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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書

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衆議院財務金融委員会における概要説明

日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年6月10日

目次

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。本日、わが国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

わが国の経済金融情勢

最初に、わが国の経済金融情勢について、ご説明申し上げます。

わが国の景気は、緩やかな回復を続けています。企業部門では、輸出、生産が持ち直すとともに、収益は過去最高水準まで増加しています。そのもとで、前向きな投資スタンスが維持されており、設備投資は緩やかな増加基調にあります。家計部門については、今春の賃金改定交渉において、多くの企業で昨年を上回るベースアップを含む賃上げが実現する見通しとなるなど、雇用・所得環境の着実な改善が続いています。昨年秋以降慎重化していた消費者マインドも、このところ持ち直しの動きが明確になっています。これらを背景に、個人消費は底堅く推移しており、住宅投資にも持ち直しに向けた動きがみられています。このように、企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムは、しっかりと作用し続けています。先行きについても、景気は緩やかな回復を続けていくと考えられます。

こうした経済活動を支えるわが国の金融環境は、緩和した状態にあります。企業の資金調達コストは低水準で推移し、企業からみた金融機関の貸出態度は改善傾向が続いています。銀行貸出残高は、中小企業向けも含めて、緩やかに増加しています。

物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%程度となっています。先行きは、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみていますが、需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の上昇を背景に物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えています。2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されますが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想しています。その後は、平均的にみて、2%程度で推移するとみています。

金融政策運営

次に、日本銀行の金融政策運営について、ご説明申し上げます。

日本銀行は、一昨年4月、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するために、「量的・質的金融緩和」を導入しました。さらに、昨年10月には、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定しました。「量的・質的金融緩和」は、所期の効果を発揮しており、デフレマインドの転換は着実に進んでいます。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う方針です。

ありがとうございました。