金融政策

ホーム > 金融政策 > 金融政策決定会合の運営 > 金融政策決定会合議事要旨 2018年 > 金融政策決定会合議事要旨(10月30、31日開催分)

政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2018年10月30、31日開催分)

2018年12月26日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2018年12月19、20日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2018年10月30日(14:00~15:10)
 
10月31日( 9:00~12:01)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
雨宮正佳 (副総裁)
若田部昌澄(  副総裁  )
原田 泰 (審議委員)
布野幸利 (  審議委員  )
櫻井 眞 (  審議委員  )
政井貴子 (  審議委員  )
鈴木人司 (  審議委員  )
片岡剛士 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 茶谷 栄治 大臣官房総括審議官(30日)
うえの 賢一郎 財務副大臣(31日)
 
内閣府 中村 昭裕 内閣府審議官(30日)
田中 良生 内閣府副大臣(31日)
(執行部からの報告者)
理事 前田栄治
理事 内田眞一
理事 池田唯一
企画局長 加藤 毅
企画局政策企画課長 奥野聡雄
金融市場局長 清水誠一
調査統計局長 関根敏隆
調査統計局経済調査課長 一上 響
国際局長 中田勝紀
(事務局)
政策委員会室長 小野澤洋二
政策委員会室企画役 山城吉道
企画局企画役 永幡 崇
企画局企画役 長野哲平
企画局企画役 東 将人

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(9月18、19日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、長期国債の買入れ等による資金供給を行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は-0.07~-0.04%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、短期の円転コスト低下を受けた海外投資家による短国需要の高まりを背景に、-0.3%程度まで低下している。

株価(日経平均株価)は、円安や好調な企業決算期待など背景に、10月上旬にかけて24,000円台まで上昇したが、米国株価の下落や米中間の通商問題を巡る不透明感などから下落に転じ、最近では、22,000円程度で推移している。為替相場をみると、円の対ドル相場は、日米金利差の拡大等を背景に、10月上旬にかけて円安方向の動きとなった後、世界的な株価下落を受けて円高に転じたが、期間を通してみれば横ばい圏内の動きとなっている。この間、円の対ユーロ相場は、イタリアの政治情勢を巡る不透明感などが意識され、円高・ユーロ安方向で推移した。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、総じてみれば着実な成長が続いている。先行きについても、総じてみれば着実な成長を続けるとみられる。

米国経済は、拡大している。輸出は、増加基調にある。個人消費は、良好な雇用・所得環境や消費者マインドなどに支えられて増加基調にあるほか、設備投資も、企業収益や業況感の改善などを背景にしっかりと増加している。物価面をみると、総合ベースのインフレ率(PCEデフレーター)は前年比+2%台前半、コアベースは同+2%程度で推移している。先行きの米国経済は、拡張的な財政政策に支えられ、拡大を続けるとみられる。

欧州経済は、幾分減速しつつも回復を続けている。輸出は、増勢が鈍化している。個人消費は、良好な雇用・所得環境や消費者マインドなどに支えられて増加基調にあるほか、設備投資も増加基調にある。物価面をみると、総合ベースのインフレ率(HICP)は前年比+2%程度、コアベースは同+1%程度で推移している。先行きの欧州経済は、回復を続けるとみられる。この間、英国経済は、インフレ率の落ち着きなどから、緩やかな回復傾向にある。

新興国経済をみると、中国経済は、総じて安定した成長を続けている。物価面をみると、インフレ率(CPI)は、前年比+2%台前半で推移している。先行きの中国経済は、米国による対中関税率引き上げの影響を相応に受けるものの、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとみられる。NIEs・ASEANでは、輸出が増加基調にあるもとで、企業・家計のマインドは改善しており、内需は底堅く推移している。ロシアやブラジルの景気は、インフレ率の落ち着きなどを背景に緩やかに回復している。インドの景気は、内需を中心に緩やかに回復している。

