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バーゼルII:主要事項に関する大幅な進展について

2003年10月11日
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行仮訳

プレス・リリース

 バーゼル銀行監督委員会のメンバーは、2003年10月10日および11日にマドリッドで会合を開き、「自己資本に関する新しいバーゼル合意」に対して寄せられたパブリック・コメントへの対応を検討した。

新合意に関する次のステップ

 当委員会は、第三次市中協議文書(CP3)に200を超えるコメントが寄せられたことを歓迎する。これらのコメントは、国際決済銀行のウェブ・サイトで見ることができる。これらのコメントからは、新合意の枠組みが大筋において引続き支持を得ていること、ならびに、よりリスク感応度の高い自己資本規制を導入する必要性が認識されていること、が窺われた。

 当委員会の全てのメンバーは、新合意を、迅速かつ、技術的側面ならびに監督上の健全性の観点からも適切な形で完成させることが重要であると合意した。そうした新合意は、現行のシステムに比べて著しい利点をもたらすはずである。さらに、銀行が新しい規制の適用を計画し、準備するにあたってできる限り不確実性を取除いておくことが当面の重要課題である。当委員会のメンバーは、残る論点の解決に向けて早急に作業を行い、2004年央までに解決する決意である。

 当委員会は、いくつかのメンバー国で行われつつある国内規制の策定手続きの重要性を認識しており、これらの国内手続きの結果についても、上記のスケジュールの中で検討する必要があると考えている。

 当委員会は、銀行が新合意の実施に向けた作業を進めていることを歓迎し、そうした作業の継続を推奨する。当委員会はこのプレス・リリースで述べるように追加的な検討を進めているが、これによって、銀行が新合意に向けた準備のためにデータベースやリスク管理システムを改善する必要性が変化することはないと考えている。

焦点となる分野

 当委員会が枠組みを改善できる余地があると考えた主要な分野には、以下のものが含まれる:

  • 期待損失と非期待損失の全般的な取扱いの変更、
  • 証券化の取扱いの簡素化、これには「Supervisory Formula」(訳注:内部格付手法において証券化商品の所要自己資本を計算するために当局が定めている計算ルールの一つ)の採用を取り止め、より簡素な手法に置き換えることが含まれる、
  • クレジット・カードの与信枠やこれに関連する事項に関する再検討、そして、
  • 信用リスク削減手法の取扱いの再検討。
 当委員会とその作業部会は、これらの問題を解決するための作業計画を設定した。

期待損失と非期待損失の取扱い

 信用損失に関する枠組みのうちの内部格付手法において、現在の提案は、銀行に対し、引当に関する特定の取扱いを前提として、非期待損失と期待損失を吸収するのに十分な自己資本を積むことを求めている。当委員会のメンバーは、この手法が会計実務や、引当に関する監督当局の対応が国毎に異なることに対処するための現実的な妥協の所産であることを認識している。しかし、第三次市中協議文書に対して寄せられたコメントを検討し、作業部会がその後に行った調査を考慮した結果、当委員会は、この問題を再検討し、非期待損失に基づく枠組みを採用することを決定した。

 当委員会は、上記に関して更に作業を行うよう作業部会に指示しており、その全体的な方向性は本プレス・リリースの添付資料で説明されている。当委員会は、本提案について、当事者である銀行界からのコメントを2003年末までに求める。これらの提言は、新合意における計算の枠組みを大幅に変更するものにはならないと考えているが、当委員会は、新合意の概念という点からみて本件は十分に重大であり、市中協議が有用であると考える。

 現時点では、当委員会は標準的手法に関して変更する必要があるとは考えていない。

 当委員会は、2004年1月の会合において、期待損失/非期待損失に関する市中協議の結果を評価し、内部格付手法の水準設定についての追加的な関連作業の結果を見極め、上記のその他の技術的な論点に関する議論の進展状況を確認する予定である。当委員会はまた、所要自己資本額の全体的な水準に関する当委員会の目的に照らし、内部格付手法の下での水準設定についての関連作業の結果も評価する予定である。その時点で、当委員会はその議論の状況に関し、さらなる最新情報を提供する予定である。

新合意における自己資本の水準調整

 当委員会は、新合意における自己資本の水準調整が確実に委員会の目的に合致することの重要性についても議論を行った。その結果、当委員会は、新合意の実施に先立ち、追加的な情報に基づいて新合意における自己資本の水準調整を再検討することで合意した。追加的な情報の例としては、国により予定されている追加的な影響度調査や、銀行による並行計算のモニタリング結果が挙げられる。当委員会は、上記の再検討の結果、必要である場合には、新合意における自己資本の水準設定について追加的な変更を提案する予定である。これらの変更は新合意の基本的な枠組みを変更するようなものとはならないと予想される。

