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金融緩和の強化について

2020年4月27日
日本銀行

  1. わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、厳しさを増している。また、金融環境も、政府や日本銀行の対応が一定の効果を発揮しているものの、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。
  2. こうした情勢を踏まえ、日本銀行は、金融機関や企業等の資金調達の円滑確保に万全を期すとともに、金融市場の安定を維持する観点から、(1)CP・社債等買入れの増額、(2)新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充、(3)国債のさらなる積極的な買入れ、により金融緩和を一段と強化することが適当と判断した。
  3. このため、本日の政策委員会・金融政策決定会合では、以下の決定等を行った。
    1. (1)CP・社債等買入れの増額等(全員一致)

      CP・社債等の追加買入枠を大幅に拡大し、合計約20兆円の残高を上限に買入れを実施する1。あわせて、CP・社債等の発行体毎の買入限度を大幅に緩和するほか、買入対象とする社債等の残存期間を5年まで延長する(別紙)。

    2. (2)新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充(全員一致)

      3月に導入・開始した新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペについて、金融機関が、企業を中心に幅広く民間部門に対する金融仲介機能を一層発揮することを、しっかりと支援するため、(1)対象担保範囲の家計債務を含めた民間債務全般への拡大(対象担保:約8兆円→約23兆円<3月末>)、(2)対象先の拡大(新たに、系統会員金融機関等を含める)、(3)本オペの利用残高に相当する当座預金への+0.1%の付利、の3つの措置を講じる2。なお、名称は「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ」と改める。

      これに加えて、日本銀行として、中小企業等の資金繰りをさらに支援するため、政府の緊急経済対策等における資金繰り支援制度も踏まえた金融機関への新たな資金供給手段(骨子は別紙)の検討を早急に行い、その結果を改めて金融政策決定会合に報告するよう、議長より執行部に対し、指示がなされた。

    3. (3)国債のさらなる積極的な買入れ

      債券市場の流動性が低下しているもとで、政府の緊急経済対策により国債発行が増加することの影響も踏まえ、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、当面、長期国債、短期国債ともに、さらに積極的な買入れを行う。

  4. 金融市場調節方針、ETFおよびJ-REITの買入れ方針については以下のとおりとする。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)
      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする3
    2. (2)ETFおよびJ-REITの買入れ方針(全員一致)

      ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う4

  5. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。

    当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)

  6. 日本銀行は、本日の決定を含め現在実施している強力な金融緩和措置が、新型コロナウイルス感染症拡大への政府の各種対策や各国・地域の政府・中央銀行による様々な対応と相俟って、金融経済活動の下支えに貢献するものと考えている。

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員。反対:片岡委員。片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。 本文に戻る

  1. CP等、社債等の追加買入枠を、それぞれ1兆円から7.5兆円に増額する。追加買入枠以外の既存のCP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。増額買入れは、2020年9月末まで継続する。 本文に戻る
  2. 付利は5月積み期(5月16日~6月15日)から実施する。利用残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算する措置は継続する。本オペは、2020年9月末まで実施する。 本文に戻る
  3. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。 本文に戻る
  4. ETFおよびJ-REITの原則的な買入れ方針としては、引き続き、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行い、その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。 本文に戻る

(別紙)

CP・社債等の発行体毎の買入限度の緩和等および新たな資金供給手段の骨子

  1. CP・社債等の発行体毎の買入限度の緩和等
    1. (1)一発行体当りの買入残高の上限を、これまでの1,000億円から、CP等は5,000億円、社債等は3,000億円に緩和する。
    2. (2)一発行体の総発行残高に占める日本銀行の保有割合の上限を、これまでの25%から、CP等は50%、社債等は30%に緩和する。
    3. (3)買入対象とする社債等の残存期間を、これまでの1年以上3年以下から、1年以上5年以下に延長する。
  2. 新たな資金供給手段の骨子
    1. (1)資金供給を受けられる金額

      対象先の金融機関が、緊急経済対策における信用保証付き融資の保証料・利子減免制度を利用して行う貸出の状況等を踏まえて算出した金額。対象とする貸出の範囲などについては、今後、検討する。

    2. (2)資金供給の方法

      全ての共通担保を担保とする貸付け。

    3. (3)貸付利率

      貸付利率はゼロ%。

    4. (4)「マクロ加算残高」への加算措置

      利用残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算する。

    5. (5)当座預金への付利

      利用残高に相当する当座預金へ+0.1%を付利する。

以上


(参考)

開催時間
4月27日(月)9:00~12:01
出席委員
議長 黒田 東彦(総裁)
雨宮 正佳(副総裁)
若田部昌澄( 副総裁 )
布野 幸利(審議委員)
櫻井 眞 ( 審議委員 )
政井 貴子( 審議委員 )
鈴木 人司( 審議委員 )
片岡 剛士( 審議委員 )
安達 誠司( 審議委員 )

上記のほか、

財務省  遠山 清彦 財務副大臣(9:00~11:35、11:46~12:01)
内閣府  西村 康稔 経済財政政策担当大臣(9:00~11:35、11:46~12:01)

が出席。

公表日時
金融緩和の強化について――4月27日(月)12:08
経済・物価情勢の展望(基本的見解)――4月27日(月)12:08
経済・物価情勢の展望(背景説明を含む全文)――4月28日(火)14:00予定
主な意見――5月11日(月)8:50予定
議事要旨――6月19日(金)8:50予定

以上