海外の金融市場をみると、堅調な経済指標を受けた米国長期金利の上昇などをきっかけに、割高感が意識されていた米国株を始め、多くの国の株価が下落した。この間、脆弱性が高い一部の新興国通貨については、トルコやアルゼンチンにおける政策対応などを背景に、買い戻しの動きがみられた。商品市場では、原油価格が、中東における地政学的リスクが意識されて上昇した後、米国株価の下落などから反落し、期間を通してみれば横ばい圏内で推移した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。先行きについても、緩やかな拡大を続けるとみられる。

輸出は、海外経済が総じてみれば着実な成長を続けていることを背景に、増加基調にある。先進国向けは増加基調を続けているほか、新興国向けも幅広く持ち直している。先行きの輸出は、情報関連や資本財を中心に、当面、緩やかな増加基調を続ける可能性が高く、その後も、海外経済の成長が続くもとで、基調としては緩やかな増加を続けるとみられる。

公共投資は、高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している。先行きについては、オリンピック関連工事や補正予算などが下支えとなり、高めの水準を維持するとみられる。

設備投資は、企業収益が改善基調を辿り、業況感も良好な水準を維持するもとで、増加傾向を続けている。先行指標である機械受注や建築着工・工事費予定額(民間非居住用)は、月々の振れを伴いつつも、増加基調を続けている。先行きの設備投資は、企業収益の改善や緩和的な金融環境、成長期待の緩やかな改善などを背景に、当面、増加を続けていくとみられる。その後は、資本ストックの調整圧力が高まっていくことから、設備投資の増加ペースは徐々に鈍化していくと見込まれる。

雇用・所得環境をみると、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得もこのところ伸びを高めている。有効求人倍率はバブル期のピークを超えた高い水準で上昇しているほか、失業率も引き続き低水準で推移している。

個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加している。各種の販売・供給統計を合成した消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、4~6月に前期比で増加した後、7~8月の4~6月対比も増加した。先行きの個人消費は、当面は、雇用者所得の増加や株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとみられる。その後も、消費税率引き上げに伴い一時的に減少に転じるものの、基調としては、緩やかな増加傾向を続けるとみられる。

住宅投資は、横ばい圏内で推移している。新設住宅着工戸数の内訳をみると、持家、分譲、貸家ともに、このところ概ね横ばいの動きとなっている。

鉱工業生産は、内外需要の増加を背景に、増加基調にある。先行きについては、内外需要の増加を反映して、当面は増加を続ける可能性が高く、その後も、海外経済が総じてみれば着実に成長するもとで、基調としては緩やかな増加を続けるとみられる。

物価面について、国内企業物価(夏季電力料金調整後)を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっており、除く生鮮食品・エネルギーでみた前年比は、足もと0%台半ばとなっている。先行きについて、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。

予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。長期金利から中長期の予想物価上昇率を差し引いた実質長期金利は、マイナスで推移している。

企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、大幅に緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。資金需要面をみると、設備投資向けなどの資金需要が増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、高めのプラスで推移している。企業の資金繰りは、良好である。

この間、マネタリーベースは、前年比で6%程度の伸びとなっている。マネーストックの前年比は、3%程度の伸びとなっている。

II.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、米中間の通商問題を巡る不透明感などが意識される中で、10月上旬の米国株価の大幅下落をきっかけに投資家のリスク回避姿勢が強まり、株価を中心に振れの大きな展開が続いているとの認識を共有した。一人の委員は、米中通商問題の長期化に加え、新興国からの資本流出リスクや英国のEU離脱交渉の難航、サウジアラビアを巡る地政学的リスクの強まりなども、株式市場におけるリスクセンチメントの悪化に繋がっていると指摘した。もっとも、何人かの委員は、株価は大きく変動しているものの、内外ともに経済のファンダメンタルズは良好であるほか、現時点で、株式以外の市場が概ね安定して推移していることは安心材料であると述べた。このうちの一人の委員は、米国の株価下落は、一部のIT関連企業に対する過大な期待が調整された面があるほか、株価の下落が為替市場に波及していないことからみても、市場が、先行き、米国経済は堅調を維持するとみていることを示していると付け加えた。新興国を巡る市場の動向について、何人かの委員は、このところ、トルコやアルゼンチンの通貨下落の動きは小康状態にあるものの、米国等において金融政策の正常化が進む中で、経済に脆弱性を抱えるこうした国以外にも、資本流出の動きが波及することがないかどうか、引き続き注視していく必要があると述べた。

