。
  • この間、現在の統計を、主要な報告国からのオフバランス・シート与信のデータで補完すべきである。仮に、多くの報告国から、銀行のデリバティブ与信に関するデータが提供されるのであれば、こうしたデータの集計値と国際与信統計におけるこれらの国々の与信合計額と合わせて公表されることが適当であると考えられる。

 WGにおける国際与信統計に関するこれらの提案の内容は、BSCの提案とほぼ整合的なものとなっている。例えば、銀行のベースライン与信にデリバティブ取引の市場価値を含めるべきであるとの提案は両者に共通している。また、WGの提案は、金融安定化フォーラム(Financial Stability Forum)・資金フローWGの報告書でもその方向性が支持されている。このFSF報告書では、銀行の国別与信に関する既存の統計のカバレッジを検討した上で、このカバレッジが不十分であることを指摘している。特に、国際的に幅広く活動を行う銀行のカントリー・リスクに関するデータが、直接的な借り手の所在地ではなく、契約上最終的な支払義務を持つ主体の所在地に基づいて作成される(最終リスク・ベース)ようになれば改善されると述べられている。さらに、FSFのWGは、国際与信統計が、銀行自身の内部リスク管理プロセスで作成される情報と整合的なマクロ面の情報源となるよう改善されることが望ましい点を指摘している。

  1. "Interim Report on Enhancing the Transparency of Aggregate Information," 1999年6月。
  2. 議論の当初から、吉国委統計に国別内訳を追加するとの提案は、現実的ではないと認識されていた。吉国委統計のデータの報告者から中央銀行の統計専門家が得た意見を踏まえた判断である。すなわち、仮に吉国統計のデリバティブ・データを取引先の国別に分けて収集された場合には、その報告負担は極めて重いものになるとの意見が大勢であった。
  3. この情報はマクロ・プルーデンスの分析に関するBSCのWGによる2段階にわたる作業により収集された。EU銀行システム全体の与信に関する情報については、現在、BIS国際与信統計で用いられている方法により収集された。次に、エマージング・マーケットおよび発展途上国向け与信が大きく、システミック・リスクの観点から重要なEUの銀行のオフバランス・シート与信および信用リスクの移転にかかる計数に関する特別調査が実施された。データは1998年末時点のものが収集された。この調査ではEU銀行のエマージングおよび発展途上国向け与信残高の82%、EU銀行の総資産の68%をカバーしている。
  4. この報告書のドラフトに対するコメント段階において、多くのWGのメンバーから2次的な情報源として、所在地リスク・ベースで報告された国際与信統計のデータの公表を継続すべきであるとの強い要望がなされた。
  5. "Report of the Working Group on Capital Flow, Financial Stability Forum," 2000年3月。