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金融政策決定会合議事要旨

(1999年10月13日開催分)*

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、99年11月12日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

1999年11月17日
日本銀行

開催要領

1.開催日時
99年10月13日(9:01〜12:35、13:34〜17:22)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 速水 優(総裁)
  • 藤原作弥(副総裁)
  • 山口 泰(  副総裁  )
  • 武富 将(審議委員)
  • 三木利夫(  審議委員  )
  • 中原伸之(  審議委員  )
  • 篠塚英子(  審議委員  )
  • 植田和男(  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 大蔵省   大野功統 総括政務次官(9:01〜17:22)
  • 経済企画庁 小池百合子 総括政務次官(9:01〜12:35)
    小峰隆夫 調査局長(13:34〜17:22)

(執行部からの報告者)

  • 理事黒田 巖
  • 理事松島正之
  • 理事永田俊一
  • 金融市場局長山下 泉
  • 調査統計局長村山昇作
  • 国際局長平野英治
  • 企画室参事稲葉延雄(13:34〜17:22)
  • 企画室企画第1課長雨宮正佳
  • 調査統計局吉田知生

(事務局)

  • 政策委員会室長小池光一
  • 政策委員会室調査役飛田正太郎
  • 企画室企画第2課長田中洋樹
  • 金融市場局金融調節課長宮野谷 篤(15:15〜17:07)
  • 企画室調査役内田眞一
  • 企画室調査役山岡浩巳

I.前々回会合の議事要旨の承認

 前々回会合(9月9日)の議事要旨(グリーンペーパー)が全員一致で承認され、10月18日に公表することとされた。

II.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節については、前回会合(9月21日)で決定された金融市場調節方針1にしたがって運営した。

 この間、中間期末越えとなる9月末から10月初にかけて、金利上昇圧力が高まる局面もみられた。これに対し日本銀行は、積み上幅を、それまでの1兆円から、2兆円を超える水準まで引き上げるなど、潤沢な資金供給を弾力的に行った。この結果、オーバーナイト金利は9月30日も0.05%と、比較的落ち着いて推移した。その後は、市場は再び緩和感がきわめて強い状況となり、積み上幅を1兆円とする調節のもとで、オーバーナイト金利は0.02〜0.03%で安定している。

 最近の短期金融市場の特徴点としては、次の3点が挙げられる。

 第1に、3か月物の取引が9月29日を境に年末越えとなったことに伴い、3か月物の金利が、いわゆる「2000年プレミアム」が上乗せされる形で上昇したことである。もっとも、3か月物以外の期間のターム物金利は、ゼロ金利政策の解除予想が一段と後退したことから、むしろ弱含んでいる。

 第2に、3か月物の取引が年末越えとなったことに伴い、3か物金利で、わずかながら「ジャパン・プレミアム」が観察されるようになっていることである。

 第3に、金融機関は、中間期末を控えた9月中に、準備預金をやや前倒しで積む傾向を強めた。これに伴い、この間は、短資会社の日銀当座預金もやや減少をみた。もっとも、10月入り後は、中間期末を無事に越えたことで、超過準備は減少している。

 現在、市場の関心は、もっぱらコンピューター2000年問題に集まってきている。

  1. 「より潤沢な資金供給を行い、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、できるだけ低めに推移するよう促す。その際、短期金融市場に混乱の生じないよう、その機能の維持に十分配意しつつ、当初(注:2月12日の金融政策決定会合時点)0.15%前後を目指し、その後市場の状況を踏まえながら、徐々に一層の低下を促す。」

2.為替市場、海外金融経済情勢

(1)為替市場

 円の対ドル相場は、一時103円台まで円高が進んだ後、G7の共同声明を巡る思惑や、本邦機関投資家による外貨資産購入などから戻し、足許では106〜107円台で推移している。

 この間、ユーロは、ユーロエリア経済の回復傾向が一段と明確になってきたことなどを受け、対ドル・対円とも上昇している。

 こうした中で、市場では、これまでの円の独歩高といったセンチメントに変化がみられる。すなわち、(1)9月中の急激な円高の動きが103円台/ドルで止まり、円相場に天井感が出てきたこと、(2)市場の関心がユーロに向かいつつあること、(3)4〜6月期のGDP公表等によって形成された、日本経済に対する市場の過大な回復期待が、徐々に修正されつつあること、などから、円高圧力は、一頃に比べればやや後退してきているように窺われる。

(2)海外金融経済情勢

 米国金融市場では、(1)8月耐久財受注などの強めの経済指標や、(2)10月5日のFOMCで、金融政策の「引き締めバイアス」が採択されたこと、さらには、(3)欧州の長期金利の上昇、などを受けて、長期金利が上昇傾向を示している。この間、株価は、9月中は下落の動きがみられたが、10月入り後は、企業収益に対する強気の見方などを背景に反発している。

 米国の実体経済は、内需主導の持続的拡大を続けている。もっとも、7月の貿易赤字は3か月連続での赤字幅拡大となるなど、対外インバランスの拡大傾向も目立っている。米国の対外経常赤字は、98年後半以降拡大傾向を辿り、現在では年率約3,000億ドルといったペースに達しており、こうした対外赤字のファイナンスが今後とも円滑に行われていくのかといった点に、市場の関心が集まってきている。

 ユーロエリアでは、個人消費が底固く、輸出も増加基調を辿るなど、景気回復テンポが緩やかに高まりつつある。この間、物価は現状では落ち着いているが、先行きについてはインフレ懸念も出てきており、市場ではECBがいずれ利上げに踏み切るのではないかとの見方が強まっている。こうしたことを背景に、長期金利も上昇傾向にある。

3.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 最終需要をみると、設備投資が緩やかに減少しているほか、住宅投資も頭打ちとなっている。個人消費も総じて一進一退で推移しており、回復感には乏しい。一方、公共投資の工事量が春先の大量発注を受けて増加しているほか、輸出も増加を続けている。こうした最終需要の動向や在庫調整の進捗を反映して、生産は増加している。

 また、企業の業況感をみると、9月短観の業況判断D.I.は、製造業大企業などを中心にかなりの改善をみるなど、円高が進展するもとでも、改善傾向を維持している。

 このように、わが国の景気は下げ止まっており、足許、輸出や生産面には持ち直しの動きがみられる。

 物価面をみると、国内卸売物価は、原油等輸入物価の上昇に加え、在庫調整の進捗もあって、足許では横這いとなっているほか、消費者物価も、前年並みの水準で推移している。

 先行きについて、10〜12月期の最終需要を展望すると、住宅投資は緩やかな減少に転じるとみられる。しかし、輸出はアジアを中心とする海外景気の回復に支えられて増勢を維持するとみられるほか、公共投資も、遅れ気味であった工事の進捗が続くため、大きな落ち込みは避けられる可能性が高い。こうした状況からみて、生産は、7〜9月期に増加した後、10〜12月期も横這い圏内で推移する可能性が高まっている。もっとも、(1)9月短観においても設備投資に立ち直りの気配が窺われず、(2)個人消費面でも、所得環境の改善が当分期待し難いことを考えると、民間需要が速やかに自律的回復に向かう蓋然性は、引き続き高くないと判断される。

