金融政策決定会合議事要旨
(2000年10月13日開催分)*
- 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2000年11月17日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。
2000年11月22日
日本銀行
開催要領
- 1.開催日時
- 2000年10月13日(9:00~12:27、13:15~15:32)
- 2.場所
- 日本銀行本店
- 3.出席委員
-
- 議長 速水 優(総裁)
- 藤原作弥(副総裁)
- 山口泰(副総裁)
- 武富将(審議委員)
- 三木利夫(審議委員)
- 中原伸之(審議委員)
- 篠塚英子(審議委員)
- 植田和男(審議委員)
- 田谷禎三(審議委員)
- 4.政府からの出席者
-
- 大蔵省 村田吉隆 総括政務次官( 9:00~11:38)
原口恒和 大臣官房総務審議官(11:38~15:32) - 経済企画庁 河出英治 調整局長(9:00~12:17)
薦田隆成 調整局審議官(13:15~15:32)
(執行部からの報告者)
- 理事松島正之
- 理事増渕 稔
- 理事永田俊一
- 企画室審議役白川方明
- 企画室参事役鮫島正大(9:00~9:32)
- 企画室企画第1課長雨宮正佳
- 金融市場局長山下 泉
- 調査統計局長村山昇作
- 調査統計局企画役吉田知生
(事務局)
- 政策委員会室長横田 格
- 政策委員会室審議役村山俊晴
- 政策委員会室調査役飛田正太郎
- 企画室企画第2課長田中洋樹(9:00~9:32)
- 企画室調査役山岡浩巳
- 企画室調査役内田眞一
- 金融市場局調査役岩崎 淳(9:00~9:32)
- 大蔵省 村田吉隆 総括政務次官( 9:00~11:38)
I.議事要旨の承認
前回会合(9月14日)の議事要旨が、全員一致で承認され、10月18日に公表することとされた。
II.「『適格担保取扱基本要領』の制定等」および「『手形買入基本要領』の一部改正等」に関する決定
1.執行部からの提案内容
(1)『適格担保取扱基本要領』の制定等
来年初のRTGS化(即時グロス決済化)、与信・担保システムの稼働開始を機に、日本銀行が金融調節として行う与信について、(1)現在与信形態ごとに区々となっている担保の種類、担保価格や担保の適格基準を統一するとともに、(2)適格担保に関する基本的考え方等を対外的に明確にすることによって、担保取扱いの適切かつ効率的な運営を確保し、その事務手続の一層の明確化を図る趣旨から、『適格担保取扱基本要領』の制定等を行いたい。
また、今回の担保体系の見直しとあわせて、現在担保種類毎に二本建てになっている公定歩合体系を一本化するほか、準商業手形等、特定の形態の取引を裏付けとする手形を貸出政策上優遇している制度金融については、廃止を含めて整理していくこととしたい。
(2)『手形買入基本要領』の一部改正等
今般、RTGS化の実施に向けて、去る4月27日の会合において決定された『手形買入および手形売出の見直しに関する基本方針』に沿って、(1)手形売買の短資経由方式の廃止、(2)買入手形担保の根担保化、(3)手形買入(全店買入)の導入、(4)社債等担保手形買入の手形買入への統合、といった措置を講ずることとし、そのため、『手形買入基本要領』の一部改正等を行うこととしたい。
2.委員による検討・採決
採決の結果、上記執行部提案が全員一致で決定され、適宜の方法で公表することとされた。
III.「『物価の安定』についての考え方」および「『経済・物価の将来展望とリスク評価』の公表について」に関する決定
1.委員による検討
「『物価の安定』についての考え方」および「『経済・物価の将来展望とリスク評価』の公表について」に関し、執行部から概要を説明した後、委員会としての討議に入った。
大方の委員から、これまでの政策委員による11回に及ぶ検討会の成果が適切にまとめられているとして、現時点では、もっとも適当な結論が得られた、との意見が表明された。
ひとりの委員は、この仕組みを通して、金融政策を巡る日本銀行内外の議論がより分析的になり、金融政策運営の透明性の向上に資することが期待されると述べた。また、別の委員も、現在の決定会合における短期的な定点観測に加え、より長い将来展望やリスクに関する委員のイメージが明らかになることは、市場の期待の安定化につながる、との見方を示した。同時に、何人かの委員が、一般の関心は「見通し計数」のみに集まる可能性があるが、大事なことは、見通しの数字そのものというよりも、こうした枠組みの全体を通じて、将来の経済や物価に関するリスク評価を示していくことである、と述べた。このため、見通し計数の持つ限界や制約、金融政策運営上の位置づけなどを、十分説明していくことが重要である、との見解が多く示された。
そのうえで、いくつかの論点について議論され、多くの委員から、物価の安定にかかる諸問題については今後とも検討を継続していくことが重要である、との認識が示された。
