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金融政策決定会合議事要旨

(1999年 1月19日開催分)*

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、99年2月25日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

1999年 3月 2日
日本銀行

開催要領

1.開催日時
99年1月19日(9:01から12:12、13:03から15:34)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 速水 優(総裁)(注)
  • 藤原作弥(副総裁)
  • 山口 泰(  副総裁  )
  • 後藤康夫(審議委員)
  • 武富 将(  審議委員  )
  • 三木利夫(  審議委員  )
  • 中原伸之(  審議委員  )
  • 篠塚英子(  審議委員  )
  • 植田和男(  審議委員  )
  • (注)速水委員は、月例経済報告等に関する関係閣僚会議に出席のため、9:01〜9:17の間、会議を欠席した。この間、藤原委員が、日本銀行法第16条第5項の規定に基づき、議長の職務を代理した。
4.政府からの出席者
  • 大蔵省   武藤敏郎 大臣官房総務審議官( 9:01~15:34)
  • 経済企画庁 新保生二 調査局長(10:33~15:34)

(執行部からの報告者)

  • 理事黒田 巌
  • 理事松島正之
  • 理事永田俊一
  • 金融市場局長山下 泉
  • 国際局長村上 堯
  • 調査統計局長村山昇作
  • 調査統計局早川英男
  • 企画室参事
    (企画第1課長)
    山本謙三

(事務局)

  • 政策委員会室長小池光一
  • 政策委員会室調査役飛田正太郎
  • 企画室調査役門間一夫

1.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節については、前回会合(12月15日)で決定された方針(無担保コールレート<オーバーナイト物>を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す。なお、金融市場の安定を維持するうえで必要と判断されるような場合には、上記のコールレート誘導目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う)にしたがって運営した。この結果、1月15日に終わる積み期間(12月16日から1月15日)におけるオーバーナイト・レートは、加重平均で0.25%となった。今積み期間も、最初の営業日である昨日(1月18日)は、0.23%と落ち着いてスタートした。

この間の動きをやや具体的にみると、オーバーナイト・レートは、年末日の12月30日にはやや強含んだが、日本銀行の積極的な資金供給もあって、加重平均は0.32%と、年末日としては落ち着いた水準となった。年明け直後も、年末越えターム物資金の期落ち集中が意識される中で、レートに上昇圧力がかかりやすい地合いにあったため、日本銀行は多めに資金を供給して市場の安定に努めた。逆に、それ以降は、それまでにおける準備預金の積み進捗を反映して、レートは弱含み基調で推移した。

ターム物金利を3か月物でみると、年度末越え取引となったことを反映してやや上昇しているが、そうした年度末要因を割り引いてみれば落ち着いた動きとなっている。市場が意外なほど平静を保っているのは、(1)本年度末までに総額約6兆円と報じられている公的資本注入が確実視されていることや、(2)日本銀行が潤沢な資金供給を続ける姿勢が好感されていること、などによるものとみられる。

もっとも、(1)公的資本注入の条件等を巡り不透明感が残っていること、(2)ブラジル等海外情勢が不安定なこと、などを勘案すると、現在落ち着いている短期金融市場も、年度末にかけて逼迫感を強める可能性があることは否定できないため、注意深くみていく必要がある。

なお、11月に決定した「企業金融支援のための臨時貸出制度」の第2回貸付を、明日(1月20日)実行する。金融機関の10から12月中貸出増加額から決まる借入枠は4兆円強に達したが、金融市場が小康状態にあることなどから、実際の貸付申し込み額は、すでに実施した第1回分との合計でも1兆円強にとどまっている。この結果、借入枠は約3兆円が未使用の状態になっているが、それはそれで、年度末にかけて万一市場の逼迫感が強まるような場合にクレジット・ラインとして使えるため、金融機関に安心感を与える機能を果たしている。

2.為替市場、海外金融経済情勢

(1)為替市場

円の対米ドル相場をみると、昨年末から1月上旬にかけては、(1)わが国長期金利の上昇、(2)中南米情勢の不安増大、(3)日米貿易摩擦問題の悪化懸念、などを受けて急速にドル安・円高が進行した。その結果、1月11日には一時108円台と、約2年半振りの円高水準となった。もっとも、その後は、(1)12日の東京市場でドル買い・円売り介入が実施されたとの報道、(2)中南米通貨不安のアジアへの波及懸念、(3)ルービン米財務長官の強いドルへの支持を示唆する発言、などを背景に円が下落し、最近は114円を挟む動きとなっている。

新通貨ユーロへの移行はスムーズに行われ、ユーロの対米ドル相場は、中南米問題の影響もあって、底固く推移している。この関連で、ドイツやフランスの国債が買われており、両国とも、国債利回りが戦後のボトムを更新している。

