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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2018年6月14、15日開催分)

2018年8月3日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条 第1項に定める「議事の概要を記載し た書類」として、2018年7月30、31日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2018年6月14日(14:00~15:32)
 
6月15日( 9:00~11:34)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
雨宮正佳 (副総裁)
若田部昌澄(  副総裁  )
原田 泰 (審議委員)
布野幸利 (  審議委員  )
櫻井 眞 (  審議委員  )
政井貴子 (  審議委員  )
鈴木人司 (  審議委員  )
片岡剛士 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 可部 哲生 大臣官房総括審議官(14日)
木原 稔 財務副大臣(15日)
 
内閣府 前川 守 内閣府審議官
(執行部からの報告者)
理事 桑原茂裕
理事 前田栄治
理事 内田眞一
企画局長 加藤 毅
企画局政策企画課長 奥野聡雄
金融市場局長 清水誠一
調査統計局長 関根敏隆
調査統計局経済調査課長 一上 響
国際局長 中田勝紀
(事務局)
政策委員会室長 小野澤洋二
政策委員会室企画役 中本浩信
企画局企画役 長野哲平
企画局企画役 稲場広記

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(4月26、27日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、長期国債の買入れ等による資金供給を行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は-0.08~-0.03%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、均してみれば横ばい圏内の動きとなっており、直近では-0.1%台前半で推移している。

株価(日経平均株価)は、南欧の政治情勢を巡る不透明感の高まりや、米国の通商政策に対する懸念などを背景に、5月末にかけて下落したが、その後は、為替円安の動きもあって上昇し、最近では、22千円台後半で推移している。為替相場をみると、円の対ドル相場は、米国金利の上昇等を受けて、幾分円安方向での推移となっている。この間、円の対ユーロ相場は、欧州の弱めの経済指標などを背景に、円高方向で推移している。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。

米国経済は、拡大している。輸出は、増加基調にある。個人消費は、良好な雇用・所得環境などに支えられて増加基調にあるほか、設備投資も、企業マインドの改善などを背景にしっかりと増加している。物価面をみると、総合ベースのインフレ率(PCEデフレーター)は前年比+2%程度、コアベースは同+1%台後半で推移している。

欧州経済は、幾分減速しつつも回復を続けている。輸出は、既往のユーロ高の影響などから増勢がやや鈍化している。個人消費は、雇用・所得環境や消費者マインドの改善などに支えられて増加基調にあるほか、設備投資も増加基調にある。物価面をみると、総合ベースのインフレ率(HICP)は前年比+1%台半ば、コアベースは同+1%近傍で推移している。この間、英国経済は、物価の上昇が個人消費の重石となっており、回復ペースが鈍化している。

新興国経済をみると、中国経済は、総じて安定した成長を続けている。物価面をみると、インフレ率(CPI)は、前年比+2%程度で推移している。NIEs・ASEANでは、輸出が増加基調にあるもとで、企業・家計のマインドは改善しており、内需は底堅く推移している。ロシアやブラジルの景気は、インフレ率の落ち着きなどを背景に緩やかに回復している。インドの景気は、内需を中心に緩やかに回復している。

海外の金融市場をみると、南欧の政治情勢を巡る不透明感の高まりや、米国の通商政策に対する懸念などから、5月末にかけて、多くの国で株価が一時下落するなど、投資家のリスクテイク姿勢が慎重化する場面がみられた。もっとも、その後は、南欧情勢を巡る不透明感の後退や、米国の堅調な経済指標などを背景に、米国の株価が上昇に転じるなど、市場は落ち着きを取り戻しつつある。この間、いわゆる双子の赤字や高インフレといった経済面での脆弱性を抱える一部新興国では、米国の金利上昇などを背景に、通貨が下落した。商品市場では、中東における地政学的リスクなどが意識される中、原油価格が高値圏で推移している。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。

輸出は、海外経済の着実な成長を背景に、増加基調にある。先進国向けは増加基調を続けているほか、新興国向けも幅広く持ち直している。先行きの輸出は、資本財や情報関連を中心に、緩やかな増加基調を続けるとみられる。

公共投資は、高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。先行きについては、オリンピック関連工事などが下支えとなり、高めの水準を維持するとみられる。