まず、「『物価の安定』についての考え方」(以下、報告書)に関しては、主として「物価の安定」の数値化を巡る問題について議論された。複数の委員は、物価指数の上方バイアスや名目金利のゼロ制約の問題などから、中長期的に目指すべき物価指数の上昇率は、若干のプラス(small but positive)が望ましいとの見方を示した。ただ、これらの委員も含め、多くの委員は、(1)現在の日本経済には、技術革新など供給サイドの要因が物価低下圧力として働いていること、(2)オーソドックスな金融政策手段の発動余地が限られていること、などを踏まえると、現段階で「物価の安定」の定義を数値化することは適当でないという報告書の結論を確認した。同時に、数値化の問題については、現実の金融・経済情勢の変化を踏まえ、引き続き研究を深めていくことが重要である、との見方で一致した。
何人かの委員は、今後の検討課題について具体的に言及した。ひとりの委員は、(1)日本銀行の目的には、物価の安定のみではなく、金融システムの安定も含まれているが、バブル期のように物価は安定していても金融システム面で問題が生じるようなケースもある、(2)この両者の関係はまだ十分結論が得られていない問題であり、さらなる研究が必要な分野である、と述べた。また、別の委員は、供給サイドの要因による物価低下圧力が続く限り数値化はできないのか、この点はさらに検討したい、とコメントした。もうひとりの委員は、(1)物価情勢を検討するうえで不可欠な供給サイドのデータを改善するにはどうすればよいか、(2)インフレーション・ターゲティング採用国で、今後、技術革新が物価指数の作成を益々困難にするという問題や、資産価格の重要性が増しつつあるという問題をどのように取り扱っていくのか、といった課題を指摘した。
この間、ある委員は、(1)「物価の安定」の定義については、構造変化・バイアスの問題に加え、現状日本経済が外的要因に作用されやすい局面にあることから、数値化に限界があり、今後の検討課題として、今は定性的な概念定義を示すことにとどめたい、(2)ただ、今回の検討が「金融政策の目標がはっきりしない」という世間の批判に応えて、物価安定の意義という原点論議を行ったうえで数値化を議論してきたという経緯を踏まえると、今後に検討課題を残したという意味では、あくまでやむを得ない結論であることを強調したい、とコメントした。
以上に対して、ひとりの委員は、日本銀行として「物価の安定」についての考え方を公表することを評価しつつも、数値目標を直ちに設定すべきであるとして、報告書の内容に反対の意見を表明した。すなわち、(1)目標を数値化しないかぎり、実績の自己評価ができず、国民に対して、中央銀行としての説明責任を果たすこともできない、(2)構造変化に合わせて目標を変えることは当然であり、そうした仕組みを用意すればインフレーション・ターゲティングの導入は十分可能である、(3)ECB(欧州中央銀行)が「2%を下回る」という物価安定の定義を示しているほか、英国、ニュージーランドなど他の一部先進国でもインフレーション・ターゲティングを採用している中で、日本が物価目標を持たないことについて、国民の納得できる掘り下げた説明がない、と述べた。
「経済・物価の将来展望とリスク評価」の公表については、まず、「政策委員の見通し」の対象期間について、いくつかの意見が出された。何人かの委員は、金融政策が効果を発揮するのに1~2年程度のラグが存在することや、フォワード・ルッキングな金融政策運営の重要性を踏まえれば、対象期間はもう少し長い方が望ましい、と述べた。そのうえで、一般の受け止め方や市場の反応などを確認する意味から、今回は今年度見通しとすることで良いが、今後、弾力的に再検討していくべきである、との見方を示した。また、別の委員も、見通しの期間や公表方法、「経済・物価の将来展望とリスク評価」の記述内容といった細目についてはある程度弾力性を持っておくことが必要である、とコメントした。
ひとりの委員は、見通しの公表は前向きの一歩であると評価しつつ、執行部の見通しを、政策委員会で議決するかたちで、公表すべきである、と主張した。
これに対し、複数の委員が、委員の見通しを集計する方法を支持する見解を述べた。すなわち、ある委員は、(1)政策委員会は、9人の委員が、それぞれの異なる見方に基づいて議論し、最終的に多数決で金融政策運営の方針を決定する仕組みである、(2)したがって、委員の見方そのものを議決という形で一本化することはできない、(3)むしろ、委員の見方を「幅」の形で示すことに情報価値があると考えられる、(4)世間のニーズも議決権を持つ委員の見方にある、と述べた。もうひとりの委員も、各委員がそれぞれの見通しに基づき議論を展開することが望ましく、今回の仕組みはそうした議論をより分かりやすくするものである、と評価した。こうした意見を受けて、別のひとりの委員は、物価見通しについては、委員の議論の結果を踏まえたうえで、「経済・物価の将来展望とリスク評価」に含め、これを議案として、決定会合で議決・公表することとしたい、と述べた。
2.政府からの出席者の発言
