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金融政策決定会合議事要旨

(2004年 2月26日開催分) *

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2004年4月8、9日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2004年 4月14日
日本銀行

(開催要領)

1.開催日時
2004年2月26日(8:59〜11:59)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 福井俊彦(総裁)
  • 武藤敏郎(副総裁)
  • 岩田一政(  副総裁  )
  • 植田和男(審議委員)
  • 田谷禎三(  審議委員  )
  • 須田美矢子(  審議委員  )
  • 中原 眞(  審議委員  )
  • 春 英彦(  審議委員  )
  • 福間年勝(  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 財務省 石井 啓一 財務副大臣
  • 内閣府 中城 吉郎 政策統括官(経済財政−運営担当)

(執行部からの報告者)

  • 理事平野英治
  • 理事白川方明
  • 理事山本 晃
  • 企画室審議役前原康宏
  • 企画室審議役山口廣秀
  • 企画室参事役櫛田誠希
  • 金融市場局長中曽 宏
  • 調査統計局参事役門間一夫
  • 国際局長堀井昭成

(事務局)

  • 政策委員会室長秋山勝貞
  • 政策委員会室審議役武井敏一
  • 政策委員会室調査役村上憲司
  • 企画室調査役山岡浩巳
  • 企画室調査役清水誠一

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

 金融市場調節については、前回会合(2月4、5日)で決定された方針1に従い、市場の資金需給をある程度反映しながら運営した結果、日銀当座預金残高は、31〜34兆円台で推移した。

  1. 「日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」

2.金融・為替市場動向

 短期金融市場では、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、無担保コールレート翌日物(加重平均値)が、概ね0.001%での動きとなったほか、ターム物レートも、引き続き低位で安定的に推移している。

 債券市場では、量的緩和政策の継続期間が長期化するとの見方が広がったことを受け、長期金利(10年新発債流通利回り)は1.2%前後まで低下した。この間、昨年夏の長期金利上昇時に高まったボラティリティは、最近では、落ち着いた状態に復している。なお、国債市場においては、昨年春から夏にかけてもみられたように、時として特定銘柄の調達困難化によって、市場流動性が低下することがある。国債市場の流動性を確保し、円滑な取引と金利形成をサポートすることに資するよう、中央銀行としてなしうる取り組みを行うことも重要であると考えられる。この点、多くの海外主要国では、公的当局による補完的な国債供給制度が用意されている。わが国においても、現在のように債券市場がある程度落ち着いている段階で、市場参加者の自助努力を大前提としたうえで、日本銀行の保有国債を市場に一時的に供給する仕組み(いわゆる「品貸し」)を整えておくことは意義があると考えられる。

 次に、株式市場では、日経平均株価は、2月上旬にかけて軟化したが、中旬以降は、昨年第4四半期のGDP速報値や対ドルでの円相場の下落を材料に上昇し、足許では11千円弱の水準で推移している。

 為替市場では、市場予想を下回る米国景気指標等を背景としたドル売り圧力と、本邦当局の介入に対する警戒感とが交錯する中、持高調整のドル買戻しの動きから円の対ドル相場は108〜109円台に下落した。先行きについての市場参加者の見方を窺うと、目先のドル先安観は後退したものの、中長期的には引き続きドル下落リスクが意識されている。

3.海外金融経済情勢

 米国景気は、着実に回復している。個人消費は緩やかな増加基調にあり、住宅投資も高水準を維持している。また、生産も緩やかに増加しており、企業活動の回復に広がりが出てきている。雇用関連では、雇用者数が緩やかな増勢を示しており、失業率も若干改善するなど、明るい動きがみられている。物価面では、1月の消費者物価指数は、原油高と厳冬を背景とするエネルギー価格の上昇を主因に前月比+0.5%とやや大きく上昇した。食料品、エネルギーを除くコアベースでは、同+0.2%に止まった。この間、昨年12月の貿易収支は赤字幅が拡大したが、四半期で均してみると、横這い圏内の水準にある。

 ユーロエリアでは、企業部門の活動が持ち直しており、景気はすでに底を打ったとみられる。しかし、家計部門の支出が依然として低調なものとなっているほか、ユーロ高が企業活動の重石となっており、回復のモメンタムはなお弱い。

