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銀行のコンプライアンス機能

2003年10月
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行から

 以下には、冒頭部分を掲載しています。全文は、こちら (bis0311a.pdf 39KB) から入手できます。


(仮訳)

 本市中協議文書へのコメントを歓迎する。コメントは、国際決済銀行(BIS)にあるバーゼル銀行監督委員会事務局(CH-4002 Basel, Switzerland)宛てに、2004年1月31日までに提出されたい。コメントはEメール(baselcommittee@bis.org 1)またはFAX(+41 61 280 9100)でも受け付けている。本ペーパーへのコメントはBISのウェブサイトには掲載されない。

  1. このメールアドレスはコメントの送信専用であり、連絡用には用いないこと。

はじめに

  1. 銀行監督を巡る諸問題に取り組み、銀行組織における健全な実務を促進するための継続的な努力の一環として、バーゼル銀行監督委員会(以下バーゼル委)は、銀行組織のコンプライアンス(法令等遵守)機能に関するこのペーパーを公表する2。コンプライアンス機能の目的は、銀行によるコンプライアンス・リスクの管理を支援することであり、ここで、コンプライアンス・リスクとは、適用されるすべての法律、規制、行動規範、適切な実務基準(総称して「法律、規則および基準」)を遵守しなかった結果として銀行が被るかもしれない法律上または規制上の処罰、金銭的損失あるいは評判上の損失として定義出来る。コンプライアンス・リスクは時として誠実性リスク(integrity risk)と呼ばれることもある。なぜなら、銀行の評判は、誠実性及び公正取引に関する諸原則の遵守と密接に関連しているからである。銀行監督者は、有効なコンプライアンスの方針と手続きが守られ、法律、規則および基準の違反が認識された時に、経営陣が適切な是正措置をとっていることを確認しなければならない。
    1. 2このペーパーにおいて、「機能」という表現は特定の活動および責任を果たす役割を担う職員を指す。この表現は特定の組織構造を意味することを意図するものではない。
  2. 法律、規則および基準へのコンプライアンスは、銀行の顧客、市場、社会全体からの評判を保持し、そして、それらの期待に沿うことを助ける。もとより、法律、規則および基準へのコンプライアンスは常に重要なものであったが、コンプライアンス・リスクの管理は過去数年の間により正式なものとなり、個別のリスク管理規律として発展してきた。
  3. このペーパーは、銀行のための基礎的な指針として役立つとともに、銀行組織におけるコンプライアンスについての銀行監督当局の見方を整理している。このペーパーで述べられている原則は、特定の法律、規制の枠組みの中で適用される必要があるが、一般的な適用を想定している。銀行によって、コンプライアンス機能の組織および責任に関して大きな違いが存在する。中央集約的なコンプライアンス機能(すなわち、すべてのコンプライアンス担当職員が一つのコンプライアンス部署に配属されている)を採用してきた銀行もあれば、より非中央集約的な(decentralised)コンプライアンス機能(すなわち、コンプライアンス担当職員が異なる業務ラインに配属されている)を選択してきた銀行もある。多くの銀行は既にグループのコンプライアンスオフィサーを有している。法令関連事項に関する助言について別の役割を与えている銀行もあろう。また、国や地域によっても違いはある。コンプライアンス機能に特定の法定化された責任を与えている国や地域もあれば、そうでないところもある。
  4. バーゼル委は、各国の銀行が選択する具体的なアプローチは、銀行の規模や洗練度、活動の性質や地理的範囲を含む様々な要素によることを認識している。しかしながら、コンプライアンス機能が銀行においていかに組織化されているかに関らず、2つの鍵となる原則が存在するべきである。第一に、コンプライアンス機能の役割と責任が明確に定義されているべきであり、第二に、コンプライアンス機能は銀行の業務活動から独立しているべきである。
  5. コンプライアンス・リスクの管理は、銀行の文化が、銀行のすべての層において倫理的行動に関する高い基準を強調するものである時に最も有効である。取締役会および上級管理職は、行動と言葉の両方を通じて、銀行の業務を実行するに当たって、法律、規則および基準に対する(上級管理職を含めた)すべての職員によるコンプライアンスが期待されることを確立する組織文化を醸成すべきである。このペーパーで述べられる原則に沿って組織された銀行のコンプライアンス機能は、倫理行動基準に基づいた強固なコンプライアンス文化を経営陣が形成するうえで役立ち、もって有効なコーポレート・ガバナンスに貢献するはずである。
  6. このペーパーは、次のものを含む多くの関連するバーゼル委員会のペーパーとともに読まれるべきである。
    • 銀行組織における内部管理体制のフレームワーク(1998年9月)
    • 銀行組織にとってのコーポレート・ガバナンスの強化(1999年9月)
    • 銀行の顧客確認に関するガイダンス(2001年10月)
    • 銀行の内部監査および監督当局と監査人との関係(2001年8月)
    • オペレーショナル・リスクの管理と監督に関するサウンド・プラクティス(2003年2月)
  7. このペーパーにおける原則は、取締役会および上級管理職によって構成されているガバナンスの構造を想定している。取締役会および上級管理職の機能に関する法規制上の枠組みは、国によって、また、企業の種類によっても異なる。したがって、このペーパーにおける原則は、各国のコーポレート・ガバナンスの構造および企業の種類に応じて適用されるべきである3
    1. 3一部の国では、取締役会が、経営陣(上級管理職、総括マネジメント)の任務遂行を確保するための、全てではないにしても主要な監督機能を保持している。この理由から、一部のケースでは、取締役会は監督委員会(supervisory board)とも呼ばれている。このことは取締役会が執行機能を保持していないことを意味する。一方、他の国では、取締役会がより広い権能を持ち、それに基づき、銀行のマネジメントに対する総括的な枠組みを設定している。これらの相違により、このペーパーでは、取締役会と上級管理職という概念は、法律上の構成を示すのではなく、むしろ、銀行内における2つの意思決定機能を指し示すものとして使用されている。
  8. このペーパーは、まず、「コンプライアンス機能」の定義を提案する。そして、取締役会および上級管理職のコンプライアンスに対する責任を検討する。そして、「コンプライアンス機能の原則」のセクションで、銀行におけるコンプライアンス機能の組織と構造、役割と責任、その他の関連する問題について議論する。
  9. このペーパーにおける原則は、銀行、銀行グループ、銀行を主たる子会社とする持株会社に適用される。