経済企画庁からの出席者より、以下のような趣旨の発言があった。
- 今回、政策委員会が重要な経済指標の見通しを公表されることは、政策決定の透明性を高める観点から基本的に好ましいことと考えている。政府は、中長期的な経済の展望や政府経済見通しを閣議決定のうえ公表しているが、今回の決定を踏まえて、今後日本銀行と十分な意思疎通を図って参りたい。
また、大蔵省からの出席者より、以下のような趣旨の発言があった。
- 今般、日本銀行が、「物価の安定」についての考え方を包括的に整理して公表することについては、金融政策運営の透明性向上の観点から評価できるものと考えている。今後これを契機として「物価の安定」について様々な角度から論議が深まっていくことを期待している。
3.採決
採決の結果、「『物価の安定』についての考え方」および「『経済・物価の将来展望とリスク評価』の公表について」が、それぞれ賛成多数で可決され、同日公表することとされた。
採決の結果
- 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、武富委員、三木委員、篠塚委員、植田委員、田谷委員
- 反対:中原委員
中原委員は、(1)日本銀行が「物価の安定」に責任を有していること、また、コーポレート・ガバナンスの観点から、数値をもって、目標と業績の自己評価を示すべきであること、(2)特に日本経済がデフレから脱却しようとしているときにおいては、具体的な物価目標を掲げる必要があること、(3)数値目標の設定は、政治との微妙な関係において調整手段となりうること、(4)わが国の90年代の趨勢的物価下落は金融緩和が不十分であったためという意見が特に海外で強いこと、(5)報告書は定量的な推計もなく技術革新の影響を強調しすぎていること、などを理由に、「『物価の安定』についての考え方」に反対した。
また、「経済・物価の将来展望とリスク評価」の公表に対しては、(1)予測作業を行う多数のスタッフを擁している執行部の見通しを委員会として審議・決定したうえで公表すべきであること、(2)各政策委員の見通しを作成するためには、それぞれの委員にスタッフの増強が必要であること、(3)四半期毎のパス、モデルの概要、推計方法も含めて公表すべきであること、などを理由に挙げて、反対した。
IV.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要
1.最近の金融市場調節の運営実績
金融市場調節については、前回の会合(9月14日)で決定された金融市場調節方針1にしたがって運営した。この結果、オーバーナイト金利は、概ね0.25%で安定的に推移している。
- 「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す。」
2.金融・為替市場動向
国内金融市場では、長短金利、クレジット・スプレッドなどが、総じて落ち着いた動きとなった一方、株価が大幅に下落した。
株価下落の背景としては、(1)米国ハイテク企業の業績下方修正などを受けたNASDAQの下落、(2)千代田生命の更生特例法適用申請の影響、(3)NTT株の政府保有分の売り出し等の発表を受けた需給悪化懸念、などが挙げられている。ただ、わが国の景況感が改善していることや、大量満期を迎える郵便貯金からの資金流入への期待感があることなどから、下値は固く、NASDAQの下落や、中東情勢の緊迫などの悪材料が消化されれば、年末にかけて緩やかに値を戻すという見方が、今のところやや優勢である。
ターム物金利は、年初からのRTGS化が意識されていることもあって、年末を越える期間でやや強含んでいる。もっとも、資金の出し手、取り手とも、なお金利観を探っている状態である。日本銀行は、市場の安定的な地合いを維持するため、10月10日から年末越えの資金供給を開始した。
為替市場では、ユーロが、9月中旬まで既往最安値を更新する展開となったが、G7諸国による協調介入実施により、反発した。その後、デンマークのユーロ不参加への思惑やECBの利上げによる景気悪化懸念などから、やや軟調な地合いとなっている。現在の小康状態は、介入警戒感に支えられている部分もあり、引き続き注視していく必要がある。
3.海外金融経済情勢
米国景気は、情報技術(IT)関連の設備投資を中心に、内需主導の高成長を続けている。もっとも、住宅投資や耐久財消費などの家計支出には鈍化がみられ、減速の兆しが窺われる。この間、物価面では、生産者・消費者物価とも落ち着いた動きとなっている。こうした状況下、FOMC(連邦公開市場委員会)は、10月3日、6月以来3回連続でFF金利誘導目標の据え置きを決定したが、引き続きインフレ・リスクを注視していく方針をあわせて表明した。
ユーロエリアの景気は、内外需とも拡大を続けているが、夏場以降、弱めの景気指標が散見され始めている。一方、物価は、生産者・消費者物価とも、原油高やユーロ安の影響もあって、引き続きジリ高傾向を辿っている。こうした中、ECBは、10月5日の政策理事会で、0.25%の利上げを決定した。