 東アジアでは、景気回復の足取りが引き続き力強い。中国では、内外需とも好調が続いているほか、NIEs、ASEAN諸国・地域では、ほとんどの国・地域で、IT関連財を中心に輸出・生産が増加している。

 国際金融動向をみると、米欧の金融市場では、株価はこのところの高値圏内で推移している。長期金利は、幾分低下した後、ほぼ横這いでの動きとなっている。市場の先行きの金利観をみると、米国では、本年夏頃の利上げ観測が一段と後退したほか、ユーロエリアでも、利上げの予想が弱まっている。この間、エマージング金融市場では、このところ資金流入が続いており、多くの国・地域で、株価の上昇や、対米国債スプレッドの落ち着きがみられている。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

 前回会合以降公表された経済指標のうち、昨年10〜12月の実質GDPは、前期比+1.7%、年率+7.0%と、1990年4〜6月期以来の高い伸びとなり、輸出、設備投資を中心に景気が回復していることを裏付けた。もっとも、輸出、個人消費がデジタル家電の季節需要によって一時的に押し上げられた面があるとみられるほか、雇用者報酬が前年比−0.2%と、企業収益から家計所得への波及が限定的であることから、基調的な景気回復テンポの緩やかさや自律的な回復メカニズムの弱さについて、これまでの見方を変える必要はないと考えられる。

 輸出入動向について、1月の実質輸出は、10〜12月対比+4.8%と大幅な増加が続いている。地域別にみると、米国向け輸出はデジタル家電の季節需要等から高い伸びとなった10〜12月に比べ反動減となったが、東アジア向けは、中国の関税引き下げの影響もあって、伸び率がさらに高まっている。また、EU向けも高い伸びを示した。この間、輸入についても、国内の生産増加などを背景として、情報関連、資本財・部品を中心に堅調な増加を続けている。

 設備投資の先行指標をみると、10〜12月の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、前期比+11.3%と大幅な増加となった。1〜3月の見通し調査は、前期比ほぼ横這いとなっており、均してみれば増勢が続く姿になっている。したがって、設備投資は、製造業を中心に、当面、増加を続ける蓋然性が高い。

 個人消費関連では、1月の都内百貨店売上高が、クリアランスセールの効果もあって小幅持ち直したほか、同月の小売業販売額や家電販売額も、比較的強めの結果となった。

 物価関連指標をみると、国際商品市況は、原油価格が高止まっているほか、非鉄価格が一段高となっており、全体として引き続き上昇している。こうした中、輸入物価(円ベース)を3か月前比でみると、昨年秋口の円高の影響が剥落し、1月には上昇に転じた。国内商品市況も、非鉄や鋼材を中心に引き続き上昇している。こうした状況のもとで、1月の国内企業物価は、3か月前比の上昇幅が+0.4%に拡大した。中身をみると、米価格の上昇テンポは鈍化しているが、内外市況高を反映した素材価格の上昇幅拡大に加え、機械類の下落幅縮小も、全体の押し上げに寄与した。非鉄や鋼材の国内市況が2月も上昇していることなどを踏まえると、国内企業物価は、当面、上昇が続く可能性が高い。

(2)金融環境

 民間銀行貸出(特殊要因調整後)は、減少幅の若干の縮小傾向が続いているが、1月の前年比は−1.9%と、やや足踏みとなっている。民間銀行の貸出姿勢は幾分緩和しているが、それが計数面に現れるにはまだ至っていない。CP・社債の発行残高は、引き続き前年を上回って推移しており、発行環境も良好な状況が続いている。

 マネタリーベースは、1月20日の日銀当座預金残高の目標値の引き上げを受けて、2月は前年比伸び率が幾分高まるとみられる。この間、銀行券発行残高前年比は、2%台後半で推移している。

 マネーサプライは、昨年秋以降、前年比1%台半ばで横這いの推移となっている。足許の動きをやや仔細にみると、厚生年金基金による代行返上資金の国庫納付や個人向け国債の購入資金の払込みが、マネーサプライの減少要因として作用しているとみられる。