この間、ブラジル・レアルは、軟調に推移していたが、ブラジル通貨当局は1月13日、レアルを切り下げ、かつ許容変動範囲を拡大した。さらに15日には、許容変動範囲そのものを撤廃することが表明され、レアルは18日から変動相場制に移行した。他の中南米通貨やアジア通貨に対する影響を懸念する声もあるが、今のところ市場は平静である。

(2)海外金融経済情勢

米国経済をみると、株価が高水準を続けていることなどを背景に、家計支出が引き続き堅調である。労働需給はタイトであるが、労働コストの上昇はモダレートなものにとどまっている。今後のリスクとしては、(1)株価が下落して家計支出に悪影響を与える可能性、(2)輸出が減少して設備投資等を一段と抑制していく可能性、(3)金融資本市場でリスク・プレミアムが再び拡大する可能性、などが挙げられる。ただ、これまでのところこうしたリスクの顕在化は避けられており、景気減速のテンポは一頃懸念されていたほど急速なものとはならないように窺われる。

この間、中国では、地方政府が営むノンバンクである各地の投資公司が、資金繰り問題に直面している。広東国際信託投資公司の債務超過が明らかになったのをはじめ、いくつかの投資公司で、返済遅延ないしその懸念が生じている。今のところ、同国の株価や通貨は落ち着いているが、同国に対する海外投資家のスタンスが慎重化するのは避けられず、その動向と影響に注意を払っていく必要がある。

3.国内金融経済情勢

(1)実体経済

最終需要をみると、設備投資が大幅に減少しているほか、個人消費や住宅投資も低調にとどまっている。一方で、純輸出が緩やかながらも増加基調を続ける中で、公共投資は増勢を示している。こうした最終需要の動向や、在庫調整の進捗を背景に、生産の減少テンポは緩やかなものとなっている。この結果、企業の業況感も悪化傾向を続けてはいるが、そのテンポは幾分鈍化してきている。この間、物価は、全般に軟調に推移している。

このように、経済情勢は依然として悪化を続けているが、そのテンポは和らいできている。しかし、企業収益が引き続き減益基調にあるほか、年度末にかけての資金確保への不安感がなお払拭し切れていない状況のもとで、企業は支出活動を抑制している。また、家計支出は、一部に幾分明るい材料もみられるが、雇用の減少や賃金の低下が続くなど所得環境が厳しさを増すもとで、全体としては、低調を脱していない。以上のことから、民間需要の低迷基調に変化は窺われない。

先行きについては、当面、公共投資が経済を下支えしていくと予想されるほか、所得税・法人税などの減税実施も、ある程度の景気下支え効果を持つと考えられる。ただ、上記のような企業や家計の所得環境を考慮すると、これらが民間需要を喚起する効果は限定的なものにとどまる可能性が高い。すなわち、当面、設備投資の減少に歯止めがかからないと考えられるほか、雇用環境も厳しい状態を続ける公算が大きい。さらに、長期金利の上昇や円高の進行も、これが持続すれば企業収益に悪影響を及ぼす惧れがある。

物価下落が持続することの影響についても、引き続き注意を払う必要がある。需給ギャップが縮小する展望に乏しく、円高の影響も考えると、来年度入り後、物価は全般に下落テンポが徐々に速まっていくと見込まれる。この結果、民間のデフレ予想が次第に強まり、実質金利の上昇が経済活動に悪影響を及ぼすリスクがあることを念頭に置く必要がある。

(2)金融情勢

金融市況をみると、3か月物のジャパン・プレミアムやユーロ円金利は、年度末越え取引となったことに伴い幾分強含んだが、1年前の同時期や昨年9月末に向かう時期に比べれば、低い水準で、総じて落ち着いた動きとなっている。このように短期金融市場が落ち着いている背景としては、(1)邦銀の年末越え外貨調達問題が終息したこと、(2)国際金融不安が後退したこと、(3)大手銀行に対する公的資本注入が確実になってきたこと、などが挙げられる。

一方、長期国債の流通利回りは、11月下旬以降、景気悪化テンポが和らいできたことなどをきっかけに反発した。その後、12月中旬以降も、99年度の国債発行が多額にのぼるとの報道等を受けて、上昇テンポが加速した。こうした長期金利上昇要因の可能性としては、(1)市場では「国債の需給悪化懸念」を指摘する見方が多いが、(2)景況観の好転、(3)財政赤字の拡大に伴う将来のインフレ・リスクについての懸念の高まり、(4)安全性への逃避(flight to quality)の巻き戻し、といった点などが考えられる。もっとも、これらの要因によっても、とりわけ12月中旬以降の国債利回りの上昇は、十分には説明し切れないように思われる。これがどのような水準に落ち着いていくか、注意深くみていく必要がある。

企業金融の逼迫感は、一頃に比べて幾分和らいできているように窺われる。その背景として、資金需要面をみると、設備投資の大幅減少などを背景に、実体経済活動に伴う資金需要は低迷を続けていることが挙げられる。一方、資金供給サイドでは、民間銀行は、基本的に慎重な融資姿勢を維持しつつも、信用保証制度の活用については積極的に取り組んできている。こうした信用保証制度の拡充や日本銀行によるオペ・貸出面の措置が、企業金融によい影響を与えているものとみられる。また、信用保証の増加や財政支出の拡大等から、このところ企業倒産の増加傾向にも歯止めがかかってきている。