NIEs、ASEAN諸国では、米国、日本等へのIT関連財の輸出が依然として好調を持続しているほか、個人消費、設備投資でも持ち直しの動きが続いている。また、物価面では、内需の好調持続ないし持ち直しに伴う需給の引き締まりに加え、原油高もあって、消費者物価上昇率が緩やかながら高まりつつある。
この間、金融資本市場では、世界的に株価が軟調に推移している。欧米においては、政策的な対応余地もあり、直ちに世界経済の大きな減速をもたらすものとは考えられないが、潜在的なリスク要因として、念頭に置いておく必要がある。
4.国内金融経済情勢
(1)実体経済
わが国の景気は、企業収益が改善する中で、設備投資の増加が続くなど、緩やかに回復していると考えられる。すなわち、外生需要面では、公共投資は減少しつつあるが、純輸出は、増加傾向を辿っている。民間需要面では、設備投資が増加を続けている一方、個人消費はなお回復感に乏しい展開が続いている。住宅投資も横這い圏内で推移している。こうした最終需要の下で、生産は増加を続けている。企業の業況感も全般に改善をみており、企業部門を起点とする所得と支出の前向きな循環が続いている。家計の所得環境は引き続き厳しい状況にあるが、企業の賞与削減の動きが一巡した中で、所定内・所定外給与が増加しており、先行き緩やかながらも改善に向かう下地は整ったものとみられる。物価面では大きな変化はない。
当面の景気を展望する上では、製造業において設備投資計画の上方修正が続いていることや、補正予算の編成に伴い財政支出の大幅な減少が回避される見通しとなったことがプラス材料である。一方、以下のようにやや気がかりな点もあるが、当面、緩やかな回復が続く可能性が高いと考えられる。
第1に、原油価格の高止まりである。先進国を中心に石油消費の節約が進んでいることをも勘案すると、現状程度の原油高が直ちに世界経済の失速をもたらすとは考えにくい。特にわが国の場合には、既往の円高や規制緩和に伴う電力料金の値下げ等がクッションとなることから、企業収益全体への影響は拡がりを持ちにくいとみられる。ただし、原油高が消費国におけるインフレ期待を触発し、金融引締め等の強力な総需要抑制策が採られる場合には、世界景気が大幅に減速するリスクもあるので、引き続き、注意してみていく必要がある。
第2に、鉄鋼等素材産業の一部では、目先アジア向けの生産・輸出を絞る動きがみられる。ただ、鉄鋼については、アジア諸国の景気回復に伴う在庫復元の動きが一巡したことによる一過性の輸出の調整であると考えられる。
第3に、9月短観では、中小非製造業の2000年度設備投資が異例の下方修正となった。ただ、(1)中小非製造業の業況判断や設備判断は緩やかな改善傾向が続いていること、(2)他機関の設備投資調査では必ずしも中小非製造業の設備投資に陰りがみられる訳ではないこと、(3)雇用判断や新規求人の動きからみて、中小企業においても繁忙感は強まっているとみられること、等を考えると、今回の短観の結果のみで中小非製造業の設備投資の基調を判断するのは難しい。今後、機械受注・建築着工等の先行指標やリース統計の動きなどもあわせて判断していく必要がある。
(2)金融環境
ゼロ金利政策解除後の金融機関の貸出姿勢や企業金融の緩和傾向については、これまでのところ大きな変化は生じていないとみられる。短観によれば、大企業では、貸出態度判断D.I.は「緩い」超幅がやや拡大した一方、資金繰り判断D.I.は「楽である」超幅がやや縮小するなど、区々の動きとなった。この間、中堅・中小企業では、貸出態度判断D.I.、資金繰り判断D.I.ともにほぼ横這いの動きとなった。
民間銀行貸出は、基調的には弱めの動きが続いているが、このところ、前年比マイナス幅の拡大傾向には、歯止めがかかりつつある。資本市場を通じた資金調達は、総じて落ち着いた動きが続いている。
9月のマネーサプライの前年比伸び率は+1.9%と、前月に比べて上昇した。先行き10~12月は、民間の資金需要が引き続き低調に推移する一方、集中満期を迎える郵便貯金からの資金シフトがある程度見込まれることから、7~9月比横這い程度の伸び率となる見通しにある(10~12月見通し「+2%前後」)。
9月のマネタリーベースは、月末にかけて郵便局による手元現金積み上げの動きがみられたものの、日銀当座預金が大幅に減少したことから、前年比伸び率は+4.0%と前月に比べ低下した。
企業の資金調達コストをみると、ゼロ金利政策解除後の市場金利上昇を背景に、このところ、幾分上昇している。
8月の企業倒産は、前月からほぼ横這いの動きとなった。
V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要
景気の現状について、大方の委員は、前回会合以降、短観や支店長会議での各地域からの報告などいくつかの材料が得られたが、「景気は、企業収益が改善する中で、設備投資の増加が続くなど、緩やかに回復している」という判断を変更する必要はないという認識を共有した。