設備投資は、企業収益や業況感が改善基調を維持する中で、増加傾向を続けている。法人企業統計で2018年1~3月の売上高経常利益率をみると、堅調な内需や海外経済の成長に支えられて、既往最高水準である6%程度を維持している。こうした中、1~3月のGDPベースの実質設備投資(2次速報値)は、前期比+0.3%と6四半期連続の増加となった。先行指標である機械受注や建築着工・工事費予定額(民間非居住用)は、月々の振れを伴いつつも、増加基調を続けている。先行きの設備投資は、企業収益の改善や緩和的な金融環境、成長期待の高まりなどを背景に、増加を続けていくとみられる。

雇用・所得環境をみると、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得もこのところ伸びを高めている。有効求人倍率はバブル期のピークを超えた高い水準にあるほか、失業率も2%台半ばまで低下している。

個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。各種の販売・供給統計を合成した消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、1~3月に前期比で小幅に減少した後、4月の1~3月対比は大きく増加した。先行きの個人消費は、雇用者所得の増加や既往の株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとみられる。

住宅投資は、貸家系の新設住宅着工戸数が節税ニーズの需要一巡などを受けて減少傾向にあるもとで、弱含んで推移している。

鉱工業生産は、内外需要の増加を背景に、増加基調にある。先行きについては、内外需要の増加を反映して、当面はしっかりとした増加を続けるとみられる。

物価面について、国内企業物価(夏季電力料金調整後)を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、上昇ペースが鈍化している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっており、除く生鮮食品・エネルギーでみた前年比も、4月は+0.4%にとどまっている。先行きについて、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくとみられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。

予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。長期金利から中長期の予想物価上昇率を差し引いた実質長期金利は、マイナスで推移している。

企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、大幅に緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。資金需要面をみると、設備投資向けなどの資金需要が増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%程度のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、高めのプラスで推移している。企業の資金繰りは、良好である。

この間、マネタリーベースは、前年比で8%程度の高い伸びを続けている。マネーストックの前年比は、3%台前半の伸びとなっている。

II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、米国の保護主義的な通商政策に対する懸念やイタリアの政局を巡る不透明感の高まりなどから、5月末にかけて市場が不安定化する局面もあったが、6月入り後は、落ち着きを取り戻しつつあるとの認識を共有した。何人かの委員は、米国金利の上昇が、国際資本フローや新興国経済に及ぼす影響に注意する必要があると述べた。そのうえで、これらの委員は、最近、アルゼンチンやトルコが大幅な通貨安に見舞われているが、これらは、双子の赤字や高インフレといった両国経済が抱える脆弱性に起因しているとの見方を示した。複数の委員は、新興国経済のファンダメンタルズは総じてしっかりしており、現時点で他の国や地域への影響は限定的であるが、これまで長期間にわたって相当の資金が流入していただけに、米国等の金融政策の正常化が、この先、グローバルな金融環境を不安定化させることがないか、しっかり点検していく必要があると述べた。

海外経済について、委員は、総じてみれば着実な成長が続いているとの認識を共有した。委員は、世界的に活発な貿易活動が継続する中、先進国は着実な改善を続け、新興国も全体として緩やかに回復しているとの見方で一致した。ある委員は、欧州経済などは一時的な要因からやや減速しているが、世界的な貿易の増加が、多くの国で所得や支出に好影響を及ぼしており、現時点で、世界経済の改善基調に変化はないとの認識を示した。海外経済の先行きについて、委員は、着実な成長を続けるとの認識で一致した。多くの委員は、世界的に製造業の生産・貿易活動が堅調に推移し、先進国・新興国がバランスよく成長することが見込まれるとの見方を示した。

地域毎にみると、米国経済について、委員は、実質GDP成長率が堅調な伸びを続け、労働市場でも雇用の増加基調が続くなど、拡大しているとの認識で一致した。複数の委員は、法人税減税などの拡張的な財政政策も米国経済を押し上げる方向で作用していると付け加えた。ある委員は、平均時給の伸び率が緩やかに高まる中、基調的なインフレ率が上昇し、これまで伸び悩んでいた予想インフレ率にも上昇の兆しがみられるなど、賃金・物価を巡る環境は改善していると指摘した。米国経済の先行きについて、委員は、拡大を続けるとの見方を共有した。そのうえで、一人の委員は、現政権の保護主義的な通商政策が自国経済に与える影響、特にNAFTA再交渉や米中の貿易摩擦の帰趨については、よくみていく必要があるとの認識を示した。