2.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

(1)景気の現状

景気の現状については、概ね執行部の報告どおり、景気の悪化テンポが和らぎ、局面としては底這い圏内にあるのではないかとの見方が、多くの委員から述べられた。そうした判断の根拠として、(1)公共投資が増加していること、(2)10から12月の個人消費が若干ながら持ち直したとみられること、(3)生産が下げ止まってきていること、(4)企業金融面での逼迫感が一頃に比べて薄れてきたこと、などが挙げられた。また、何人かの委員から、住宅投資についても、金利の先高感や、これから出てくる住宅減税の効果などを考えると、底を打ったのではないかとの見解が示された。

しかし、企業収益や雇用・所得環境が非常に厳しく、企業や家計のコンフィデンスは引き続き弱いこと、したがって依然として先が見えない状況が続いているという点で、多くの委員の認識はほぼ一致していた。また、昨年末頃からの長期金利上昇や円高について、多くの委員が、潜在的なリスク・ファクターとの位置づけで言及し、こうしたリスクが増した分だけ、前回会合における判断を若干下方修正した委員もいた。

とくに、ある委員は、長期金利上昇および円高の悪影響を重くみて、景気が既に再下降の兆しをみせ始めていることを強調した。すなわち、その委員からは、景気動向指数の一致指数は9月に一旦上方へ向かったが、10月、11月と再び低下して8月の水準を下回ったとの指摘があり、上下いずれかへの分岐点と思われる状況の中で、下方へ向かう可能性が高まったことを示唆するものとの見解が示された。

(2)金融面の動き

金融市況面については、短期金融市場は小康状態にあるとの見方で概ね一致していた一方、12月頃から進行してきた長期金利上昇と円高が、議論の焦点となった。

まず、長期金利(長期国債流通利回り)については、多くの委員から、やや長い目でみれば景気の実勢を反映して決まるという基本的な考え方が指摘され、大幅に上昇した水準からこのところやや軟化してきているのは、そうした考え方と整合的であるとの認識が述べられた。そのうちの一人からは、みずからの景気判断に照らすと、長期金利はなお幾分低下する余地があるとの見方が示された。別の委員からも、民間資金需要の弱さを踏まえると、長期金利はもう少し低下してよいとの見解が述べられた。また、仮に現在の長期金利が景気に悪影響を与えるようなものであれば、そうした長期金利の水準自体が市場で長続きしないのではないかといった意見もあった。

ただ、昨年秋頃における長期金利のきわめて低い水準は、おそらくは「安全性への逃避」もあって、さすがに行き過ぎたものであったとの指摘も多かった。そうした指摘を行った委員のなかには、長期金利のリバウンドそのものは言わばバブルからの正常化の過程とみるべきとか、現在の水準は必ずしも高過ぎるとは言い切れないとの意見もあった。

こうした経済ファンダメンタルズから長期金利を評価する一つの考え方として、ある委員は、「日本銀行調査月報(98年6月)」に掲載されている長期金利関数をもとにして見解を述べた。この関数は、コールレートや物価上昇率、生産動向等を説明変数に用いたものであるが、その委員からは、同関数に最近のデータを当てはめれば長期金利の推計値は1%台前半になり、実績値とのギャップは小さいとの分析結果が紹介された。そのインプリケーションとして、同じ委員から、(1)現在のような物価、生産動向等が続く限り、長期金利が暫くの間少なくとも上昇しないことと整合的であること、(2)しかし昨年秋の1%を切る水準はさすがに低下し過ぎであったこと、などが指摘された。さらに後者の点について、金融機関が手持ちの資金を貸出に回さずに、安全性の高い国債を積極的に購入していた可能性がかなり高いとの見解が示された。

一方、長期金利が景気実勢だけでは説明できないとみられる上昇を示したことの意味を、とくに財政赤字との関係で、警戒的に受け止める発言もあった。すなわち、ある委員からは、国債増発懸念等を背景に、国債保有に関する何らかのリスク・プレミアムが、市場において基本的に変化してしまった可能性があるとの見解が示された。別の委員からは、公的年金債務や金融再生関連の偶発債務等まで勘案すれば、政府債務残高は相当な高水準に達しつつあるとの暫定的な試算を示した。そのうえで、そうした財政状況のもとでは、将来どこかの時点でインフレ的な政策が採られることを市場が予想する結果、長期金利に上昇圧力がかかりやすくなっている可能性があるとの見解が述べられた。

こうした点にとりわけ大きな懸念を抱く別の一人の委員からは、最近の長期金利上昇は、財政政策の限界に対する、いわば「債券市場の反乱」と受け止めるべきであり、長期金利は90年からの低下局面を終えて、昨年末から長い目でみて上昇局面に入ったとの見方が示された。さらにその委員からは、政策当局者の発言等ちょっとしたきっかけで、長期金利が急上昇するリスクに注意する必要があることが述べられた。

