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BISグローバル金融システム委員会報告書「金融セクターへの対外直接投資−アジア、中東欧、ラ米の経験」(日本銀行解説)

2005年 7月 1日
日本銀行

 以下には、報告書の解説を掲載しています。報告書の全文は国際決済銀行(BIS)のウェブサイト(www.bis.org(外部サイトへのリンク))から入手できます。

1. 経緯

 グローバル金融システム委員会(CGFS)は、2004年3月に、「エマージング諸国の金融セクター向けの直接投資」と題する報告書を公表した。同報告書は、90年代に急増したエマージング諸国の金融セクターに対する海外からの直接投資について調査・分析したものである。(注)

 同報告書では、エマージング諸国の金融セクターへの外資系金融機関の進出により、競争の促進を通じた金融市場の効率性の向上が期待できるほか、金融機関の財務基盤の強化やリスク管理技術の向上を通じて、受け入れ国の金融システムの安定にも寄与し得ると評価している。一方で、外資系による買収に伴い地場金融機関の経営に関する重要な意思決定が国外にシフトしてしまうことや、外資のプレゼンスが大きい国では、海外で発生する金融経済面でのショックが波及しやすくなる可能性があること、などが留意点として指摘されている。

 グローバル金融システム委員会では、2004年の報告書のフォローアップとして、報告書で浮かび上がった論点に関して、各地域間(ラ米、東欧、アジア)の違いをも考慮しつつ理解を深めることを目的に、2004年の夏から秋にかけてソウル、メキシコ市、ワルシャワにおいて、各地域の中央銀行及び市場関係者を招いたワークショップを開催した。

 ワークショップは、特定の結論を得ることを目標にしたものではなかったが、前回報告書で取り上げられた点を含め、興味深い議論がなされたため、グローバル金融システム委員会では、ワークショップでのやり取りを取りまとめた報告書を新たに公表することとした。

2. 報告書のポイント

 各ワークショップを通じて、金融セクターへの対外直接投資が、エマージング諸国にとって、全体として有益であるという共通認識が得られた。また、外資系金融機関の母国と投資受け入れ国において中央銀行等の当局が緊密な情報交換を行うことの必要性が共通のテーマとなった。

 また、エマージング諸国の金融セクターが国際金融システムと一体化していくことに伴うメリットを最大限享受していくためには、公的・民間セクターが共同して、ワークショップで明らかになった政策上の論点に取り組んでいくことが重要ではないかと報告書では締めくくっている。

 ワークショップで浮上した主な政策上の論点と議論の内容は以下のとおり。

(外資系金融機関の経営戦略と受け入れ国の政策対応)

  • 外資系金融機関の経営戦略に関して、外資系金融機関が収益性の高いリテール業務に経営資源を注力しがちであり、中小企業向けの資金供給等に必ずしもつながらないとのコメントがあった。これに対しては、受け入れ国側において、外資系金融機関による多様な市場への進出を促すような政策運営(法・会計制度面でのインフラ整備等)が重要であるとの指摘があった。
  • 親会社の株主価値を高めるための経営判断が必ずしも受け入れ国側にとっては最善のものとは限らず、子会社となった金融機関に対しても市場規律が有効に働くような仕組み作りが重要であるとのコメントがなされた。
  • 市場を外資系金融機関に開放していく上で、他の政策とのタイミングの調整が重要との認識も示された。受け入れ国における監督体制等が整備されていない状況で、市場開放を進めるようなケースでは混乱を引き起こす可能性がある。

(市場情報の提供)

  • 地元の金融機関が外資に子会社化され、その結果として上場廃止になるケースでは、地元の市場関係者等への情報開示が大幅に低下するリスクが指摘された。

(当局間の情報共有)

  • エマージング諸国では、外資系金融機関のプレゼンスが非常に大きく、金融システム安定上の影響も大きいケースも少なくないため、外資系金融機関の母国及び受け入れ国双方の中央銀行や監督当局は緊密な情報交換を行う必要があることが強調された。中央銀行による緊急時の流動性供給に関連しても、外資系金融機関への対応を検討していくうえで当局間の情報交換の重要性が指摘された。

以上