当面の金融政策運営について
2025年6月17日
日本銀行
- 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。
- 長期国債買入れの減額について、月間の長期国債の買入れ予定額を、2026年1から3月までは原則として毎四半期4,000億円程度ずつ、2026年4から6月以降は原則として毎四半期2,000億円程度ずつ減額し、2027年1から3月に2兆円程度とする計画を決定した1(別紙参照)(賛成8反対1)(注)。
- わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。企業収益が改善傾向にあるもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。
先行きのわが国経済を展望すると、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。その後については、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、成長率を高めていくと見込まれる。消費者物価(除く生鮮食品)については、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくと考えられる。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、「展望レポート」の見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要がある。
以上
- (注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、中村委員、野口委員、中川委員、高田委員、小枝委員。反対:田村委員。田村委員は、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであるとして、2027年1~から3月まで月間の買入れ予定額を原則として毎四半期4,000億円程度ずつ減額する議案を提出し、反対多数で否決された。本文に戻る
- この決定のほか、国債市場の流動性を改善する観点から、国債補完供給にかかる減額措置の要件緩和の対象銘柄の拡充等を行う。本文に戻る
(別紙)
長期国債買入れの減額計画について
長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切である。こうした観点から、2027年3月までの長期国債の買入れは、以下のとおり運営する。
- 月間の長期国債の買入れ予定額を、2026年1から3月までは原則として毎四半期4,000億円程度ずつ、2026年4から6月以降は原則として毎四半期2,000億円程度ずつ減額し、2027年1から3月に2兆円程度とする(詳細は、別添)。
- 2026年6月の金融政策決定会合では、長期国債買入れの減額計画の中間評価を行う。中間評価では、今回の減額計画を維持することが基本となるが、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、必要と判断すれば、適宜、計画に修正を加える。また、同時に、2027年4月以降の長期国債の買入れ方針について検討し、その結果を示すこととする。
- 長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。
- なお、必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直すこともありうる。
以上
(別添)
月間の長期国債の買入れ予定額
| 月間の長期国債の買入れ予定額 | |
|---|---|
| 2025年4から6月 | 4.1兆円程度 |
| 2025年7から9月 | 3.7兆円程度 |
| 2025年10から12月 | 3.3兆円程度 |
| 2026年1から3月 | 2.9兆円程度 |
| 2026年4から6月 | 2.7兆円程度 |
| 2026年7から9月 | 2.5兆円程度 |
| 2026年10から12月 | 2.3兆円程度 |
| 2027年1から3月 | 2.1兆円程度 |
- (注)残存期間別等の1回当たりのオファー金額や日程等の予定については、従来同様、「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定」で公表する。
(参考)
- 開催時間
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- 6月16日(月) 14:00から15:36
- 6月17日(火) 9:00から12:24
- 出席委員
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- 議長 植田 和男(総裁)
- 氷見野良三(副総裁)
- 内田 眞一( 副総裁 )
- 中村 豊明(審議委員)
- 野口 旭 ( 審議委員 )
- 中川 順子( 審議委員 )
- 高田 創 ( 審議委員 )
- 田村 直樹( 審議委員 )
- 小枝 淳子( 審議委員 )
上記のほか、
- 6月16日
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- 財務省 寺岡 光博 大臣官房総括審議官(14:00から15:36)
- 内閣府 林 幸宏 内閣府審議官(14:00から15:36)
- 6月17日
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- 財務省 斎藤 洋明 財務副大臣(9:00から11:58、12:07から12:24)
- 内閣府 瀬戸 隆一 内閣府副大臣(9:00から11:58、12:07から12:24)
が出席。
- 公表日時
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- 当面の金融政策運営について――6月17日(火)12:31
- 主な意見――6月25日(水)8:50予定
- 議事要旨――8月5日(火)8:50予定
以上