海外経済について、委員は、総じてみれば着実な成長が続いているとの認識を共有した。多くの委員は、最近では、国・地域間の成長のばらつきが拡大しているものの、米国を牽引役として、景気の前向きなサイクルは維持されているとの見方を示した。何人かの委員は、グローバル製造業PMIが50を上回る水準ながらも低下傾向を辿るなど、景況感の改善ペースが鈍化していることには留意が必要であると述べた。このうちの一人の委員は、貿易摩擦や米国の金利上昇を背景に、海外経済は踊り場の状態になりつつあるとの見方を示した。海外経済の先行きについて、委員は、総じてみれば着実な成長を続けるとの見方で一致した。何人かの委員は、IMFの世界経済見通しは幾分下振れたものの、当面、3%台後半の高めの成長率が続くと見込まれているほか、世界貿易量も前年比4%程度の伸びが予想されていると指摘した。そのうえで、これらの委員は、先行きの不確実性は幾分高まっているものの、現時点では、世界経済は拡大基調を続けるというシナリオは維持されているとの認識を示した。

経済の現状と先行きを地域毎にみると、米国経済について、委員は、拡大しているとの認識で一致した。何人かの委員は、7~9月の実質GDP成長率が前期比年率3%台半ばとなる中、9月の非製造業のISM指数が約20年振りの高水準となるなど、しっかりとした成長を続けていると述べた。そのうえで、複数の委員は、金利上昇の影響などから、このところ住宅市場が幾分弱含んでいることには留意が必要であると指摘した。米国経済の先行きについて、委員は、拡張的な財政政策にも支えられ、拡大を続けるとの見方を共有した。ある委員は、財務制限条項を緩めたコベナンツライト・ローンの増加やサブプライム自動車ローンの延滞率上昇などがみられており、今後の金融面の動向を注視していると述べた。この点に関連して、別のある委員は、循環要因を調整した株価収益率はリーマンショック時を上回っているが、それだけで市場の過熱感を判断することはできないほか、家計や企業の債務残高は、リーマンショック時ほど極端に積み上がってはいないことから、現時点で、金融面の大きな歪みは生じていないとの見方を示した。

欧州経済について、委員は、幾分減速しつつも回復を続けているとの認識を共有した。何人かの委員は、足もとのPMIや輸出に減速感がみられるものの、設備投資や個人消費は増加基調を続けているとの見方を示した。欧州経済の先行きについて、委員は、回復を続けるとの認識で一致した。何人かの委員は、英国のEU離脱交渉やイタリアの財政問題を巡る不透明感の高まりが、金融市場の変調や経済の下押しに繋がるおそれもあるため、この先、欧州経済の回復基調が維持されるかどうか、注意深くみていく必要があると述べた。

新興国経済について、委員は、全体として緩やかに回復しているとの認識を共有した。中国経済について、委員は、総じて安定した成長を続けているとの見方で一致した。NIEs・ASEANについて、委員は、輸出が増加基調にあるもとで、企業・家計のマインドが改善しており、内需は底堅く推移しているとの見方で一致した。資源国経済について、委員は、インフレ率の落ち着きなどを背景に、緩やかに回復しているとの認識を共有した。先行きの新興国経済について、委員は、全体として緩やかな回復を続けるとの認識で一致した。このうち中国経済について、多くの委員は、今後、米国による対中関税引き上げの影響を相応に受けると考えられるものの、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとの見方を共有した。そのうえで、複数の委員は、先進国に比べて、新興国の方が、経済全体に占める貿易や海外からの投資に対する依存度が高いことから、通商問題や金利上昇が新興国経済に及ぼす影響を特に注意してみていく必要があると述べた。

わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているほか、大企業、中小企業のいずれからみても、金融機関の貸出態度は引き続き積極的であるとの見方を共有した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大しているとの見方で一致した。何人かの委員は、9月短観で、企業の設備投資スタンスの強さが改めて確認されるなど、内需の増加が続いていると指摘した。何人かの委員は、わが国の実質GDPは、4~6月に前期比年率+3.0%と高い伸びとなった後、7~9月は自然災害の影響などから一時的に減速すると予想されるが、その後は、挽回生産や復興・復旧に向けた財政支出も見込まれるため、増勢を取り戻すとの見方を示した。

輸出の現状について、委員は、自然災害による一時的な減産や物流被害の影響がみられるものの、海外経済が総じてみれば着実な成長を続けていることを背景に、増加基調にあるとの認識を共有した。先行きの輸出についても、委員は、海外経済の成長が続くもとで、緩やかな増加基調を続ける可能性が高いとの見方で一致した。ある委員は、官民挙げての取り組みが奏功して関西国際空港が当初予想よりも早く復旧したことで、関西のインバウンド需要の早期回復が見込まれると述べた。この間、複数の委員は、最近、工作機械などの中国向け受注が鈍化していることから、米中間の貿易摩擦問題がわが国の輸出に影響を及ぼしている可能性を指摘する声もあると述べた。多くの委員は、この問題がわが国の輸出に及ぼす影響は、現時点では限定的とみられるものの、米中間の交渉に進展の兆しが見えない中、輸出を巡る不透明感は一頃よりも高まっており、先行きの動向を十分注視していく必要があるとの認識を共有した。

公共投資について、委員は、高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しているとの見解で一致した。先行きの公共投資について、委員は、オリンピック関連工事や今夏の自然災害を受けた復旧工事などが下支えとなり、高めの水準を維持するとの認識を共有した。

設備投資について、委員は、企業収益が改善基調を辿り、業況感も良好な水準を維持するもとで、増加傾向を続けているとの認識で一致した。何人かの委員は、9月短観における今年度の設備投資計画は、大企業を中心に、この時期の平均的な伸び率をはっきり上回っているほか、その後のヒアリング情報からも、企業の堅調な設備投資スタンスが窺われると指摘した。先行きの設備投資について、委員は、企業収益の改善や緩和的な金融環境、成長期待の緩やかな改善などを背景に、増加を続けていくとの見方で一致した。

雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な引き締まりを続けており、雇用者所得もこのところ伸びを高めているとの認識を共有した。一人の委員は、失業率が2%台半ばの低水準で推移する中、有効求人倍率はバブル期のピークを超えた高水準を維持しており、特に正社員については、統計開始以来の最高水準にあるなど、労働市場は引き続きタイト化していると指摘した。

個人消費について、委員は、振れを伴いながらも、緩やかに増加しているとの認識を共有した。先行きの個人消費について、委員は、雇用者所得の増加や株価上昇による資産効果に加え、耐久財の買い替え需要にも支えられて、緩やかな増加傾向を辿るとの見方で一致した。一人の委員は、消費活動指数が春先から夏場にかけて増加を続けるなど、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は堅調に推移していると指摘した。別のある委員は、賃金統計がサンプル入れ替えの影響から過大に推計されている可能性を考慮しても、賃金と雇用を掛け合わせた雇用者所得は着実に増加していると指摘したうえで、こうした所得の改善が消費の増加を下支えしていると述べた。一方、ある委員は、設備投資の拡大など前向きな動きを見せている企業部門に比べ、家計における現預金重視の姿勢や節約志向には大きな変化がなく、個人消費が活性化するまでには時間がかかる可能性があるとの見方を示した。

住宅投資について、委員は、横ばい圏内で推移しているとの認識を共有した。住宅投資の先行指標である新設住宅着工戸数について、委員は、持家、分譲、貸家ともに、概ね横ばい圏内で推移しているとの見方で一致した。