 なお、最近の円高が企業収益に与える影響については、9月短観の想定為替レート(113.58円)からみて、99年度下期の収益は、今後下方修正がありうると思われる。ただ、企業収益全体への悪影響は、(1)海外経済の回復が続く中で、輸出数量はむしろ増加が見込まれること、(2)製品価格の引き上げがある程度可能となっていること、(3)国際分業が進んでいること、(4)円高差益が輸入企業に滞留すること、などを考慮すれば、今次局面では、ある程度減殺されるとみられる。実際に、6月短観から9月短観の回収時点までに、円高がかなり進んでいたにもかかわらず、業況判断が改善したことを踏まえると、企業は、回答時点での円高水準であれば収益の回復基調自体は崩れないとみているようにも思われる。ただ、企業によっては、為替予約により、当面の収益への影響はとりあえず限定的とみているに過ぎない可能性も考えられ、円高が企業収益や企業マインドに及ぼす影響については、引き続き注視していく必要がある。

 物価面については、これまでの原油価格上昇の国内価格への波及が来年春頃まで続く一方で、企業の価格設定行動は「値下げ回避」を強めているように窺われ、円高効果の消費者物価への波及は遅れ気味になる可能性が高い。こうした状況下、国内卸売物価は、当面、概ね横這いで推移すると予想されるほか、消費者物価も、下がりにくい状況が続くと考えられる。このように、物価は全体としてみれば、概ね横這いで推移すると予想される。ただ、やや中期的にみれば、需給ギャップの存在から、物価が再び軟化する潜在的なリスクは残っていると考えられ、こうしたリスクには引き続き注意を払っていく必要がある。

(2)金融情勢

 短期金融市場は、総じて落ち着いて推移している。

 長期金利は、円高の進行を受けてゼロ金利政策の早期解除予想が一段と後退したことなどを背景に、8月下旬以降は軟化傾向を辿り、一時1.6%前後まで低下した。その後は若干戻し、足許では1.7%台となっている。

 株価は、米国株価の軟調や円高の進行を受けて、9月下旬に一時1万6千円台まで下落したが、その後、米国株価の持ち直しや円相場の落ち着きを背景に反発に転じ、足許では1万8千円前後となっている。

 最近の金融市況の注目点としては、以下の3点が挙げられる。

 まず第1に、最近では、円高が急激に進むと、これに伴って株価が下がり、この結果円高にも歯止めがかかるメカニズムが働いているように窺われることである。

 第2に、日本の株価が、米国株価の動向を反映して変動する傾向が、このところ強まっているなど、日本の金融市場が海外要因に敏感になっているように窺われることである。したがって、米国の実体経済や株価の動向などについて、今後は、さらに注意してみていく必要があるように思われる。

 第3に、長期金利と株価が、足許ではいずれも上昇傾向にあり、これを素直に捉えれば、実体経済の改善を反映しているものとも思われる。ただ、この点はもうしばらく市場の動向をみる必要がある。

 金融の量的側面をみると、民間銀行は、基本的には慎重な融資スタンスを維持している。ただ、銀行自身の資金繰りや自己資本面での制約が緩和していることや、経営健全化計画に示された貸出計画への対応もあって、大手行を中心に、融資先の信用力などを見極めつつ、徐々に融資を回復させようとする姿勢にある。

 しかし、資金需要の面をみると、実体経済活動に伴う資金需要が低迷を続けているほか、資金繰り懸念の後退を背景に、企業が手許資金を取り崩して借入金を圧縮する動きもみられている。これらの結果、民間の資金需要は引き続き減退しており、これを反映して、銀行貸出は弱含みで推移しているほか、マネーサプライ(M2+CD)前年比も、+3%台半ばと、伸び率がやや鈍化している。

 この間、社債、CP等の発行は比較的落ち着いた動きとなっている。

III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

(1)景気の現状

 景気の現状については、多くの委員が、前回会合以降に公表された経済指標をみると、下げ止まり傾向が更に明確になっている中で、輸出や生産を中心に、改善傾向を示すものも増えている、との見解を示した。同時に、個人消費や設備投資といった民間需要には、明確な回復の兆しはまだみられていない、との認識も述べた。このため、景気の現状に関する委員の認識は、「下げ止まっており、足許、輸出や生産面には持ち直しの動きがみられる。しかし、民間需要の自律的回復のはっきりとした動きは、依然みられていない」という評価に、ほぼ集約された。ある委員は、こうした状況を「依然明暗入り交じった足踏み状態であるが、ひとつひとつの材料は徐々によい方向に動いている」と表現した。別の複数の委員も、先行きはともかく、景気の現状は「一歩前進」とみてよいのではないか、との見解を示した。

 なお、何人かの委員は、こうした景気の改善傾向の要因としては、アジア経済が予想以上に順調に回復していることが大きいのではないか、との見方を述べた。

 まず公共投資については、多くの委員が、引き続き高い水準で推移しており、年内は需要を下支えするとの見方を示した。

 また、輸出については、多くの委員が、アジア経済の回復などを背景に増加傾向が明らかになっており、企業生産を下支えしている、との見方を示した。一人の委員は、その例として、アジア向けの素材輸出やノックダウン輸出の好調を挙げた。こうした見方を踏まえ、何人かの委員は、公共投資と輸出を合わせた外生需要は、これまでの予想をやや上回って推移している、と述べた。

 この間、住宅投資については、何人かの委員が、趨勢としては頭打ち傾向にあるとの見方を示した。ただ、そのうち一人の委員は、8月の住宅着工がかなり戻していることなどからみて、これが急激に減速していくリスクは、やや低下したのではないか、とも発言した。

 さらに、多くの委員が、外生需要の増加や在庫調整の進捗を反映して、生産が増加していることを指摘した。

 複数の委員は、在庫率が在庫調整をほぼ完了したとみられる水準まで低下していることに着目し、こうした在庫調整の進捗は、景気回復への底固めという意味でポジティブに評価される、と述べた。一人の委員は、現在の状況は、いわば、在庫の重石が取れた中で、外需の増加がそのまま生産の増加に結び付いている、との見解を示した。

 また、多くの委員が、こうした生産の持ち直しや企業のリストラの効果などから、企業の収益や業況感が改善していることを指摘した。

 まず、企業収益については、多くの委員が、9月短観において、99年度の企業収益が、製造業・非製造業ともに増益の計画になっていることなどに言及し、生産の回復やリストラ効果などを反映して、企業収益は全体として改善の方向にある、との見解を示した。

 また、同時に多くの委員は、こうした収益動向などを反映して、企業の業況感が引き続き改善していることも指摘した。

 複数の委員が、9月短観における業況判断D.I.が大幅に回復していることについて言及した。ある委員は、企業の想定レートからみて、9月短観が足許の円高まで十分に織り込んでいるわけではないという留保はあるが、それでも、調査票回収時点までに、かなりの円高が進行していた中で、業況感がかなりの改善をみていることは、良い材料である、と述べた。そのうえで、この委員は、80年代以降、企業がグローバルな生産体制の構築やリストラなど、為替変動への抵抗力を高める努力を続けてきた結果が、こうしたことにも表れているのではないか、とコメントした。