欧州経済について、委員は、幾分減速しつつも回復を続けているとの認識を共有した。何人かの委員は、1~3月の実質GDP成長率の伸び率鈍化や最近のPMIの低下について、既往のユーロ高や2月下旬の寒波、一部の国でのストライキなど、一時的な要因の影響が大きいとの見方を示した。また、複数の委員は、潜在成長率を大きく上回る昨年後半の成長率がやや出来過ぎであった面もあると述べた。欧州経済の先行きについて、委員は、回復を続けるとの認識で一致した。

新興国経済について、委員は、全体として緩やかに回復しているとの認識を共有した。中国経済について、委員は、総じて安定した成長を続けているとの見方で一致した。複数の委員は、適切なマクロ経済政策運営のもとで、個人消費、設備投資ともに底堅く推移し、安定的な経済成長が実現しているとの認識を示した。NIEs・ASEANについて、委員は、輸出が増加基調にあるもとで、企業・家計のマインド改善や景気刺激策の効果などから、内需も底堅く推移しているとの見方で一致した。資源国経済について、委員は、インフレ率の落ち着きなどを背景に、緩やかに回復しているとの認識を共有した。先行きの新興国経済について、委員は、全体として緩やかな回復を続けるとの認識で一致した。このうち中国経済について、委員は、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとの見方を共有した。

海外経済を巡るリスク要因として、委員は、引き続き、米国の経済政策運営や英国のEU離脱交渉の展開、地政学的リスクなどが挙げられるとの認識を共有した。何人かの委員は、このところ、海外経済を巡る不確実性が幾分高まっているとの認識を示した。この点に関し、複数の委員は、米国による保護主義的な通商政策はG7等の国際会議でも批判されているが、現状、状況が改善する明確な兆しはみえないと述べた。また、何人かの委員は、現時点での影響は限定的ながら、南欧の不安定な政局や米国の金利上昇に伴う一部新興国市場の動揺も、リスク要因として注視していく必要があると指摘した。こうした一方で、ある委員は、北朝鮮などを巡る地政学的な不透明感は、一頃に比べて幾分和らいできているとの見方を示した。

以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大しているとの見方で一致した。委員は、企業部門の動きについて、輸出は増加基調にあるほか、設備投資も、企業収益や業況感が改善基調を維持する中で、増加傾向を続けているとの認識を共有した。また、家計部門についても、委員は、個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加しているとの認識で一致した。何人かの委員は、1~3月の実質GDP成長率が9四半期振りのマイナスとなったことについては、天候不順やスマートフォンの生産調整といった一時的要因の影響が大きいとの見方を示した。このうちの一人の委員は、4月以降、輸出や個人消費がしっかりと増加していることを踏まえると、足もと、再びプラス成長に復していくとの認識を示した。景気の先行きについて、委員は、緩やかな拡大を続けるとの見方で一致した。このうち、国内需要について、委員は、きわめて緩和的な金融環境と政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調を辿るとの認識を共有した。ある委員は、最近、個人消費関連のマインド指標の一部で弱めの動きがみられるほか、海外経済を巡る不確実性も幾分強まっていることから、先行きの展開を注意深くみていく必要があると述べた。別のある委員は、需給ギャップが着実に改善する中、企業は、製品やサービスの供給力拡充を進めていると指摘した。そのうえで、この委員は、こうしたプロセスには時間がかかるため、緩和的な金融環境等を通じて、需給が適度に引き締まった状態を持続させ、企業の前向きな取り組みを継続的にサポートすることが、長期的な経済の成長にとって重要であるとの見解を示した。

輸出について、委員は、海外経済の着実な成長を背景に、増加基調にあるとの認識を共有した。先行きの輸出について、委員は、世界経済が着実な成長を続けるもとで、当面、緩やかな増加基調を続ける可能性が高いとの見方で一致した。複数の委員は、情報関連の輸出については、世界的な半導体の生産調整から、年明け以降一時的に増勢が鈍化していたが、データセンターや車載向け需要の拡大を背景に、先行き、しっかり持ち直していくとの認識を示した。別のある委員は、米国で自動車の輸入関税が引き上げられれば、わが国からの輸出にも影響が出る可能性があると述べた。