鉱工業生産について、委員は、内外需要の増加を背景に、増加基調にあるとの認識を共有した。複数の委員は、今夏の自然災害により、7~9月の鉱工業生産指数は4~6月に比べて減少したが、被災地の生産設備や物流インフラは概ね復旧しており、その影響は一時的にとどまるとの見方を示した。先行きについても、委員は、内外需要の増加を反映して、当面は、しっかりとした増加を続ける可能性が高く、その後も、海外経済が総じてみれば着実に成長するもとで、基調としては緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は1%程度となっているほか、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどを背景に、0%台半ばのプラスにとどまっているとの見方で一致した。そのうえで、委員は、最近の基調的な動きを踏まえると、わが国の物価は、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べ、なお弱めの動きを続けているとの認識を共有した。この間、予想物価上昇率について、委員は、横ばい圏内で推移しているとの見方で一致した。大方の委員は、短期的な予想物価上昇率は一頃に比べると上昇しているものの、景気の拡大等に比べて現実の物価が弱めの動きを続けていることなどから、中長期的な予想物価上昇率は上がりにくい状況が続いているとの認識を共有した。

2.経済・物価情勢の展望

2018年10月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の作成にあたり、委員は、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、緩やかな拡大を続けるとの見方を共有した。2018年度について、委員は、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、国内需要は増加基調を辿るとの認識を共有した。また、委員は、輸出も、海外経済が総じてみれば着実に成長していくことを背景に、基調として緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。こうした議論を経て、委員は、2018年度は、潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方を共有した。2019年度と2020年度について、委員は、内需の減速を背景に成長ペースは鈍化するものの、外需にも支えられて、景気の拡大基調が続くとの認識を共有した。そのうえで、委員は、2018年7月の展望レポートでの見通しと比べると、見通し期間の成長率は、概ね不変であるとの見方で一致した。

続いて、委員は、わが国の物価情勢について議論を行った。まず、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて物価が弱めの動きを続けている背景について、委員は、基本的には、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っていることの影響が大きいとの認識を共有した。こうした要因に加えて、委員は、非製造業を中心とした生産性向上余地の大きさや、近年の技術進歩、女性や高齢者の弾力的な労働供給などは、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに慎重な価格設定スタンスを維持することを可能にしているとの見解で一致した。一人の委員は、最近の物価上昇の遅れについては、長期的な需要停滞が供給力の低下をもたらすという、いわゆる履歴効果(ヒステリシス)に基づくデフレマインドや、ここ数年の生産性向上等の物価下押し要因が複合的に作用しており、需要不足という単純な要因によるものでないことは明らかであると述べた。

次に、委員は、先行きの物価動向について議論を行った。大方の委員は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。これらの委員は、2018年7月の展望レポートでの物価見通しと比べると、2018年度を中心に幾分下振れているとの見方で一致した。

さらに、委員は、消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率を高めていくメカニズムを、一般物価の動向を規定する主な要因に基づいて整理した。まず、マクロ的な需給ギャップについて、大方の委員は、労働需給の着実な引き締まりや資本稼働率の上昇を背景に、プラス幅を拡大しているとの認識で一致した。一人の委員は、消費者物価の前年比上昇率が、4~6月をボトムに徐々に持ち直しているほか、短観の販売価格判断DIがプラス圏で定着しているなど、プラスの需給ギャップを起点とする物価上昇のメカニズムは、足もとしっかりと作動していると付け加えた。また、先行きの需給ギャップについて、大方の委員は、2018年度はプラス幅の緩やかな拡大が続き、2019年度以降についても、プラス幅の拡大は一服するものの、比較的大幅なプラスで推移するとの見方を共有した。次に、中長期的な予想物価上昇率について、大方の委員は、先行き上昇傾向を辿り、2%に向けて次第に収斂していくとの認識を共有した。その背景として、これらの委員は、(1)「適合的な期待形成」の面では、需給ギャップの改善などに伴う現実の物価上昇率の高まりが、予想物価上昇率を押し上げていくと期待されること、(2)「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが、予想物価上昇率を押し上げる力になると考えられることを指摘した。そのうえで、何人かの委員は、予想物価上昇率の高まりにはなお時間がかかると見込まれるものの、物価が2%に向けて徐々に上昇していくという方向感に変わりはないとの認識を示した。このうちの一人の委員は、人々の物価観の変化については不確実性が高いため、物価の上昇テンポは緩やかなものになると考えておくべきと述べた。この間、別の一人の委員は、需給ギャップの拡大が物価を押し上げにくくなっている可能性があることや、予想物価上昇率が弱めの動きを続けていることなどを踏まえると、現時点では、この先、2%に向けて物価上昇率が伸びを高めていくとは判断できないと述べた。