 ただ、設備投資や個人消費といった国内民間需要には、依然として自律的回復の明確な兆しはみられないという点でも、委員の見解は概ね一致した。

 まず、設備投資に関しては、多くの委員が、9月短観において、99年度の設備投資が、引き続き減少の計画となっていることを指摘した。複数の委員は、その他の設備投資関連の経済指標も併せて考えれば、設備投資の減少傾向には歯止めがかかりつつある可能性があるが、設備や債務の過剰感が依然強いため、なかなか本格的な回復にはつながっていきにくい、との見解を示した。この間、別の一人の委員は、98年から99年にかけての設備投資の内訳をみると、電子計算機や通信などの情報化投資はこれまでのところあまり出ていない、と発言した。

 個人消費について、複数の委員が、雇用・所得環境が厳しいもとでは健闘しているといえる、と述べた。このうちの一人の委員は、約半年前の状況と比較すれば、金融システムの安定や株価の堅調などを背景に、消費者マインドはかなり戻ってきている、と指摘した。さらに、この委員は、パソコンやデジタル関連商品、通信関連需要などが好調であることは、成長分野における企業活動を促す要因として働いている面がある、と付け加えた。

 一方、ある委員は、第1、第2四半期はまずまずだったものの、第3四半期に入ってから新車登録台数や百貨店売上高、家電販売等の統計で弱さが窺われるなど不安定であり、回復基調は一服したとみられる、と指摘した。

 結局、多くの委員の認識は、個人消費関連の指標は一進一退の状況を脱しておらず、全体としては回復感に乏しい状態が続いているという点で、概ね一致をみた。ある委員は、個人消費は依然として確たる回復の兆しがみられないまま今は「踊り場」の感がある、と述べた。そのうえで、この委員は、(1)9月の乗用車新車登録台数(軽自動車を含むベース)は前年比プラスとなり、また輸出も好調であるが、自動車メーカーは消費回復にまだ確信が持てておらず、生産計画の上方修正には慎重である、(2)家電販売は前年比プラスが続いているが、内訳をみると、パソコン関連など好調なものと、そうでないものとの二極分化が目立っている、等の事例を紹介した。

 この間、一人の委員は、景気動向指数の D.I.(ディフュージョン・インデックス)やC.I.(コンポジット・インデックス)を用いて分析を試みると、景気は4〜5月に底を打った可能性が高い、と発言した。ただ、同時にこの委員は、景気の上向きの方向感は出てきたが、回復のマグニチュード(量感)はきわめて弱い状況が続いている、という見解を示した。また、同じ委員は、短観等のビジネス・サーベイをみると、大企業と中小企業の二極分化が進んできているとみられる中で、中小企業、特に非製造業については、雇用者数がかなりの減少を示す一方、資金繰り判断、金融機関の貸出態度判断について先行きかなりの悪化を予想するなど、一段と厳しい状況にあると指摘した。

 物価動向について、多くの委員は、需給ギャップは依然として大きく、潜在的な低下圧力は残っているが、少なくとも当面は、現状のような横這い圏内の動きが続くのではないか、との認識を示した。

(2)金融面の動き

 金融面では、各委員から、概ね執行部からの報告と同様の見解が示された。

 ある委員は、最近では金融市場は総じて落ち着いてきているように思われる、と述べた。すなわち、一時みられた急激な円高や株安の動きが収まった後、9月末から10月初にかけて生産や短観など比較的好調な経済指標が公表される中でも、株価や長期金利が急騰したり、円高が進むといった動きはみられなかった、と述べた。そのうえでこの委員は、数か月前までは、金融市場では、実体経済指標の改善に先んじた期待先行的な動きもみられたが、最近では、徐々に市場と経済指標とのバランスがとれてきた印象を受ける、と発言した。

 また、足許で円相場がやや落ち着きを取り戻しているようにみられることについて、何人かの委員が発言した。

 ある委員は、日本の景気に関しては過大な楽観論の修正といった動きが生じている一方で、米国および欧州の経済については、むしろ期待が上方に修正されている模様であり、こうしたことが、足許の為替相場に影響しているようにみられる、と述べた。その上で、市場の見方はしばしば変わり得るので、為替相場の動向や、その背後にある市場の見方については、引き続き注意していく必要がある、とコメントした。

 別の一人の委員は、最近では、円高が進み、この日本経済に及ぼすマイナス・インパクトが懸念されると、今度は株価が下落し、これを受けて円相場も軟化する、といった自動安定化メカニズムが働いているように窺われる、と述べた。

 また、ある委員は、夏頃からの金融市況の動きを全体としてみると、米国の株価が軟調となる局面で円高が進む傾向があるようにもみえ、さらに、ドルは対ユーロでかなり下落していることなども踏まえれば、この間の円高は「ドル安」という側面も強いのではないか、と述べた。そのうえで、この委員を含めた何人かの委員は、最近の「ドル安」傾向の背景には、米国経済が今後もインフレなき拡大を続けていけるのか、さらには、増加傾向にある米国の対外赤字が、今後も円滑にファイナンスされていくのかといった点について、市場がリスクを感じ取っている面があるようにも思われる、と述べた。こうした見方を踏まえ、多くの委員は、米国経済や株価などに対する市場の見方が円ドル相場に及ぼす影響については、十分注意していく必要がある、と述べた。

 この間、ある委員は、円高の過程でみられた、ゼロ金利政策の効果について言及した。この委員は、9月中の円高進行の局面では、円高の進行に伴って、その影響を一部相殺するように、長めのターム物金利や長期金利も低下したことを指摘した。この委員は、ゼロ金利政策の「継続性」について日本銀行がコミットしていることにより、経済にデフレ圧力が生じると、市場が「ゼロ金利政策解除の時期が先に延びる」と予想する結果、長めの金利が低下し、金融緩和効果が強まるというメカニズムが補強されている、との見解を示した。

 また、別のある委員は、最近、長期金利の上昇が一服している面に注目し、この背景として、(1)ヘッジファンドがショートセリングを圧縮しているとみられること、(2)国債の償還期限の多様化、(3)資金運用部による長期国債市中買い入れ継続姿勢、(4)量的緩和期待、の4点を挙げた。

 金融の量的側面について、ある委員は、銀行の貸出態度は徐々に前向きになってきており、貸出スプレッドの引き下げ傾向が広範化しているようにみられ、銀行の融資スタンスは徐々に変わりつつある、と述べたうえで、銀行は、スプレッドよりも量を確保して経営計画を達成する戦略に出ているのではないか、との見方を示した。さらに、資本市場の資金調達環境も良好である、と指摘した。

 そのうえでこの委員は、民間の資金需要は依然として弱いが、資金の供給面は着実に改善されており、いわば、「金融のパイプ」は実体経済を十分サポートし得るものとなっている、と述べた。さらに、(1)実体経済に必要な資金は十分に供給されており、企業の資金確保についての不安は軽減されている、(2)9月中間決算などをみても、金融緩和は金利負担の軽減というルートを通じて企業収益にプラスに作用している、と指摘し、ゼロ金利政策の効果は経済に着実に浸透している、と述べた。