為替相場については、日本経済のファンダメンタルズから乖離して推移することがないかどうかについて、長期金利の場合よりも、警戒的にみておく必要があるとの認識が少なくなかった。すなわち、何人かの委員から、最近の円高は、新通貨ユーロの登場や、中南米諸国を巡る不透明感など、様々な要因が複雑に絡み合ってもたらされており、日本経済の動きだけでは理解しにくくなっているとの見方が示された。また、別の委員は、最近の円高の要因として、ドルやユーロには金利低下余地がある一方、日本の長期金利が上昇していることや、米国の株価や経済の先行き、さらには来年春からの米国大統領選挙に向けて日米貿易摩擦が高まる懸念等を挙げた。

なお、ドル、ユーロ、円の3通貨の関係を安定化させようとする構想が報じられている点について、ある委員から、各国間における金融政策の独立性にかかわる問題でもあるので、議論の成り行きに注目する必要があるとの指摘があった。

銀行貸出および企業金融については、銀行に対する公的資本注入の検討が進んでいることや、拡充された信用保証制度が活発に利用されていることなどから、一頃のような逼迫感が薄れて小康状態にあるという点で、委員の認識は概ね共通であった。企業金融面からの景気に対するリスクが、若干和らいでいることを示唆する現象のひとつとして、企業倒産が幾分減少していることを指摘する委員もいた。

(3)景気の先行き

景気の先行きをみるうえで、焦点となったのは、これまで打たれた各種の政策の効果と、民間需要の内生的な回復力の弱さとのバランスであった。討議の結果、当面は、公共投資が経済を下支えしていくが、民間需要の弱さや海外経済のリスク等を勘案すると、景気が回復していく展望を現時点で描くのは難しいというのが、大勢の意見となった。

公共投資については、ある委員から、昨秋策定された緊急経済対策の分が、今後4から6月にかなり集中して出てくるとみられるため、工事量は高水準のまま、99年度当初予算分につながっていくとの見通しが示された。他の委員も、公共投資が、当面の経済を下支えしていく柱になるという認識は、ほぼ共通であった。もっとも、ある委員からは、99年度全体でみると、補正予算が組まれない限り、公共投資と減税を併せた追加的な刺激効果は、98年度を下回る可能性があるとの見方が示された。

民間需要のうち、まず、設備投資については、本格的な調整過程にあるとか、先行指標の動きが弱いといった指摘が相次ぎ、暫くの間は大幅な減少が続く可能性が高いという点で、委員の見解は概ね一致していた。そのうちのある委員からは、名目設備投資の対GDP比率が米国とほぼ同程度のレベルにまで低下するとの見方が示された。

そこで、家計支出をどうみるかが、一つのポイントになった。まず、個人消費について、何人かの委員が、昨年秋以降、若干持ち直しの動きがみられることに言及した。しかし、そうした委員も含めて、雇用・所得環境がさらに厳しくなるとみられることや、新製品など消費者の購買意欲を刺激するような供給側の変化もそれほど広がっているわけではないことを踏まえると、先行き個人消費が本格的に上向いていくとは考えにくいとの見方が大勢であった。

住宅投資については、最近の住宅金融公庫融資申込状況や、時限性のある住宅減税の効果などを根拠に、複数の委員から先行きに期待をかける発言があった。しかし、それらの委員も含め、やはり雇用・所得環境の厳しさなどが制約になるとの認識が強かった。年金問題をはじめとする将来への不安、一部の層における住宅ローン返済負担などが、家計部門主導型の景気回復を難しくする要因になっているとの見方もあった。

以上のような民間経済活動の源泉となるのは企業収益であるが、その企業収益については、悪化を懸念する声が支配的であった。すなわち、既に減益基調が強まっているところへ、最近の円高、長期金利上昇、株安、といった金融市場からの影響も加わり、企業収益はかなり厳しくなってきているとの懸念が、多くの委員から示された。その中には、地価・物価の下落傾向が、企業の債務負担をさらに強める方向に働いていることを指摘する委員もいた。また別の委員は、企業の含み益が土地、株式、債券といったあらゆる資産に関して底をつきつつある中で、以上のような減益圧力が表面化する3月決算とその影響について、かなりの危機感を込めた発言を行った。

円高が実体経済に与える影響については、一部の委員から、交易条件の改善やアジア諸国からの輸入の拡大など、ポジティブな側面への言及もみられた。しかし、ほとんどの委員は、上記の企業収益面を中心に、現下の経済情勢においてはマイナスの影響が心配されるとの見方であった。この点、例えばある委員から、多くの企業は120円台の相場水準を事業計画の前提としてきているため、110円を超える円高になるとかなりのダメージがあるとの見解が示された。また、別の委員は、90年代だけでも不況下の円高を2度経験した事実を振り返りつつ、為替相場がある臨界点を超えて円高になると、一段の経済調整のトリガーになるリスクを指摘した。

