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金融政策決定会合議事要旨

(2003年 6月25日開催分) *

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2003年8月7、8日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2003年 8月13日
日本銀行

(開催要領)

1.開催日時
2003年 6月25日( 9:00〜11:51)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 福井俊彦 (総裁)
  • 武藤敏郎 (副総裁)
  • 岩田一政 (  副総裁  )
  • 植田和男 (審議委員)
  • 田谷禎三 (  審議委員  )
  • 須田美矢子(  審議委員  )
  • 中原 眞 (  審議委員  )
  • 春 英彦 (  審議委員  )
  • 福間年勝 (  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 財務省 谷口 隆義 財務副大臣
  • 内閣府 小林 勇造 内閣府審議官

(執行部からの報告者)

  • 理事平野英治
  • 理事白川方明
  • 理事山本 晃
  • 企画室審議役山口廣秀
  • 企画室企画第1課長櫛田誠希
  • 金融市場局長中曽 宏
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局経済調査課長門間一夫
  • 国際局長堀井昭成

(事務局)

  • 政策委員会室長秋山勝貞
  • 政策委員会室審議役中山泰男
  • 企画室企画第2課長吉岡伸泰( 9:00〜 9:10)
  • 金融市場局金融市場課長大澤 真( 9:00〜 9:10)
  • 政策委員会室調査役斧渕裕史
  • 企画室調査役山岡浩巳
  • 企画室調査役清水誠一

I.「資産担保証券買入基本要領」の制定等

1.執行部からの提案内容

 前回会合で決定された「資産担保証券買入スキームの骨子」に基づいて、「資産担保証券買入基本要領」および「資産担保証券買入における買入対象先選定基本要領」を制定し、「日本銀行業務方法書」を一部変更することとしたい。また、資産担保コマーシャル・ペーパー等の適格性判定に関する特則の適用期間(2004年度末まで)を、資産担保証券の買入期間(2005年度末まで)に合わせて1年間延長することとしたい。

2.委員による検討・採決

 採決の結果、上記執行部提案が全員一致で決定され、適宜の方法で公表することとされた。

II.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節については、前回会合(6月10、11日)で決定された方針 1に従って運営した結果、日銀当座預金残高は、28〜29兆円台で推移した。

 こうした調節のもと、無担保コールレート翌日物(加重平均値)は、0.001〜0.002%での動きとなった。

  1. 「日本銀行当座預金残高が27〜30兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」

2.金融・為替市場動向

 短期金融市場は、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、落ち着いた地合いが続いている。なお、コール市場では、以前よりみられたマイナス・レートでの取引が幾分拡がりをみせている。為替スワップ市場におけるドル調達需要が高まり、同市場を通じた外銀の円調達コストのマイナス幅が拡大していることが背景にあると考えられる。

 債券市場では、長期金利(10年新発債流通利回り)が0.4%台まで低下した後、20年債入札が予想比不調に終わったとの見方や海外長期金利の上昇をきっかけに、一時0.6%台後半まで上昇した。これまで落ち着いていた長期金利のボラティリティも高まっている。

 株価は、続伸し、日経平均でみて9千円台まで回復した。主体別売買動向をみると、海外投資家の買い越しが継続している。銀行株は、保有株式の含み損拡大に対する懸念が後退していること等を受け、上昇している。

 為替市場では、6月24、25日の米FOMCを控えて米国政策金利引下げ幅についての見方が交錯したことなどから、円、ユーロの対ドル相場は、比較的狭いレンジで揉み合う展開となった。

 この間、わが国を巡る資金フローの状況をみると、(1)対外証券投資では公社債への投資が堅調であること、(2)対内証券投資では、外国ファンド筋の動きが足許活発化していることが窺われる。

3.海外金融経済情勢

 米国景気は、引き続き緩やかな回復基調にあるが、生産、所得の拡大モメンタムは弱まっている。個人消費は緩やかな増勢を維持しているが、設備投資は、下げ止まっているものの力強さを欠く動きが続いている。物価の動きをみると、5月の生産者物価指数は2か月連続で低下した一方、消費者物価指数は、コアベースで、2か月連続で横這いとなった後、5月は前月比上昇に転じた。

