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金融政策決定会合議事要旨

(1999年 2月12日開催分)*

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、99年3月12日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

1999年 3月17日
日本銀行

開催要領

1.開催日時
99年2月12日(9:00〜12:17、13:04〜17:34)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 速水 優(総裁)
  • 藤原作弥(副総裁)
  • 山口 泰(  副総裁  )
  • 後藤康夫(審議委員)
  • 武富 将(  審議委員  )
  • 三木利夫(  審議委員  )
  • 中原伸之(  審議委員  )
  • 篠塚英子(  審議委員  )
  • 植田和男(  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 大蔵省   谷垣禎一 政務次官(9:00〜14:58)
    武藤敏郎 大臣官房総務審議官(15:03〜17:34)
  • 経済企画庁 堺屋太一 長官(9:29〜10:28)
    河出英治 調整局長(9:00〜9:29、10:28〜17:34)

(執行部からの報告者)

  • 理事黒田 巌
  • 理事松島正之
  • 理事永田俊一
  • 金融市場局長山下 泉
  • 国際局長村上 堯
  • 調査統計局長村山昇作
  • 調査統計局早川英男
  • 企画室参事稲葉延雄
  • 企画室参事(企画第1課長)山本謙三

(事務局)

  • 政策委員会室長小池光一
  • 政策委員会室調査役飛田正太郎
  • 企画室企画第2課長田中洋樹
  • 企画室調査役門間一夫
  • 企画室調査役栗原達司
  • 金融市場局調査役後 昌司(9:00〜9:23)

I.前々回会合の議事要旨の承認

 前々回会合(98年12月15日)の議事要旨(グリーンペーパー)が全員一致で承認され、2月17日に公表することとされた。

II.社債等を担保とするオペレーションの導入に関する検討・決定

1.執行部からの提案内容

 執行部から、98年11月13日の政策委員会・金融政策決定会合において決定された「最近の企業金融を踏まえたオペ・貸出面の措置について」に示された方針に基づき、(1)日本銀行の流動性供給余力を強化することと、(2)金融市場の信用仲介機能の補完に資すること、を狙いとして、社債等を担保とするオペレーションの導入に関し、概要以下のようなスキームを定め、これを対外公表したい旨の提案がなされた。

(1)スキームの概要

  • オペの実施店 日本銀行本店(業務局)
  • オペ対象先 金融機関、証券会社、証券金融会社、短資会社
  • 手形の買入方式 日本銀行による直接買い入れ
  • 金利決定方式 金利競争入札
  • 買入期間 オーバーナイト物から3か月物まで(運用上はターム物中心)
  • 手形の担保対象 社債、証書貸付債権(現行の手形貸付における適格基準を適用)
  • 担保形式 この手形買入によって生ずる総ての債権の根担保とする
  • 担保価額
    1. (1)社債は、額面額の100/130以内
    2. (2)証書貸付債権は、残存元本額の100/135以内

(2)オペ対象先の選定

  • オペ対象先の選定は、レポ・オペなどのケースと同様に、日本銀行が、オペの目的の達成のためにオペ対象先に期待する役割を対外的に明確にしたうえで、オペ対象先となることを希望する先を公募し、その中から選定する。
    ▽オペ対象先に期待する役割
    1. (1)オペの入札に積極的に応札すること
    2. (2)正確かつ迅速に事務を処理すること
    3. (3)金融政策遂行に有益な市場情報または分析を提供すること
  • オペ対象先の具体的な選定基準は、次のとおりとする。
    1. (1)日本銀行本店の当座預金取引先であること
    2. (2)信用力が十分であること
    3. (3)社債または証書貸付債権を根担保として一定金額以上差し入れることができること
     なお、本オペにおいては、(1)社債等を担保とする手形市場が存在しないため、市場プレゼンスをもとにした選定基準は設定しない、(2)企業金融支援に資するという趣旨からみてできるだけ多くオペ対象先とすることが望ましいため、オペ対象先の数をあらかじめ限定しない、といった点において、他のオペ対象先の選定基準とは扱いが異なっている。
  • オペ対象先の選定頻度は、原則として年1回の頻度で見直す。ただし、初回に限り、半年後を目途に見直しを行う。

 今後のスケジュールについては、執行部より、ただちにオペ対象先の公募を始め、3月にはオペ対象先の選定と担保の受け入れを行って、担保の集玉状況をみきわめたうえで、できるだけ早期にオペを実施したい旨の説明があった。

2.委員による検討・採決

 以上の執行部説明の後、何人かの委員から、社債等を担保とするオペレーションの導入によって、企業金融の円滑化に資することが期待されるとともに、やや長い目でみて金融調節手段が多様化していくことは、適当であるとの評価が示された。

 一方、ある委員は、中央銀行が企業金融の領域に踏み込んでいくのは問題が多いなどとして、反対意見を表明した。これに対して、別の委員は、中央銀行の資産として良質な民間企業債務を活用することは、欧州の中央銀行の例からも明らかなように自然なことである、と発言した。

 採決の結果、執行部提案が賛成多数で議決され、即日公表することとされた。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、後藤委員、武富委員、三木委員、篠塚委員、植田委員
  • 反対:中原委員

 中原委員は、(1)中央銀行が企業金融の領域に踏み込んでいくのは問題が多い、(2)社債市場は懐が深くないため、オペレーションの効果は限定される、(3)CPオペの場合と同じく、市場残高に占める日銀のオペ残高の割合が高まる懸念がある、(4)中央銀行は従来からの金融政策手法に基づいて最大限の対応をすべきである、として反対した。

III.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節については、前回会合(1月19日)で決定された金融市場調節方針(無担保コールレート<オーバーナイト物>を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す。なお、金融市場の安定を維持するうえで必要と判断されるような場合には、上記のコールレート誘導目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う)にしたがって運営した。この結果オーバーナイト・レートは、総じて0.2%台前半での推移となり、今積み期間(1月16日〜2月15日)の加重平均は、前営業日(2月10日)までで0.23%となっている。

 前回会合以降の短期金融市場はきわめて落ち着いた展開となった。日々の調節においては、資金決済のための需要が高まった月末・月初には厚めの資金を供給したが、それ以外の日は、基本的には「取り手優位」の状況が続いたため、リザーブ・ニュートラル、または小幅の積み下調節を継続した。この背景としては、(1)大手行の資金ポジションが、貸出の減少や債券の売却などによって、相当程度好転していること、(2)3月に予定されている公的資本の投入によって、年度末にかけての資金需給が大幅に緩和することが見込まれていること、(3)外貨調達環境の改善に伴い、年度末越えの資金調達についても逼迫感がみられないこと、などが挙げられる。この結果、ターム物金利も、総じてジリジリと低下した。

