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金融政策決定会合議事要旨

(2003年 3月25日開催分) *

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2003年4月30日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2003年 5月 6日
日本銀行

(開催要領)

1.開催日時
2003年 3月25日( 8:03〜11:41)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 福井俊彦 (総裁)
  • 武藤敏郎 (副総裁)
  • 岩田一政 (  副総裁  )
  • 植田和男 (審議委員)
  • 田谷禎三 (  審議委員  )
  • 須田美矢子(  審議委員  )
  • 中原 眞 (  審議委員  )
  • 春 英彦 (  審議委員  )
  • 福間年勝 (  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 財務省 谷口 隆義 財務副大臣
  • 内閣府 小林 勇造 内閣府審議官

(執行部からの報告者)

  • 理事三谷隆博
  • 理事白川方明
  • 理事山本 晃
  • 企画室審議役山口廣秀
  • 企画室参事役和田哲郎
  • 企画室企画第1課長櫛田誠希
  • 金融市場局長山本謙三
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局企画役門間一夫
  • 国際局長堀井昭成

(事務局)

  • 政策委員会室長橋本泰久
  • 政策委員会室審議役中山泰男
  • 企画室企画第2課長吉岡伸泰
  • 政策委員会室調査役斧渕裕史
  • 企画室調査役衛藤公洋
  • 企画室調査役清水誠一

I.臨時金融政策決定会合開催の趣旨説明

 冒頭、議長より、今回の臨時金融政策決定会合開催についての趣旨説明があった。議長は、まず、わが国経済について、(1)国内需要の自律回復力が乏しいなか、株価低迷や不良債権問題などの問題を引き続き抱え、外的ショックに対して脆弱な状況にある、(2)加えて、イラク情勢が極めて大きな不確実要因となっている、との基本認識を述べた。そのうえで、金融政策決定会合において、当面の危機対応を検討する必要があるとともに、イラク情勢を契機としたダウンサイドリスクをも念頭に、やや長い目でみた今後の金融緩和の基本的な枠組みについても、政策委員会に新メンバーが加わったこの機を捉え、早急に点検すべきである、との考えを示した。

 何人かの委員は、臨時会合を頻繁に開催すると、かえって金融政策運営に対する不透明感が高まる惧れがあるとの認識を明らかにした。これに対し、議長は、今回はイラク情勢への対応の必要性に加えて、政策委員会メンバー3名の交代に伴い市場にみられる政策運営の先行き不透明感を早期に払拭したいという点も考慮した、極めて例外的な会合である、と述べた。さらに、予め公表された日程にしたがい決定会合を開催するというこれまでの方針を堅持するとの考えを明らかにし、この点を対外的にも明確に説明したい、と続けた。

II.金融市場動向等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節については、前回会合(3月4、5日)で決定された方針 1 にしたがって運営した。3月11日以降は、国際政治情勢の緊迫化等に伴う不安感が金融市場全般に波及することを未然に防ぐ観点から、即日スタートの資金供給オペを実施する等、金融市場調節方針の「なお書き」を活用し、日銀当座預金残高を目標の上限である20兆円を上回る水準に引き上げた。米国等による対イラク武力行使開始後は、さらに追加的資金供給を行った結果、足許の日銀当座預金残高は、24兆円程度に達している。

 こうした調節のもとで、短期金融市場では、資金余剰感の強い状態が維持されている。

  1. 「3月31日までは、日本銀行当座預金残高が15〜20兆円程度となるよう金融市場調節を行う。4月1日以後は、日本郵政公社の発足に伴い、日本銀行当座預金残高が17〜22兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、当面、年度末に向けて金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」

2.金融・為替市場動向

 短期金利をみると、日本銀行による早目の年度末越え資金供給の効果もあって、昨年の同時期と比べて落ち着いた動きとなっている。しかし、短期国債流通レートについては、3月入り後、発行額が急増したこと等を背景に、若干の上昇をみている。もっとも、こうした金利上昇が他の金融市場に波及するという動きはみられない。