公共投資について、委員は、高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しているとの見解で一致した。

設備投資について、委員は、企業収益や業況感が改善基調を維持する中で、増加傾向を続けているとの認識で一致した。複数の委員は、人手不足に対応するための省力化・効率化投資に加え、好調な輸出に後押しされて、能力増強投資も増加しているとの見方を示した。先行きの設備投資について、委員は、緩和的な金融環境や成長期待の高まりなどを背景に、増加を続けていくとの見方で一致した。

雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得もこのところ伸びを高めているとの認識を共有した。何人かの委員は、失業率が2.5%程度の低い水準で定着する中、正社員の有効求人倍率が過去最高を更新するなど、労働市場は一段とタイト化していると指摘した。ある委員は、失業率がここまで低下しているにもかかわらず、物価が弱めの動きを続けていることや、人手不足を補う形で労働市場に参入する人が増えていることを踏まえると、わが国の構造失業率は、2%前後である可能性があるとの見方を示した。何人かの委員は、労働需給の引き締まりが続く中、非正規雇用者の賃金がはっきりと上昇し続けていることは、明るい材料であると指摘した。そのうえで、一人の委員は、こうした動きが、正規雇用者の賃金に波及してきてもおかしくないが、今年の春闘をみても、ベースアップ率は昨年を若干上回る程度にとどまるなど、賃金上昇ペースの緩慢さはなかなか変わらないと述べた。別のある委員は、現状、賃金水準が低い産業や職種で人手不足が深刻化している一方、賃金水準の高い分野では相対的に人手が余剰傾向にあることが、賃金上昇圧力を全体として抑制している可能性があるとの見方を示した。先行きの雇用者所得について、委員は、労働需給の着実な引き締まりが続き、企業収益も改善するもとで、着実に増加を続けるとの見方を共有した。ある委員は、家計の消費活動を刺激するためには、労働生産性の引き上げにより、物価上昇率を上回る賃上げを実現していくことが重要であり、「働き方改革」の影響についても、そうした観点からみていく必要があると述べた。

個人消費について、委員は、振れを伴いながらも、緩やかに増加しているとの認識を共有した。複数の委員は、消費活動指数の動きをみると、生鮮食品価格の上昇や悪天候の影響などから、1~3月は前期比小幅に減少したが、4月には、自動車販売の持ち直しもあってしっかりと増加したと指摘した。先行きの個人消費について、委員は、雇用者所得の増加や既往の株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとの見方で一致した。ある委員は、緩やかながらも名目賃金が上昇していることは、個人消費の基調的な動きに好影響をもたらすと考えられるが、来年度に消費税増税が予定されている中で、消費の先行きを楽観視することはできないと述べた。

住宅投資について、委員は、貸家系の新設住宅着工戸数が節税ニーズの需要一巡などを受けて減少傾向にあることなどを背景に、弱含んで推移しているとの認識を共有した。

鉱工業生産について、委員は、内外需要の増加を背景に、増加基調にあるとの認識を共有した。先行きの鉱工業生産について、委員は、内外需要の増加を反映して、当面は、しっかりとした増加を続けるとの見方で一致した。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、このところ伸び率が幾分縮小しており、0%台後半のプラスとなっているほか、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比も、企業の価格引き上げの動きが限定的であることなどから、0%台前半のプラスにとどまっているとの見方で一致した。新年度入り後、消費者物価が伸び悩んでいることについて、何人かの委員は、春先までの円高や振れの大きい一部品目の下落といった短期的な要因が影響しているほか、消費者の低価格志向などを背景に、小売業を取り巻く競争環境が激しさを増していることが、年度替わりの価格改定の動きを鈍らせた可能性があると指摘した。また、何人かの委員は、やや長い目でみると、賃金や物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が企業や家計に根強く残っていることも、物価が弱めの動きを続けている要因として、引き続き影響しているとの見方を示した。ある委員は、賃金より雇用を優先する労使間の交渉スタイルや、顧客離れを警戒した企業の慎重な価格設定スタンス、さらには公共料金の設定方針など、長期にわたる低成長やデフレの経験によって醸成されたある種の社会的モードが、物価上昇を抑える方向に作用していると述べた。もっとも、これらの委員を含む多くの委員は、マクロ的な需給ギャップの改善は、引き続き、賃金・物価の上昇圧力として作用しているとの認識を示した。何人かの委員は、サービス業を中心に、企業が賃金コストの上昇等を販売価格に反映させる動きもみられており、外食や宅配などの価格は、前年比プラス幅が着実に拡大していると付け加えた。この間、ある委員は、過去の景気後退のもとで定着した非効率なビジネス・モデルの見直しなどが、経済の供給面の拡大に繋がっており、これが、短期的には、需要増に伴う物価上昇圧力を緩和する方向に作用していると述べた。