 米国金融市場をみると、株価は上昇傾向を辿っている。長期金利は、6月初以降、追加利下げ観測が強まったことから一段と低下したが、消費者物価などの経済指標の発表を受け、デフレに対する懸念がやや後退したため、足許、幾分水準を戻している。

 ユーロエリアでは、個人消費、設備投資など内需が低調に推移するもとで、輸出も弱含んでおり、景気は減速している。欧州金融市場では、株価が上昇傾向を辿っている一方、長期金利は、追加金融緩和期待から低下した後、米国同様、足許、幾分修正され、6月初の水準に戻している。金融市場では、来年初にかけての追加利下げ期待が強く窺われる。

 東アジアでは、このところ景気の回復テンポが幾分鈍化している。新型肺炎(SARS)については、中国や香港、台湾、シンガポール等で個人消費などに悪影響が及んでいるが、輸出や生産活動への影響は限定的なようである。このまま、感染拡大が終息に向かえば、SARSの影響は、東アジアの成長率を若干引き下げる程度に収まるものと考えられる。他方、韓国では、個人消費が減速し、設備投資も増勢鈍化に転じているなど、内需の伸び悩みがはっきりとしている。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 最近明らかになった経済指標をみると、前回会合時の景気判断や先行きに関する見方について、修正の必要性はないと考えられる。

 輸出動向について、5月の実質輸出は、前月比3.3%増となり、SARSの影響は、予想ほど大きくは現れなかったと言える。地域別にみると、米国向けが増加に転じている。また、NIEs諸国向けは5月に増加しており、SARSの影響が限定的であることが窺われるほか、中国向けも高水準が続いている。一方、韓国向けについては、同国の内需低迷を映じて、弱い動きとなっている。

 製造業中小企業の設備投資について、中小企業金融公庫のアンケート結果(4月調査)をみると、2003年度計画が前年度比−7.4%となっており、年度初の計画としてはマイナス幅が比較的小さい。

 個人消費関連では、5月の百貨店売上高は前月比で小幅の増加となったが、4月のやや大きめの減少と比べて戻りは鈍かった。4月の旅行取扱額は、ゴールデンウィークの曜日構成の悪さや、イラク情勢、SARS問題の影響が加わった結果、大幅な落ち込みとなった。

 4月の全産業活動指数をみると、鉱工業生産指数、建設業活動指数が低下したため、1〜3月期対比で−0.2%と小幅低下となったが、均してみれば、横這い圏内の動きが続いている状況である。

 夏季賞与について、日本経団連のアンケート調査では、対象が大企業・製造業中心ではあるが、前年を4.3%上回る見込みとなっている。

 5月の企業向けサービス価格指数は、前月比横這いとなった。内訳をみると、広告のマイナス寄与が目立っている。

(2)金融環境

 CP・社債の発行環境をみると、資金運用難を背景に投資家は積極的な購入姿勢を維持しており、発行金利の信用スプレッドは、全体として既往最低圏内で推移している。また、低格付け債の発行も引き続き増加しており、発行環境の改善傾向は続いている。

 マネタリーベースは、伸びをさらに高め、6月は前年比2割程度の増加となる見通しである。これは、(1)日銀当座預金については、5月20日の目標額引き上げの影響が平残ベースで6月により大きく現れること、(2)銀行券は、ペイオフの部分解禁を背景に昨年1〜4月にかけて伸びを大きく高めた反動の影響が剥落する中で、伸びを幾分高めていること、が背景にあると考えられる。

 5月の企業倒産件数は、前年比16.1%の減少となった。やや長い目でみると、企業倒産件数はなお高い水準にあるが、昨年半ば以降緩やかに減少している。これには、中小企業の資金繰りがキャッシュフローの増加等を受けて幾分ながら改善していることが寄与しているとみられる。

III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

 景気動向については、(1)前回会合以降、「全体として横這い圏内の動きを続けている」との判断を変更すべき材料はみられていない、(2)先行き、海外経済動向および金融資本市場の動きに引き続き注目していく必要がある、との認識が共有された。

 複数の委員は、景気は、4月の展望レポートで想定したパスに比べ、年度前半は幾分下振れる可能性があるが、基本的には標準シナリオに概ね沿った動きを示している、との見解を示した。また、別のある委員は、SARS問題の終息に向けた動きや株価上昇等を背景に、センチメントの面では若干改善しつつある、との見方を述べた。