 資本・為替市場の動きを概観すると、わが国を含め各国の市場とも、昨年12月半ば以降、地政学的リスクが意識されるなかで、「株安、ドル安、債券高」の展開となっていたが、先週後半以来、対イラク武力行使の短期終結期待から、それぞれ反転している。ただ、昨日の海外市場では、そうした楽観的な見方が若干後退する動きがみられた。世界経済の先行き不透明感、米国の財政赤字に対する懸念等を背景に、金融市場が不安定化するリスクはなお残存していると考えられる。

III.経済金融情勢と当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

1.経済金融情勢

 国内経済情勢について、委員は、前回会合以降、大きな変化は窺われないとの認識で一致した。このうち何人かの委員は、機械受注の動きなど、民間需要に関して幾分明るめの指標が出ていることを指摘した。ただ、先行きについては、イラク情勢の今後の展開が日本経済にどのような影響を及ぼすか、不確実性が大きい、との意見が出された。

 米国経済については、対イラク武力行使開始の家計マインドへの影響や雇用関連指標の動き、さらに財政赤字の動向等を注意深くみていく必要がある、との見解が何人かの委員から示された。

 次に、米国等による対イラク武力行使開始後の金融市場の動きについて、委員は、(1)足許、武力行使の短期終結期待もあって、概ね落ち着いている、(2)しかし、今後の情勢の展開によっては市場が不安定化する惧れがある、との認識を共有した。何人かの委員は、とくに、株価の下落が金融システムに与える影響について留意する必要がある、との考えを述べた。

2.当面の金融政策運営

 当面の金融政策運営について、委員は、前回会合以降、金融経済に関する基本的な認識に大きな変化がないことから、現状の日銀当座預金残高目標額を維持することが適当であるとの見解で一致した。

 同時に、国際政治情勢など不確実性が高い状況のもとで、金融市場の安定確保に万全を期す観点から、「なお書き」を活用した潤沢な資金供給を年度末以降も継続することができるよう、その表現を改めることが合意された。合わせて、補完貸付制度(ロンバート型貸付制度)について、1積み期間における公定歩合による利用日数を5営業日までに限定しているルールの適用を、当分の間、停止することが適当であるとの考えが共有された。

 そのほか、何人かの委員は、株価下落が金融システムを通じて日本経済に悪影響を及ぼさぬよう、銀行部門の抱える株価リスクを削減することが有効である、と述べた。これらの委員は、日本銀行による銀行保有株の買入枠拡大の是非について、通常会合で議論したい、と続けた。

IV.金融政策の枠組みの検討の進め方に関する委員会の議論の概要

 最初に、議長は、(1)対イラク武力行使の影響も含め、現下の厳しい経済情勢を踏まえると、金融政策運営の枠組みを見直しておく余地はないか検討することが必要である、(2)とくに、金融政策の透明性向上と、金融緩和の波及メカニズムの強化という論点が重要である、との問題意識を示した。他の委員も、これまでの量的緩和の評価を踏まえつつ、金融政策運営の基本的考え方を整理することは意義がある、と同調した。そのうちひとりの委員は、政策委員会で十分議論し、これまでの議論との連続性を検証することも重要である、と付け加えた。

 これまでの量的緩和政策の効果について、議論が行われた。多くの委員は、量的緩和は金融市場の安定確保とデフレ・スパイラル回避には有効であったが、金利のゼロ制約や不良債権問題の存在から景気刺激の面では十分な効果は窺われていない、との認識を述べた。複数の委員は、具体的に、低格付け社債のリスクプレミアムや、株価、為替相場に対する明確な効果が確認できていない、と付け加えた。さらに、別のある委員は、潤沢な資金供給の結果、金融市場の機能が低下している面がある、と発言した。

 こうした点を踏まえ、委員の間では、金融緩和の波及メカニズム強化が重要であるとの認識が共有された。何人かの委員は、流動性供給の効果を高めるためには、まず、構造改革の進展、とりわけ、不良債権処理が前提となることを強調した。このうちひとりの委員は、関係当局と連携しつつ、日本銀行としても貢献できる範囲で努力を続けるべきである、との意見を表明した。