(3)景気の先行き

 多くの委員の認識は、(1)足許の輸出や生産などを中心とする改善の動きが、先行きにもプラスの影響を及ぼしていく可能性がある一方、(2)民間需要の自律的回復のはっきりとした動きは依然みられておらず、(3)さらに、最近の円高の影響も加味すれば、先行きのダウンサイド・リスクには、全体としては大きな変化はない、というものであった。したがって、「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢」には依然として至っていない、という点でも、委員の見解は概ね一致した。

 多くの委員は、輸出や公共投資といった外生需要が、当面は需要を下支えし、これに伴って、生産も横這い圏内で推移することが予想される、と述べた。

 ただ同時に、大方の委員は、民需の回復の兆しがみられないもとでは、現状においてみられる経済の前向きの動きが年明け以降も続いていくかどうかについては、なお不透明感が残る、との見解を示した。

 ある委員は、景気の先行きを展望するに当たっては、足許の生産の回復の動きが、企業収益や所定外給与の増加などを通じて、設備投資や個人消費といった民需の回復に結びついていくかが、一つのポイントであろう、との見方を述べた。こうした生産増加の波及効果という観点から、多くの委員より発言があった。

 何人かの委員は、99年後半の生産は明確に増加となる見通しであり、この面からは景気回復の希望は出てきている、との見解を述べた。このうち一人の委員は、生産がこれだけ明確に増加すれば、所定外給与の増加などを通じて、名目賃金の下落にも歯止めがかかってくることが予想されるし、そうした変化は既に若干みられている、と述べた。

 別の一人の委員も、足許の生産の増加が、波及効果や乗数効果を通じて、先行きの経済にプラスに働く可能性が出てきている、と述べた。ただ、この委員は、経済の抱える構造的な要因のため、こうした乗数効果が大きなものにならないリスクもある、ともコメントした。

 設備投資については、何人かの委員が、9月短観の設備投資計画などからみて、減少テンポは緩やかになってきているが、これが速やかに回復していく展望は持ちにくい、との見解を示した。

 ただ、このうち一人の委員は、(1)各種アンケート調査では、製造業の設備投資が減価償却費を下回る水準まで減少しているなど、既に相当絞り込まれていること、(2)企業は競争激化の中で、生き残りのための情報化投資や環境関連投資などを進めていかざるを得ない状況にあること、(3)生産水準が上昇し、企業収益も改善傾向にあること、(4)企業マインドも改善しており、期待成長率の低下に歯止めがかかってきているように窺われること、といった要因を踏まえれば、設備投資を取り巻く環境は改善している、と述べた。そのうえで、来年度については、設備投資が前年比プラスとなる可能性が高くなっているのではないか、との見方を示した。

 これに対し、別の複数の委員は、企業が依然として過剰設備や過剰債務といった問題を抱えているもとでは、キャッシュ・フローが改善しても、まずは債務の圧縮が優先され、実物投資にはなかなか結びつきにくい、との見方を示した。このうちの一人の委員は、これに加えて、(1)先行きの需要見通しが不透明であること、(2)国際的会計基準の導入(年金債務の計上等)が財務面での負担になること、(3)企業は資本効率を高める経営に取り組んでいること、等を挙げ、設備投資の速やかな回復は期待し難い、と述べた。さらに別の委員も、日本企業の平均的な資本収益率は趨勢的に低下しており、現在は国際比較でみても低い水準となっているため、こうした面からみても、設備投資はなかなか伸びにくい環境にある、との見解を示した。この委員は、設備投資の回復のためには、新しい成長産業の発展が不可欠である、と述べた。

 個人消費について、複数の委員が、消費者マインドが今後も改善を続けていくことは期待しにくい、と述べた。これに対し、一人の委員は、足許の生産の回復が名目賃金の下落に歯止めをかけていく可能性を踏まえれば、個人消費は、今後は、消費性向の増加だけに頼らなくてもよい状況となる可能性がある、と述べた。

 この間、複数の委員は、企業のリストラの動きは、短期的には家計支出の下押し要因となり得るので、これをマクロ経済の前向きの動きに結び付けていくためには、労働市場を流動化し、雇用の活性化を図ることが重要である、とコメントした。このうち一人の委員は、こうした構造改革を上手に進めていくことができれば、米国の「ジョブレス・リカバリー」のような回復パスを展望できるのではないか、と述べた。別の一人の委員は、日本よりも先に成熟経済に入っている欧州各国では、労使間の合意などを通じて、低成長経済のもとでの雇用形態のあり方についての模索が行われてきており、日本でも、今後こうした努力が必要とされる、と発言した。

 また、一人の委員は、最近の個人消費の動向について、(1)経済がストック化する中で、消費が資産ストックのパフォーマンスに依存する度合いが強まっている、(2)生涯所得の低下不安等が構造的に消費マインドを悪化させている、(3)選択的消費のウエイトが高まっている、といった特徴がみられるのではないか、との分析を示した。そのうえで、この委員は、今後、個人消費の回復のためには、新技術・新商品の開発といった企業側の努力に加え、減税・年金問題の解決などによって先行きの不安を取り除くといった、消費マインド回復のための基盤作りが大切であると指摘した。

 次に、110円を超える円高が、先行きの経済に及ぼす影響についても、前回会合に続いて議論が行われた。

 ある委員は、(1)本年7月から9月までの円高進行のテンポは、実質実効為替レートでみて月率4%強と、ニクソン・ショック以来最大級となっており、非常に急激であること、(2)過去のケースをみても、93年から95年の円高は、やはりその後の景気の下押し圧力として働いたとみられること、を踏まえれば、今回の円高も、景気にマイナス・インパクトを及ぼすことは必至である、と述べた。さらにこの委員は、93年からの円高局面では、経済企画庁は同年初夏に景気底入れ宣言を行ったものの11月に訂正をし、また94年9月に回復宣言をしたものの95年9月に訂正せざるを得なかったという例もあるので、円高局面での景気の足取りについては慎重にみていく必要がある、と指摘した。

 一方、別の何人かの委員は、現在、外需の堅調を背景に、むしろ輸出数量は増加しており、この点は、過去、円高が景気の足を引っ張った局面とは異なっている、と述べた。さらに、こうした輸出数量や生産の増加傾向を受け、企業マインドも引き続き改善の方向にあることや、今次局面では輸出価格への転嫁もある程度進んでいることなどを踏まえれば、現在の円高が直ちに景気の足を引っ張るとは言えないのではないか、との見解を示した。

 このうち一人の委員は、このところ株価が総じて堅調に推移していることは、市場もこうした見方を共有していることを示唆するものではないか、と付け加えた。別の一人の委員も、ヒアリング調査などからみて、企業は最近の円高について、過去の円高局面と比べて冷静に受け止めているように窺われる、と述べた。

 もっとも、これらの委員も含め、多くの委員は、ファンダメンタルズから乖離した急激な円高はやはり問題であり、今後、更なる円高が急激に進むことがあれば、景気回復にとってのリスクとなる、との見解を共有した。このうちのある委員は、やっと景気回復へ歩を進めているこの段階での更なる急激な円高は、輸出で支えられている今の日本経済にとって景気の足を引っ張る、と発言した。これらの議論を踏まえ、多くの委員の見解は、為替相場の動向や、これが先行きの経済活動や物価に与える影響については、引き続き注意深く見守っていく必要がある、という点で一致した。