この間、金融機関の与信行動の面からも、民間需要を押し上げる力が生じる展望は拓けていないといった指摘も少なくなかった。すなわち、ある委員は、企業金融の逼迫感が一頃より薄れてきていることに言及しつつも、銀行に対する公的資本注入が年度末までにどのように具体化されていき、それが企業金融全般にどのような影響を与えていくのかについては、依然として不確実な面が大きいとの見解を述べた。別の委員からも、公的資本の注入によって、銀行の与信行動を通じて極端なデフレ圧力がかかるという状況はある程度緩和されようが、銀行部門から経済に対して前向きの力が働き始めるまでにはなお相当の時間がかかるとの見方が示された。また、仮に長期金利が高止まりするような場合、その悪影響は、どのみちストック調整を続けざるをえない設備投資に直接現れるのではなく、金融機関の収益が圧迫されるルートを通じて出てくるのではないかとの見解を示した委員もいた。

結局、以上のような公的需要と民間経済の強弱を考え併せると、景気が回復に向かう展望は現時点では持ち難いという点で、委員の認識は概ね共通であった。ある委員は、99年度の日本経済は、公共投資の下支えに加えて、仮に個人消費や住宅投資が若干プラスになるとしても、これらが全て設備投資のマイナスで打ち消されてしまうとみられるため、輸出の減少が加わるとプラス成長はきわめて厳しくなるのではないかとの見解を示した。

そうしたなかで、とりわけ厳しい見方を示したある委員からは、3月決算をきっかけに、大型の企業倒産の発生や、生命保険会社を含めた金融セクターの一段の弱まりなどによって、日本経済は本年前半に非常に難しい局面を迎えるのではないかとの指摘があった。その委員からは、8か月先行系列、11か月先行系列のいずれでみてもまだ転換点に達していないため、本年7から10月頃までに景気が上向きに転じる可能性はきわめて低いとの発言もあった。さらに、同じ委員からは、失業率の日米逆転について言及があり、最悪の場合には、株価(日経平均とニューヨーク・ダウの比較)および長期金利についても日米の逆転が起こりうるとの懸念が示された。

さらに、ダウンサイド・リスクとして、輸出の先行きに対する慎重な見方が少なくなかった。ある委員は、現在の生産は輸出によって何とか持ちこたえているとの認識を示したうえで、(1)先進国市場における貿易摩擦懸念、(2)エマージング諸国市場の不安定性、(3)最近の円高、といった要素を考えると、99年度の輸出は減少が避けられないとの見通しを述べた。

別の委員は、米国経済は株価依存の危険な状態にあるため、このまま好調が持続する可能性がある一方で、一旦落ち始めるとハードランディングになる可能性が高いとの見解を述べ、その日本経済への影響に懸念を示した。もう一人の委員も、ほぼ同様の趣旨で、米国経済の先行き予測が二極化してきていることを指摘した。さらにその委員は、そうした不確実性の存在自体が、ドル安・円高を通じて、既に日本に影響を及ぼし始めているのではないかとの見方を述べた。

一方、景気が回復に向かうメカニズムとして、どのような可能性が考えられるかについて、ある委員から二つの注目点が述べられた。一つは、経済が本来的に持つダイナミズムに関するもので、その委員からは、仮に景気が底を打つ局面が実際に生じてくると、それが企業や家計の期待変化を通じて次の新しい動きを呼び起こしていく、という可能性が指摘された。第二点として同じ委員から挙げられたのは、銀行への公的資本注入が不良債権処理を加速させ、その裏側で企業の債務負担が企業の再編を伴いながら軽減されていく道筋であった。この二つ目の注目点について、その委員は、短期的にはかえってデフレ圧力を強める惧れがあることに留意しつつも、中期的なプラスの展望が市場で評価されて、そのこと自体が経済に好影響を与えていく可能性を指摘した。

上記委員の指摘に関連する企業部門の構造改革については、多くの委員が様々な視点から、活発に意見を述べ合った。

ある委員からは、3月決算がきわめて厳しいものになると予想される中で、銀行に対する公的資本注入が進んでいくことは、金融・産業両面における大規模な再編成を促すきっかけになる可能性があるとの考えが示された。企業業績が構造改革へのきっかけになるという点には、他にも複数の委員が同調した。そのうちの一人からは、企業経営者自身の中に、「創造的破壊」への意識、すなわち大掛かりな手を打っていかなければ立ち上がれないという危機感が芽生えてきたことを、期待を持って注目している旨の発言があった。

日本経済に存在する需給ギャップの視点からは、現在の大幅な需給ギャップを、公共投資等の総需要政策だけで埋めていくことは到底困難であるとの見方が、ある委員から示された。そのうえで、同じ委員から、企業が新製品開発や技術開発により需要を掘り起こしていくことが期待されるほか、一時的にさらに雇用を悪化させるという副作用はあっても、設備廃棄等の構造調整といったサプライサイドの対応によって国際競争力の強化が図られていくことが必要、との指摘があった。