 まず、輸出に関して、多くの委員が、5月の計数にはSARSの影響は観察されず、全体として底固さが窺われる、との評価を示した。そのうちひとりの委員は、円の実質実効レートが安定的に推移したことも輸出を下支えしている、と発言した。ただ、これらの委員は、今後、SARSの影響がどのように現れるかはなお不確実であるため、引き続き関連データを注視していきたい、との認識を示した。

 設備投資に関して、ひとりの委員は、設備稼働率や資本ストック循環の状況を踏まえると、投資増加局面に近付きつつあるのではないか、との期待感を述べた。この委員は、中小企業金融公庫のアンケート調査結果も、期初計画としてはまずまずの水準にあるとの評価を付け加えた。もっとも、別のある委員は、わが国の設備投資は、産業構造の調整圧力やバランスシート調整圧力、期待成長率の低下といった要因から回復力が弱く、先行き、設備投資が景気を牽引していく姿は想定しにくい、と発言した。

 先行きのリスク要因として、ほとんどの委員が海外経済動向と金融資本市場の動きに着目し、これらを注意深くみていく必要がある、との認識を共有した。

 まず、米国経済については、多くの委員が、(1)最近の経済指標の中には、個人消費関連など一部に明るい材料がある、(2)地政学的リスクの後退や株価上昇を背景にセンチメントが改善している、(3)年後半にかけては減税や金利低下等のプラス効果が期待できる、といった点を指摘した。その一方で、何人かの委員は、生産に回復感が乏しく、稼働率の低さを背景に構造物にかかる投資が低迷しているなど、企業活動に力強さが欠けるほか、雇用環境も厳しい状態が続いている、と述べた。また、複数の委員は、足許、住宅投資は堅調を持続しているが、連邦住宅貸付抵当公社等の会計疑惑問題が住宅金融に悪影響を及ぼさないか注意が必要である、と付け加えた。物価面については、何人かの委員が、5月の消費者物価指数は前月比上昇に転じたが、傾向としては上昇率が緩やかに低下しているほか、財価格の下落継続、サービス価格の上昇率鈍化がみられるため、なお警戒を要する、との認識を示した。

 これらの点を踏まえ、米国経済について、委員の間では、(1)大きな下振れリスクは減少している、(2)ただし、実体経済の十分な回復力はなお確認されていない、(3)したがって、政策面の対応やその効果を含め、引き続き注意深くみていく必要がある、との見解を共有した。

 東アジア経済について、多くの委員は、SARSの感染拡大に伴い、個人消費や商談等の企業活動の一部に悪影響がみられるが、全体として、その影響は限定的なものに止まる可能性がある、との認識を述べた。このうちひとりの委員は、アジア地域の生産面への影響は小幅に止まっている、と指摘した。複数の委員は、このままSARSの感染拡大が終息すれば、東アジアの堅調な成長は維持され、日本経済が年度後半に回復する確度も高まる、との見解を示した。ただ、別の複数の委員は、SARSによる個人消費への悪影響が東アジア地域の成長鈍化に繋がり、さらにそれが日本の輸出を下押しするリスクはなお残存している、との認識を示した。

 金融面について、委員は、短期金融市場は、りそな問題の悪影響もなく、落ち着いている、との認識を共有した。

 長期金利の動きについて、何人かの委員は、米国のデフレに対する懸念の後退等を背景とした海外市場の長期金利上昇や、内外の株高傾向がみられた中、20年債の入札が不調に終わったとの見方をきっかけにして、日本の長期金利が上昇に転じた、との見解を示した。また、何人かの委員は、長期金利が既往最低水準にまで低下していただけに、もともと高値警戒感が強い状況にあったことも債券市況下落に繋がった、と指摘した。長期金利上昇の影響について、ひとりの委員は、現時点では、多額の債券を保有する銀行のリスクテイク力に大きな負のインパクトを及ぼすものではない、との見方を示した。別のある委員は、これまでのイールドカーブのフラット化がやや行き過ぎであったとの認識を述べたうえで、現状程度の長期金利上昇は、イールドカーブのスティープ化を通じて銀行業にとってもプラスの面がある、と指摘した。先行きに関しては、何人かの委員は、実体経済に明確な回復がみられないというファンダメンタルズに大きな変化がないことから、長期金利が直ちに大幅に上昇していくことはないとみる市場参加者が多い、と述べた。