 企業倒産件数は、減少傾向が続いており、1月は前年比−18.2%となった。

II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

 景気動向について、委員は、昨年第4四半期のGDP統計に言及しつつ、景気は輸出と設備投資を中心に緩やかに回復しており、先行きも緩やかな回復が見込まれる、との認識で一致した。何人かの委員は、昨年第4四半期は、デジタル家電の季節需要等によって一時的に成長が押し上げられた面があるとみられるため、本年第1四半期と均して実勢を判断する必要がある、との考えを述べた。これらの委員は、第1四半期の成長率は前期の反動からある程度の減速が見込まれるが、1月分の景気指標は、輸出をはじめとして比較的強めのデータが多い、との見方を示した。この間、複数の委員は、内需主導の自律的回復を実現するには、家計部門の雇用所得環境が本格的に改善することが重要である、と指摘した。

 まず、輸出に関して、多くの委員が、1月の実質輸出は、昨年10〜12月の水準をさらに上回っており、東アジア向けを中心に引き続き増勢を維持している、との評価を述べた。

 こうした輸出動向の背景として、何人かの委員は、海外経済が米国や東アジアを中心に順調に回復していることを指摘した。このうちある委員は、米国の雇用者数の増加はなお限定的であるが、労働生産性の伸びが一頃に比べて落ち着いたものとなり、最終需要の伸びが雇用の増加に繋がる素地が整いつつある、とコメントした。もうひとりの委員は、米国では生産性の伸びを背景に高成長にもかかわらずインフレ率が極めて低い状態が続いているが、市場利子率に比べ自然利子率が高まっていることから、デフレのリスクが低下している、と発言した。

 設備投資に関して、何人かの委員は、自動車や電機産業に加えて情報通信、運輸といった非製造業でも増益傾向が広がっていることや、機械受注の12月実績および1〜3月の見通しを踏まえ、設備投資は当面堅調に増加すると見込まれる、との見解を述べた。このうちひとりの委員は、機械受注統計において発注業種の裾野が拡大していることや中小企業の設備投資動向を示すとされる代理店経由の受注も増加していることを指摘したうえで、企業収益が改善している中、先行き設備投資がさらに広がりをみせるか注目していきたい、と発言した。

 個人消費については、何人かの委員が、雇用者所得が明確には増加していない中で、このところの消費関連指標が比較的堅調であることに着目した。このうちのある委員は、デジタル家電を中心とした技術革新が国内消費を刺激し、それが生産や設備投資の増加に繋がるという好循環が生じ始めている可能性があるとして、先行き消費性向の上昇が継続するか注目したい、と付け加えた。また、別のある委員は、株価上昇に伴う資産効果も個人消費に何がしか好影響を与えている、と述べた。これに対し、複数の委員は、労働分配率が低下しており、所得環境が大きくは改善していないことや、先行き家計の社会保障関連費用の負担増が予定されていること等を指摘したうえで、消費はなお横這い圏内にあるとみるべきではないかと主張した。こうした議論を受け、ひとりの委員は、個人消費が所得の増加の裏付けを伴って改善していくのか、あるいは企業の新商品開発が家計支出を促す面があるのか、関連指標を今後しっかり検証していきたい、との意見を述べた。

 物価の動きに関して、ほとんどの委員が、原油や非鉄、鋼材等の内外の商品市況の上昇等から1月の国内企業物価の前年比がゼロ%になったことに言及したうえで、先行き、企業の価格設定スタンスの変化や、川下の最終財価格や消費者物価への波及の有無について注目していきたい、との見解を示した。ある委員は、最近の内外商品市況の上昇の背景として、中国関連需要の高まりと、世界的な金融緩和のもとでの投機的な資金の流入があると整理し、今後、投機資金の帰趨にも注意する必要がある、と付け加えた。