 また、ある委員は、ファンダメンタルズを反映しない行き過ぎた円高には、短期的には介入で対処するしかないが、金融政策を考える上での重要な要因の一つとして、現在のゼロ金利政策の浸透を促すことにより、機動的に対処していくことが必要であると付け加えた。

 また、何人かの委員は、ドルは対ユーロでも下落していることなどからみて、足許の為替相場には、むしろ「ドル安」という面もある、との見解を示した。そのうえで、これらの委員は、その背景となっている米国経済や株価の動向については、それ自体が日本経済に対するリスク・ファクターとなり得るものとして、十分注意していく必要がある、と述べた。この関連で、ある委員は、最近の市場に影響を及ぼしている要因として、日本の財政赤字と米国の対外経常赤字を挙げた。この委員は、このところ金融市場は、これら「2つの赤字」の存在に、徐々に敏感になってきているように窺われ、とりわけ、米国の対外赤字を巡る市場の見方には、十分注意していく必要があると発言した。

 物価動向については、当面は横這いで推移していくと見込まれるが、民間需要の自律的回復の展望が描けていない以上、引き続き、ダウンサイドのリスクを重視していくべきであるとの認識が共有された。

 ある委員は、名目賃金の低下傾向について、2つの相反する側面があることを指摘した。すなわち、第1に、名目賃金の低下が続く中で、物価が総じて底固さを増しているという環境は、企業収益をサポートするものである一方、第2に、名目賃金の低下傾向自体は、先行きの物価下落要因となる、と整理した。そのうえで、この委員は、足許の生産の回復を受け、名目賃金の低下傾向には微妙な変化が生じているようにも思われるので、引き続き、賃金の動向とその影響には留意していきたい、と述べた。

IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 以上のような金融経済情勢を踏まえて、当面の金融政策運営の基本的な考え方が検討された。

 多くの委員の金融経済情勢に関する認識は、景気の現状については改善の動きがみられているが、先行きの見通しについては、前回会合から大きな変化はみられず、物価に対する潜在的な低下圧力は依然として残っている、というものであった。

 こうした金融経済情勢についての判断に基づき、多くの委員は、「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで、現在の思い切った金融緩和を続ける」との考え方にしたがって、当面の金融市場調節方針としては、現在のゼロ金利政策を継続するとともに、豊富で弾力的な資金供給を行い、金融緩和効果のより一層の浸透に努めていくことが適当である、との見解を示した。

 また、現在のゼロ金利政策の内容と狙いを、より明確にアナウンスすべきではないか、との議論が多く行われた。

 一人の委員は、ゼロ金利政策の重要な内容として、以下の2つの点につき、事例を引きつつ言及した。

 まず第一に、9月9日前後や9月末に準備預金需要が高まった際には、日本銀行は積み上2兆円を超える資金供給を行い、レートを安定させてきたが、このように、ゼロ金利政策とは、その時々の状況に応じて、市場の求める資金量を常に上回る豊富な資金を、弾力的に供給していく政策であり、そうしないと、オーバーナイト金利をゼロ近くに維持していくことはできない、と述べた。第二に、9月中、円高に伴って長めの金利が低下したことが示すように、ゼロ金利政策とは、経済や市場の動向に応じて緩和効果が自動調整されるメカニズムを併せ持った、弾力的かつ継続性のある政策だ、とも述べた。

 その上で、この委員は、ゼロ金利政策の重要な内容である以上の2点を、金融市場調節方針においても、より明確に示してはどうか、と主張した。

 別のある委員も、ゼロ金利政策とは、狭義マネー以外の短期金融資産の金利を極力引き下げ、その流動性をできるだけ高める政策であり、その意味では、マネーの外側にあるTBやFBなどの金融資産を、マネーに限りなく近いものとする効果がある、と解説した。したがって、ゼロ金利政策は、膨大なマネー類似の資産を作り出していることになり、マネーサプライなどの量的金融指標の表面的な計数が示す以上に、大規模な量的緩和を推し進めている政策と考えられる、との見解を示した。

 こうした議論を経て、ゼロ金利政策の継続を支持する委員の間では、金融市場調節方針を、現在の政策の内容をより明確に示すようにするべきだ、という意見が大勢となった。

 さらに、多くの委員は、金融調節手段を整備し、ゼロ金利政策が持つ機能を、さらに確実なものとしていくことが適当であると述べた。

 何人かの委員は、オペ対応力の強化といったインフラ整備を一層進めていくことにより、日本銀行が豊富かつ弾力的な資金供給を行う能力に対する市場の信頼が向上し、緩和効果を更に浸透させることができる、と述べた。さらに、こうしたことは、2000年問題を控えて一層意義を増しており、資金供給手段の機能強化を打ち出すタイミングとしてもちょうどよいのではないか、と付け加えた。

 別の一人の委員は、先行きの金融市場を巡るリスクとして、(1)ファンダメンタルズから乖離した急激な円高のリスク、(2)補正予算を巡る思惑などを受け、ファンダメンタルズから乖離して長期金利が上昇するリスク、を挙げた。そのうえで、金融調節手段を整備し、オペの機能を強化することは、ゼロ金利政策の効果を一層浸透させることになり、これらのリスクへの対応力を高めることにつながる、と述べた。そして、具体的な手段として、まずは短期国債のアウトライトオペの導入を提案した。

 これらの議論を経て、本日の会合において、この後予定されている「2000年問題を踏まえた金融市場調節面の対応」に関する質疑・決定に続いて、オペ手段の整備についても討議することとなった。

 なお、以上のほか、当面の金融政策運営を巡る環境や政策手段のあり方についても議論が行われた。

 まず、ある委員は、一部で「日本経済はデフレである」という認識に基づいて、「調整インフレ」といった極端な議論まで行われているが、現在の日本は、調整インフレ的な処方箋を考えるような状況ではない、との見解を述べた。すなわち、最近の企業の価格戦略をみると、(1)収穫逓増産業がシェア拡大のため価格を低めに設定する傾向、(2)情報通信技術などを利用した流通コストの引き下げ、(3)国際分業体制の構築などによるコスト削減、といった動きがみられ、こうした「価格革命」的な動きを「デフレ」の枠組みで捉えることは適当でない、と指摘した。

 さらに、この委員は、米国連邦準備制度が国債の価格支持を止めることについて、財務省との間で締結した1951年の「アコード(合意)」についても言及した。この委員は、アコードが示す、「中央銀行は国債価格支持のための国債購入はしない」という原則は、先進国間で共通の考え方であり、これを踏み越えることはきわめてリスクが大きい、と述べた。

 また、別の委員は、日本銀行はマネーサプライを増加させるために、民間に直接与信すべきである、といった議論があることに言及した。この委員は、中央銀行が、民間銀行と同様あるいはそれ以上に企業の信用リスクを引き受けると、一国の経済運営や通貨に対する信認にどのような影響を与えるのか、包括的展望を欠いたままで議論が行われているのではないか、と発言した。