産業構造の視点からの意見もあった。すなわち、ある委員から、日本経済のうちニュージャパン(新規産業)の部分は現在でもかなりの成長をしているが、オールドジャパン(従来型産業)のウェイトがなお高いために、全体ではマイナス成長になっているとの認識が示された。そのうえで、同じ委員から、公共投資中心の政策を続けていく限り、オールドジャパンが温存される危険もあるので、ニュージャパンを拡大していく方策を考えていく必要があるとの意見が述べられた。

これらの意見に関連して、もうひとりの委員は、ミクロ(=各企業)のリストラはマクロの有効需要をさらに低下させる面もあることなどから、リストラと景気回復の関係はそれほど単純ではないとの認識を示した。それでもやはりその委員は、(1)旧来の生産活動を整理していくことで新しい生産活動や技術開発へのエネルギーが湧いてくる可能性、(2)賃金の低下が生産コストの面から企業活動の拡大を促していく可能性、(3)これらを株式市場がプラスに評価していく可能性などを指摘し、若干の留保を付けつつも、政策の重点を単なるマクロ総需要政策から、資源再配分を促進する産業政策に移していく必要性を述べた。

さらに別の委員からは、そうした資源再配分政策の一環として、雇用政策を抜本的に見直すべきとの見解が示された。その委員は、能力開発を含めて失業者の再就業を支援するため、OECDが提唱している「アクティブ・レーバー・マーケット・ポリシー」が重要であるとの指摘を行ったうえで、それに関連する政府支出のGDP比率がわが国はG7諸国中最低である現状を紹介し、それを変えていく必要性を強調した。

3.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上で検討された金融経済情勢を踏まえて、当面の金融政策運営の基本的な考え方が検討された。

何人かの委員から、大規模な財政拡張等によって経済全体の悪化にある程度歯止めがかかりつつある状況や、公的資本注入の検討が進み、年度末の企業金融にも昨年末のような逼迫感がみられない情勢を踏まえると、現時点で金融緩和スタンスをさらに強める必要はないとの見解が示された。そのうち一人は、昨年夏はロシア危機が国際金融市場全般にかなりのインパクトを及ぼしたが、現在の中南米情勢が市場に与えている影響はモダレートなものにとどまっていると述べて、海外リスクについて、昨年9月に金融緩和措置に踏み切った局面との相違を指摘した。また、複数の委員からは、追加的な金融緩和といってもその余地は小さいので、そうした僅かな政策変更が持つ意味については慎重に考えたいという趣旨の意見も出された。

ただ、景気回復の展望が描けず、金融面での不安定要素にもなお留意する必要があること、さらには海外経済や長期金利上昇・円高等に起因するリスクが存在することを踏まえると、現在の金融緩和スタンスを堅持し、企業金融支援のためのオペ・貸出面の措置を用いながら、引き続き潤沢な流動性の供給を行っていく必要があるという点で、多くの委員は共通の認識であった。そのうちのある委員は、経済情勢からみて実質金利はなお高いため、名目金利の引き下げ余地が十分にある局面であるならば引き下げてもよいような状況であるとの見解を述べ、少なくとも現状程度の金融緩和が不可欠である点を強調した。

最近の長期金利上昇を、金融政策面でどのように考えていくかという点についても、討議が行われた。

ある委員から、これまでも不況下で長期金利が上昇し、それに伴って円高や株安が生じるといった経験が何回かあるので、今回も、長期金利の動きは、政策運営上、十分に注意していく必要があるとの発言があった。

この点に関連しては、日本銀行による国債引き受け論議や、国債買い切りオペに対する基本的な考え方が、重要な論点になった。

日本銀行による国債引き受けについては、ある委員から、財政法によって禁止されているのはきちんとした理由があってのことである点が指摘され、中央銀行の信認を損ない財政規律の喪失につながるものとして、明確に否定された。こうした認識は、他の委員も同じであった。

また、国債買い切りオペについても、長期金利へ働きかけるという明確な意図を持って、これを積極化させていくといったような政策対応には、相次いで否定的な意見が述べられた。すなわち、日本銀行が国債をどんどん購入していくと、それが市場で財政赤字のマネタイズと受け止められて財政規律の喪失や格付低下などの連想を生み、長期金利にかえって上昇圧力がかかってしまうリスクがあることを、多くの委員が異口同音に述べた。

こうした点を踏まえて、何人かの委員が、国債買い切りオペを、やや長い目で均した銀行券の増発トレンドと整合的に行っていく、という基本的な考え方から逸脱して積極化させることには慎重であるべきという点を強調した。ただ、同時に、それらの委員は、銀行券の伸び率は目先低下する可能性が高いが、そうした銀行券の短期的な変動に併せてオペ額を機械的に減額することは、市場から無用の誤解を招くリスクがあるため、現状の月間4千億円程度のペースを維持するのが適当との認識であった。