ただ、同時に、ここへきて個人消費を中心に回復テンポがややもたついており、公共投資の減少や世界経済の減速の可能性なども踏まえると、景気は一時的に踊り場の局面になってきたのではないかとの意見も示された。
まず、短観については、全体として、企業部門の回復基調の強さを確認するものであったとの認識で、ほぼ一致した。この間、複数の委員が、中小非製造業について、設備投資計画が異例の下方修正となった点に言及したが、他のいくつかの機関の調査では上方修正されていることなどを踏まえれば、今回の短観の結果だけで基調を判断するのは尚早との見方を示した。これらの委員を含めて何人かの委員は、機械受注などの先行指標等からみても、設備投資全体としては、増加傾向を続けていると見てよいと述べた。また、企業収益について、ある委員は、増収増益の姿となっており、リストラ効果に加えて、数量効果も出始めているとコメントした。別の委員も、民間調査機関の調査によると、今年度および来年度の上場企業(除く金融業)の経常利益見通しは、2桁増益となっており、6月時点と比べても概ね上方修正されていると指摘し、企業部門の回復は、全体としてはっきりしてきている、との見方を示した。
この間、ある委員は、鉄鋼・石油化学等一部素材産業の在庫調整の動きについて、(1)在庫が適正水準に近づく中で、在庫積み増し需要が解消し、生産が需要見合いに減速せざるをえないことに加え、仮需で嵩上げされていた分も剥落したため、一挙に在庫過剰感が広がり、企業は既に生産調整に入っている、(2)今のところ、一時的な在庫調整で終わるとみられているが、先行き民間需要の自律回復テンポが弱まると調整が意外に長引く懸念もあるので注視していきたい、と述べた。
こうした議論を踏まえて、委員の認識は、企業部門の回復のモメンタムは維持されているとの見方でほぼ一致した。
これに対して、ひとりの委員は、(1)今回の短観について、設備投資の上方修正が加速していないこと、原油価格の上昇によるマージン圧迫や外需の下振れがみられることなどを指摘し、回復の緩やかさを強調する意味合いに止まった、(2)日本政策投資銀行の調査による来年度の設備投資計画が−8.6%となるなど弱気の結果も出てきている、として慎重な見方を示した。
個人消費の現状については、多くの委員が、この1か月に公表された指標や支店長会議における報告などから判断して、回復感に乏しい状況が続いている、との認識を示した。
ある委員は、8月の家計調査は、全世帯、勤労者世帯とも、不冴えな内容であったと指摘した。ただ、この委員は、他のひとりの委員とともに消費財の供給数量は順調に伸びていると指摘した上で、小売業販売額は実質で若干のプラスとなっていることも踏まえると、家計調査には若干のダウンサイド・バイアスがあるかもしれない、と付け加えた。また、ひとりの委員は、一部の消費者マインドを示す指標が足許低下ないし横這いに止まっていると指摘した。
雇用・所得情勢については、何人かの委員が、(1)短観において、雇用の過剰感は全般に薄れてきており、労働経済動向調査(労働省)の労働者過不足判断でも同様の傾向が現れている、(2)雇用者所得がこの6~8月期は全体として若干のプラスとなった、といった点を指摘し、雇用情勢が改善する中で、賃金も緩やかな増加が見込まれるとの見通しを述べた。
別の委員は、雇用者所得は下げ止まりが明確になったものの、その伸びは低く、消費性向の振れによって一高一低の動きが出るのは予想されたことであると指摘し、7~9月期の個人消費は、この「一低」の部分が出たとの見方を示した。また、複数の委員が、構造調整を抱えながらの回復過程では、個人消費が大きく伸びることは期待しがたいと述べた。このうちひとりの委員は、先行きの所得不安や消費の構造変化がある中で、「身の丈にあわせた消費」が行われており、消費は平時にあると評価すべきだ、とコメントした。
このような議論の結果、雇用・所得情勢の改善傾向が続いており、それにつれて個人消費も緩やかに持ち直すという現在の見方を変える必要はない、という点で、委員の見方は概ね一致した。
以上のような現状認識を踏まえた上で、先行きを展望して、いくつかの論点が議論された。
まず、多くの委員が、先行する部門(企業部門、とりわけ大企業製造業)と遅行する部門(家計部門や中小非製造業)の間の「二極化」がよりはっきりしてきていることに言及した。
何人かの委員は、先般の支店長会議でもこうした印象を受けた、とコメントした。また、複数の委員は、(1)雇用者所得の伸びが緩やかなこと、(2)個人消費の伸び悩み、(3)中小非製造業の回復の弱さは、相互に関連しているとの見解を示した。そのうちひとりの委員は、(1)バブル崩壊の負の遺産を処理しつつ、情報通信革命や世界経済の一体化などによる構造変化が進行する中で、「二極化」は避けられない、(2)そうしたもとでは、好調な分野がより伸びることで全体の平均値が上がっていくしかないし、実際そうなる可能性が高い、(3)ただ、遅行する部門があまりに遅いと、先行する部門にも影響する惧れがあるので、良く見ていく必要がある、とコメントした。