 消費者物価の先行きについて、ひとりの委員は、従来の予想比上振れる蓋然性は低いとの見方を示し、その理由として、(1)素材価格上昇の製品価格等への転嫁は容易ではない、(2)生産性向上に伴い潜在成長率が高まっている可能性があるため、成長率の上昇にもかかわらず需給ギャップの大幅な縮小は期待できない、といった点を指摘した。別のある委員も、需給ギャップが残る中で、消費者物価の下落傾向は当面継続すると述べたうえで、原料価格上昇の製品価格への転嫁や合理化努力を通じた吸収が困難な企業の間では、赤字ないし減益を回避するため生産休止または減産に踏み出す動きもみられ、企業業績への影響にも注意が必要である、とコメントした。これに対し、ひとりの委員は、2003年度に続き04年度もある程度の成長率のもとで、需給ギャップの水準が縮小し、これが物価の押し上げ要因になると考えられることから、04年度の消費者物価前年比がプラスとなる可能性が増してくると思われる、と発言した。

 金融面について、多くの委員は、短期金融市場は、3月期末が近付いているにもかかわらず、極めて落ち着いている、との認識を示した。ある委員は、資金吸収オペの応札倍率がある程度高いことも、市場の余剰感の強さを示している、と述べた。また、複数の委員は、政府短期証券(FB)の増発や介入資金の流入から短期金融市場が不安定化することがないか、注視する必要がある、と付け加えた。

 長期金利について、何人かの委員は、GDP統計等景気回復を再確認する経済指標にもかかわらず、僅かながら水準を切り下げていると指摘した。これらの委員は、金融機関が流動性確保の観点や企業サイドの債務圧縮の動き等から国債投資への依存を続けている中、1月の追加緩和後、量的緩和の継続期間が長期化するとの見方が広がったこともそうした長期金利の動きに寄与している、との見解を示した。このうち複数の委員は、実体経済の動きに比して行き過ぎた金利の低下には注意する必要がある、とコメントした。もうひとりの委員は、先行き、プラスの名目成長率の持続性が確認されていく段階では、実体経済の動きに応じたイールドカーブのスティープ化は自然なものと考えるべきである、との意見を述べた。

 為替相場に関しては、多くの委員は、中長期的なドル先安観が根強い一方、足許、投機筋のポジション調整等から値動きの荒い展開がみられる、との見方を示した。別のひとりの委員は、米国の名目金利が将来、自然利子率に見合った水準へ上昇するという期待を市場が抱けば、ドル安の動きに歯止めがかかるのではないか、との考えを述べた。これらの委員は、引き続き、為替市場の動きを注意深くみていく必要がある、との認識を共有した。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

 当面の金融政策運営については、経済金融情勢についての上述のような判断を踏まえ、全ての委員が、現状の金融市場調節方針を維持することが適当である、との判断を示した。複数の委員は、現状、短期金融市場は極めて落ち着いているが、年度末にかけて、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、調節方針の「なお書き」を活用することが適当である、と付け加えた。また、別のある委員は、市場の資金ニーズをよく見極めつつ、適切な金融調節に努める必要がある、と発言した。

 執行部から報告のあった日本銀行の保有国債を市場に対し供給し得る制度(いわゆる「品貸し」)についても議論があった。委員からは、こうした制度を整えることは、国債市場の流動性向上や円滑な市場機能の維持の観点から意義がある、との意見が相次いだ。そのうえで、これらの委員は、制度の設計に当たっては、市場機能を損ねることなく、一時的かつ補完的な供給という趣旨を明確にする必要がある、と指摘した。また、何人かの委員は、こうした制度の趣旨を誤解のないように分かりやすく説明することが重要である、と付け加えた。

 こうした議論を受けて、議長は、日本銀行が保有する国債を市場に対し供給し得る制度の導入に関する実務的な検討を行い、準備が整い次第、その結果を決定会合に報告するよう、執行部に指示した。また、その旨を別添1により対外公表することを、全員一致で決定した。

