このページの本文へ移動

銀行組織にとってのコーポレート・ガバナンスの強化

<日本銀行仮訳>

1999年 9月16日
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行から

 全文は、こちら(bis9909b.pdf 54KB)から入手できます。

はじめに

  1. 近年、国内および国際レベルの様々な議論の場において、コーポレート・ガバナンスの問題が大いに注目を集めている。特に、OECDは、各国政府が「自国におけるコーポレート・ガバナンスの法的、制度的、および規制上の枠組を評価・改善する努力、および、望ましいコーポレート・ガバナンスを発展させるプロセスに関与する証券取引所、投資家、法人などの当事者にガイダンスと示唆を提供する努力」に資するように、コーポレート・ガバナンスに係る一連の基準とガイドラインを公表した1
  2. バーゼル銀行監督委員会2は、監督上の課題に対処するために継続的に行なっている努力の一環として、委員会メンバーおよびその他の監督当局の監督経験に広く学びつつ、安全かつ健全な銀行実務に係る監督ガイダンスを積極的に公表してきた。当委員会は、銀行にとってのOECD諸原則の重要性を強調すること、当委員会の既公表ペーパーの中で取り上げたコーポレート・ガバナンス関連の問題に注意を喚起すること、および、銀行とその監督当局が検討すべきコーポレート・ガバナンス関連の幾つかの新しい論点を提示することを目的として、本ペーパーを公表する。
  3. 健全なコーポレート・ガバナンスが組織に定着しないと、銀行監督の機能度は低下する。したがって、銀行監督当局は、全ての銀行組織に有効なコーポレート・ガバナンスが存在することを確かなものとする強い動機を有している。個々の銀行に適切な水準のアカウンタビリティーと相互牽制が存在する必要性があることは、監督上の経験から明らかである。単純化して言えば、健全なコーポレート・ガバナンスは監督当局の仕事を限りなく容易にする。健全なコーポレート・ガバナンスは、銀行経営陣と銀行監督当局の間の協力的かつ実用的な関係に寄与し得る。
  4. バーゼル委員会が最近公表した健全な実務に関連する諸々のペーパーは、銀行が業務戦略を立て、それらを執行するに当たってのアカウンタビィティーを確立することの必要性を強調している。さらに、現在の状態・意志決定・行動に関する情報の透明性は、これによって市場参加者が銀行経営を評価するための十分な情報を得ることができることから、アカウンタビリティーの不可欠な要素である。
  5. 本ガイダンスは、取締役会および上級管理職から成る管理体制を対象としている。取締役会や上級管理職の機能に関しては、国毎に法律や規制の枠組がかなり異なることを当委員会は認識している。一部の国では、取締役会は監督理事会(supervisory board)として位置付けられている。こうした場合、取締役会は業務執行機能を有していない。これに対し、銀行経営の全般的枠組の設定など、より広範な権限が取締役会に与えられている国もある。こうした相違を踏まえ、本ペーパーでは、取締役会および上級管理職の概念を法的構造の要素としてではなく、銀行の内部における二つの意思決定機能を示すものとして用いる。取締役会と上級管理職のこうした捉え方は、本ペーパーにおいて時折、コーポレート・ガバナンス“構造”という言葉により示される。
  6. バーゼル委員会は、監督当局が自国の銀行組織に対し健全なコーポレート・ガバナンスを導入するように促すに当たって、本ペーパーが役立つであろうと考え、本ペーパーを全世界の監督当局に向けて公表する。コーポレート・ガバナンスに係る制度的アプローチが国によって異なることを認識しつつ、本ペーパーでは、多様な制度の下でコーポレート・ガバナンスを強化し得る実務を推奨している。
  1. 「コーポレート・ガバナンスに関するOECD諸原則」(1999年6月21日)参照。
  2. バーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision)は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会である。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、スイス、英国および米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。委員会は通常、常設事務局が設けられているバーゼルの国際決済銀行において開催される。

以上