 ある委員は、為替レートと金融政策の関係についてコメントした。

 この委員は、為替レートの決定要因にはいろいろなものがあるが、内外金利差という観点からは、日本銀行はゼロ金利政策のもとで、金利水準をぎりぎりまで引き下げており、現実的には、金融政策の立場からこれ以上円安に作用するような手法は考えにくい、と述べた。さらにこの委員は、最近、マネーサプライなどの量的金融指標の日米間の比率が、円ドル相場に影響するといった主張も聞かれるが、こうした議論をもとに、一定の為替水準を量的金融指標の増加によって実現しようとすれば、単純計算では、例えばマネーサプライを何十兆円も増やして初めて可能といったことになり、到底フィージビリティのない議論ではないか、とコメントした。

 この間、ゼロ金利政策の継続に反対する、2つの主張もみられた。

 まず、一人の委員は、(1)景気は底固さを増し、先行きについても、民需が自律的回復に向かう蓋然性は高まりつつある、(2)一方で、ゼロ金利政策の長期化に伴い、その副作用も増大している、(3)これ以上ゼロ金利が長期化すると、これを解除する際のリアクションも一層大きくなるため、解除自体が難しくなってしまう、(4)この結果、今後の経済情勢の変化への金融政策対応が後手に回るおそれもある、と述べ、ゼロ金利政策の解除を模索し続けていくべき時である、と主張した。ただ、この委員は、ゼロ金利政策の継続に反対の意思を表明する上で、必ずしも自ら議案を提出する必要はないと思われるので、議案の提出は行わない、とも述べた。

 別の一人の委員は、物価目標付きのマネタリーベース・ターゲッティングを主張した。この委員は、その理由として、(1)日本銀行としての政策目標を、自らCPIの数値という形で設定し、その責任を明らかにしていくべきであること、(2)アカウンタビリティの向上のためには、「デフレ懸念の払拭」といった抽象的な表現ではなく、数値による表現が望ましいこと、(3)量的金融指標の伸びが鈍化していること、(4)景気は4〜5月に底を打って立ち上がってきた可能性が高いが、その足取りは脆弱であるので、ここで量的緩和が必要であること、(5)今後打ち出される第二次補正予算などと同調させて、新たな緩和策を打ち出すべきであること、(6)CPIターゲットについては、人々の期待を安定させ、また、国債の引き受けや買い切りオペ増額の要請といった金融政策への政治的な介入の防波堤となり得る効果があること、などを挙げた。

V.政府からの出席者の発言

 会合の中では、大蔵省からの出席者より、以下のような趣旨の発言があった。

  • 経済はさまざまな政策効果により改善の兆しをみせ始めているが、民間需要の回復力は弱く、景気は厳しい状態を脱していない。このような状況のもとで、政府としては、景気回復に万全を期すため、去る9月28日に公共事業等予備費5,000億円の使用について閣議決定をした。その具体的内容については、事業費ベースで約7,400億円を確保し、また、国の直轄事業の割合を高くするなど、景気浮揚効果や執行面に配慮するとともに、その使途についても、国家的プロジェクトや21世紀の国民生活の発展に不可欠な基盤的インフラ等に限定し、重点化を図ったものとなっている。また、今回の新内閣発足後、総理から、全体の事業規模で10兆円を上回る総合的な経済対策を11月上、中旬を目途に策定する旨の発言があった。さらに総理からは、景気の本格的回復と新たな発展基盤の確立を目指すために、平成11年度第二次補正予算について早急に準備するよう、指示があったところである。
  • 最近の金融資本市場の動向を踏まえて若干申し述べると、去る9月25日のG7の声明において、日本経済および世界経済に対する円高の潜在的な影響についての日本の懸念を共有するとされたところであるが、急激な円高の進行は、景気の先行きに対する不透明感を高めることなどにより、ようやく最悪期を脱して改善の兆しを見せ始めている日本経済に、甚大な悪影響を及ぼすおそれがある。また、第二次補正予算の編成に伴う国債市場の動向等も十分注視していく必要があると考えている。日本銀行におかれても、先般のG7の機会に総裁が表明されたように、ゼロ金利政策の効果浸透をより確実なものとする観点から、金融調節手段の拡充についても検討されているところと伺っているが、金融政策運営に当たり、市場の動向にも十分に配慮頂き、適切な対応をとるようお願い致したいと考えている。

 また、経済企画庁からの出席者からも、以下のような趣旨の発言があった。

  • 経済動向は、民間需要の回復力は弱く、厳しい状況をなお脱していないが、各種の政策効果の浸透などによって緩やかな改善が続いているとみている。政府においては、公需から民需へ円滑にバトンタッチが行われ、景気の腰折れを招くことなく本格的な回復軌道につなげていくため、中小ベンチャー企業対策やミレニアムプロジェクト等の政策を含めて、今後わが国の経済運営の指針となる総合的な経済対策を11月上旬、もしくは中旬を目途に策定し、平成11年度第二次補正予算を編成する方針である。
  • 日本銀行におかれては、金融政策手段の多様化を進めるという観点から、調節手段の拡充について検討頂いていると聞いているが、自律的な経済回復が明らかになるまで、為替変動の影響も配慮しつつ、金融経済情勢に応じて、適切な金融調節の手法により、潤沢な資金供給を行うと共に、調節手段の拡充等を含め、より効果的な資金供給を行って頂きたい。

VI.採決

 多くの委員の認識をあらためて総括すると、(1)景気は下げ止まっており、足許、輸出や生産面には持ち直しの動きがみられる、(2)金融環境は改善している、(3)物価も、当面横這いで推移していくものとみられる、(4)ただ、先行き、民間需要が自律的に回復していく展望はまだ持ち得ていない、(5)また、円高が景気や物価に与える影響についても注意深く見極めていく必要がある、(6)したがって、物価に対する潜在的な低下圧力は依然として残っており、「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢」には至っていない、というものであった。

 こうした認識を踏まえ、会合では、(1)現在のゼロ金利政策を継続していくべきである、(2)また、金融市場調節方針については、現在の政策意図をより明確に反映させたものとすべきである、という意見が大勢を占めた。

 ただし、一人の委員からは、CPI(消費者物価指数)の上昇率およびマネタリーベースに数値目標を設定することが適当である、との考えが示された。

 この結果、次の2つの議案が採決に付されることとなった。

 中原委員からは、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「中期的目標として2001年10〜12月期平均のCPI(除く生鮮)の前年同期比が0.5〜2.0%となることを企図して、今積み期間(10月16日〜11月15日)の超過準備額を前積み期間対比で平残ベース5,000億円程度増額し、その後も継続的に超過準備額を増加させることにより、2000年1〜3月期のマネタリーベース(平残)が前年同期比で10%程度に上昇するよう量的緩和(マネタリーベースの拡大)を図る(注2)。なお、無担保コールレート(オーバーナイト物)が大幅に上昇する等金融市場が不安定化した場合には、上記マネタリーベースの目標等にかかわらず、一層の量的拡大を図る。」との議案が提出された。