先行きについて、大方の委員は、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくとの見方を共有した。そのうえで、このうちの一人の委員は、労働市場の逼迫感は増しているものの、企業は慎重な賃金・価格設定スタンスを崩していないことから、「物価安定の目標」の達成にはなお時間がかかるとの認識を示した。別のある委員は、人件費に加え、原材料価格や宅配便、貨物輸送の価格など、企業のコスト面からみた価格上昇圧力は揃って上昇している一方、これを吸収するための生産性引き上げ余力は次第に小さくなっていることから、いずれ、コスト上昇分が企業の販売価格に反映されてくるとの見通しを述べた。

この間、予想物価上昇率の動きについて、委員は、横ばい圏内で推移しているとの認識を共有した。ある委員は、物価が足もとやや伸び悩んでいることについては、一時的な要因も相応に影響しているため、今後、伸び率は回復していくと見込んでいるが、わが国の場合、実際の物価上昇率が低下すると、それに応じて予想物価上昇率も低下する傾向があることから、引き続き十分注意してみていくことが必要であると指摘した。

こうした議論を経て、何人かの委員は、最近の賃金・物価の弱さの背景や、これが予想物価上昇率に及ぼす影響などについて、今一度しっかりと分析していく必要があるとの認識を示した。また、何人かの委員は、次回7月の金融政策決定会合において、「展望レポート」を取りまとめるにあたっては、こうした物価の見通しと、背後にあるメカニズムやリスク評価などを詳しく議論し、その内容を丁寧に説明していくことが重要であると述べた。

2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているほか、大企業、中小企業のいずれからみても、金融機関の貸出態度は引き続き積極的であるとの見方を共有した。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢についての認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。

金融政策運営にあたって、大方の委員は、企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっている点は注意深く点検していく必要があるが、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されているとの認識を共有した。この背景として、大方の委員は、(1)マクロ的な需給ギャップが着実に改善していく中で、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、(2)中長期的な予想物価上昇率は、このところ横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、着実に上昇すると考えられること、の2点を挙げた。ある委員は、現在のように、現実の物価上昇率が伸び悩んでいる局面では、2%に向けたモメンタムが維持されているとの説明はわかりにくいため、情報発信面での何らかの工夫が必要との認識を示した。この点に関し、別のある委員は、金融政策の目的は短期的な物価の上昇ではなく、より長い目で見た物価の安定であるとしたうえで、そうした観点から、物価の趨勢を規定する主な要因として、「需給ギャップ」や「予想物価上昇率」などの動向を点検し、モメンタムの有無等を判断していることを丁寧に説明していく必要があると述べた。ある委員は、先行き、2%に向けたモメンタムを見定めていくにあたっては、マクロ的な需給のバランスに加え、企業の生産性向上に向けた取り組みや価格転嫁の進捗度合いなど、賃金・価格設定に関する企業行動を総合的に確認していくことも重要であると指摘した。この間、一人の委員は、いくつかの指標から需要超過は示唆されるものの、需給ギャップが改善しているかどうかは判然とせず、また、予想物価上昇率も伸び悩んでいるため、足もと、2%に向けたモメンタムが強まっているとはいえないとの見方を示した。