2.為替市場、海外金融経済情勢

(1)為替市場

 前回会合以降の円の対米ドル相場は、米国経済の先行き見通しや、わが国の長期金利の不安定な動き等を受けて、やや振れの大きな展開となった。1月末にかけては、先行きの米国経済に対する見方が、好調な経済指標の発表等を受けて楽観方向に傾いたため、円は、前回会合直前の114円台から、116円台まで下落した。しかし2月初には、日本の長期金利が急上昇したことなどを背景に、円は一時111円台に急反発した。ここ数日は、日本の長期金利が反落したことなどを受けて、115円程度まで再び軟化している。こうした中、市場のセンチメントをオプション取引のリスク・リバーサルの動きからみると、目先は円高ドル安感が強いものの、1年先では、円安ドル高センチメントに転じている。

 ユーロの対ドル相場は、ユーロエリアの景気減速見通しなどから、軟調な展開が続いている。ユーロの対ポンド相場も、これまで一貫して軟化してきたが、イングランド銀行が2月4日に金融緩和を実施したあとは(レポ金利引き下げ、6.0%→5.5%)、下げ止まっている。

 ブラジル・レアルの対米ドル相場は、政治・経済情勢の先行きに関する不安感の高まり等を受けて1月末にかけて続落した。しかし、2月初に、同国政府とIMFスタッフが、インフレ抑制と一段の財政健全化方針を盛り込んだ共同声明を発表したあとは、幾分持ち直している。なお、こうした為替市場の動揺は、目下のところ他の中南米諸国やアジア諸国には波及していない。

(2)海外金融経済情勢

 米国景気は、家計支出を中心に拡大を続けている。また、製造業受注は、幾分改善している。98年第4四半期の実質GDPは、特殊要因(昨年7月における一部自動車メーカーのストライキ終了に伴う自動車販売の増加等)もあって、高い伸びを示した(前期比年率+5.6%)。こうした状況について、FRBグリーンスパン議長は、「景気拡大ペースの明確なスローダウンの兆しは乏しい」と発言している。

 米国株価(ダウ工業株30種)は、高値警戒感やブラジル情勢に関する不透明感などが上値を抑える一方、好調な企業業績や経済指標の発表が下値を支え、9000ドル台でもみ合う展開となっている。

 ユーロエリアでは、ドイツにおいて、製造業受注の減少が続くなど、拡大テンポのスローダウンが明確化しているほか、フランスでも、個人消費関連の販売統計で弱めの動きがみられている。また、英国では、外需の減少、個人消費の伸び悩み、さらには生産活動の減速などが明確になっており、イングランド銀行は2月4日に政策金利(レポ金利)を0.5%引き下げた。

 東アジア諸国では、韓国の輸出、生産に持ち直しの兆しが窺われるが、域内の多くの国の景気は引き続き調整局面にある。

3.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 最終需要をみると、設備投資は、依然として大幅な減少を続けている。家計支出では、個人消費、住宅投資が、このところ横這い圏内の動きになってきているが、なお低調の域を出ていない。一方、純輸出は緩やかな増加基調を維持しており、公共投資も増勢を示している。こうした最終需要の動向や、在庫調整の進捗を背景に、生産は横這い圏内の推移となっている。物価面では、国内卸売物価が引き続き下落基調にあり、消費者物価も軟調に推移している。

 このように、昨秋頃までと比べると、経済情勢の悪化テンポは、かなり緩やかなものになってきている。中小企業の景況感をみても、下げ止まりに向かう気配が窺われる。

 しかし、企業の支出抑制姿勢には変化がみられない。また、家計支出では、住宅金融公庫への借り入れ申し込みが増加する一方、個人消費には強弱双方を示す指標が混在しており、所得の減少を跳ね返す力は感じられない。結局、民間需要は依然として低迷基調を脱するには至っていないとみられる。

 先行きについては、総合経済対策や緊急経済対策に基づく公共投資の増加が経済を下支えしていくと予想される。また、在庫調整の進捗や、年度末頃の住宅投資の上向きなどから、近いうちに景気がいったんは下げ止まりの様相を呈する可能性が高まっている。

 しかし、企業や家計の所得環境を考慮すると、景気がいったん下げ止まりの様相を呈しても、それが民間需要の回復に繋がっていく展望には乏しい。

 また、長期金利の上昇傾向や高止まりは、短期的には大きな影響がないにしても、それが続けば、いずれ借り入れコストに影響してくる。また、それが、為替相場や株価を通じて企業の収益・投資計画に悪影響を及ぼす惧れがあることにも注意が必要である。

 さらに、やや長い目でみた場合、これまでの円高の影響に加え、賃金の低下を映じてサービス価格の下落テンポ拡大が予想されるなど、来年度にかけて、物価の下落テンポが徐々に速まっていく可能性は、依然高いと考えられる。

(2)金融情勢

 最近の金融市況をみると、短期金融市場と債券・株式市場が、対照的な動きを示している。

 すなわち、短期金融市場では、ジャパン・プレミアムやユーロ円金利(現物)が、年度末を控えているにもかかわらず、落ち着いた推移を辿っている。これは、日本銀行による思い切った金融緩和の継続に加えて、金融システム安定化策の進展が好感され、邦銀の流動性リスクや信用リスクに対する市場の警戒感が後退してきていることを反映している。

 一方、長期国債の流通利回りは、再び上昇している。また為替相場は、足許、円高気味の展開となっている。株価も、こうした長期金利の上昇や円高の動きを受けて、軟調に推移している。これら相場の動きが、日本経済にとって、新たな不透明材料としてのしかかってきている。

 金融の量的側面では、マネーサプライの伸びは概ね横這い圏内で推移している。一方、最近は、日本銀行券(以下「日銀券」という)の増発テンポが鈍化しているため、マネタリーベース(=流通現金+準備預金)の伸び率が低下している。一昨年秋以降、企業や家計は金融システム不安を背景に現金を手許に保有する動きを強めたが、最近はそうした動きはかなり収まってきており、これが日銀券の伸び鈍化のひとつの理由となっているものとみられる。

 企業金融面では、実体経済活動に伴う資金需要が低迷を続けている。また、資金調達環境の厳しさを意識した企業の手許資金積み上げの動きも、徐々に収まってきている。一方、民間銀行は、基本的に慎重な融資姿勢を維持している。ただ、信用保証制度の活用には引き続き積極的である。

 この結果、企業金融は、ひところに比べ逼迫感が和らいできている。

IV.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

(1)景気の現状

 景気の現状については、まず、各委員から、昨年秋頃までに比べ、景気の悪化テンポは緩やかなものになってきているとの判断が示された。しかし、それと同時に、多くの委員は、民間経済活動は低迷の域を脱していないとの厳しい見方を付け加えた。

 まず、何人かの委員から、公共投資が増勢を示していることは明るい材料との認識が示された。このうちひとりの委員からは、このような公共投資の動きは企業倒産の増加抑制にも寄与しているとの評価が述べられた。

 家計支出については、多くの委員が、最近の住宅投資の動きに注目した。このうち、複数の委員からは、住宅金融公庫の融資金利の先高観に伴う駆け込み的な動きと、2年を限度とする住宅減税案などもあって、住宅投資の底打ちが確認されつつあるとの見解が示された。また、住宅投資には、耐久消費財を中心に幅広く派生需要を誘発する面があるだけに、その動きに期待したいとする発言もあった。

