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わが国金融システムの安定化および内外からの信頼性確保に資することを目的として新たに設立される社団法人に対する資金拠出の件

1996年11月15日
(議決日 1996年9月24日)
日本銀行政策委員会

本委員会は、平成8年9月24日、わが国金融システムの安定化および内外からの信頼性確保に資することを目的として、下記のような基金を活用した事業を行う社団法人が新たに設立されるに当たり、信用制度全体の安定を確保する観点から、当該社団法人の設立者となり、同法人の特別会員として、当該基金に充てる資金を1,000億円拠出すること、を決定した。

  1. (1)当該社団法人内に基金を設置し、正会員(民間金融機関(銀行、生命保険会社、証券会社)および農林系統金融機関。以下、両者を合わせて「民間金融機関等」という。)および特別会員(日本銀行)から拠出金を受入れて、これを基金に充てる。当該基金は、日本銀行からの拠出金を充てる勘定(第一勘定)と民間金融機関等からの拠出金を充てる勘定(第二勘定)に区分して経理を行い、勘定間の資金の振替、融通は行わない。
  2. (2)当該基金のうち、第一勘定は、金融機関の資本基盤の構築等を支援する事業に活用する一方、第二勘定は、金融システム安定を目的とした基金運用事業に活用する。
  3. (3)第一勘定の運用については、事前に日本銀行と協議し、日本銀行の同意を得る。
  4. (4)第一勘定の運用益は、一部を当該社団法人の経費に充て、残余は基金業務終了時に日本銀行に返還する。また、第二勘定の運用益は、基金業務終了時に住宅金融債権管理機構に贈与する(預金保険機構を通じて最終的に国庫に納付)。
  5. (5)基金業務終了時に、第一勘定および第二勘定のそれぞれにつき、基金の残余を、各拠出者に対しその拠出額に応じて返還する。

本件決定の背景は、次のとおりである。

本件決定にかかる社団法人(本件決定後の平成8年9月25日に設立総会が開催された「社団法人新金融安定化基金」)の設立は、住宅金融専門会社の債権債務の処理に関連して、政府・与党より民間金融機関等に対し要請されていた(平成8年6月19日の政府・与党声明等)ものであり、日本銀行に対しても、「日本銀行の資金の性格にも留意しつつ、金融システムの安定化に資する目的でその資金の活用を要請する」(同政府・与党声明)として、協力が求められていた。

日本銀行では、こうした要請を受け、第一に、日本銀行資金は公的資金であり、財政支出の負担軽減には利用し得ないこと、第二に、日本銀行の資金供与に当たっては、当該資金供与が金融システムの安定確保のうえで不可欠であり、また日本銀行の財務の健全性にも十分な配慮がなされているといった条件が満たされる必要があること、を踏まえつつ、民間金融機関等における検討状況を見極めてきたが、「社団法人新金融安定化基金」の設立が具体化されるに当り、同法人への資金拠出は上述の日本銀行の基本的な考え方に合致するものと認められたため、本委員会において本件決定を行ったものである。