また、この点に関連して、何人かの委員が、企業や家計の景況感にも言及した。複数の委員は、企業経営者や消費者に過去の高い成長率の記憶が残っている中で、潜在成長率並み、あるいはそれより多少高目の緩やかな成長率が実現しても、現状は依然として「厳しい状況」と受け止められる可能性が高い、と指摘した。このうちひとりの委員は、経済の性格が変わっており、過去のような「価格上昇を伴う景気回復」という姿は、しばらくは起こりにくいことを認識したうえで、適切な景気評価が共有されることが望まれる、とコメントした。
次に、原油価格の動向とその影響についても議論が行われた。ある委員は、最近の原油価格上昇の背景として、米国における石油在庫の減少、米国北東部の寒波に加え、中東情勢の緊迫化を挙げ、今後、石油が第1次石油危機以来約30年振りに「国際政治の武器」として使われる危険性が出てきた、と指摘した。この委員は、原油価格(WTI)について、現在保ち合いの状況にあるが、製品在庫の減少もあるので、先行き直近高値の37ドル/バーレルを超えて上昇することとなると、45ドル/バーレルか、それ以上に高騰する可能性がある、と述べた。
原油価格上昇の日本への直接の影響については、ある委員が、(1)これまでの円高である程度は相殺されていること、(2)エネルギー利用の効率化も進んでいることから、さほど大きくない、との見方を示した。また、別の委員も、短観によれば、企業は、今年度下期の収益見通しを下方修正しているものの、それでも製造業は3割弱の増益計画となっていると指摘し、これまでのところ、原油価格上昇の影響は限定的と考えられる、と述べた。もうひとりの委員は、日本は官民の備蓄量が国内消費量の150~160日分と豊富にあるので、その面では心配ない、とコメントした。
ただ、間接的な影響という意味では、複数の委員が、石油依存度の高いエマージング諸国への影響などが懸念されると述べた。一方、別の委員は、例えば民間や国際機関の世界経済見通しがここにきて下方修正されている訳ではないので、現時点では一つのリスク・ファクターとして注目していくということでよい、と述べた。
また、米国を中心とした世界的な株価の下落と世界経済の先行きについても、活発な議論が展開された。
ある委員は、世界的な株価の下落の背景として、(1)世界的に金融引締め局面にあることや、(2)株価上昇の主因であったIT分野で過大投資等の調整局面に入っていることなどを指摘し、こうした動きがソフトランディングの形で収束していくかどうか、しばらく見守っていく必要がある、と述べた。
別の委員も、株価動向との関連で米国経済の先行きについて、(1)IT関連企業の業績下方修正幅は、経済全体のスローダウンの度合いに比べて大きく、行き過ぎた期待の修正プロセスが起きている可能性がある、(2)そうであれば、この修正は米国経済にとって必要なことともいえる、(3)問題はソフトランディングの軌道を外れるほどにスローダウンしてしまうかどうかであり、この点はなお見極めがたい、(4)ただ、仮にそうした事態になったとしても、米国はマクロ政策の対応余地が大きいので、株価の動向だけで経済のパフォーマンスが決まってしまうことはないだろう、と述べた。さらに、もうひとりの委員は、米国経済は、ソフトランディングの見通しが濃厚であるとの見方を示しつつ、製造業の中で最も川上に位置する鉄鋼業が、過剰生産、在庫積み上がりの状態に陥っており、生産調整に入り始めたことが気がかりな材料である、と付け加えた。
また、この委員は、アジア経済について、(1)一部素材で過剰在庫が積み上がっている、(2)同地域は対米輸出依存度、石油依存度が高いだけに、米国経済や原油価格の動向の影響も懸念される、と述べた。さらに、この委員は、こうした世界経済の動向のわが国輸出への影響にも言及し、米国自動車販売の減速や東南アジアの素材在庫積み上がりから、わが国の自動車メーカーや素材メーカーが輸出向けの減産体制に入り始めた、と指摘した。
わが国の株価が足許下落している点については、多くの委員が、こうした世界的な流れを受けた動きであり、とりわけ、米国ハイテク企業の業績の下方修正を受けたNASDAQの下落の影響が大きい、と指摘した。また、ひとりの委員は、これに加えて、ユーロ安、原油高、中東情勢、半導体市況の軟化の影響も考えられるほか、家計部門や中小非製造業の回復の遅れや企業破綻についての懸念といった国内経済面での不安感が何ほどか影響している可能性もある、と述べた。もっとも、この委員を含めて複数の委員が、わが国の企業業績はむしろ上方修正されており、経済の基調は底固いことから、基本的な地合いは悪くはない、との見方を示した。ただ、そのうちひとりの委員は、株価の下落自体が投資家の見通しを弱気化させるというリスクもあるので、当面目を凝らして見ていく必要がある、と付け加えた。別の委員も、企業・家計のコンフィデンスへの影響、金融市場に混乱が生じることはないか、といった点を当面見守る必要がある、と述べた。
この間、ひとりの委員は、米国株価について、チャート分析を示し、本年初頭をもって大天井をつけたとみられ、9月上旬頃に戻り天井をつけた後、下落過程に入っており、底はまだ先であるとの見方を示した。また、わが国の企業業績の回復やROEの改善も十分ではなく、日経平均はさらに低下する可能性がある、とコメントした。
