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金融経済月報(基本的見解1)(1998年11月)2

  1. 本「基本的見解」は、11月13日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、11月13日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

1998年11月17日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9811.pdf 425KB)から入手できます。


 わが国の経済情勢は、依然として悪化を続けている。

 最終需要面をみると、公共投資の発注が大幅に増加したほか、純輸出(輸出−輸入)も、基調としては、増加を続けているとみられる。しかし、設備投資は、企業の資金調達環境が厳しさを増す中で、減少を続けており、住宅投資も一段と減少している。また、個人消費については、このところやや弱さが目立ってきている。こうした最終需要動向のもとで、企業は大幅な減産を継続している。この結果、在庫は減少を続けているが、出荷の低迷から在庫率はなお高い水準にある。以上のような支出・生産活動の低下に伴って、企業収益の悪化が続いているほか、雇用者所得も引き続き減少している。また、有効求人倍率が既往最低水準を更新し、失業率が既往最高水準で推移しているなど、雇用・所得環境は厳しさを増している。

 このように現状、生産・所得・支出を巡る循環は、依然としてマイナス方向に働いている。また、企業金融面に関しても、金融機関の融資姿勢が一段と慎重化していることに加え、資本市場からの資金調達もさらに困難になっているため、企業は、年末・年度末にかけての資金繰りに対する不安感を高めつつある。

 今後は、政府の総合経済対策や今次金融緩和の効果が見込まれるため、これまでのような経済情勢の悪化テンポは次第に和らいでくることが期待される。しかし、上記のような、生産・所得・支出を巡るマイナスの循環の強さや、企業金融面における制約要因を踏まえると、速やかな景気回復は展望し難い状況にある。また、秋口以降の円高が下期の企業収益に対する圧迫要因として働く可能性や、海外の金融経済情勢が全般に不透明感を強めていることにも、留意が必要である。こうした中で、10月には、金融システム建て直しのための新たな法的枠組みが整えられた。この枠組みに沿って、できるだけ早期に、市場の信認を回復する上で十分な資本増強が実施されることが強く期待される。また、政府は、11月中旬までに緊急経済対策を策定する方針を打ち出している。今後は、これらの具体的内容や、企業・消費者心理に及ぼす影響に注目していく必要がある。

 物価面をみると、需給ギャップの拡大持続等を背景に、国内卸売物価が下落傾向を続け、企業向けサービス価格が弱含み傾向を強めているほか、消費者物価も前年比マイナスに転じている。今後は、総合経済対策の効果などが期待されるが、生産・所得・支出のマイナスの循環の強さなどを踏まえると、当面、需給ギャップの拡大に歯止めが掛からない可能性が高い。また、賃金の軟化が続いていることや、秋口以降の円高も、物価の低下要因として作用するとみられる。これらを踏まえると、物価は、今後、卸売物価を中心に、下落テンポを幾分速める可能性がある。

 金融面をみると、年末越えのユーロ円金利が、10月中旬以降上昇した。これは、ジャパン・プレミアムの拡大にみられるように、外貨の調達環境が一段と厳しさを増すもとで、わが国金融機関が円資金調達と為替スワップ取引により、年末の外貨手当てを大規模に進めたことを反映している。一方、TB利回りは、円調達コストの低下を背景に外銀がTB運用を増加させたことから、ゼロ近傍まで低下した。

 このように、ユーロ円とTBとの金利格差は、年末における邦銀の外貨流動性リスクに対する市場の警戒感を反映するかたちで、大きく拡大した。ただ最近は、国際金融市場において一時強まった信用収縮懸念は後退しつつあるように窺われるほか、邦銀の外貨資金手当てについても一定の進捗がみられている。

 株価は、金融システム関連法の成立や金融界における業務提携・リストラの動きなどが好感されて、反発している。ただ、債券・株式市場の動きを全体としてみると、経済の先行きに対する市場の見方は依然警戒的であるように窺われる。

 金融の量的側面をみると、企業の資金需要面では、手許資金を厚めに確保しようとする動きがさらに広がっている。こうしたことを背景に、9月のマネーサプライ(M2+CD)は、小幅ながらも引き続き伸び率を高めた。

 一方、民間銀行の融資姿勢は、わが国金融機関を取り巻く厳しい市場環境や企業業績の悪化などを背景に、一段と慎重なものとなっている。とくに本年末にかけては、外貨手当て懸念を背景に、わが国金融機関は、中堅・中小企業向けに加えて大企業向けについても、融資姿勢を一層慎重化させてきているように窺われる。

 この間、CP・社債市場では、信用力の相違による発行金利の格差が広がっている。こうした厳しい企業金融の状況が、今後、年末にかけてどのように進展し、実体経済にどのような影響を及ぼしていくか、十分注意してみていく必要がある。

以上