このほか、日本経済の成長力と物価動向の長期的な関係について、委員は、最近の女性や高齢者の労働参加の高まりや、生産性向上に向けた企業の取り組みは、短期的には、賃金や物価の上昇圧力を弱める方向に作用するが、より長い目でみれば、経済の成長力を強化し、賃金や物価の上昇圧力を高める可能性があるとの見方で一致した。

委員は、経済・物価情勢の先行きの中心的な見通しに対する上振れ・下振れ要因についても議論を行った。まず、経済の上振れ・下振れ要因として、委員は、(1)海外経済の動向、(2)消費税率引き上げの影響、(3)企業や家計の中長期的な成長期待、(4)財政の中長期的な持続可能性の4点を挙げた。委員は、米国等の保護主義的な動きを中心に、このところ、海外経済を巡る下振れリスクは大きくなってきているとの認識を共有した。何人かの委員は、米中間の通商問題の影響については、近年、複雑なグローバル・サプライチェーンが構築され、各国経済の相互依存関係が一段と強まっていることを踏まえたうえで分析する必要があると述べた。また、何人かの委員は、現時点で、この問題がわが国経済に及ぼす影響は限定的であるものの、この先、貿易活動に対する直接的なインパクトのみならず、国際金融市場の動揺や企業マインドの悪化という間接的な経路を通じた影響が生じる可能性にも注意が必要であると指摘した。ある委員は、日本の株価の動きについて、内需型企業よりも外需型企業の株価下落の方が大きいと指摘したうえで、市場は、日本企業にも貿易摩擦問題がある程度影響しうるとみているのではないかと述べた。一方で、複数の委員は、NAFTAの再交渉が合意に達するなど、不確実性の低下に繋がる動きも一部にみられると指摘した。また、一人の委員は、米中を含め、各国間で問題解決に向けた対話が続いていることから、この問題について、極端な悲観論に傾斜しないように留意すべきであると述べた。このほか、多くの委員は、金融政策の正常化を含む、米国のマクロ政策運営が国際金融市場や新興国経済に及ぼす影響、英国のEU離脱交渉の展開や、中東等を巡る地政学的リスクなども、海外経済を巡るリスク要因として挙げられると述べた。そのうえで、委員は、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に、下振れリスクの方が大きいとの認識で一致した。

次に、物価に固有の上振れ・下振れ要因として、委員は、(1)中長期的な予想物価上昇率の動向、(2)マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度、(3)為替相場の変動や国際商品市況の動向、の3点を挙げた。このうち、中長期的な予想物価上昇率の動向について、委員は、先行き上昇傾向を辿るとみているが、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるまでに予想以上に時間がかかり、現実の物価が弱めの推移を続ける場合には、適合的な期待形成を通じて、予想物価上昇率の高まりも遅れるリスクがあるとの見方で一致した。一人の委員は、需給ギャップが拡大するもとで現実の物価が上昇し、適合的期待形成を通じて予想物価上昇率も上がることがメインシナリオではあるが、その前提となる海外経済について下振れリスクが高まっていることは気がかりであると述べた。この間、別のある委員は、プラスの需給ギャップのもとで物価の上昇が遅れているが、これは、企業の生産性向上の取り組みが物価上昇を抑制するなど、以前に比べて物価変動メカニズムが複雑化しており、先行きの不確実性も高まっていることが影響しているとの見解を示した。こうした議論を経て、委員は、物価の見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に下振れリスクの方が大きいとの認識を共有した。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。