IV.政府からの出席者の発言

 会合の中では、財務省の出席者から、以下のような趣旨の発言があった。

  • わが国経済の現状をみると、設備投資や輸出の増加に加え、雇用情勢にも持ち直しの動きがみられ、先日(2月18日)公表されたQEによると、昨年10〜12月期の実質GDP成長率は前期比で1.7%増と4四半期連続でプラスとなるなど、景気は着実に回復している。このような中、依然として継続しているデフレの克服こそが我々の直面している最大の懸案であり、引き続き金融政策の役割は重要であると考えている。
  • 日本銀行は、昨年10月の量的金融緩和政策継続へのコミットメントの明確化に引き続き、先月の金融政策決定会合では景気が回復局面にある中で、当座預金残高目標の引き上げを決定するなど、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを明確化することによって、市場や人々の期待に対して積極的に働き掛けることに重きを置いた政策・措置を講じてきている。政府としては、こうした日本銀行の取り組みは、中長期金利が低位かつ安定的に推移するなど、金融市場の安定に大きく寄与し、金融政策の実効性を高める効果があるものと評価している。
     日本銀行におかれては、引き続き景気回復を持続的なものとするにはどうすれば良いかとの観点から、一段と工夫を講じられないか、さらなる検討を進めて頂きたいと考えている。
  • 今後とも、政府との意思疎通を密にしつつ、金利や為替の動向を含め、経済・市場動向について十分注視しながら、機動的な金融政策運営を実施して頂きたいと考えている。

 内閣府の出席者からは、以下のような趣旨の発言があった。

  • 2月18日に内閣府から公表した昨年10〜12月期のQEでは、前期比1.7%増の実質成長となった。これらを踏まえ、20日の月例経済報告では、先月同様、「景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実に回復している」と判断した。一方、引き続き、為替レートなど金融・資本市場の動向には留意する必要があると考えている。
  • 日本経済の重要な課題は、デフレを早期に克服すること、および内需主導の自律的回復を実現することである。デフレ克服のためには、構造改革の加速・拡大の政策努力を進める中で、政府の行うより強固な金融システムの構築に向けた取り組みと日本銀行による金融政策の波及メカニズムの強化等を通じ、資金供給が拡大していくことが重要である。日本銀行におかれては、今後とも金融・資本市場の動向にも留意のうえ、より効果ある調節手段の実施も含め、適切かつ機動的な金融調節を行って頂きたい。
  • また、現在の情勢を踏まえた物価の安定を巡る諸問題も含め、「構造改革と経済財政の中期展望−2003年度改定」で示した、政府・日本銀行一体となった取り組みによりデフレ圧力は徐々に低下し、集中調整期間の後にはデフレが克服できるという中期の経済の姿を実現するために、金融政策運営の基本的枠組みの検討を進め、さらに実効性ある金融政策運営を行われることを期待する。

V.採決

 以上のような議論を踏まえ、当面の金融市場調節方針については、現状維持とすることが適当との考え方が共有された。

 これを受け、議長から以下の議案が提出され、採決に付された。

議案(議長案)

 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添2のとおり公表すること。

 日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

採決の結果

  • 賛成:福井委員、武藤委員、岩田委員、植田委員、田谷委員、須田委員、中原委員、春委員、福間委員
  • 反対:なし

VI.議事要旨の承認

 前々回会合(1月19、20日)の議事要旨が全員一致で承認され、3月2日に公表することとされた。

以上


(別添1)
2004年 2月26日
日本銀行

国債市場の流動性向上に向けた制度導入の検討

 本日の政策委員会・金融政策決定会合では、国債市場の流動性向上や円滑な市場機能の維持の観点から、日本銀行が保有する国債を市場に対し供給し得る制度(いわゆる「品貸し」)の導入の是非について議論が行われた。

 国債市場においては、時として特定銘柄の調達困難化、ないしその懸念によって市場流動性が低下し、円滑な市場価格の形成が損なわれることがある。そのような場合でも、市場参加者による対応努力が基本となることは言うまでもなく、市場全体への悪影響を回避するための様々な工夫が行われている。ただ同時に、多くの海外主要国では、市場機能を補完するものとして、公的当局による国債供給制度が用意されている。

 決定会合では、わが国においても、日本銀行が一時的かつ補完的な供給という趣旨を明確にした上で本制度を導入することによって、国債市場の流動性向上や円滑な市場機能の維持に貢献し得る余地があるのではないかとの考え方が表明された。

 このような議論を受けて、議長は本制度の導入に関する実務的な検討を行い、準備が整い次第、その結果を決定会合に報告するよう執行部に指示した。

以上


(別添2)
2004年 2月26日
日本銀行

当面の金融政策運営について

 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

 日本銀行当座預金残高が30〜35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

以上