 採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対7)。

 議長からは、会合における多数意見をとりまとめるかたちで、以下の議案が提出された。議長は、補足的な説明として、これまでの金融市場調節方針の表現について、2月のゼロ金利政策決定当時には妥当であったが、現在では不自然となった部分(「短期金融市場に混乱の生じないよう、その機能の維持に十分配意しつつ」、「当初0.15%を目指し」等)を削除し、さらに、多くの委員から指摘のあった、「豊富で弾力的な資金供給」という点を明らかにしたものである、と述べた。

議案(議長案)

 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添のとおり公表すること。

 豊富で弾力的な資金供給を行い、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、できるだけ低めに推移するよう促す。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、武富委員、三木委員、植田委員
  • 反対:中原委員、篠塚委員

──中原委員は、(1)ゼロ金利政策は長引けば長引くほど「低金利、デフレ傾向の持続、円高傾向」となりやすく、特に名目金利を無理やりゼロに抑え込もうとする限りデフレ傾向が持続すること、(2)ゼロ金利政策の効果はすでに十分に浸透し、効果が出尽くしていると思われること、(3)資金供給手段の多様化を図っても、積み上幅が変わらない以上、これが何らかの効果を持つとは思えないこと、(4)日銀の独立性という観点から、今後、国債引き受けや買い切りオペの増額といった政治的圧力をかわすためにも、インフレ・ターゲットを設けるべきであること、(5)市場との対話という観点からは、積み上幅が固定している現行ゼロ金利政策よりは、量的指標を弾力的に動かせる量的緩和の方がよいと思われること、を理由に、上記採決において反対した。

──篠塚委員は、(1)景気は底固さを増し、先行きについても、国内民需が自律的回復に向かう蓋然性は高まりつつあると考えられ、ゼロ金利政策の解除を通じた正常な政策金利への復帰を展望できる情勢になってきていると思われること、(2)ゼロ金利政策が長期化するほど、経済主体がこれを織り込んだリスク・テイク的行動をとる傾向が強まっており、これ以上ゼロ金利政策を続けていくと、その副作用や、これを解除する困難さがさらに増していくと考えられること、(3)この結果、今後の経済情勢の変化への政策対応が後手に回ってしまうおそれがあること、を理由に挙げ、上記採決において反対した。

  1. 2「マネタリーベースについて2000年1〜3月期平残で前年同期比10%の伸びを実現するためには、現状程度の銀行券の伸び(前年同月比6%程度)が続くことを前提とすると、来年3月までに買いオペ等の拡大により現状比3兆円程度準備預金の残高を増額させる必要がある。」

VII.コンピューター2000年問題を踏まえた金融市場調節面の対応

1.執行部からの提案内容

 最近の金融市場は、ゼロ金利政策の継続の下で、全体としては引き続き概ね落ち着いた推移となっている。

 ただ、3か月物の金利は、9月29日以降、いわゆる「2000年プレミアム」が上乗せされたかたちで上昇しているほか、レポ市場でも、特定銘柄の国債の年末越え取引についてプレミアムが観察されている。また、資金市場と国債市場の両方で、今後年末にかけて、流動性の低下を懸念する声が強まっているほか、金融機関の年末越え資金調達の本格化を受けて、金利が振れやすくなるリスクがある。市場関係者からは、日本銀行がコンピューター2000年対応としての流動性供給方針を打ち出さないと、年末越えの資金繰りや担保調達計画が過度に保守的、防衛的になるおそれがある、との指摘も聞かれる。

 また、資金需給の見通しについては、例年、年末にかけては銀行券の増発や法人税の納付などから、資金不足幅が大きく拡大するが、本年は国債発行額やFBの市中発行額が大幅に増加する見通しであることに加え、コンピューター2000年問題に起因する資金需要もあり、例年を大きく上回る資金不足が発生する見込みである。現在の資金供給能力から考えて、こうした規模の資金供給を行うためには、2か月近くを見込む必要がある。さらに、年内の資金不足にも適宜対応していく必要があることを考えると、調節技術的な面からも、そろそろ年末越えの資金供給を開始することが必要な時期に来ていると考えられる。

2.委員による検討・採決

 執行部の説明を受け、委員は、こうした市場動向や調節技術面の必要性を考慮すれば、コンピューター2000年問題を踏まえた、日本銀行としての金融市場調節面での対応方針を、このタイミングで打ち出すことが適当であるとの結論に達した。こうした認識に基づき、議長は、以下の議案を提出した。

議案(議長案)

  1. コンピューター2000年問題に関する金融市場調節面の対応を、以下のとおりとすること。
    金融市場調節を行うに当たっては、年末越え資金を豊富に供給するなど、コンピューター2000年問題に伴う資金需要の変動に十分配慮し、弾力的な対応を行う。
  2. 対外公表文は、総裁が定めること。

 この議長案について採決が行われ、全員一致で可決された。

 なお対外公表文については、議長は、ここで決定された金融市場調節面の対応と、貸出運営面の対応とを併せて公表する方針を説明した(対外公表文は別添2。参照)

VIII.金融市場調節手段の整備について

 議長が、(1)9月21日の会合において、ゼロ金利政策の一層の効果浸透に努めるという観点も踏まえ、金融調節手段の整備について早急に検討を進めるよう、執行部に対して指示を行ったこと、(2)本日の検討においても、金融調節手段の整備を行うべきであるとの見解が多くの委員から聞かれたこと、を踏まえ、執行部に対し、金融調節手段の整備に関する検討状況につき、説明を求めた。

 これに応えるかたちで、執行部から次のような説明が行われた。

 執行部として検討中のものは、第一に金融市場調節手段の整備、第二に年末越えのオペの実施の工夫である。

 金融市場調節手段の整備としては、まず、短期国債(FB、TB)のアウトライト(売戻条件または買戻条件を付さない売買)オペを導入することが考えられる。短期国債の市場残高は、9月末時点で合計36兆円強となっており、今後も一段と増えていくと予想される。現在行われている現先方式に加え、アウトライト方式のオペが可能になれば、コンピューター2000年問題のケースのように、短期的に多くの流動性供給が必要となる場合にも、日本銀行として対応がより容易になると考えられる。

 また、現行制度の下で、本日からでも実施可能な措置として、レポオペ対象国債を拡大することが考えられる。具体的には、レポオペの対象国債(従来は4年、6年、10年、20年物)に、新たに2年債を加えることを考えている。

 次に、年末越え資金需要に対応したオペの運用面での工夫が2つある。まず第1点は、コンピューター2000年問題に伴う資金需要の変動にも十分配慮し、弾力的に資金供給を行うため、国債のみならず民間債務を対象とするオペ手段もフルに活用していくことを考えている。このため、金融機関等に対しては、手形買入オペ適格担保の事前持ち込みや、社債等担保オペでの根担保差し入れ、CPのオペ適格審査への持込み等、所要の準備を早期かつ積極的に行うよう呼びかけていく予定である。

 2点目としては、年末越え資金の円滑な供給に資する観点から、年末までの措置として、レポオペ、CPオペにおける輪番オファー先に対しても、毎回オファーを行うことにより、オファー先数を一時的に引き上げることを考えている。