 個人消費については、何人かの委員が、これまでのような冷え込み一色の状態から、昨年の大手スーパーによるセール以降、家電販売や乗用車販売などで明るい動きがみられるようになっていると指摘した。

 さらに、こうした需要面の動き等を受けて在庫調整が進捗し、鉱工業生産も横這い圏内の動きとなっていることについて、何人かの委員が、これらを前向きの材料と位置づける見方を示した。

 このように、会合では、足許の景気悪化テンポは緩やかになっているとの認識が共有された。しかし、それと同時に、多くの委員からは、景気が回復に向けて動き始めたとまでいえる材料は見当たらないとの趣旨の発言も相次いだ。

 まず、多くの委員から、設備投資が大幅な減少を続けていることに関して言及があった。ある委員は、設備投資の前提となる企業収益(経常利益)が、99年度は前年比2割強の減益、2000年度も引き続き減益となるとの予想を示したうえで、わが国企業が過剰な資本ストックを抱えていること等を踏まえると、設備投資の下げ止まりの見通しは立たないとの厳しい見方を述べた。

 また、雇用・所得環境について、ある委員からは、12月の失業率や有効求人倍率がやや改善したが、それだけでは、雇用情勢の基調が好転したことまでは読み取れないとの指摘があった。また、ほかの何人かの委員も、企業は抑制的な支出活動を続けており、依然として非常に厳しい状況にあることに変わりはないとの認識を示した。このうちひとりの委員は、このように、企業収益や雇用・所得環境を巡る厳しい状況が続いている結果、企業・家計のコンフィデンスは依然弱いままの状態にあるとの見解を述べた。

 物価面では、ある委員が、卸売物価、消費者物価のいずれも依然軟調な展開となっており、デフレ状態が続いているとの見方を述べた。別のひとりの委員も、足許の賃金引き下げの動きが、物価下落圧力を強めるのではないか、との懸念を表明した。

 このような経済の停滞を示す材料に加えて、もうひとり別の委員は、景気の悪化テンポの緩和をもたらしている諸材料についても、(1)個人消費の明るさは、局地的、一時的なものにとどまっており、広がりを伴うまでには至っていない、(2)住宅投資は、駆け込みなどの先喰い需要によって支えられている面がある、(3)公共投資や輸出の帰趨も、厳しい財政事情や米国経済を巡る先行き不透明感などの懸念材料があるため年度後半の状況までは見通しづらい、といった点を指摘した。そのうえで、その委員は、景気全体の現状を判断すれば、やはりきわめて脆弱な状態が続いているとの結論を述べた。

 さらに、ほかのひとりの委員も、(1)最近の住宅投資では、一次取得者層の中心が30歳代前半まで低下しており、その債務返済能力を踏まえると、住宅投資が今後本格的に増加することは期待しがたいこと、また、(2)景気一致指数は8月以降12月まで下げ止まっているが、その動きからも回復の兆しはみられないこと、を指摘した。

(2)金融面の動向

 金融面については、短期金融市場や企業金融面で一頃強まった逼迫感は、かなり後退してきているとの認識が概ね共有された。しかし、その一方で、1月末から再び上昇した長期金利や、円相場の高止まりについて、その動向を強く懸念する意見が相次いだ。

 まず、ある委員は、最近の短期金融市場において、ジャパン・プレミアムが大きく低下するなど、全体として落ち着きを取り戻していることについて、これには、昨年来の日本銀行の一連の措置の効果に加え、金融システム建て直しのための取り組みの進展が寄与しているとの見方を示した。その上で、その委員は、実際に公的資本が入れば、市場はさらに落ち着くのではないかとの見通しを述べた。

 また何人かの委員は、企業金融の現状について、こうした短期金融市場の落ち着きや、信用保証制度など政府の諸施策の効果を背景に、企業サイドで一頃強まった手許資金積み上げの動きも収まりつつあり、全体として小康を得ているとの認識を表明した。

 その一方で、一部の委員からは、銀行の与信行動は依然慎重であり、今後、公的資本が投入されたとしても融資スタンスの大きな転換は期待できないとして、信用力の低い企業を中心に、先行きへの不安を抱えたままの状況が続くとの見方が示された。また、別の委員からは、最近の企業金融の逼迫感の後退は、一面では、手許資金を積み上げる動きが収まった結果であるが、その一方で、実体経済活動に伴う資金需要が相変わらず盛り上がらないことを示している面もあって、単純には評価しづらいものがあるとの認識が付け加えられた。

 このほか、最近のマネタリーベース(=流通現金+準備預金)の伸びが鈍化していることについて、ある委員から、これは、日本銀行の金融緩和の度合いや資金供給が十分でないことを意味するものではないかとの指摘があった。

 これに対して、多くの委員は、マネタリーベースの大宗が日銀券であることを踏まえたうえで、日銀券の伸び率低下は、冬季賞与をはじめとする所得の落ち込みや、年末年始の曜日構成に加えて、金融システム不安の後退を受けて、人々が日銀券を手許に置こうとする動き(=タンス預金積み上げ)が収まってきたことなどを反映しているものとみられるとの認識を示した。そのうちのひとりの委員は、これらのうちどの要因がもっとも大きなものであるかについては決定的なことは言えないが、いずれにせよ、足許の金融調節がマネタリーベースの伸び鈍化をもたらしているということではあるまいとの見解を示した。また、もうひとりの委員からは、これらの動きをみきわめるためにも、ここにきて反転している信用乗数(=マネーサプライ/マネタリーベース)の動きを、注目していく必要があるとの発言があった。

 以上のように、金融面については、短期金融市場や企業金融面などで一頃強まった信用リスクに対する過度な警戒感や逼迫感が後退してきているという判断が、各委員の間で、概ね共通のものとなった。

 しかし、その一方で、長期金利が再び上昇してきていることについては、多くの委員から強い懸念が示された。

 まず、何人かの委員が、長期金利について、昨秋の1%を大きく下回るような動きにはさすがに行き過ぎた面があったが、足許の2%を上回る水準についても、それ自体は97年夏頃のレベルであり、必ずしも高いものとは言えないのではないかと発言した。このうちのひとりの委員は、歴史的な債券金利の低下局面が終了したことを考えると、現在の債券金利にはまだ上昇する可能性があることを無視できないのではないか、との見方を述べた。しかし、別のひとりの委員からは、そうは言っても、4四半期連続でマイナス成長となっている実体経済の動きに照らせば、現在の長期金利水準がこれと整合的とは言い切れないとの認識が示された。

 次に、最近の長期金利の上昇要因について、何人かの委員が、それぞれの分析結果や考え方を明らかにした。

 まず、ある委員は、長期金利の決定理論(長期金利=「予想される将来の短期金利の平均値」+「リスクプレミアム」)に沿って説明を行った。すなわち、長期金利上昇の要因として、(1)一時の行き過ぎの反動という面に加えて、(2)景気回復期待の高まりといったことも一応考えうるが、その場合には、為替円高に加えて、株価が上昇するのが自然であり、最近の株価の動きからみる限り、説明力に乏しい、(3)また、財政赤字の増加が将来のインフレ懸念に対する市場の意識を強めさせた可能性もあるが、この場合には円安が生じるはずであり、これも説明力は十分でない、(4)そのうえで、短期的には国債の需給要因で説明される部分もまったくないとはいえず、たとえば、金融機関のリスクテイク能力が、自己資本不足や期末要因などから落ち込んでいることが、国債需給に影響している可能性がある、との見解を述べた。

