資産担保証券の買入れとその考え方について
2003年 6月11日
日本銀行
- 日本銀行は、本年4月7日、8日の政策委員会・金融政策決定会合において、資産担保証券の買入れについて検討を行うことを決定し、その後広く市場関係者の方々の意見を求めつつ、具体的なスキームの検討を行ってきた。本日、金融政策決定会合において、別添のとおり具体的スキームの骨子を取りまとめるとともに、7月末までの実施に向けて所要の準備を進めることを決定した。
- 資産担保証券については、信用リスクを全体として削減し、投資家のリスク許容度に応じたリスク移転を図ることを通じて、企業金融の円滑化に貢献する効果が期待される。中央銀行が民間の信用リスクを直接負担することは異例であるが、わが国の金融機関の信用仲介機能が万全とはいえない現状においては、時限的な措置として買入れを行うことを通じて資産担保証券市場の発展を支援し、金融緩和の波及メカニズムを強化することは意義があると判断した。
- 具体的スキームの決定に当たっては、市場の価格形成を歪めることなく、市場の健全な発展に寄与することに最大限配慮した。買入資産については、今回の措置の趣旨を踏まえ、相対的に信用リスクの大きい資産担保証券も対象とした。裏付資産としては、貸付債権や売掛債権だけでなく、中堅・中小企業金融の円滑化に資すると認められる幅広い範囲の資産を対象とすることとした。買入金額については、市場の発展を支援する観点と、日本銀行の財務の健全性を確保する観点を考慮し、当面残高ベースで1兆円を限度とすることとした。
- 資産担保証券市場の発展のためには、市場のインフラ整備を進めていくことが不可欠である。日本銀行としては、今回頂いたご意見を踏まえ、民間市場関係者と十分協力し、市場のインフラ整備に向けて努力を続けていく方針である。その際、関係当局や政府系金融機関とも適宜連携を図り、民間市場関係者の努力を支援していきたいと考えている。
以上
(別添)
資産担保証券買入スキームの骨子
1. 買入対象資産
- (1)買入対象資産の種類
- 資産担保債券(公募債のみ)
- シンセティック型債券(クレジットリンク債券・公募債のみ)
- 資産担保CP(電子CP形態のものを含む)
- (2)適格基準
[1] 発行形態等に関する要件
- 円建てであること。
- 国内において発行または振出等が行われたものであること。
- 準拠法が日本法であること。
- 裏付資産(シンセティック型債券の場合は、信用リスクを引き受ける契約の対象となっている資産)の種類は売掛債権および貸付債権に限定せず、中堅・中小企業金融の円滑化に資すると認められるものを幅広く対象とする。
- 裏付資産に占める中堅・中小企業(=資本金10億円未満の会社)関連資産の割合が、金額ベースで5割以上であること。
- 裏付資産が金融機関の貸付債権である場合には、その債務者が金融検査マニュアルに定める「正常先」に分類されているものであること。
- (a)資産担保債券・シンセティック型債券
- 複数の格付機関から、最低BB格相当以上の格付けを取得していること。
- 発行から償還までの期間が3年以内であること。
- シンセティック型債券については、発行代わり金が信用度および市場性に照らして日本銀行が適当と認める資産(例えば国債等)に運用されていること。
- (b)資産担保CP
- 複数の格付機関から、a-1格相当の格付けを取得していること。
- 発行から償還までの期間が1年以内であること。
- 取引先金融機関のフルサポート型についても適格とする(適格担保における特例措置と同様の扱い)。
2. 買入方式
- (1) 資産担保債券・シンセティック型債券
- 募集期間終了後、対象先金融機関からの売却申込みを受けて、公募時の募集価格をベースに、売却希望金額を買入れる方式とする。
- 買入対象先は、日本銀行の本店取引先の中から、信用力基準等により選定する。
- (2) 資産担保CP
- 金利入札によるオペレーション方式とする。
- 買入対象先は、現行のCP買現先オペの対象先をベースに選定する。
3. 買入限度額
- (1)全体の買入限度額(残高)
- 当面1兆円とする。
- (2)個別銘柄ごとの買入限度額
- 資産担保債券、シンセティック型債券については、個別銘柄のトランシェごとの発行総額の5割を、日本銀行による買入れの限度額とする。
4. その他
- 本スキームによる買入期間は、2005年度末までとする。
- 上記の買入対象資産、買入方式、買入限度額等については、資産担保証券市場の発展の状況・取引動向や日本銀行の財務の健全性等を勘案しつつ、必要に応じて見直すこととする。
以上
<参考>
なお、同日、「資産担保証券市場を通じる企業金融活性化のための新たなスキーム」(4月8日付け提案)に対するご意見と日本銀行としての考え方が公表されています。