 金融緩和の波及メカニズム強化の問題に関連して、何人かの委員はいわゆる時間軸効果について言及した。ひとりの委員は、量的緩和政策継続についての現在のコミットメントにより、経済主体の間にかえってデフレ期待が定着しているのではないか、との見方を示した。別のある委員は、時間軸効果により長期金利は低下したものの、そうしたデフレ期待の定着により、実質金利がむしろ上昇していることが問題であり、金融緩和効果を高めるためには、期待に働きかけて、実質金利を反転させることが重要である、との考えを示した。これに対し、複数の委員は、期待に働きかける際にも、具体的な政策波及経路の存在が前提となる、との認識を示した。

 量的緩和政策の効果を強化する方法として、日本銀行の買入資産を多様化することの是非についても意見が交わされた。多くの委員は、金融政策のトランスミッション・メカニズムの強化に繋がるかどうかという点に加えて、日本銀行がリスクの高い資産を購入することが、日本銀行の収益・財務にどのような影響を与えるかが重要な論点となる、と指摘した。何人かの委員は、中央銀行の独立性や通貨に対する信認維持の観点から、日本銀行の財務の健全性が重要であることを強調した。また、複数の委員は、日本銀行によるリスク資産の購入は、日本銀行から政府への納付金の減少に繋がる可能性があり、この点で財政政策の性格をも有するとの考えを示し、そうした理解を踏まえたうえでの検討が必要である、と述べた。これに関連して、ある委員は、日本銀行の保有資産が長期国債に偏ることによるリスクを軽減するためにも購入資産の多様化が有効ではないか、と発言した。これに対し、ひとりの委員は、日本銀行による買入が市場の価格メカニズムを阻害することはないかという点も吟味するべきであるとしたうえで、財務の健全性維持だけを目的に買入資産を多様化することは必ずしも適当ではない、との意見を述べた。

 こうした議論に加えて、何人かの委員は、企業金融円滑化という観点から日本銀行の金融調節等で貢献できることがあれば、検討する意義がある、との認識を示した。

 金融政策運営の透明性向上についても、いくつかの議論があった。複数の委員は、金融政策の事前の予測可能性の向上という点のみならず、金融政策をどのように説明していくかという点も含め、幅広い観点から議論する必要がある、との考えを述べた。

 金融政策の透明性向上に関連して、インフレ・ターゲティングについて議論があった。ある委員は、「政策手段(日銀当座預金)ターゲティング」よりも政策のゴール(目標)をターゲットとすることの重要性を主張したうえで、物価の安定の内容を具体的に示すことが金融政策の評価基準として有用であり、国民や市場参加者にとっても金融政策運営が分かりやすくなる、と述べた。この委員は、物価安定の目標を示し、期限を区切ってその達成をコミットすることで期待インフレ率を上昇させると同時に、名目長期金利を安定させることを組み合わせることで、実質金利を低下させることができる、と説明した。これに対し、ひとりの委員は、量的緩和政策継続に関する現在のコミットメントは、将来の政策のあり方について明確なメッセージを示すという点で、すでにインフレ・ターゲティングの要素をかなり取り入れている、との認識を示した。この委員を含め多くの委員は、物価安定の目標を示したとしても、現在のように十分な政策波及メカニズムを欠いたままでは、期待インフレ率を動かすことは容易ではない、との見解を示した。また、複数の委員は、むしろ、長期金利が先行して上昇するリスクがある、との懸念を述べた。

 こうしたなか、何人かの委員は、最終的な目標として、物価安定の内容を示すこと自体の意義は理解できる、との考えを述べた。このうち複数の委員は、金融政策運営の透明性向上のため、例えば、「展望レポート」の内容に工夫を加える余地がないか検討する価値がある、と付け加えた。