 また、ほかの何人かの委員も、財政の将来展望が非常に不透明であることや、投資家が長期債の価格変動リスクに警戒的となっていることが、長期金利の上昇と深い関わり合いがあるとの立場をとった。さらに、これとは別のひとりの委員は、政府の財政赤字の対名目GDP比が10%を超えるような状況は、財政節度の観点からの臨界点をすでに越えているとの判断を示した。

 こうしたなかで、短期金融市場や企業金融において逼迫感が後退してきている一方で、長期金利が上昇していることをどのように理解するかという観点から、ほかのひとりの委員が発言した。その委員からは、信用保証制度の拡充、金融システム建て直しのための公的資本投入などの諸施策によって、民間部門の信用リスクが政府サイドに転嫁され、その結果、財政赤字が将来的に拡大するリスクが意識されて、長期国債の金利が上昇したのではないか、との見解が示された。その委員は、あわせて、長期金利がこのようなリスクファクターを理由に上昇していることは、景気に対してマイナスの影響を及ぼしかねないことを意味するとの見解を述べ、ほかの何人かの委員も、この見方に同調した。

 以上を踏まえ、多くの委員は、長期金利の先行きについて、非常に警戒してみていく必要があるとの考えを示した。また、このうちのひとりの委員は、今春の地方自治体による大量の縁故地方債発行が、一段の長期金利の上昇をもたらすのではないかとの懸念を表明した。

 円相場の動きについても発言があり、ひとりの委員は、110〜115円レベルで円高気味に推移しているが、これには長期金利の上昇が相応の影響を及ぼしているとの考えを述べた。また、ほかの何人かの委員からも、同じような趣旨の発言があった。

(3)景気の先行き

 景気の先行きについては、景気回復への展望が依然明確でないなかで、わが国経済が、長期金利の上昇や為替円高からくる追加的な下押し要因を受け止めることができるかどうかが、議論の中心となった。その結果、先行きの景気に対するダウンサイドリスクはむしろ高まっているとの見方が有力となった。

 まず、複数の委員から、政府・日本銀行による政策が総動員されていることを踏まえれば、近い将来、景気がいったんは底を打つことを展望しうる状況にあるとの認識が示された。

 しかし、このうちのひとりの委員は、雇用・所得環境の悪化が続いていることを踏まえると、一進一退となってきた個人消費にしても、今後持ち直していく展望までは描けていないとの見方を示した。

 また、別のひとりの委員は、設備投資について、各企業は、収益の悪化と大幅な需給ギャップを前にして構造調整リストラを求められており、設備増強どころか廃棄を検討するような状況にあるとのきわめて厳しい認識を披瀝した。さらにその委員は、企業の輸出に対する取り組み姿勢についても、貿易摩擦再燃の惧れや欧米経済の先行き不透明感を受けて、かなり慎重な計画を立てていることを紹介したうえで、企業は、こうした需要動向のもとで、さらなる在庫調整を必要としており、引き続き慎重な生産姿勢を維持せざるをえないとの見方を述べた。

 なお、輸出に関連して、もうひとりの委員からは、98年第4四半期に高成長を示した米国経済について、経済の好循環が維持される一方で、労働分配率の上昇など、労働コスト上昇圧力が顕現化する兆しがあるとの指摘があった。そのうえで、その委員は、米国経済は、このまま高水準での拡大を続けるか、急に失速するかのいずれかであるが、現段階では、その分岐点を見定めるのは非常に難しいとの認識を述べた。さらに、その委員はユーロエリアについても、(1)景気は今後、ドイツやフランスを中心に減速していくのではないか、(2)したがってユーロ相場は、対ドルなどで下落余地があるのではないか、といった見方を付け加えた。

 こうした議論を踏まえて、企業の動向に関してきわめて厳しい認識を示した委員からは、景気は底這い状態に入ってはいるものの、その水準はかつてないほど低く、景気回復の展望は依然拓けていないため、底這いの期間が長引く可能性があるとの判断が示された。そして、その委員は、財政の出動余地が限界に近づいているもとで、本年後半には、財政主導から民需主導へのスイッチを期待していたが、その可能性について、現状では幾分悲観的に捉えざるをえないとの見方を付け加えた。

 また、別の委員は、物価の下落テンポが速まっていないことは、とりあえずの安心材料であるが、そうは言っても、半年後ぐらいに景気が一段と落ち込むリスクは消えていないとの見解を示した。さらに、もうひとりの委員からも、財政面からの支出がピークアウトする間に、民間経済のアク抜けができるかどうかを見守ってきたが、現時点では、かなり厳しい状況になっているとの認識が披瀝された。

 このように、景気の先行きについては、かなりのダウンサイドリスクを見込まざるをえないとの認識が、委員の間で大勢となるなかで、長期金利の上昇と円高によるマイナスのインパクトをどのように評価するかについて、意見が交わされた。

 まず、ひとりの委員は、為替相場にはすでに昨年秋以降110円に迫るような円高局面があったため、その影響はある程度織り込まれていると考えられるとしつつも、昨年末からの長期金利の上昇は新たな悪材料であり、本年4〜6月、7〜9月にかけて、そのマイナス効果が顕現化していく可能性があるとの見通しを示した。

 また、別の委員は、長期金利が、わが国の財政状況等を巡る不透明感の強まり——「リスクプレミアム」の高まり——を受けて上昇し、景気、物価の実勢から乖離した水準にあることは、それ自体、景気に対してマイナスのインパクトを及ぼすものであるとしたうえで、さらに、こうした長期金利にひきずられて円相場が高止まりしていることは、マイナスインパクトを強めるものであるとの見解を示した。

 さらに、もうひとりの委員は、昨年9月の金融緩和実施時点と現在の状況を比較して、(1)長期金利が1%程度上昇、株価はほぼ同水準、円相場が14〜15%程度上昇、(2)企業収益も悪化し、雇用情勢も厳しくなるなど、民間経済の活動水準がさらに低下していると分析したうえで、これら資産市場の動向は、経済政策の総動員によってもたらされるプラスの効果を打ち消すような方向で一段のダウンサイドリスクとして働くと判断せざるをえないとの見方を示した。

 このほか、別のひとりの委員からは、昨年秋以降の長期金利の上昇と円高は、実質GDPを1%程度押し下げることになるとの試算が示された。そのうえで、その委員は、すでにデフレ的な状況に入っている日本経済に対してこのようなマイナスインパクトが加わると、状況は一段と厳しくなり、99年度の名目成長率は、かなりのマイナスになる危険性があると発言した。

V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 以上で検討された金融経済情勢を踏まえて、当面の金融政策運営の基本的な考え方が検討された。