続いて、委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現までにはなお距離があることを踏まえると、「物価安定の目標」に向けたモメンタムをしっかりと維持するために、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適切であるとの認識を共有した。一人の委員は、「物価安定の目標」の実現に資するため、現在の金融政策の運営方針を継続し、経済の好循環を息長く支えていくべきであると述べた。また、ある委員は、2%に向けたモメンタムは維持されているとはいえ、2%の実現までには相応の時間を要すると見込まれることから、その効果と副作用の双方を丁寧に点検しながら、持続可能な形で強力な金融緩和を息長く続けていくことが必要であると指摘した。別のある委員は、最近の物価の伸び悩みは、単純な需要不足だけが理由であるとは考え難いことから、短期間で需要を無理に押し上げるような政策は必ずしも適当ではないと述べた。そのうえで、この委員は、現在の緩和的な金融環境を粘り強く維持することが重要であり、そのためには、経済・金融環境に深刻な歪みが生じることがないよう注意しながら、持続性に十分配慮した政策運営を行うべきであるとの見解を示した。この間、一人の委員は、物価上昇率が伸び悩む中、わが国の金融システムや海外経済の先行きを考えると、追加緩和の実施により、できるだけ早期に物価安定の目標を達成することの重要性が高まっていると述べた。

こうした議論を踏まえ、多くの委員は、強力な金融緩和を継続する場合の効果と副作用について、金融仲介機能や金融システムに及ぼす影響も含めて、多面的な点検・評価を継続していくことが重要であると指摘した。何人かの委員は、わが国の金融機関は充実した資本基盤を有していることもあり、現時点で金融仲介機能に支障は生じていないが、金融機関の収益動向がその経営体力に及ぼす影響は累積的なものであるため、今後とも、低金利環境の継続が金融機関収益や金融仲介機能に及ぼす影響をしっかりと点検していく必要があるとの認識を示した。この点に関し、一人の委員は、金融機関では、保有有価証券の評価損益が悪化し、低収益店舗の減損リスクも生じてきているとしたうえで、金融政策の継続にあたっては、その効果と副作用の二つの時間軸を意識し、副作用が顕在化する前から対応を検討しておくことが必要であると述べた。これに対し、別のある委員は、金融仲介機能の中核は、預金を集めて貸出を行うことであるが、国内銀行の平均預貸率が7割以下であることなどを考慮すれば、低金利が銀行経営の悪化を通じて金融仲介機能を低下させ、却って金融緩和効果を削ぐという見方には疑問があると述べた。このほか、何人かの委員は、日本銀行による大規模な国債買入れが、国債市場の流動性や機能度に及ぼす影響について言及し、最近、こうした影響が様々な形で目に付くようになってきていると述べた。この点に関し、ある委員は、このところ、国債市場では、米国金利等の動きに対する感応度が低下しているほか、新発債の業者間取引が不成立になる日が増えてきていると指摘した。別のある委員は、次回の金融政策決定会合では、最近の物価動向に関する分析に加え、強力な金融緩和を継続することに伴う国債市場への影響などについても、合わせて点検・議論していくことが必要との認識を示した。

委員は、金融政策運営に関する情報発信のあり方についても議論を行った。何人かの委員は、強力な金融緩和を継続していくためには、「物価安定の目標」を実現することの必要性について、人々の理解を得る努力を続けていくことが重要であると述べた。このうちの一人の委員は、2%の「物価安定の目標」を掲げることは、国際社会に対する、日本が他国並みの3~4%程度の名目成長を実現するという決意の表れでもあるとの見方を示した。ある委員は、予想物価上昇率がなかなか上がらない現状を考えると、場合によっては、民間主体の期待形成に働きかけるべく、2%に向けたコミュニケーションと広い意味でのコミットメントを改善する工夫を講じることが望ましいと述べた。別のある委員は、4月の展望レポートで「2%程度に達する時期」の記述を削除したことにより、「できるだけ早期に物価安定の目標の実現を目指す」という約束に対する信認が弱まっているとの見方を示した。そのうえで、この委員は、足もとの物価上昇率が高まらず、予想物価上昇率も伸びにくくなっていることから、予想物価上昇率に働きかける追加的なコミットメントが必要であると述べた。これに対し、複数の委員は、物価の見通しに関する記述が変更されても、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するというコミットメントは全く変わっていないとの見方を示した。このうち、一人の委員は、前回会合以降の市場動向等をみても、記述の変更が「コミットメントの後退」とは受け取られてはいないとの認識を示した。これに関連し、別のある委員は、政府と日本銀行の「共同声明」で示されたそれぞれのコミットメントに揺らぎがないと人々に理解されることが大切であり、この点、総裁再任にあたり、政府・日本銀行で「共同声明」を堅持することを再確認した意義は非常に大きいと述べた。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。そのうえで、一人の委員は、本来の市場機能をできるだけ維持する観点から、長期金利の操作にあたっては、市場調節をより弾力的に運営していくことも重要であるとの見解を示した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。」