 以上の議論を踏まえ、委員は、(1)今後、金融政策運営の基本的な枠組みについてさらに検討を進めること、(2)とくに、政策運営の透明性と政策波及メカニズムの面で改善を図る方向で議論をしていくこと、について認識が一致した。そのうえで、議長は、執行部に対して、(1)幅広い観点から金融政策の透明性向上と金融緩和の波及メカニズム強化に関する論点を、これまでの量的緩和政策の評価を踏まえつつ、次回決定会合において報告すること、(2)とくに金融緩和の波及メカニズム強化の観点から、企業金融や金融調節の面でどのような措置が考えられるか、準備が整い次第報告すること、の2点を指示した。

V.政府からの出席者の発言

 会合では、財務省の出席者から、以下のような趣旨の発言があった。

  •  日本銀行は、これまでデフレ克服に向けて様々な取り組みをしてきたが、物価は依然下落しており、日本銀行の役割は引き続き重要である。福井総裁をはじめとする新執行部におかれては、物価の安定と信用秩序の維持、及びこれらを通じた日本経済の健全な発展に向け、尽力されることを期待する。
  •  3月20日に開始された米英等による対イラク武力行使について、市場では、短期間の決着を予想する声が大勢ではあるが、政府としては、本件が内外の経済に混乱を引き起こし、国民に不安が生じることのないよう、各国とも緊密に連携しつつ、万全を期していく所存である。
  •  本日、日本銀行が金融政策決定会合を臨時招集されたことは、非常に時宜を得たものであり、その決断と行動力に敬意を表したい。今後の金融政策運営のあり方については、従来から申し上げているとおり、家計や企業などミクロの経済の動きも視野に入れつつ、流動性供給の質量両面においてさらなる工夫を講じるなど、実効性のある金融緩和措置を是非検討・実施して頂きたいと考えている。また、市場に不測の事態が生じないよう、潤沢な流動性供給を含め、万全の対応をお願いしたい。
  •  3月末の株価やイラク情勢の先行きが不透明な中、与党内でも様々な対策を検討しているが、日本銀行も、そうした状況も踏まえ、機動的に政策を立案し、対応してもらいたい。
  •  長期国債の買い切りオペについては、ポートフォリオ・リバランス効果といった観点から、例えば月間2兆円に増額するとともに、平成16年3月といった一定の時点まで国債保有の上限を撤廃し青天井にするということも含めて、ぜひ検討をお願いしたい。

 内閣府の出席者からは、以下のような趣旨の発言があった。

  •  情勢が予断を許さないなかで、本日、臨時金融政策決定会合を開催されたことは時宜を得たものと考える。また、日本銀行におかれては、新たな総裁、副総裁のもとで政府とより緊密な連携をとりながら、デフレ克服を目指し、金融政策運営に当たられることを期待している。
  •  足許の景気は概ね横這いとなっているが、イラクにおける武力行使に伴う不確実性の高まりや、世界的な株価低迷のなかで不透明感が増している。政府は、直ちにイラク問題対策本部を設け、当面、各国と協調のもと、イラク情勢の推移のほか、金融市場や原油市場などの金融経済情勢を十分に注視するとともに、金融システム安定確保、原油の安定供給確保など、国民生活安定のために必要な措置を講じていくこととしている。日本銀行におかれても、対策本部を設置したと承知している。
  •  中期的には、日本経済の重要課題はデフレ克服である。「改革と展望—2002年度改定」では、政府・日本銀行一体となった取り組みを通じ、デフレは改善し、2004年度までの集中調整期間の後にはデフレが克服できるとみられるとしている。政府としては、2005年度のデフレ克服を目指し、構造改革を加速し、できる限りの措置を講じている。日本銀行におかれても、2005年度のデフレ克服を目指し、政府との対話を密にしつつ、従来の枠組みにとらわれず、さらに実効性のある金融政策運営に取組まれるとともに、内外の金融為替市場の動向等に応じ、適切かつ機動的な金融政策運営を行うことを強く期待している。