 なお、このうち短期国債のアウトライトオペの導入に関しては、金融政策決定会合で決定する必要がある。それ以外の措置は、現在の制度のもとで実施可能であり、適宜開始していく予定である。

2.委員による検討・採決

 執行部の説明を受け、委員は、これらの措置を導入することが有益であるとの見解を共有した。議長は、短期国債のアウトライトオペの導入については金融政策決定会合で決定する必要があることに鑑み、以下の議案を提出した。

議案(議長案)

  1. 「ゼロ金利政策」の継続に当たり、金融市場調節手段の機能強化を進めるとともに、その弾力的な活用を図ることにより、金融・為替市場の動向も注視しつつ、金融緩和効果の一層の浸透に努めていくこと。
  2. 短期国債(FB・TB)を対象としたオペレーションに関し、現先方式(条件付売買)に加え、アウトライト方式のオペレーション(無条件売買)を導入することとし、次回会合において、その基本要領を決定すること。
  3. 本件に関する対外公表文は、上記方針に基づくその他の事項も含め、総裁が定めること。

 この議長案に対し、大方の委員が賛意を示した。

 ただ、ある委員は、オペ手段の整備には賛成であるが、こうしたインフラ整備は、本来、当面の金融政策運営方針とは切り離して、独立して検討されるべきものではないか、と述べた。そのうえで、議長案は、「『ゼロ金利政策』の継続に当たり、金融市場調節手段の機能強化を進める」として、この課題をゼロ金利政策の浸透に強く関連付けており、この点は適当とは思われない、と発言した。ただし、この委員は、オペ手段の整備は、金融市場にとって必要な対応であるため、本提案はあくまで恒久的な措置であるとの理解に重点を置いて、議長案に賛成する、と述べた。

 一方、別の一人の委員は、この委員と同様の見解を述べつつ、議長案には反対する、と述べた。すなわち、この委員も、調節手段の機能強化には賛成だが、ゼロ金利政策の継続には反対の立場をとっている以上、議長案にも反対せざるを得ない、と述べた。

 これらの見解に対して、複数の委員は、オペ手段の機能強化自体は、恒久的な措置であるが、現在市場が関心を持っているのは、金融緩和の効果の浸透とコンピューター2000年問題も含めた年末の資金繰りであるので、議長案の表現は、現下の情勢を踏まえれば適当なものではないか、との見解を述べた。

採決の結果

  • 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、武富委員、三木委員、篠塚委員、植田委員
  • 反対:中原委員

──中原委員は、(1)短期国債のアウトライトオペの導入には賛成である、(2)しかし、議長案は、これを「ゼロ金利政策」と関連付ける書き方となっており、ゼロ金利政策の継続に反対する立場からは、これに反対せざるを得ない、と述べて、上記採決において反対した。

 なお対外公表文について、議長は、ここで決定された短期国債のアウトライトオペの導入と、その他の対応とを併せた内容のものを執行部で作成し、公表する方針を説明した(対外公表文は別添3)。さらに、本日、対外公表する案件が、(1)ゼロ金利政策の継続について定めた金融市場調節方針、(2)コンピューター2000年問題対応、(3)金融市場調節手段の機能強化策、と3種類あることも踏まえ、会合終了後、議長から記者会見を行って、決定内容とその考え方などについて説明することとしたい、と述べた。これに対し、他の委員も賛意を示した。

IX.金融経済月報「基本的見解」の検討

 当月の金融経済月報(アイボリーペーパー)に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が全員一致で決定され、それを掲載した金融経済月報を10月15日に公表することとされた。

以上


(別添1)
平成11年10月13日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、当面の金融政策運営について、「ゼロ金利政策」を継続することにより、金融緩和効果の浸透に努めていくことを決定した(賛成多数)。

 すなわち、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりである。 豊富で弾力的な資金供給を行い、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、できるだけ低めに推移するよう促す。

以上


(別添2)
平成11年10月13日
日本銀行

コンピューター2000年問題を踏まえた金融市場調節及び貸出運営の対応について

(金融市場調節)

1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、コンピューター2000年問題を踏まえた金融市場調節面の対応について、以下のとおりとすることを決定した。「金融市場調節を行うに当たっては、年末越え資金を豊富に供給するなど、コンピューター2000年問題に伴う資金需要の変動に十分配慮し、弾力的な対応を行う。」

(貸出運営)

2.コンピューター2000年問題に関連する個別金融機関の流動性問題への対応については、各金融機関の自助努力が大前提であるが、仮に一時的な流動性不足が生じた場合、日本銀行としては、当該金融機関の健全性、担保の状況等を勘案しつつ、貸出運営面で適時適切に対応していく方針である。

 なお、本件に関連して、貸出取引先から事前に据置担保の差し入れの申出があった場合には、これを受け入れていく方針である。各貸出取引先においては、年末年始の資金繰り予想や市場取引担保などの状況をも勘案しつつ、日本銀行への据置担保の差し入れの要否および差し入れ額等について検討のうえ、必要があれば速やかに申し出ていただきたい。

 日本銀行がこれまで繰り返し発表してきたように、コンピューター2000年問題へのわが国金融界の対応は順調に進展している。本問題に関連する個別金融機関の流動性問題への対応についても、貸出面で既存の枠組みを活用しつつ、以上のような措置を講ずることによって、より万全なものとすることができると考えている。

以上


(別添3)
平成11年10月13日
日本銀行

金融市場調節手段の機能強化について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、「ゼロ金利政策」の継続に当たり、金融市場調節手段の機能強化を進めるとともに、その弾力的な活用を図ることにより、金融・為替市場の動向も注視しつつ、金融緩和効果の一層の浸透に努めていくことを決定した。こうした方針のもとで、今般、以下の諸措置を講ずることとした。日本銀行としては、今後とも、金融市場調節手段の機能強化に努めていく方針である。

1. 金融市場調節手段の整備
  1. (1)短期国債アウトライトオペの導入
    短期国債(FB・TB)を対象としたオペレーションに関し、現先方式(条件付売買)に加え、アウトライト方式のオペレーション(無条件売買)を導入することとし、次回決定会合において、その基本要領を決定する。
  2. (2)レポオペ対象国債の拡大
    レポオペによる資金供給力を強化するため、レポオペの対象国債に2年債を追加し、本日より実施することとする。
2. 年末越え資金需要に対応した弾力的なオペの実施
  1. (1)各種オペ手段を活用した年末越え資金の供給
    本年の年末越え資金供給に当たっては、コンピューター2000年問題に伴う資金需要の変動にも十分配慮し、弾力的な対応を行うため、国債のみならず、民間債務を対象とするオペ手段もフルに活用していくこととする。
    このため、金融機関等においては、手形買入オペ適格担保の事前持ち込み、社債等担保手形オペの根担保差入れ、CPオペ適格審査等、所要の準備を早期かつ積極的に行っていただきたい。
  2. (2)オペのオファー先数の拡大
    年末越え資金の円滑な供給に資する観点から、年末までの措置として、レポオペ、CPオペにおける輪番オファー先に対しても、毎回オファーを行うこととする。

以上