 もっとも、何人かの委員は、市場の見方が変わる場合には長期金利が容易に上昇する可能性がある、との見解を示したうえで、金融機関を含めた市場参加者にとって、金利リスク管理が極めて重要である、と発言した。関連して、ある委員は、長期金利の上昇については、基本的には市場の動きに任せるべきであり、日本銀行が何らかの形で対処するといった期待を醸成することは適当ではない、との認識を強調した。

 こうした議論を経て、委員は、今後とも長期金利の動きを注視していく必要がある、との考えを共有した。

 株価について、多くの委員は、欧米株価の上昇を背景として海外投資家の投資姿勢が積極化していることや、金融システムに対する不安感がやや後退していることなどから、出来高を伴って上昇している、との見方を述べた。ひとりの委員は、企業収益改善に伴い復配に至る企業がみられるなど、企業業績の回復の動きも株価をサポートしている、と指摘した。もうひとりの委員は、株価上昇により、金融システム不安が和らぎ、企業のリスクテイク力や家計の消費意欲が回復していくことを期待したい、と発言した。一方で、何人かの委員は、最近の株価上昇は、海外投資家の買いに依存している面があり、市場では、株価上昇の持続性についてなお慎重な見方が多い、と述べた。

 為替相場に関しては、複数の委員が、為替介入への警戒感等から円相場の急騰は回避されており、為替市場は比較的落ち着いている、との見方を示した。そのほか、別の複数の委員は、このところ国内投資家の外債投資が増加しており、その為替相場への影響について注意してみていきたい、と述べた。

IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 当面の金融政策運営については、経済情勢に大きな変化がみられていないことに加え、短期金融市場も落ち着いた地合いを継続していることから、全ての委員が、現状の金融市場調節方針を維持することが適当である、との判断を示した。ひとりの委員は、現行の量的緩和政策の枠組みのもとで、機動的な金融市場調節を通じて潤沢な資金供給を続けることが重要である、と付け加えた。また、もうひとりの委員は、資産担保証券の買入れについての詳細の決定と関連して、今後も、市場関係者の努力を引き出す形で、市場育成や中小企業金融の円滑化に向けて努力していく必要がある、と発言した。

 会合では、物価安定数値目標についての言及があった。ひとりの委員は、デフレ克服に向けて、日本銀行としてもう一歩進んだコミットメントを行う必要があると主張したうえで、政策委員の間で、どのような物価指数でどの程度の物価上昇率が望ましいのかについて議論していきたい、との考えを述べた。もうひとりの委員も、政策の透明性を高める観点から、物価安定数値目標を設けることの是非について、なるべく早く結論を出すべきである、と同調した。これに対し、ある委員は、物価安定数値目標については、その問題点等についてすでに決定会合において繰り返し議論していることに言及したうえで、物価に関する何らかの数値を掲げる場合、経済情勢全体との関係や、資産価格の取り扱い方などなお検討すべき課題が多い、との意見を示した。別のある委員は、将来、量的緩和を終了する際には、人々の期待を安定化させる趣旨から物価安定数値目標が何らかの形で必要になると考えられるが、現在の状況のもとで、景気刺激効果を強めるという観点から、高めの物価安定の目標値を示したり、インフレ・ターゲティングを明確に宣言したとしても、それだけではほとんど効果がないのではないか、との認識を述べた。ほかの何人かの委員も、こうした見解に同意し、現時点で物価安定数値目標だけを取り出して議論を進めることには慎重な姿勢を示しつつ、今後の経済の経路を踏まえたより幅広い観点から考えていくべきである、との意見を述べた。

