【参考】国債の補完供給制度の導入について
2004年 4月 9日
日本銀行
1. 措置の概要
国債市場の流動性向上と円滑な市場機能の維持に貢献するとの観点から、日本銀行が保有する国債を市場参加者に対して一時的かつ補完的に供給する制度(いわゆる「品貸し」)を導入する。
- 本日、「補完供給を目的として行う国債の買戻条件付売却基本要領」を制定。
- 本措置は、本年2月26日の政策委員会・金融政策決定会合における議長指示(日本銀行が保有する国債を市場に対し供給し得る制度の導入につき検討を行い、決定会合で報告すること)を受けたもの。
2. 制度の概要
(1)取引形態
- 国債の買戻条件付売却(売現先)とする。
(2)売却対象先
- 国債系オペ(国債売買、短国売買および国債現先オペ)の対象先のうち、予め希望する先とする。
(3)売却対象国債
- 日本銀行が保有する利付国債、割引短期国債および政府短期証券のうち、日本銀行が適当と認める銘柄とする。
(4)売却期間
- 原則として1日とする。
決済日は原則として約定当日とする。
(5)発動条件
- 金融市場の情勢等を勘案して決定する。
具体的には、以下の2つの場合に実施する。
- a. 原則として、1銘柄につき3先以上から売却依頼を受けた場合。
- b. 災害や大規模なシステム障害の発生時等、金融市場の情勢等を踏まえ、日本銀行が必要と認める場合。
(6)売却方式等
- 期間利回りを対象として競争入札を実施する。
- 期間利回りには上限を設定する(品貸料に下限を設定する)。
競争入札のオファーは、市場取引がピークアウトする午後に実施する。
「上限期間利回り」は、無担コール翌日物金利と市場取引における品貸料の推移等を勘案して、市場参加者が本制度に過度に依存することがないような水準に設定する。
(7)売却金額等
- 1日の売却総額に上限を設定する。
当面は1,000億円程度を上限とする。 - 銘柄別および取引先別の売却額にも上限を設定する。
当面は、銘柄別の売却額は日本銀行が保有する残高(オペ等で売却が決定している金額を除く)の50%、取引先別の売却額は売却総額・銘柄別売却額の50%をそれぞれ上限とする。
(8)再売却
- エンド決済が未了となった場合への対応として、一定限度で再売却(ロール・オーバー)を認める。
再売却可能回数は、市場におけるフェイル慣行に則り、最高21回とする。 - 再売却時の期間利回りは、当初の期間利回りを上限とする。
当面は、当初の期間利回りと0%のいずれか低い方の利回りを適用する。
(9)リスク管理
- (マイナスの)ヘアカットを実施する。
3. 本制度の効果
(1)国債市場の流動性向上と円滑な市場機能の維持
- 国債市場においては、時として、特定銘柄の調達困難化やその懸念によって市場流動性が低下し、円滑な市場価格の形成が損なわれることがある。
- 本制度の導入により、国債市場の流動性や市場機能が向上することが期待できる。この結果、金融調節の円滑な実施、金融調節の効果の浸透といった点でも好影響が期待できる。
(2)国債および資金決済の円滑化への寄与
- 本制度の導入は、災害やシステム障害等を背景として、国債市場において、所謂「フェイル」(国債の受渡不能)が多発・連鎖することに伴う混乱を回避することにも資する。
4. 今後の予定
- 4月12日から売却対象先の公募を開始し、5月中旬から本制度の利用を可能とする予定。
以上
別添
国債の補完供給制度の概念図 [PDF 95KB]
- 国債売買市場では、銘柄(XX回債)を特定した取引が行われている。
- 売買の約定時点(T日)で保有していない銘柄の国債についても、売却の約定が締結されることがある。
- この場合、決済時点(T+3日)までには、国債レポ市場(注)などを通じて当該銘柄の国債を調達する必要がある。
- (注)資金と国債とを一時的に融通し合う市場。特定銘柄の国債を調達する場合にも利用される。取引は、現先(条件付売買)や現金担保付債券貸借の形態で行われる。