これに対し、ある委員は、消費税増税や米国の景気後退など2020年度までのリスク要因を考慮すると、できるだけ早期に物価上昇率が2%をオーバーシュートする状況を作り出すべきであり、そのために10年以上の幅広い年限の国債金利を一段と引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行うこと、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持すること、が適当であるとの認識を共有した。そのうえで、ある委員は、ETFなどリスク性資産の買入れについては、「物価安定の目標」を実現するための政策パッケージの一要素として行っていることを認識しつつ、その政策効果と考え得る副作用について、あらゆる角度から検討を続けるべきであると述べた。

先行きの金融政策運営の考え方について、大方の委員は、(1)2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、(2)消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する、(3)今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行うとの方針を共有した。

これに対し、一人の委員は、オーバーシュート型コミットメントを強化し、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、2%に向けたモメンタムの構成要素の中で特に重要な、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には、何らかの追加緩和手段を講じるというコミットメントを追加することが適当であると述べた。

IV.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 現在、「経済財政運営と改革の基本方針2018」、いわゆる「骨太の方針2018」の議論を進めているところである。本日、与党で了承を得られ次第、速やかに閣議決定される予定となっている。
  • この「骨太の方針2018」には、財政健全化に向けた具体的かつ実効性の高い計画が示されており、政府としては、引き続き、経済再生と財政健全化の両立にしっかりと取り組んでいく所存である。
  • 日本銀行には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  • 2018年1~3月期GDP2次速報では、実質成長率は前期比-0.2%、年率換算で-0.6%となった。今回のマイナスは8四半期連続でプラス成長が続いた後のものであり、わが国の景気が緩やかに回復しているという認識には変わりはない。先行きも、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。物価動向の判断には、GDPデフレーターを含め、各種物価指標を総合的にみていくことが重要である。
  • 本日、「骨太方針」と「未来投資戦略」の取りまとめを行う予定である。「骨太方針」においては、人づくり革命と生産性革命に取り組むこと、専門的・技術的な外国人材の受入れを進めるため新たな在留資格を創設すること、2025年度のプライマリー・バランス黒字化を目指すことなどを定めることとしている。これらの重要政策に基づき、経済財政運営に万全を期し、経済の好循環を確実なものとしていきたいと考えている。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて、金融緩和を着実に推進していくことを期待する。

V.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、 櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
片岡委員

片岡委員は、消費税増税や米国景気後退など2020年度までのリスク要因を考慮すると、金融緩和を一段と強化することが望ましく、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2 兆円、約3.2 兆円の残高を維持する、との資産買入れ方針とすることを内容とする議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、 櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員
反対:
なし

VI.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)の検討

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、(1)消費者物価の前年比について、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとの意見、および、(2)コミットメントを強化し、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には、追加緩和手段を講じることが適当であり、これを本文中に記述することが必要との意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

VII.議事要旨の承認

議事要旨(2018年4月26、27日開催分)が全員一致で承認され、6月20日に公表することとされた。

以上


  • 「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。」 本文に戻る

別紙

2018年6月15日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. (1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
      2. (2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。
  2. わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。そうしたもとで、輸出は増加基調にある。国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が改善基調を維持するなかで、増加傾向を続けている。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。住宅投資は弱含んで推移している。この間、公共投資は高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けている。わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。
  3. 先行きのわが国経済は、緩やかな拡大を続けるとみられる。国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。輸出も、海外経済の着実な成長を背景として、基調として緩やかな増加を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(注2)
  4. リスク要因としては、米国の経済政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが挙げられる。
  5. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う(注3)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:片岡委員。片岡委員は、消費税増税や米国景気後退など2020年度までのリスク要因を考慮すると、金融緩和を一段と強化することが望ましく、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、消費者物価の前年比は、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして反対した。 本文に戻る
  3. (注3)片岡委員は、コミットメントを強化し、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成する観点から、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には、追加緩和手段を講じることが適当であり、これを本文中に記述することが必要として反対した。 本文に戻る