新合意の実施に向けた作業

 当委員会は、新合意の実施に向けた作業を強化している。当局間におけるより緊密な実務的協力と情報交換を推進するため、当委員会は2003年8月に、国境を超えた新合意の実施に関する諸原則を公表した。新合意実施の枠組みについて当局間で情報交換することを通じ、実施における整合性を高めるために設立された新合意実施作業部会(AIG、Accord Implementation Group)は、その作業を加速している。AIGは、オペレーショナル・リスクの先進的な手法に関して、母国及び現地でどのように新合意を実施すべきかという点についても検討している。

次期事務局長の指名

 当委員会は、Daniele Nouy女史のバーゼル委員会事務局長としての任期満了に伴い、日本の金融庁の氷見野良三氏を次期事務局長に指名した。氷見野氏は2003年11月1日に着任する。事務局は、国際決済銀行(スイス、バーゼル)に所在し、当委員会とその小委員会に技術的、事務的な支援を行なっている。

 当委員会のメンバーはマドリッドで開催した会合において、Nouy女史が7年間にわたり委員会に貢献し、新合意に係る交渉プロセスを事務局長として指導したことに対して強い感謝の意を表明した。


別添

期待損失と非期待損失の取扱いに関する提案

 市中協議を通じて、バーゼル委員会は、新合意における期待損失の取扱いに関して大幅な改善ができると確信するに至った。この文書は、この面で当委員会における合意内容を要約するものである。当委員会が透明性と市中協議を重視していること、そしてこの合意内容が重要な意味を持つことから、当委員会は、新合意の枠組みを修正する以下の提案に対し、2003年12月31日までに市中からのコメントを求めることとした。

 内部格付手法は、信用リスクへのエクスポージャーに関連し、銀行が抱える期待損失と非期待損失の両方の統計的な計測値を算出する。第三次市中協議文書における枠組みでは、内部格付手法における所要自己資本額の中に、期待損失と非期待損失の両方が含まれていた。

 当委員会は、現在、内部格付手法の中で非期待損失と期待損失の取扱いを分離した方が、より優れてより整合的な枠組みになると考えている。この修正を行った後の手法の下では、リスク・アセット(すなわち内部格付手法における所要自己資本)は、内部格付手法による計算の非期待損失に関する部分のみに基づいて計測されることになる。これに伴い、内部格付手法の枠組みの中において、特に将来の利鞘を用いた所要自己資本額の削減は不必要となる。

 しかし、重要な点として、当委員会は、銀行が期待損失に対して適切に引当を積むことを強く促すために、期待損失に関する別途の取扱いを設けることが重要であると考えている。この別途の取扱いの中では、銀行は、内部格付手法によって計測される期待損失の値と、一般貸倒引当金及び個別貸倒引当金の双方を含む引当総額を比較することになる。それぞれの銀行では、この比較の結果、期待損失額が引当総額を上回った場合には「不足」が、引当総額が期待損失額を上回った場合には「余剰」が生じることになる。

 当委員会は、不足が生じた場合には自己資本から控除することを提案する。この控除は、新合意における他の控除と同様に、Tier 1(基礎的項目)から50%、Tier 2(補完的項目)から50%差し引かれることになる。

 余剰引当が発生した場合には、現在の一般貸倒引当金の取扱いと同様に、Tier 2(補完的項目)に算入できる項目とすることを提案する。さらに、この場合のTier 2(補完的項目)への算入可能額は、各国当局の裁量で設定される上限以内とすることとし、この上限は最大で Tier 2(補完的項目)の20%とすることを提案する。こうした取扱いを提案するにあたり、当委員会は銀行が内部格付手法により計算される期待損失額以上に引当を積む正当な理由を有し得ることを認識しており、それが適切な場合、銀行に対して引当を行うことへの負の誘引を与えることは避けたいと考えている。

 こうした不足と余剰の取扱いは、現在のTier 2資本への一般貸倒引当金の算入に代替するものである。

 内部格付手法にこの新たな計算方法を導入することに伴い、新合意全体の所要自己資本額が当委員会の目標に沿ったものとなるようにするために、この枠組みにおける計測方法の再調整が必要になる可能性があることを強調しておくことが重要であろう。当委員会は、このような調整が必要になりそうな個所を特定するための追加的な作業を進めている。

 当委員会はこの提案に伴って信用リスクに関する標準的手法に調整が必要になるとは考えていないが、当委員会は本件に関するコメントも歓迎する。

 当委員会は、当事者である銀行界から、上記提案のあらゆる側面に関しコメントを歓迎する。コメントは、2003年12月31日までに、関係する各国の監督当局及び中銀に提出されたい。また、バーゼル銀行監督委員会(住所:The Basel Committee on Banking Supervision, Bank for International Settlements, CH-4002 Basel, Switzerland)に提出することもできる。コメントはバーゼル銀行監督委員会の事務局宛電子メール(BCBS.Capital@bis.org)、またはファックス(41-61-280-9100)でも受けつけている。