 多くの委員の間では、経済情勢について、緊急経済対策が本格的に実施されるにつれて景気の悪化には次第に歯止めがかかると見込まれるが、企業や家計の先行きに対するコンフィデンスは依然慎重であり、民間経済は低迷を続けているため、景気回復への展望は依然明確になっていない、との認識が共有された。

 そうしたもとで、何人かの委員は、本年後半以降、財政面からの下支え効果が減衰するにつれて、これまでの長期金利の上昇や円相場の高止まりに伴う悪影響が、景気に重くのしかかってくる可能性があることに強い懸念を表明し、一段の金融緩和措置を検討する必要があるとの立場をとった。

 まず、ある委員からは、(1)日本経済はすでにデフレ的な悪循環に突入しており、長期金利上昇や円高の圧力もすでに実体経済に影響しはじめている、(2)このため、政府の財政政策を金融面からサポートし、それによって民間の自律的な経済活動を支えていく観点から、できるだけ早期に一段の金融緩和を実施することが必要である、(3)しかもそのタイミングは、現時点であっても遅すぎるくらいである、との発言があった。

 別の委員も、政府の財政政策や日本銀行の金融政策によって、景気は漸く底這い状態に入ったが、それはかつてないほどの低水準であり、3月末にかけての企業活動は、収益の下方修正や赤字転化などの厳しい決算が見込まれる中で、設備廃棄や雇用削減などのリストラによって、かなりのマイナスインパクトを受けるため、景気底這いが長引くリスクが高まっていると発言した。その上で、その委員は、最近の長期金利上昇や円高が財政・金融両面からの政策効果を打ち消すリスクがあるため、このタイミングで必要な対応策を講じるべきであるとの考えを述べた。

 もうひとりの委員からは、民間経済活動は低迷しており、海外経済を巡る不透明感や金融システム建て直しの過程で生じ得る副作用などもあるため、今後の景気の帰趨は非常に微妙な段階にあるとの発言があった。その上で、その委員も、長期金利の上昇、円高、さらには軟調な株式市場動向は、ただでさえ不透明感の強い日本経済の先行きに、一段のダウンサイドリスクをもたらすものであるため、この際、先行きデフレ圧力が高まる可能性に対処し、景気の悪化に歯止めをかけることをより確実にする観点から、金融緩和スタンスを一段と強化し、金融面から精一杯の下支えをしていくことが適当であるとの認識を示した。ただ、その委員は、金融緩和を実施する場合、金利収入に多くを依存している家計の方々には、粘り強く理解を求めていく必要があると付け加えた。

 また別の委員からは、前回会合以降の動きとして、政府の公的資本投入や信用保証制度の拡充などによって、本来民間が採るはずのリスクを政府が肩代わりし、それに伴って政府の信用リスクが高まっていることが、市場で意識されているとの指摘があった。その上で、その委員は、長期金利の上昇や円高、株安の動きには、デフレ方向への懸念が看取されるため、この際、金利をもう一段引き下げる方法を検討すべきではないか、との認識を示した。

 さらに別のもうひとりの委員からは、経済政策が総動員されて、景気が近い将来いったん底を打とうとしているにもかかわらず、最近の市場が、それを打ち消すような動きとなっていることを、どのように評価するかが、今後の政策運営を検討する際の最大のポイントであるとの整理が示された。その委員は、もう暫く様子をみることもひとつの選択肢ではあるが、長期金利の上昇や円高が新たな下押し要因となっている状況では、様子をみることによって新たに生ずるリスクがこれまでと比較して増大しており、むしろここでは、経済が追加的なプレッシャーに晒されていることに対応して、金融政策としてなしうる措置を動員していくことが重要ではないか、との見解を明らかにした。

 これらとは別に、何人かの委員は、(1)足許では実体経済の悪化テンポは緩やかになり、金融市場の逼迫感も和らいでいる、(2)しかし、その一方、本年後半以降の日本経済はダウンサイドリスクが高まっているとの二面性を強く意識しつつ、現在が、将来を先取りして一段の金融緩和措置をとるべきタイミングにあるかどうかについて、入念な検討を加えた。

 ある委員からは、金利上昇や円高の影響が心配ということであれば、通常ならば金融緩和の出番であるが、足許は、景気、物価動向の悪化が進行している訳ではないし、長期金利の上昇が一時的なもので終わる可能性もあるので、現状の金融政策スタンスを維持し、様子をみることも十分に採りうる判断であるとの考え方が示された。また、金融面がすでに大幅に緩和されている状況のもとでは、追加的な緩和措置が大きな効果をもたらすことは期待できないとも発言した。しかし、その委員は、1月にいったん低下した長期金利が再び上昇したことを踏まえると、政策面で様子をみることによって長期金利高止まりが長期化し、政策対応が手遅れになるリスクは小さくないとの認識を示した上で、短期金利の引き下げと、それに伴って多くの資金を供給することによって、経済を下支えすることは、正統的で、かつ分かりやすい対応であるとの見解を示した。

 別の委員も、前回会合と今回会合との間の1か月間の動きに限定して考えると、景気がいったんは下げ止まる見通しに変更はなく、金融市場も落ち着いてきているため、これだけからは、金融緩和の結論は得られないと述べた。また、金利引き下げが、短期金融市場を混乱させるリスク(後述)があるのであれば、それも十分に吟味するべきであるとした。ただ、その委員は、(1)景気回復の展望が拓けていないこと、(2)これまでの財政面における努力の結果、市場では財政サイドのリスクが高まったと受け止められていること、(3)今後は大規模な財政措置を打つことは難しくなったとの認識が強まっており、そうした見方がコンフィデンスの回復を妨げていること、さらには、(4)金融政策の効果が浸透するまでにはラグがあること、などを踏まえると、高金利や円高が先行きの経済にリスクをもたらしていることに対して、今回か次回の会合では、金融政策面からの手当てを決断する必要性が高まっているとの見解を述べた。

 もう一人の委員は、大底圏にあるわが国経済について、何とか自律的な回復の展望が拓けていくようにすることが必要であるとの認識を示しつつも、さらに一段の金融緩和措置を講ずることに関しては、(1)長期金利の上昇や円高が実体経済にもたらす悪影響については、昨年11月後半以降、毎回かなり意識されてきたシナリオであり、この1か月で事態が急速に深刻化したとは必ずしも言い難い、(2)日本経済が求められていることは、サプライサイドの強化を、行政組織のスリム化や歳出の効率化といった公的部門の改革や、民間経済の構造調整などによって進めることである、といった見方を述べたうえで、その判断をいったん留保した。

 このような金融緩和方向の議論に対して、ある委員からは、家計は現状の低金利について強い不満を有しており、オーバーナイトレート0.25%が実体経済にどのような影響を及ぼしているかという意義を、まったく納得していないとの指摘があった。また、その委員も、悪化テンポが緩やかになっているとする今会合での実体経済判断と、議論の俎上にのぼってきた一段の金融緩和措置との間には、かなりのギャップがあるとの認識を示した。こうした認識を踏まえて、その委員は、資金提供者である預金者の立場も考慮して金融政策を運営しないと、国内の資金が低金利を嫌って海外に流出することにもなりかねないとして、低金利政策に対して反対する立場をとった。