より一般的に、長期金利を中央銀行だけでコントロールしようとすることには、もともと無理があるとの指摘を行う委員もいた。結局、長期金利との関係においても、金融政策面では、短期金融市場の安定確保に努めることが重要との認識が、多くの委員に共有された。

さらに、デフレ・スパイラルのリスクとの関係でも、意見の交換が行われた。複数の委員から、現時点で物価の下落が必ずしも加速しているわけではないが、今後企業のリストラが進んでいくことなどを考えると、経済が先行きデフレ・スパイラルに陥るリスクは完全には払拭できず、その点についての認識を強めておくべきとの見解が示された。

ただ、仮にそうしたデフレ・リスクが強まってきた場合に、金融政策によってデフレを確実に食い止められるかという点については、明確な結論には至らなかった。ある委員は、ひとつのオプションは量的緩和論であるとの見解を示しつつも、同時に、(1)企業の期待インフレ率が高まる前に債券市場のみが先に反応して名目長期金利が上がってしまう可能性はないか、(2)短期金利がすでにゼロに近いときに追加的な量の増大をどこまで実現できるか、(3)量を増やすとして国債買い切りオペを用いた場合と他の手段を用いた場合で影響が異なるか、といった直ちには明快な答が出せない問題が数多く存在することを指摘した。

別の委員は、現在の物価下落傾向は、需要が少ないという問題だけではなく、供給力の過剰や、さらにはエマージング諸国を中心とした世界的な規模での供給構造の変化もあって生じているとの認識を述べ、そうした性格の物価変動に対して、目標値を決めて金融政策だけで対応していこうとしても、おのずから限界があるとの見解を示した。

以上の点を踏まえ、当面の金融市場調節方針については、デフレ圧力が高まる可能性も政策的視野に入れつつ、現状の思い切った金融緩和スタンスを継続することが適当である、との意見が多数を占めた。

こうした多数意見の中にあって、ある委員から、9月の金融緩和の効果は基本的には金融機関の支援にとどまっており、金融システムに対するセーフティーネットが構築された現在、そうした金利面からの支援を続ける必要はないとの意見が述べられた。さらに、その委員は、(1)金利は金融機関の経営だけではなく、年金、保険等様々なルートを通じて国民生活全般に影響していること、(2)設備投資が減退している現状では、当面景気が回復するとすれば、まずは家計のコンフィデンス回復が必要であること、といった観点を金融政策運営においても十分考慮すべきとの主張を行った。

他方、もう一人の委員は、(1)円高と長期金利上昇によって情勢が一段と悪化しており、1から3月、遅くても4から6月には危機的な状況が到来するとみられること、(2)大幅な需給ギャップや円高を背景に、物価の下落が99年度入り後加速するとみられること、(3)財政政策の追加的な発動余地がきわめて限られてきたため、金融政策面で早めに対応しておく必要があること、(4)欧州、中南米を含め世界経済のリスクが大きいため、米国が好調なうちにわが国の景気回復を図る必要があること、という理由から、金融緩和スタンスを一段と強め、コールレートの誘導目標を0.10%前後まで引き下げることを提案した。また、その委員は、デフレ防止にかける日本銀行としての決意を示すべきとの立場から、消費者物価の中期的な上昇率を1%——消費者物価指数のバイアスを除いた実勢ではゼロとみられる上昇率——に引き上げる意図を、金融市場調節方針の中に明記することを提案した。

こうした提案に対し、ある委員は、(1)これまでの討議において、長期金利はやや落ち着きを取り戻しつつあるとの意見を述べた委員が少なくなかったこと、(2)緊急経済対策がこれから本格的に発動されるというときに、財政政策は既に手詰まりという捉え方は適当とは思われないことを指摘し、提案の妥当性に疑問を示した。しかしながら、この提案を行った委員は、(1)長期金利は97年4月以来の低下トレンドから上昇局面に転じているため、今後多少のコレクションはあっても1.5%程度が下限で、むしろ昨年12月のピーク(2%強)を超えて上昇していくとみられること、(2)そうした長期金利の上昇によってこれから出てくる緊急経済対策の効果はかなり相殺されてしまうこと、といった考えを主張した。

また、もう一人の委員からは、(1)0.10%前後までコールレートを引き下げるということと、消費者物価上昇率を1%程度に引き上げるということとの間に、整合的な因果関係は存在するのか、(2)物価指数に数値目標を定めるのであれば、どのような物価指数を用いるか、どのぐらいの期間で目標を達成すべきかなどについて、十分に吟味する必要があるのではないか、といった疑問が投げかけられた。これに対し、この提案を行った委員は、(1)差し当たりコールレートを0.1%まで引き下げてみて、それが物価に与える影響をウォッチし、不十分であればさらに量的緩和に踏み切るという段階的な政策運営を念頭においていること、(2)消費者物価が最もわかりやすい物価指標であること、(3)どの程度の期間で目標を達成できるかはわからないので、「中期的に」、あるいは「達成できるまで」、金融緩和を続けるという趣旨であること、などの説明があった。

