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金融経済月報(基本的見解1)(1998年 3月)

  1. 本「基本的見解」は、3月13日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として了承されたものである。

1998年 3月17日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9803.pdf 404KB)から入手できます。


 わが国の景気は停滞を続けており、下押し圧力が強まりつつある。

 最終需要面をみると、純輸出が引き続き増加基調にあって経済活動を下支えしているが、これまで増勢を維持してきた設備投資は頭打ちが明確になってきている。個人消費については、家計マインドが慎重化していることなどを背景に、低迷が長引いている。また、住宅投資が落ち込んだ状態を続けているほか、公共投資も減少傾向にある。こうした最終需要動向を背景として、在庫調整の動きが本格化する中で、鉱工業生産は弱含み基調となっており、その影響が、企業収益をはじめ、雇用・所得面にも及んでいる。

 先行きについては、金融システム安定化策や特別減税の効果が期待されるが、国内最終需要に目立った回復が見込めない下で、所得形成の力の弱まりが、国内需要の一層の減退につながっていく可能性も否定できない。これに加えて、アジア経済の調整の深まりや、後述するような金融面の動向が経済に及ぼす影響など、景気下振れリスクについて十分な注意を払っていく必要がある。

 この間、物価面をみると、卸売物価は軟化を続けているが、消費者物価は、消費税率引き上げ等の制度変更要因を除いてみると、上昇率が徐々に低下しながらも、引き続き前年を若干上回る水準にある。先行きについては、国内需給ギャップの拡大傾向が続くと見込まれることや、アジアにおける需給の緩和を背景に国際商品市況が下落していることなどから、当面、物価は全般に軟調に推移する公算が大きいとみられる。

 金融面をみると、短期金融市場では、日本銀行による潤沢な期末越え資金供給等を反映して、このところターム物レートが明確に低下し始めている。もっとも、昨年秋以前に比べればなお高い水準にあり、市場では信用リスクを強く意識した状況が続いている。長期国債利回りは、追加景気対策への思惑による振れを伴いつつも、実体経済指標の弱さを反映して、2月初以降低下傾向にある。この間、株価については、実体経済指標や企業収益面での弱い材料と、金融システム安定化策が具体化してきたことなどの下支え要因を背景に、一進一退の動きとなっている。

 量的金融指標をみると、1月のマネーサプライは、投信解約資金の流入等からさらに伸びを高めた。2月の民間金融機関貸出は、前年比減少幅がやや拡大したが、資本市場調達等の代替的な資金調達ルートも含めると、企業の資金調達額は、全体として増加している可能性が高い。しかし、金融機関の貸出姿勢をみると、自己資本面からの制約は一頃に比べ緩和してきているとは言え、中期的な収益性や健全性向上の観点から、与信先を慎重に選別するスタンスが続いている。このため、中小企業を中心に、企業によっては資金繰り環境が厳しさを増しているとみられる。また、企業の資金調達コストは、信用リスクの格差を反映しつつ、全般に若干上昇してきているとみられる。これら金融面での動きが、実体経済に与える影響については、引き続き注意深く観察していく必要がある。

以上