 以上の金融政策運営に関する検討の過程で、上述のように、各委員は、長期金利の上昇が実体経済に及ぼす悪影響について強い懸念を表明した。そのうえで、前回会合に引き続いて、中央銀行が長期金利に直接的な働きかけを行いうるか、また、国債買い切りオペ増額の議論についてどのように考えるか、という点に関して多くの委員が意見を表明した。議論を集約すると、長期国債の買い切りオペについては、従来と同様、やや長い目で見て、日銀券の増発額に対応させるという基本的な方針を維持することで、各委員の意見の一致をみた。

 ひとりの委員は、長期金利は資産価格のひとつであり、そこには、景気、物価を巡る先行き見通しのほか、さまざまな期待が織り込まれているため、中央銀行がこれをコントロールすることは不可能であるとの認識を示した上で、長期国債の買い切りオペの増額やオペレーション・ツイストは、とるべき政策ではないと結論づけた。また、別の委員も、中央銀行のオペレーションはある意味ではすべてオペレーション・ツイストであるとの考え方を示したうえで、それが一時的な効果すら有しないとまでは言い切れないとしながらも、長期金利の操作を目的としたオペレーション・ツイストは、過去の平均的なデータからみると有効性が小さいし、そこには様々な不確実性やリスクが伴うものであるといった認識を示した。また、その委員も含めた複数の委員からは、こうした領域に中央銀行が足を踏み込むと、往々にして泥沼に陥って抜け出せなくなることが歴史の教訓であるとの見解が述べられた。さらに、このうちのもうひとりの委員は、日本銀行のバランスシートの現状に言及して、長期国債のほかに、すでに預金保険機構向けの貸付残高が7〜8兆円にのぼっていることを踏まえると、短期金融資産によるオペレーションを旨とする中央銀行の資産としては、これら長期資産の規模が限界に達しているとも指摘した。

 このほか、会合では、長期金利の上昇への対応としては、国債の発行体である政府が、小さな政府の実現にむけて真剣に取り組むことや、国債の発行額や発行期間の面での工夫などを重ねることこそが必要なのではないか、といった意見も示された。

 こうした議論を踏まえて、別のひとりの委員は、(1)どのような形態であっても、国債をどんどん買っていくことは、財政節度を失わせ、将来の悪性インフレを招来する、(2)そうであるからこそ、主要国の中央銀行は、短期オペレーションを中心に行い、国債の買い入れに一定の歯止めをかけている、(3)日本銀行による国債の買い切りオペは、長い目でみて日銀券の増発に概ね見合うようにしており、この考えを当面変えるべきではない、と発言した。

 なお、もうひとりの委員からは、長期国債の買い切りオペによって成長通貨を供給することは必要であるが、経済成長がマイナスの場合にこの関係をどのように考えるのか、といった問題意識が付け加えられた。

 次に、金融緩和措置の手法について、突っ込んだ議論が行われた。多くの委員が、無担保コールレート(オーバーナイト物)を一段と引き下げることが適当であるとの判断を示したが、その際には、(1)無担保コールレートがゼロ近傍まで低下した場合、短期金融市場の機能が低下するのではないか、(2)そうであれば、金利の引き下げ余地がさらに狭められるため、十分な効果を期待できなくなるのではないか、という点が、議論のポイントとなった。

 まず、何人かの委員は、無担保コールレートがゼロ近傍にまで低下した場合、資金運用者の行動としては、カウンターパーティ・リスクや諸コストを負担してまでコール市場で運用するよりも、金利はゼロだがリスクもない、日銀当座預金に資金を置くほうを選好し、その結果、市場規模が縮小するなどの構造変化が生じ、短期金融市場の機能が低下するのではないか、との懸念を表明した。また、別のひとりの委員も、金融市場がようやく小康状態となったこのタイミングでは、市場の混乱を誘発するような施策は避けるべきではないか、との懸念を述べた。ただ、それらの委員も含めた多くの委員は、これまで経験がないことだけに、具体的に金利がどの程度まで下がれば、短期金融市場取引が縮小するのかということの見きわめがつかないため、結局は、市場の状況をよく見ながら金利を徐々に引き下げていく以外に方法はあるまい、ということで認識を共有した。

 こうした認識を踏まえて、ひとりの委員からは、無担保コールレートの目標を当面0.15%前後にまで引き下げ、そこで市場の状況をみたうえで、金利をさらにゼロに近いところにまで下げていくことが適当ではないか、との考え方が示された。また、別の委員は、金利を限りなくゼロに近づけるというだけの方針では、名目金利のターゲットを放棄して量的ターゲットに切り替えた、という誤解を市場に与えかねないが、0.15%という目標を呈示すれば、それは分かりやすいし、市場の混乱なども回避できる、との見方を述べた。

 続いて、金利の引き下げ幅がきわめて限定される状況で、金融緩和の効果がどの程度期待できるのか、という点に関するやりとりがあった。まず、ひとりの委員が、オーバーナイト金利を0.25%前後で安定させてきたことが、金利全般の低下や量的な拡大の制約となったのであれば、その制約を取り払うことは、相応に意味があるとの考え方を示した。これに対して、複数の委員から、0.1%程度の金利の引き下げが、資金の供給量や実体経済に有意な差を生じさせるものなのか、といった趣旨の疑問が呈された。また、別の委員は、当初の目標が0.15%ということでは引き下げ幅が不十分であるので、それを0.10%とすることで、引き下げ幅を少しでも広げ、金利引き下げのスピードをできるだけ速くしてはどうか、との意見を述べた。こうした疑問等を受けて、金利の制約を取り払うことに相応の意味があるとした委員も含め、複数の委員が、オーバーナイト金利の0.1%程度の引き下げ自体によって大きな効果が現れるとは期待できないが、そうした金利の引き下げを目指して流動性を潤沢に供給していけば、ターム物レートの低下などを通じて、金融機関の貸出スタンスやCPなどの直接金融市場へ効果が伝わり、結果として、企業金融面や実体経済活動にプラスの効果を期待できるようになるのではないか、との見解を示した。その上で、それらの委員は、現在の局面では、たとえ効果が小さくても、日本銀行がデフレ圧力の高まりに向けて最大限立ち向かう姿勢を示すことも重要であるとの立場をとった。

 なお、こうした議論を通じて、当初、短期金融市場を混乱させるリスクをよく吟味する必要があるとした委員や、現在が金融緩和を採るべきタイミングかどうかについて判断を留保していた別の委員も、金融緩和の実施を支持する意向を示した。

 この間、ある委員が、日本銀行は日々の金融調節において、国債を対象とするレポ・オペ(国債を見合いに短期の資金供給を行うオペレーション)を活用して短期金融市場に潤沢な資金を供給し、あわせて、債券市場のプレーヤーの資金繰り負担を少しでも緩和するようにしてはどうか、との問題提起を行った。これについては、ほかのひとりの委員が、このオペレーションは長期国債買い切りのオペレーションとは異なる短期の金融調節手段であり、社債等を担保とするオペレーションの導入などの資金供給手段を拡大・多様化する方向とも合致しているとして、賛意を示した。