VI.採決

 以上のような議論を踏まえ、会合では、(1)当面の金融市場調節方針を現状維持としたうえで、「なお書き」の表現を最近の情勢を踏まえて改めること、(2)補完貸付制度(ロンバート型貸付制度)にかかる臨時措置として、当分の間、全ての営業日を通じて公定歩合による利用を可能とすること、について今回会合で決定すべきであるとの考え方が共有された。

 これを受け、議長から以下の2つの議案が提出された。

議案(議長案)

1.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

3月31日までは、日本銀行当座預金残高が15〜20兆円程度となるよう金融市場調節を行う。4月1日以後は、日本郵政公社の発足に伴い、日本銀行当座預金残高が17〜22兆円程度となるよう金融市場調節を行う。
 なお、当面、国際政治情勢など不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

2.対外公表文は、別途決定すること。

採決の結果

  • 賛成:福井委員、武藤委員、岩田委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原委員、春委員、福間委員
  • 反対:なし

議案(議長案)

1.当分の間、臨時措置として、補完貸付制度基本要領(平成13年2月28日付政委第22号別紙1.。以下「基本要領」という。)に基づく貸付けについて、基本要領5.の定めにかかわらず、貸付利率として、全ての営業日において基準貸付利率を適用する扱いとし、平成15年3月26日から実施すること。

2.対外公表文は、別途決定すること。

採決の結果

  • 賛成:福井委員、武藤委員、岩田委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原委員、春委員、福間委員
  • 反対:なし

VII.対外公表文の検討

 以上の決定事項等にかかる対外公表文について、執行部が作成した原案に基づいて委員の間で議論が行われ、採決に付された。採決の結果、対外公表文(「本日の金融政策決定会合について」)が全員一致で決定され、別紙1のとおり、同日公表することとされた。

 なお、本日の決定事項等について、同日、議長が記者会見を行うこととなった。

VIII.本日の金融政策決定会合の議事要旨の公表日程の承認

 最後に、本日の金融政策決定会合の議事要旨を、4月30日の金融政策決定会合における承認を経て、5月6日に公表することが承認され、この旨別紙2のとおり即日対外公表することとされた。

以上


(別紙1)

2003年3月25日
日本銀行

本日の金融政策決定会合について

  1. わが国の景気は、海外経済や株価、不良債権処理の動向など、先行き不透明感が強い中で、国内最終需要に明確な回復の動きがみられず、横這いの動きを続けている。
  2. こうした状況のもとで、今般、イラクに対する武力行使が開始された。日本銀行としては、今回の事態が株式市場や為替市場などを通じて経済全体にどのような影響を及ぼしていくか注視するとともに、潤沢な流動性の供給などを通じて、金融市場の安定確保に万全を期す方針である(別添参照)。こうした方針のもと、補完貸付制度についても、当分の間、すべての営業日を通じて公定歩合による利用を可能とすることとした。
  3. 日本銀行としては、対イラク武力行使の影響も含め、現下の厳しい金融経済情勢を踏まえて、今後、金融政策運営の基本的な枠組みについてさらに検討を進めることとした。
  4. 議長は、上記の基本的な枠組みの検討を進めるに当たって、幅広い観点から金融政策の透明性向上と金融緩和の波及メカニズム強化に関する論点を、これまでの量的緩和政策の評価も踏まえつつ、次回の定例金融政策決定会合において報告するよう執行部に指示した。
     具体的な措置として、議長は、特に金融緩和の波及メカニズム強化の観点から、企業金融や金融調節の面においてどのような措置が考えられるか、準備が整い次第、金融政策決定会合において報告するよう執行部に指示した。

以上


(別添)

平成15年3月25日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

 3月31日までは、日本銀行当座預金残高が15〜20兆円程度となるよう金融市場調節を行う。4月1日以後は、日本郵政公社の発足に伴い、日本銀行当座預金残高が17〜22兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、当面、国際政治情勢など不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

以上


(別紙2)

平成15年3月25日
日本銀行

本日の金融政策決定会合の議事要旨の公表日程について

 日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合の議事要旨を、4月30日(水)の金融政策決定会合における承認を経て、5月6日(火)に公表することとした。

以上