以上のような議論を経て、多くの委員の認識は、景気の先行きについて、原油価格・内外資本市場動向とその影響を注視する必要はあるが、今後も設備投資を中心に緩やかな回復が続く可能性が高い、という点で一致した。
物価面では、複数の委員が、需給ギャップが緩やかに縮小する過程が続いており、情勢は変わっていない、との認識を示した。そのうちひとりの委員は、当面、卸売物価は横這い、消費者物価はやや弱含みという状態が続くと思われるが、そうした物価動向のもとで、企業収益の増加、雇用者所得の微増という動きが継続すると見込まれる、と述べた。
また、企業金融の状況については、何人かの委員が、短観や中小企業金融公庫、商工中金の調査などゼロ金利政策解除後の状況を検証する材料が幾つか出たが、いずれも横這い圏内の動きないしは若干の好転を示している、と指摘した。このため、ゼロ金利政策解除後も金融が緩和された状態が続いているという判断が裏付けられている、との見方を示した。
これに対して、他の委員に比べ景気に慎重な見方をしているひとりの委員は、(1)景気動向指数の遅行指数がこのところ低迷している、(2)半導体需給に関し、在庫サイクルは、84年、95年にピークをつけた後、足許についても、欧米で一部商品の流通在庫が増えていることや、実需に先行すると思われる半導体関連株価が既にピークを打って下落していることなどを踏まえると、先行きが懸念される、(3)世界経済は今後相当減速する可能性があるほか、実質実効為替レートの円高が進んでおり、外需を巡る環境は厳しい、(4)国内卸売物価指数は、石油石炭製品の価格上昇の影響が一巡する来年度になるとマイナスとなる可能性が高い、(5)消費者物価の下落傾向は、借家需給のアンバランス化を背景に家賃の下落傾向が続いていることなどから当面続く、と述べた。
VI.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要
以上のような金融経済情勢を踏まえて、当面の金融政策運営の基本的な考え方が検討された。
多くの委員の金融経済情勢に関する認識は、(1)景気の現状は、企業収益が改善する中で、設備投資の増加が続くなど、緩やかに回復している、(2)先行き、原油価格・内外資本市場動向とその影響を注視する必要はあるが、今後も設備投資を中心に緩やかな回復が続く可能性が高い、(3)物価を巡る情勢にも大きな変化はない、(4)ゼロ金利政策解除後も金融が緩和された状態が続いている、といったものであった。
こうした情勢判断を踏まえ、委員の大勢は、(1)当面は金融緩和スタンスを継続して景気回復を支援していくとともに、(2)そうしたもとで民間需要の回復力の強さと持続性、内外の市場動向などを慎重に見極めていくべきである、として現在の金融市場調節方針を継続することが適当である、との判断で一致した。
この間、ひとりの委員は、基調としてはもう少し強い緩和スタンスであっても良いと考えているが、(1)ゼロ金利政策を解除したばかりであること、(2)緩和方向での手段の発動の余地は限られていること等から、仮に緩和方向の政策を考えるとしてもより適切なタイミングを待ちたい、と述べ、現状維持に賛意を示した。
以上に対して、別のひとりの委員は、CPI上昇率に目標値を設けたうえで、マネタリーベース・ターゲティングに移行し、また、その実現のために日銀当座預金残高を増やすことを主張した。
この委員は、(1)需給ギャップが大きく、インフレの惧れがない状況下、潜在成長率と考えられる1.5~2%の成長パスに乗せ、1年以上キープする必要がある、(2)マネタリーベースの縮小テンポが急激であり、為替、株価等への悪影響が懸念される、(3)米国株価の下落がわが国にも波及すると思われるので、株価の大幅下落とそれに伴う逆資産効果を防止する必要がある、として量的緩和を主張した。
VII.政府からの出席者の発言
会合の中では、大蔵省からの出席者からは、以下のような趣旨の発言があった。
- わが国経済は、緩やかな改善が続いており、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが続いている。ただし、雇用情勢は依然として厳しく、個人消費も概ね横這い状態となっているなど、企業収益の大幅な改善が、所得や個人消費の増加につながっていくのかどうか、まだ確信を持てる状況にはない。物価面でも、原油価格の高騰にもかかわらず、消費者物価指数やgdpデフレーターの前年比マイナスが続いている。原油価格の高騰が世界経済に与える影響についても、十分注視する必要がある。
- 政府としては、民需中心の自律的回復に向けた動きを本格的回復軌道に確実につなげ、公需から民需への円滑なバトンタッチに万全を尽くすとともに、21世紀における新たな発展基盤の確立を目指すため、新たな経済対策を策定し、これを踏まえ、11月上中旬を目途に12年度補正予算を国会に提出する予定である。補正予算の編成に当たっては、厳しい財政事情のもと、歳出・歳入の見直し、11年度決算剰余金の活用などにより、国債発行額を極力抑制したいと考えている。