 また、別のひとりの委員は、企業経営の立場からすれば、実体経済が不安定な状況のもとでは、とにかく資金繰りをつけながら走り続けるしかなく、この観点からは、日本銀行による金融市場に対する潤沢な資金供給が不可欠であるとした上で、例えば、日々の金融市場調節に際しては、できる限り資金吸収のためのオペレーションを抑制するように努めることはできないか、との意見を述べた。このうち資金吸収のためのオペレーションについては、ほかのひとりの委員からも、現在の日々の金融調節で、仮に売出手形による資金吸収を止めた場合、市場ではどのような動きが起こり得るかとの質問があった。これについては執行部より、日本銀行が預金保険機構向け貸出を含め、大量の資金を供給しているもとで、政策委員会で決定される金融市場調節方針を実現するためには——すなわち、オーバーナイト金利がゼロまで低下することを回避し、これまでの金融市場調節方針に示された0.25%前後の水準で支えておくためには——、売出手形によって資金を吸収する必要があるとの説明があった。

 さらに、何人かの委員は、企業金融の円滑化の観点からは、仮に一段のコールレート引き下げが決定される場合には、ターム物金利が低下する可能性が強いため、企業向け臨時貸出制度の金利も引き下げるのが適当ではないか、との意見を表明した。

 一方、ひとりの委員は、金利引き下げによる従来型の金融緩和について、(1)最早大きな効果は期待できない、(2)潤沢な資金供給という言葉の意味合いが不明確である、といった問題点を指摘した。そのうえで、その委員は、金利がゼロ近傍まで低下している状況では、この際、マネタリーベース(=流通現金+準備預金)に目標を置いた量的緩和を明示すべきである、との立場を明らかにした。さらにその委員からは、量的緩和には数多くの反論があることは十分承知しているが、ミクロヒアリングによれば、準備預金を増やせば、それが資金需要のある海外現地法人や優良な中小企業にも行き渡ることが期待される、といった趣旨の発言が付け加えられた。

 これに対して、何人かの委員は、オーバーナイト金利に少しでも引き下げる余地がある以上、まずはそれによって、経済活動をサポートし、金融市場に対して潤沢な資金供給を行って、マネーサプライの拡大を促していくことが重要であるとの考え方を示した。また、このうちのひとりの委員は、マネタリーベースの9割は流通現金であり、これに目標を設定した政策の実現可能性には強い疑問を感じるとの認識を述べた。また、もうひとりの委員も、量的ターゲットの有効性を必ずしも否定するものではない、との立場を採りつつも、(1)表裏の関係にある金利と量の関係が断絶するのは、金利が全期間にわたってゼロになった場合であり、オーバーナイト金利がゼロ近傍になったとしても、それ以外の期間の金利を引き下げることによって、資金量を増やすことができること、(2)無理矢理に量的緩和策を図っても、人々の期待形成と資金需要に変化が生じない限り、政策としての効果はないこと、(3)金融市場に加わる様々なショックによって大きく振れるマネタリーベースを政策目標とするよりも、名目金利をターゲットとしたほうが、実体経済との関係もわかりやすいこと、(4)量的な目標値の設定にはしっかりとした理屈付けが必要であること、といった諸点を挙げて、量的緩和には検討すべき点が多いとの趣旨の発言をした。

VI.政府からの出席者の発言

 会合の中で、政府からの出席者も発言した。まず、大蔵省からの出席者は、以下のような趣旨の発言を行った。

  • わが国経済の現状は、いくつか良い指標が出てきているが、全体としては低迷から抜けきれておらず、油断できない状況にある。大蔵省としては、昨年決定した緊急経済対策を強力に推し進めているところであり、財政としても、ぎりぎりのところまでやっているという認識にある。現在、平成11年度予算案が国会審議中であるが、早期成立に向けて全力を傾けたいと考えている。
  • 長期金利との関係では、大蔵省としても、国債の確実かつ円滑な償還に努めている。しかし、市場における根強い需給悪化懸念等を背景に、長期金利には不安定な動きがみられている。こうした状況を踏まえて、大蔵省として何らかの工夫ができないか、省内で議論を重ねているところである。
    いずれにしても、現下の経済金融情勢に対応して、適切な金融政策の運営が必要であり、幅広い観点から十分な議論のうえ、決定をお願いしたいと考えている。

 経済企画庁からの出席者は、次のような趣旨の発言を行った。

  • 景気は低迷が長引き、きわめて厳しい状況にあるが、一層の悪化を示す動きと幾分かの改善を示す動きとが入り混じり、変化の胎動も感じられる。政府としては、平成10年度第3次補正予算と平成11年度当初予算を一体とし、不況の環を断ち切るべく、かなりの英断をもって大型の予算を策定したところである。
  • 経済情勢が厳しいという点では、私どもと日銀との間の認識に大きな差はないと考えており、万が一にも、景気の腰が折れることのないよう、十分な配慮をお願いしたい。
     金融政策運営に当っては、十分な流動性の確保に努め、適切な運営をお願いしたい。なお、そのための手段については、本会合の検討に委ねたい。

VII.採決

 多くの委員の認識をあらためて総括すると、(1)わが国の経済金融情勢全般は、財政・金融両面からの下支えにより小康状態に入ってきており、今後景気の悪化には次第に歯止めがかかるものと一応見込まれるが、(2)民間経済は停滞を続けており、景気回復への展望は依然明確でない状況にあり、(3)さらに最近の長期金利の上昇や円相場の高止まりが、景気を再び悪化に向かわせるリスクファクターとして重くのしかかってきている、というものであった。

 こうした認識をもとに、日本銀行としては、先行きデフレ圧力が高まる可能性に対処し、景気の悪化に歯止めをかけることをより確実にするためにも、この際、市場金利を一段と引き下げ、金融政策面から経済活動を最大限下支えしていくことが適当である、との意見が大勢を占めた。

 ただ、ひとりの委員は、金融の一段の緩和を主張しつつ、(1)金利の引き下げは一層の量的拡大(マネタリーベースの拡大)を図るものであること、(2)その点を明瞭にすれば金融政策の出尽くし感が避けられるとみられることの2点を指摘したうえで、コールレート(オーバーナイト物)を引き下げるとともに、量的緩和(マネタリーベースの拡大)を目指すことをディレクティブの中に規定する趣旨の議案を提出した。なお、その委員は、かねてより金融緩和を主張してきた立場を踏まえ、金融緩和に関する大勢意見を取りまとめたディレクティブが採決される際には、これまでの潤沢な資金供給がより一層進められるような趣旨が盛り込まれれば、賛成票を投ずる意向がある旨を付け加えた。

