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金融経済月報(基本的見解1)(1999年 7月)2

  1. 本「基本的見解」は、7月16日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、7月16日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

1999年 7月21日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9907.pdf 616KB)から入手できます。


 足許の景気は下げ止まっており、企業の業況感も幾分改善している。しかし、民間需要の自律的回復のはっきりとした動きは、依然みられていない。

 最終需要面をみると、設備投資は、基調としては引き続き減少傾向を辿っており、個人消費も、全体として回復感に乏しい状態が続いている。また、純輸出(輸出−輸入)は、輸入の増加を主因に、足許はやや減少している。一方、住宅投資は、持ち直し傾向が続いており、公共投資も、基調としては増加傾向にあるとみられる。

 このような最終需要の動向や、在庫調整が引き続き進捗していることを背景に、鉱工業生産は下げ止まっている。また、金融システムの建て直し等に向けた取り組みや日本銀行による金融緩和措置の継続、さらには株価の持ち直しもあって、企業の業況感は改善をみている。もっとも、こうした改善は、設備、雇用の過剰感が根強く、企業収益の低迷が続いているため、必ずしも積極的な企業行動に繋がっていない。また、消費者心理も、一頃に比べ改善をみており、家計の雇用・所得環境が引き続き悪化する中で、家計支出の下支えに寄与しているとみられるが、個人消費の回復感をもたらすまでには至っていない。

 今後の経済情勢については、在庫調整の進展により生産回復の条件が整いつつあるもとで、政府の経済対策や日本銀行による金融緩和措置などが、引き続き下支え効果を発揮するほか、金融システム不安の緩和等金融環境の改善も、景気に対して徐々に好影響を及ぼしていくことが期待される。また、アジアをはじめとする海外景気の持ち直しは、生産面にプラス効果をもたらすとみられる。しかし他方で、企業部門では、慎重な売上計画のもと、リストラの強化により収益改善を図る動きが引き続き目立っている。こうした企業リストラは、生産性の向上につながると期待される一方、短期的には、設備投資の抑制に働くほか、雇用・所得環境の悪化などを通じて家計支出にもマイナスの影響を及ぼす可能性がある。これらを踏まえると、民間需要の速やかな自律的回復は依然として期待しにくい状況にある。今後は、このような点に留意しつつ、経済情勢全般の動向を注意深くみていくとともに、経済の中期的な成長力確保に向けた構造改革を、円滑に進めていくことが重要と考えられる。

 物価面をみると、原油など国際商品市況の底入れを映じて輸入物価が引き続き上昇している。国内卸売物価は、石油製品等一部市況関連商品の上昇に加え、在庫調整の進捗もあって、足許では横這いとなっている。また、消費者物価も、同様に横這いの動きとなっている。一方、企業向けサービス価格は下落が続いている。先行きについても、輸入物価の上昇や、在庫調整の進捗を映じた国内商品市況の下げ止まりを背景に、物価は当面、概ね横這いで推移していくものと考えられる。しかし、景気の下げ止まりが続くもとでも、需給ギャップの明確な縮小は当面見込み難く、賃金の軟化が続いていることなども考慮すると、物価に対する潜在的な低下圧力は、引き続き残存するものと考えられる。

 金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物金利がゼロ%に近い水準での推移を続けており、金融機関の多くには流動性確保に対する安心感が浸透している。この間、ターム物金利は、1~3月期の国民所得統計速報が市場の予想を上回ったことや、いわゆる「コンピュータ2000年問題」の影響などから、若干上昇した。ジャパン・プレミアムは、引き続きほぼ解消された状態にある。

 長期国債流通利回りは、一時1.8%台まで上昇したが、その後反落し、最近では概ね1.7%前後での推移となっている。この間、国債と民間債(金融債、社債)の流通利回りスプレッドは、引き続き縮小傾向を辿っている。

 株価は、景気の先行きに対する慎重な見方が後退してきたことや、米国株価の堅調を背景に上昇し、最近では1万8千円台での展開となっている。

 コール市場残高は、6月中旬以降は総じて横這い圏内で推移している。これまでのところ資金決済面で支障が生じるといった事態はみられていないが、今後ともその動向を注視していく必要がある。

 金融の量的側面をみると、民間銀行は、基本的に慎重な融資姿勢を維持している。ただ、民間銀行自身を巡る資金繰り面や自己資本面からの制約は緩和されており、そうしたもとで、大手行などでは、融資先の信用力などを見きわめつつ、徐々に融資を回復させる姿勢に変わりつつある。

 しかし、企業の資金需要面をみると、設備投資などの実体経済活動に伴う資金需要が低迷を続けているほか、手許資金積み上げの動きも収まっている。この結果、民間の資金需要は一段と低調になっており、民間銀行貸出も弱含みで推移している。

 マネーサプライ(M2+CD)の前年比伸び率は、財政資金の支払いなどを受けて、緩やかに上昇している。

 以上のような金融環境のもとで、企業金融を巡る逼迫感は、一頃に比べ和らいできている。

 今後、投資家のリスクテイク姿勢や民間銀行の融資態度の変化がさらにどの程度進み、こうした金融環境の改善が、企業の投資意欲など実体経済活動にどのような影響を与えていくか、十分注目していく必要がある。

以上