V.政府からの出席者の発言

 会合の中では、財務省の出席者から、以下のような趣旨の発言があった。

  •  政府は、持続的な経済成長の実現およびデフレ克服に向けた取り組みとして、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」を取りまとめているところである。
  •  今回、日本銀行は、中堅・中小企業関連の資産担保証券買入れの枠組みについて、最終的に決定された。今後、可及的速やかに買入れを開始するとともに、こうした新しい措置が企業金融や実体経済の資金循環にどのような好影響を与えるかよく検証し、必要に応じて制度の見直しを行うなど、継続的な検討が必要であると考えている。
  •  資産担保証券の買入れを決定する前提として、実体経済の資金の流れが目詰まりを起こしている。とりわけ中堅・中小企業に上手く資金が流れていないという問題があったと思う。こうした問題を解決するためには、政府や日本銀行の政策的な対応だけでなく、民間金融機関における貸出行動が活性化することが必要であると考えている。こうした観点から、民間金融機関における積極的な対応を期待している。
  •  日本銀行におかれても、実体経済の資金循環の活性化に資するような新たな工夫を講じられないか、さらなる検討を進め、実効性のある金融緩和措置を実施して頂きたいと考えている。付け加えると、例えば、プロジェクトファイナンスの活用など、民間金融機関の融資が活発化するよう、金融環境を整えるとともに、金融機関への指導をお願いしたい。
  •  また、従来はデフレは日本特有の現象とされてきたが、最近では世界的にデフレやディスインフレに対する懸念が広がりつつある。デフレ問題を考える際には、海外のデフレやディスインフレについても研究することが有用ではないかと考えている。

 内閣府の出席者からは、以下のような趣旨の発言があった。

  •  景気の基調判断については、6月17日の月例経済報告において、「景気はおおむね横ばいとなっているが、このところ一部に弱い動きがみられる」と報告した。景気を大局的にみれば、おおむね横ばいとの認識に変化はないが、輸出、設備投資等に弱い動きが一時的にみられることから、前月と比べて下方修正した。先行きについても、米国経済等の回復が持続すれば景気は持ち直しに向かうことが期待される一方、米国経済やアジア経済等の先行きを巡る不透明感により、わが国の最終需要が下押しされる懸念が存在している。
  •  日本経済の重要な課題は、デフレを早期に克服すること、および内需主導の自律的回復を実現することである。このため、政府としては、デフレの克服や経済活性化をはじめとする、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」を経済財政諮問会議の諮問・答申を経て、6月27日に閣議決定する予定である。本基本方針においても、デフレ克服に向け、政府は日本銀行と一体となって強力かつ総合的に取組むとの方針を示す予定である。
  •  日本銀行におかれては、本年3月から今後の金融政策運営の基本的枠組みについて検討を進められてきた。今回、金融緩和の波及メカニズム強化のために資産担保証券買入れの制度を迅速に決定された。引き続き、デフレ克服に実効性ある金融政策運営を行うことを期待する。その際には、2005年度のデフレ克服を目指すという観点から、まず物価変化率が上昇に向かうよう図るとともに、物価や金利の経路を展望し、その段階に応じた適切な金融調節手段の選択を検討して頂きたいと考えている。

VI.採決

 以上のような議論を踏まえ、当面の金融市場調節方針については、現状維持とすることが適当との考え方が共有された。

 これを受け、議長から以下の議案が提出された。

議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添1のとおり公表すること。

 日本銀行当座預金残高が27〜30兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

採決の結果

  • 賛成:福井委員、武藤委員、岩田委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原委員、春委員、福間委員
  • 反対:なし

VII.議事要旨の承認

 前々回会合(5月19、20日)の議事要旨が全員一致で承認され、6月30日に公表することとされた。

VIII.先行き半年間の金融政策決定会合等の日程の承認

 最後に、2003年7月〜12月における金融政策決定会合等の日程が別添2のとおり承認され、即日対外公表することとされた。

以上


(別添1)

2003年 6月25日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

 日本銀行当座預金残高が27〜30兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれが ある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

以上


(別添2)

「2003年 6月25日
日本銀行

金融政策決定会合等の日程(2003年7月〜12月)

表 金融政策決定会合等の日程(2003年7月〜12月)

会合開催 金融経済月報公表 (注) (議事要旨公表)
2003年7月  7月14日(月)・15日(火)  7月16日(水)
( 8月13日(水))
8月  8月 7日(木)・ 8日(金)  8月11日(月) ( 9月18日(木))
9月  9月11日(木)・12日(金)  9月16日(火) (10月16日(木))
10月 10月 9日(木)・10日(金)
10月31日(金)
10月14日(火)
--
(11月27日(木))
(12月19日(金))
11月 11月20日(木)・21日(金) 11月25日(火) (12月19日(金))
12月 12月15日(月)・16日(火) 12月17日(水) 未定
  • (注)「経済・物価の将来展望とリスク評価(2003年10月)」は、10月31日(金)に公表の予定。

以上