- 日本銀行におかれては、政府による諸施策の実施とあわせ、わが国経済を民需中心の本格的な回復軌道に乗せていくよう、経済動向を注視しつつ、豊富で弾力的な資金供給を行うなど、適切かつ機動的な金融政策運営を行って頂きたい。
経済企画庁からの出席者より、以下のような趣旨の発言があった。
- 最近の景気動向をみると、厳しい状況をなお脱していないが、緩やかな改善が続いていると判断している。すなわち、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが続いている。しかしながら、雇用状況は依然として厳しく、個人消費も概ね横這い状態が続いているほか、倒産件数はやや高い水準となっており、負債金額の増加もみられる。また、株価の下落が続いていること、米国経済の動向、原油価格、為替相場などの下方リスクも考慮する必要がある。
- 政府は、わが国の経済社会の構造改革を大胆に進めることを主眼として、今月19日に新たな経済対策を取り纏めることとしており、今後とも景気回復に軸足を置いた経済運営をなすべきであると考えている。
- 日本銀行におかれても、今後とも金融・為替市場の動向を注視しつつ、豊富でかつ状況に応じて弾力的な資金供給を行なうなど引き続き景気回復に寄与するような金融政策を運営して頂きたい。
- なお、経済企画庁では、国民経済計算の新しい国際基準であるいわゆる「93sna」に基づく平成7年基準のgdp等(平成2~10年度の数値)を今月末に公表することを予定している。
VIII.採決
以上のような議論を踏まえ、会合では、現在の金融市場調節方針を継続することが適当である、という意見が大勢を占めた。
ただし、ひとりの委員からは、CPI上昇率およびマネタリーベースの伸び率に目標値を設定して、量的緩和に踏み切ることが適当であるとの考えが示された。
この結果、次の2つの議案が採決に付されることとなった。
中原委員からは、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、「中期的な物価安定目標として2002年10~12月期平均のCPI(除く生鮮)の前年同期比が0.5~2.0%となることを企図して、次回決定会合までの当座預金残高を平残ベースで7兆円程度にまで引上げ、その後も継続的に増額していくことにより、2001年1~3月期のマネタリーベース(平残)が前年同期比で15%程度に上昇するよう量的緩和(マネタリーベースの拡大)を図る。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記マネタリーベースの目標等にかかわらず、それに対応して十分な資金供給を行う。」との議案が提出された。
採決の結果、反対多数で否決された(賛成1、反対8)。
議長からは、会合における多数意見をとりまとめるかたちで、以下の議案が提出された。
議案(議長案)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添のとおり公表すること。
記
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す。
採決の結果
- 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、武富委員、三木委員、篠塚委員、植田委員、田谷委員
- 反対:中原委員
中原委員は、(1)消費者物価指数、GDPデフレーターの下落幅が拡大しつつあるなどデフレ基調が続いており、現状維持では不十分であること、(2)民需の回復が弱々しい中、財政支出の減少、海外経済環境の悪化などを踏まえると、現在の受動的なスタンスを改めるべきであること、(3)ゼロ金利政策解除の際十分なアカウンタビリティが果たされていないこと、などを理由に挙げて、上記採決において反対した。
IX.金融経済月報「基本的見解」の検討
当月の金融経済月報に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が賛成多数で決定され、それを掲載した金融経済月報を10月16日に公表することとされた。
採決の結果
- 賛成:速水委員、藤原委員、山口委員、武富委員、三木委員、篠塚委員、植田委員、田谷委員
- 反対:中原委員
中原委員は、東京都区部の消費者物価(除く生鮮)が大幅に下落し、GDPギャップも依然として大きい中、需要の弱さに由来する潜在的な物価低下圧力が「大きく」後退したとはいえないとして、上記採決において反対した。
以上
(別添)
平成12年10月13日
日本銀行
当面の金融政策運営について
日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成多数)。
無担保コールレート(オーバーナイト物)を、平均的にみて0.25%前後で推移するよう促す。
以上