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金融経済月報(基本的見解1)(1998年 9月)2

  1. 本「基本的見解」は、9月9日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、9月9日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

1998年 9月11日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9809.pdf 460KB)から入手できます。


 わが国の経済情勢は全般に悪化を続けている。

 最終需要面をみると、公共投資は下げ止まり傾向にあり、純輸出(輸出−輸入)も、輸入の減少を主因に、このところ増加している。その一方で、設備投資の大幅な減少が続いており、住宅投資も一段と減少している。個人消費については、特別減税の実施にもかかわらず、なお回復が確認されない状態が続いている。こうした最終需要動向の下で、大幅な減産が実施されてきている。この結果、在庫については、調整が進捗しつつある業種もみられるが、全体としてはなお高い水準にある。以上のような支出・生産活動の低下に伴って、企業収益の減少が続いているほか、雇用者所得も減少テンポがやや速まっている。また、有効求人倍率が既往最低水準を更新し、失業率も高水準で推移するなど、最近の雇用・所得環境は一段と厳しさを増している。

 このように現状、生産・所得・支出を巡る循環は引き続きマイナス方向に働いている。今後は、政府の総合経済対策の効果によって、景気のさらなる悪化には徐々に歯止めが掛かると期待されるが、既に経済活動の水準が相当程度低下していることを踏まえると、民間需要を中心とした自律的回復へと速やかに繋がっていくことは考えにくい。また、株価下落など、金融面の動向が、実体経済面にマイナスの影響を及ぼす可能性にも注意が必要である。こうした状況下、政府は、来年度予算について、財政構造改革法の凍結を前提に4兆円の特別枠3を設けるなど、景気に配慮した内容の概算要求基準を示した。また、金融システムの建て直しに向けての諸法案が現在国会で審議されているほか、6兆円を超える規模の個人所得・法人税減税に関しても、検討が本格化するとみられる。今後は、こうした施策がどのように具体化され、企業・消費者の心理にどう影響を及ぼすか、といった点に注目していく必要がある。

 物価面をみると、卸売物価が下落傾向を続けているほか、消費者物価も、前年比マイナスに転じつつある。先行きについては、総合経済対策の効果が期待されるが、需給ギャップの水準が相当程度拡大していることを踏まえると、内生的な物価下落圧力が目立って弱まるとは考えにくく、物価は、なお当分の間、軟調に推移する公算が大きい。

 金融面をみると、株価は、8月下旬以降、金融システム問題を巡る不透明感の高まりや、ロシア金融危機に端を発する世界的な株価低迷をきっかけに、一時大幅に下落するなど、不安定な動きとなっている。また、金融機関の信用リスクに対する市場の警戒感の強まりを背景に、ユーロ円とTBとの金利格差、ジャパン・プレミアム、民間債と国債との利回り格差は、それぞれ拡大した。もっとも、市場の一部に追加的な金融緩和に関する思惑が出たことなどもあって、長短市場金利は総じてみれば、小幅の低下となった。

 金融の量的側面をみると、実体経済活動に伴う企業の資金需要は引き続き低迷しているが、民間銀行の慎重な融資姿勢などを眺めて、企業の中には再び手許流動性を厚めに確保しようとする動きがみられている。この結果、社債、CPの発行が引き続き拡大しているほか、低迷基調を続けている民間銀行貸出も、前年比マイナス幅は横這いとなってきている。またマネーサプライも、ここへきて伸び率鈍化傾向がやや一服気味となっている。

 ただ、中小企業などを中心に、企業によっては、資金のアベイラビリティー、金利の両面で厳しい資金調達環境が続いていることに変わりなく、その実体経済に与える影響について、今後とも注意深く点検していく必要がある。

  1. 3「景気対策臨時緊急特別枠」

以上