 また、別の委員は、(1)潤沢な資金供給を目指して、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.15%以下で極力低く推移するよう促すこと、その際、短期金融市場に混乱が生じないよう金利の漸次低下に努めること、(2)加えて、金融調節にあたっては、短期金融市場の機能の維持に十分配慮しつつ、可能な限り吸収面での調節を抑えること、(3)あわせて、議案が可決された際には、企業金融支援のための臨時貸出制度の適用利率を引き下げること、を内容とする議案を提出する用意があることを表明した。ただ、その後の議論を経て、その基本的な趣旨が議長案に盛り込まれることで合意されたため、別途の議案としての提出は見送られた。

 さらに、金融緩和の効果に疑問を呈している委員は、市場金利を一段引き下げる提案には、反対票を投じる意向を表明した。

 この結果、次の2つの議案が採決に付されることとなった。

 中原委員からは、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、現下の厳しい経済情勢を踏まえると、量的緩和を主目的として潤沢な資金供給を実施する必要があるとの立場から、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を極力低水準に抑制することにより、一層の量的緩和(マネタリーベースの拡大)を図る。なお、当初、同レートの目途は0.10%とし、その後、低下するよう促す。」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対8)。

 議長からは、会合における多数意見をとりまとめる形で、以下の議案が最終的に提出された。

議案(議長案)

 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。対外発表文は別途決定する。

 より潤沢な資金供給を行い、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、できるだけ低めに推移するよう促す。

 その際、短期金融市場に混乱の生じないよう、その機能の維持に十分配意しつつ、当初0.15%前後を目指し、その後市場の状況を踏まえながら、徐々に一層の低下を促す。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、後藤委員、武富委員、三木委員、中原委員、植田委員
  • 反対:篠塚委員

 篠塚委員は、現在の超低金利政策をさらに更新することが、実体経済にどのような効果を及ぼすか疑問であるとして、上記議長案に反対した。

VIII.対外発表文「金融市場調節方針の変更について」の検討

 対外発表文「金融市場調節方針の変更について」が検討された。

 その際、長期国債の買い切りオペレーションについては、日本銀行のスタンスが注目されていることを踏まえ、この際、対外発表文のなかに、「これまでと同様の頻度、金額で実施していく」ことを盛り込むことが支持された。

 採決の結果、全員一致で、別添1のとおり公表することとされた。

IX.企業金融支援のための臨時貸出制度の適用金利変更の検討・決定

1.議長からの提案内容

 上記のとおり金融市場調節方針が変更されたことを受けて、議長から、昨年11月に決定し、すでに実施している「企業金融支援のための臨時貸出制度」における適用金利を、現行の0.5%から0.25%に引き下げるため、「企業金融支援のための臨時貸出制度基本要領」の一部を改正し、これを別添2のとおり対外公表したい旨の提案があった。

 その趣旨は、現行の適用金利0.5%が、これまでの金融市場調節方針(無担保コールレート<オーバーナイト物>)を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す)を前提として設定されたものであったことを踏まえ、本日の金融市場調節方針の一段緩和にあわせて、本件適用金利も0.25%に引き下げることが自然と考えられる、との説明が付け加えられた。

2.委員による検討・採決

 本件については、金融政策運営を巡る議論の過程(前述)でもすでに複数の委員がその必要性に言及していたところであり、多くの委員がこれに賛意を示した。

 これに対して、ひとりの委員は、反対意見(後述)を表明した。

 採決の結果、議長提案が賛成多数で議決された。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、後藤委員、武富委員、三木委員、篠塚委員、植田委員
  • 反対:中原委員

 中原委員は、(1)中央銀行が企業金融の領域に入るべきではない、(2)この臨時貸出制度の適用金利の引き下げ幅を0.25%とすることについては、今般引き下げをする無担保コールレートの目標をただちにゼロにするということでない限り、金利水準として両者のバランスが取れない、として議長案に反対した。

X.金融経済月報「基本的見解」の検討

 当月の金融経済月報(アイボリーペーパー)に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が全員一致で決定され、それを掲載した金融経済月報を2月16日に公表することとされた。

以上


(別添1)
平成11年 2月12日
日本銀行

金融市場調節方針の変更について

  1. (1)日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、金融市場調節方針を一段と緩和し、以下のとおりとすることを決定した(賛成多数)。
    より潤沢な資金供給を行い、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、できるだけ低めに推移するよう促す。
    その際、短期金融市場に混乱の生じないよう、その機能の維持に十分配意しつつ、当初0.15%前後を目指し、その後市場の状況を踏まえながら、徐々に一層の低下を促す。
  2. (2)わが国の経済をみると、景気の悪化テンポは、公共投資の拡大に支えられて、緩やかになってきている。今後、緊急経済対策が本格的に実施されるにつれて、景気の悪化には次第に歯止めがかかるものと見込まれる。しかし、企業や消費者の心理は依然慎重なものにとどまっており、民間経済活動は停滞を続けている。物価も軟調に推移している。景気回復への展望は依然明確でない状況にある。
    金融面の動向をみると、短期金融市場取引や企業金融を巡る一頃の逼迫感は和らいできている。しかし、長期金利が大幅に上昇し、為替相場も円高気味の展開が続いている。株価も総じて軟調に推移している。こうした市場の動きは、わが国経済の先行きに対してマイナスの影響をもたらす惧れがある。
  3. (3)上記のような金融経済情勢を踏まえて、日本銀行は、先行きデフレ圧力が高まる可能性に対処し、景気の悪化に歯止めをかけることをより確実にするため、この際、金融政策運営面から、経済活動を最大限サポートしていくことが適当と判断した。
  4. (4)日本銀行としては、上記の金融市場調節方針のもとで、より潤沢な資金供給を行い、これを通じて、マネーサプライの拡大を促すとともに、落ち着きを取り戻しつつある短期金融市場の安定に引き続き万全を期していく考えである。
  5. (5)金融市場調節の具体的な運営に当たっては、短期金融市場の機能の維持に配意しつつ、従来と同様に短期の調節手段を用いて、より潤沢な資金の供給に努めていく考えである。なお、そのなかで、国債を対象とするレポ・オペ(国債を見合いに短期の資金供給を行うオペレーション)については、従来以上に、積極的に活用していく方針である。
    また、長期国債の買い切りオペレーションについては、これまでと同様の頻度、金額で実施していく考えである。
  6. (6)日本経済を、しっかりとした景気回復の軌道に乗せていくためには、金融・財政面からの下支えだけでなく、金融システム対策や構造改革を着実に進めていくことが重要である。日本銀行としては、今回の金融緩和措置が、それら関係各方面の取り組みと相俟って、日本経済の直面する課題の克服に資することを強く期待する。

以上


(別添2)
平成11年 2月12日
日本銀行

企業金融支援のための臨時貸出制度の適用金利変更について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、企業金融支援のための臨時貸出制度の適用金利を現行の年0.5%から年0.25%に変更することを決定した。これは、同会合において別途決定した金融市場調節方針の変更を踏まえた措置である。

 変更後の適用金利は、次回貸付実行日である本年2月22日から適用する。なお、既に実行されている貸付についても、期限前返済がなされれば、次の貸付実行日において、変更後の金利により新たに貸付を行うものとするほか、昨年12月21日に実行した貸付については、期限前返済がなくとも、本年3月23日に行う手形書替に際し、変更後の金利を適用する。

以上