4.政府からの出席者の発言

会合の中で、政府からの出席者も発言した。大蔵省からの出席者は以下のような発言を行った。

  • 景気は、低迷状態が長引いており、きわめて厳しい状況にある。こうした認識のもと、98年度第3次補正予算の円滑かつ迅速な執行を中心に、昨年秋にとりまとめた緊急経済対策を着実に実施してまいりたい。また、99年度予算案については、98年度第3次補正予算と一体的に捉え、年度末から年度初めにかけて施策を切れ目なく実施すべく、15か月予算という考え方に立って編成し、本日国会に提出した。99年度予算案は、積極的な公共投資の拡大をはじめ、国、地方合わせて平年度ベース9兆円超の減税を盛り込むなど、当面の景気回復に全力を尽くす内容となっている。
  • この結果、99年度の公債依存度は、当初予算の段階で37.9%と、98年度の第3次補正後の38.6%とあまり変わらない水準に達することになる。これを踏まえると、わが国の将来世代のためには、財政構造改革は必ず実現しなければならない。ただ、この点は、わが国の経済が回復軌道に乗った段階において、改めて21世紀初頭における課題として、根本的な観点から必要な措置を採っていくこととしたい。

経済企画庁からの出席者は以下のような発言を行った。

  • 大規模な財政政策を打ち出したことにより、追加的な政策の余地が少なくなっているため、今回は効果を確実に挙げる必要がある。そのためには、不良債権処理を中心とする構造調整を、これ以上先送りしないことが重要である。地価の下落が続いていることや、銀行の貸出態度が引き続き厳しいことなど、いろいろと難しい面はあるが、これらを注意深くみながら、不良債権処理や金融機関のリストラについて、しっかりしたコンセンサスを形成していく必要がある。

5.採決

多くの委員の認識を改めて総括すると、(1)わが国の景気は悪化テンポが和らいでおり企業金融面でも小康を得ている、(2)当面は財政面からの下支え効果が出てくるため景気の悪化に一旦は歯止めがかかる、(3)しかしながら民間需要が回復する展望は描き切れない、(4)海外経済や、円高、長期金利の上昇などが、潜在的なリスク・ファクターとなっている、というものであった。こうした認識を背景に、これまでの財政金融政策の効果や、金融システム建て直しの面での具体的な動きを見守りつつ、当面は、現在の思い切った金融緩和スタンスを継続していくべきとの意見が大勢を占めた。

ただし、上記のリスク・ファクターを重視して、本年前半も景気の悪化に歯止めがかからず、むしろ3月決算をきっかけに経済に大きな収縮圧力がかかるとの見方もあった。そうした見方に立つ委員は、デフレ防止への決意の表明を含めて、金融市場調節方針を一段と緩和すべきとの見解であった。この結果、次の2つの議案が採決に付されることとなった。

中原委員からは、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「中期的に消費者物価(総合)の年平均変化率(12か月後方移動平均の対前年比)を1パーセント程度にまで上昇させることを企図して、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、平均的にみて0.10%前後で推移するように促す。なお、金融市場の安定を維持するうえで必要と判断される場合には、上記のコールレート誘導目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」との議案が提出された。

採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対8)。

議長からは、会合における多数意見をとりまとめる形で、以下の議案が提出された。

議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添のとおり公表すること。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す。
なお、金融市場の安定を維持するうえで必要と判断されるような場合には、上記のコールレート誘導目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、後藤委員、武富委員、三木委員、植田委員
  • 反対:中原委員、篠塚委員

中原委員は、(1)世界的なデフレ傾向の中での長期金利上昇・円高が景気に与える悪影響を軽視すべきではない、(2)「インフレでもデフレでもない状態」を目指すという現在の姿勢よりもデフレを阻止する方向での決意を明確にすべき、(3)3月決算を越えてからでは何を行っても手遅れになる、という理由から、上記採決において反対した。

篠塚委員は、政策金利は国民生活の基礎になる重要な指標であるが、現状の金利水準は銀行に対する補助金ではないかとの誤解を招き、国民の信頼を損なう惧れがあるという点を指摘し、上記採決において反対した。

6.金融経済月報「基本的見解」の検討

当月の金融経済月報(アイボリーペーパー)に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が全員一致で決定され、それを掲載した金融経済月報を1月21日に公表することとされた。

7.前々回会合の議事要旨の承認

前々回会合(11月27日)の議事要旨(グリーンペーパー)が全員一致で承認され、1月22日に公表することとされた。

以上


(別添)
平成11年 1月19日
日本銀行

当面の金融政策運営について

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、当面の金融政策運営について現状維持とすることを決定した(賛成多数)。

以上