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北海道拓殖銀行に対する手形貸付にかかる特別措置に関する件

1997年12月12日
(議決日 1997年11月17日)
日本銀行政策委員会

北海道拓殖銀行は、平成9年9月12日、平成10年4月に予定していた北海道銀行との合併を延期する旨発表するとともに、併せて、不良債権の処理および資本の増強策並びに経営の効率化策を発表し、その実施を図ったが、預金の減少に加え、株価が急激に下落する等市場の評価を得られず、さらに、市場性資金の取入れも困難になったことから、資金繰りが行き詰まるに至った。こうした情勢の下で、11月16日夕刻、同行から日本銀行に対し、(1)自力での業務継続は困難である、(2)北海道における金融機能を維持していく観点から受皿銀行に業務を引継ぐこととしたいが、ついては、預金保険機構に不良資産の買取り等を要請することとしたい、(3)同行においては、経営責任を明確にするため、取締役全員は辞任する予定である、との報告がなされた。

こうした状況を受け、日本銀行としては、現下の金融情勢および北海道拓殖銀行が北海道において重要な金融機能を果たしている事実を踏まえると、大蔵省検査による同行の財務計数を確認した上で、関係者間で協議を行い、(1)北海道拓殖銀行の業務を北洋銀行に引継ぐこととし、業務継承までの間、北海道拓殖銀行は通常通りの業務を継続すること、(2)北洋銀行への業務の引き継ぎに当たっては、預金保険機構が不良資産を買取る等、所要の支援を行うこと等を骨子とする処理方策(詳細は、後掲の日本銀行対外発表文を参照)を早急に取りまとめることが必要と判断した。

以上のような状況を踏まえ、本委員会は、平成9年11月17日、(1)北海道拓殖銀行において預金払戻し等業務を継続するための資金の不足が生じた場合には、わが国信用制度全体の安定が脅かされるおそれが強い、(2)そうした事態を回避しつつ、上記処理方策の円滑な実施を図っていくためには、同行の現況からみて、日本銀行による資金供与が不可欠であり、また、当該資金供与に当たっては、通常の日本銀行貸出の適格担保を受け入れ得ない事態が想定される、との判断の下で、信用制度全体の安定を確保する観点から、下記の決定を行った(なお、下記2.の措置を実施するため、同日、日本銀行法第25条に基づき大蔵大臣の認可を得た)。

北海道拓殖銀行の経営問題に関する処理方策が実施されるまでの間、同行に対する手形貸付につき、以下の特別措置を行う。

  1. 同行に対する手形貸付の担保については、日本銀行法第20条第2号に規定する担保品で従来手形貸付の担保としていない種類のものについても、担保として適当と認められるものに限り、次の要領によりこれを担保として徴求し得る扱いとすること。
    1. (1)各担保品の担保価格は、その市場性および信用力を勘案し、時価(時価のない場合は額面。)の80%を超えない範囲で定める扱いとする。
    2. (2)貸付利子歩合は、基準貸付利子歩合のうち「その他のものを担保とする貸付利子歩合」(「国債、特に指定する債券または商業手形に準ずる手形」以外のものを担保とする場合の貸付利子歩合。以下同じ。)を適用する。
  2. 上記1.の取扱いによっても担保品が不足する等やむを得ない場合には、同行に対し、日本銀行法第20条第2号に規定する担保品および平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀第2669号)により担保として認められた証書貸付債権のいずれをも担保としない手形貸付を、次の要領により行うこと。
    1. (1)貸付金額
      同行の資金繰りを勘案し、同行が預金払戻し等営業を継続するための必要最小限の金額
    2. (2)貸付期間
      日本銀行が適当と認める期間
    3. (3)貸付利子歩合
      基準貸付利子歩合のうち「その他のものを担保とする貸付利子歩合」を適用する。

なお、日本銀行は、本件に関し、平成9年11月17日、次のとおり対外発表を行った。


1997年11月17日
日本銀行

総裁談話

  1. 北海道拓殖銀行は、本年9月12日、来年4月に予定していた北海道銀行との合併を延期する旨発表するとともに、併せて、不良債権の処理および資本の増強策並びに経営の効率化策を発表し、これまでその実施に向けて最大限努力してきたところであるが、合併延期発表後、預金の減少に加え、株価が急激に下落する等市場の評価を得られず、さらに、市場性資金の取入れも困難となり、資金繰りが行き詰まるに至った。
  2. かかる状況を踏まえ、今般、同行から、以下のような報告を受けた。
    1. (1)今後の自力での業務継続は困難である。
    2. (2)北海道における金融機能を維持していく観点から受皿銀行に業務を引継ぐこととしたいが、ついては、預金保険機構に不良資産の買取り等を要請することとしたい。
    3. (3)このような事態を招いた経営責任を明確にするため、河谷頭取をはじめ取締役全員は辞任する予定である。
  3. 日本銀行としては、わが国金融システムの安定確保の観点、および同行が北海道において重要な金融機能を果たしている事実に鑑み、これまで同行が果たしてきた金融機能自体は、是非とも維持することが不可欠であると考えている。
  4. 以上の点を踏まえ、日本銀行としては、現在実施されている大蔵省検査による同行の財務計数を確認の上で、次のような点を基軸とする処理方策を関係者の間で協議しつつ、早急に取りまとめることが必要と判断している。
    1. (1)北海道拓殖銀行の業務を引継ぐ受皿銀行は北洋銀行とし、また、地域経済の安定を図る観点から、他の地元金融機関にも協力を求める。北洋銀行への承継までの間においては、北海道拓殖銀行は通常通りの業務を継続し、預金者や健全な融資先等の取引に支障が生じないよう万全の配慮を払う。
    2. (2)受皿銀行には、北海道拓殖銀行の有する健全な資産・預金等のみが引継がれることとし、預金保険機構が不良資産を買取る等所要の支援を行う。この場合、不良債権から生ずる損失については、まず北海道拓殖銀行の自己資本を充当する。
    3. (3)受皿銀行に引継ぐ北海道拓殖銀行の業務の具体的内容や承継の方法・時期等は、今後関係者と詰めていくこととなるが、受皿銀行の経営の安定性を確保するため、本州内の健全な資産・預金等については、道内分とは切り離し、既存金融機関に営業譲渡する方向で検討する。
  5. 日本銀行としても、今後早急に処理方策の具体化が図られるよう関係者と協議を行い、その円滑な実施に協力していく所存である。また、日本銀行は、北海道拓殖銀行が受皿銀行に業務を引継ぐまでの間、日本銀行法第25条に基づき業務継続に必要な資金を供給する方針である。
  6. 預金については、受皿銀行等に引継がれ、全ての預金が保護されることになるので、預金者におかれては心配されることなく、良識ある行動を取られることを強く期待する。