【挨拶】 AIを活用した金融の高度化に関するワークショップ(第3回「信用評価」)
2019年3月4日
日本銀行金融機構局
金融高度化センター
開会挨拶
本日はAIワークショップ第3回会合にようこそお越しくださいました。金融高度化センター長の菅野でございます。会合の開催にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
はじめに、ご報告になりますが、先般、このAIワークショップでの議論を踏まえまして『金融ジャーナル』誌2月号に「金融分野におけるAI活用の現状と課題 [PDF 1,295KB]」と題する論考を寄稿させていただきました。ご一読いただければ幸いです。
さて、本日の第3回会合のテーマは信用評価です。信用評価へのAIの活用は、具体的には、いわゆるオンラインレンディングを含む貸出審査の場面と貸出実行後のリスク管理の場面で行われるのではないかと思います。
例えば、第一に、担当者の属人的なスキルや経験に依存していた貸出審査の一部をAIが代替・補完することで、これを均質化するだけでなく、迅速化・効率化します。融資担当者の審査準備の負担も軽減できるかもしれません。また、これらの結果として、不特定多数に向けた貸出が可能となり、さらには、従来の審査基準で貸すことができなかった先の取り込みにつながる可能性も秘めています。
第二に、金融機関にとって、貸出先がデフォルトする恐れを少しでも早い段階で認識できれば、事前に対策を打つことも可能になります。そうしたデフォルトの予兆を的確に捉えるため、従前よりも多くのデータを用いて分析し、また、そのためにAIを活用することが考えられます。
こうした整理を踏まえ、本日はお二人のプレゼンターをお招きしております。
ひとり目は、当センターの三浦です。三浦からは、現在、当センターがりそな銀行様、CRD協会様と取り組み、この席にもおられる統計数理研究所の山下教授にご助言をいただいております共同研究について、概要を発表します。
入出金情報を用いた信用リスク評価をテーマとするこの研究は、銀行の勘定系データである口座の入出金データを基に、機械学習モデルを用いて、非上場の中堅・中小企業にも適用可能なデフォルトリスクの予兆指標を創出しようとする試みです。
やや学術的な内容になっておりますが、従来広く用いられてきたロジットモデルとの比較や分析時に苦労した点など、実務的なインプリケーションもできるだけ盛り込んでおります。
おふたり目は、りそな銀行リスク統括部金融テクノロジーグループの荒川グループリーダーです。
荒川様は、金融商品のプライシング、リスク計測モデルや各種審査モデルの構築などの業務に長く取り組んでこられた立場から、データを活用した信用評価の高度化の流れや、現在活用されている事例などをご紹介いただくとともに、この分野でAIを活用していく上での課題などについて、包括的な整理をしていただきます。
ラウンドテーブルの皆様におかれましては、本日のワークショップが実り多く有意義なものになりますよう、自由闊達なご議論をお願い申し上げます。