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【概要説明】通貨及び金融の調節に関する報告書衆議院財務金融委員会における概要説明

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日本銀行総裁 黒田 東彦
2022年4月5日

はじめに

日本銀行は、毎年6月と12月に「通貨及び金融の調節に関する報告書」を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しくご説明申し上げる機会を頂き、厚く御礼申し上げます。

経済金融情勢

まず、最近の経済金融情勢について、ご説明致します。

わが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響などから一部に弱めの動きもみられますが、基調としては持ち直しています。海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復しています。ただし、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、国際金融資本市場では不安定な動きがみられるほか、原油などの資源価格も大幅に上昇しています。そうしたもとで、輸出や生産は、供給制約の影響を残しつつも、基調としては増加を続けています。3月短観では企業の業況感は小幅に悪化しましたが、企業収益は全体として改善を続けており、設備投資は持ち直しています。一方、個人消費は、年始以降のオミクロン株流行による下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服しています。先行きのわが国経済は、資源価格上昇の影響を受けつつも、感染症による下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、財政金融政策の下支えもあって、回復していくとみています。

物価面をみると、消費者物価の前年比は、足もとでは0%台半ばとなっています。当面、エネルギー価格が大幅に上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、プラス幅をはっきりと拡大すると予想されます。この間、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まっていくと考えています。

先行きのリスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要です。また、ウクライナ情勢が、国際金融資本市場や資源価格、海外経済の動向等を通じて、わが国の経済・物価に及ぼす影響についても、きわめて不確実性が高いと考えています。わが国の金融システムについてみると、感染症の影響のもとでも、全体として安定性を維持しています。より長期的な金融面のリスクとしては、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かう惧れがあります。一方、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあります。現時点では、これらのリスクは大きくないと判断していますが、先行きの動向を注視する必要があります。

金融政策運営

次に、金融政策運営について、ご説明申し上げます。

わが国のGDPは、依然として感染症拡大前の水準を下回って推移しています。消費者物価の前年比は、目先、プラス幅をはっきりと拡大すると予想されますが、主因は、エネルギー価格の上昇です。こうした輸入コストの上昇に起因する物価上昇は、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて、わが国経済に下押しの影響を与える可能性があります。

このような経済・物価情勢を踏まえ、日本銀行としては、現在のイールドカーブ・コントロールを軸とする強力な金融緩和を粘り強く続けることで、感染症からの回復途上にある経済活動をしっかりと支え、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を目指して参ります。

そのうえで、日本銀行としては、内外の情勢を注視しつつ、潤沢な流動性の供給等を通じて、引き続き金融市場の安定確保に努めるとともに、感染症対応融資を行う金融機関に対し、低利の資金を供給する新型コロナ対応金融支援特別オペを通じて、中小企業等の資金繰り支援に万全を期して参ります。

ありがとうございました。