金融政策運営にあたって、大方の委員は、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスや、値上げに対する家計の慎重な見方が根強い点は注意深く点検していく必要があるが、2%に向けたモメンタムは維持されているとの認識を共有した。この背景として、大方の委員は、(1)マクロ的な需給ギャップがプラスの状態が続くもとで、企業の賃金・価格設定スタンスは次第に積極化してくるとみられること、(2)中長期的な予想物価上昇率は、このところ横ばい圏内で推移しており、先行き、実際に価格引き上げの動きが拡がるにつれて、徐々に高まると考えられることを挙げた。

委員は、7月の金融政策決定会合で決定した「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」について議論を行った。ある委員は、民間エコノミストへのアンケート調査によれば、政策金利のフォワードガイダンスの導入以降、「日本銀行が早期に利上げする」との見方が大きく減少していると述べ、こうした結果は、強力な金融緩和を粘り強く続けていくという日本銀行の政策スタンスに対する理解が進んでいることを示しているとの見解を述べた。何人かの委員は、国債市場の流動性や機能度を示す指標が、ある程度改善していることを踏まえると、7月に決定した金融市場調節や資産買入れの弾力的な運営は、概ね狙いに沿った効果を発揮していると指摘した。このうちの一人の委員は、7月の決定以降、国債金利は経済・物価情勢等に応じて多少変動するようになっているが、これは、強力な金融緩和効果がしっかり確保されていると評価しうる範囲内の動きであるとの認識を示した。そのうえで、この委員は、長期金利が多少なりとも変動しうるとしたことで政策の持続性が担保された結果、そうした対応をせずに単に金利水準を維持する約束だけをした場合に比べて、フォワードガイダンスに対する信頼性は高まったとの見解を述べた。

続いて、委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。大方の委員は、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、2%に向けたモメンタムは維持されていることから、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。一人の委員は、「物価安定の目標」の実現に資するため、現在の金融政策の運営方針を継続し、経済の好循環を息長く支えていくべきであると述べた。別の一人の委員は、景気拡大や労働需給の引き締まりに比べると、基調としての物価は引き続き弱めの動きとなっていることから、きわめて緩和的な金融環境を息長く続けていく必要があるとの認識を示した。また、ある委員は、金融システム面の副作用について慎重に点検しつつ、現行の金融緩和を続けることで、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く維持し、物価上昇を粘り強く待つことが肝要であると指摘した。別のある委員は、過去に金利を引き上げた後に景気が悪化し、かえって長期金利が低下した局面があることを指摘したうえで、現在は、強力な金融緩和を粘り強く続けることが重要であり、こうした考え方は、金融機関にも理解されるようになってきていると述べた。この間、一人の委員は、名目長期金利を長期にわたって「ゼロ%程度」に誘導した場合、長期的な実質金利の動向等によっては、金融緩和が予想物価上昇率に与える影響がかえって低減する可能性がないか、注意する必要があると述べた。そのうえで、この委員は、政策の枠組みとしては緩和方向を維持しつつ、金利変動幅や金利操作目標年限等について、柔軟に検討していくことが重要であると指摘した。一方、ある委員は、2%に向けて物価に加速感がみられない現状を重く受け止める必要があり、こうした中にあって、市場の一部で言われているような更なる長期金利変動幅の柔軟化を行えば、2%の実現に対する日本銀行のコミットメントを揺るがしかねないとの認識を示した。また、ある委員は、適合的な期待形成を通じた物価上昇経路が本格的に機能し始めるには、想定以上の時間を要するため、物価目標の早期達成に向けては、予想インフレ率に直接的に働きかけることが特に重要であるとの見解を示した。そのうえで、この委員は、金融緩和の強化とともに、政府との政策連携ももう一段強化する必要があるのではないかと述べた。

次に、委員は、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、長期的な視点からみた金融面の不均衡などについて議論を行った。委員は、これまでのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていないとの見方を共有した。一方で、委員は、低金利環境や金融機関間の激しい競争環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあるとの認識で一致した。そのうえで、委員は、現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断されるが、金融機関の収益動向がその経営体力に及ぼす影響は累積的なものであることも踏まえ、先行きの動向を注視していく必要があるとの認識を共有した。こうした点に関し、一人の委員は、地域金融機関では、経費控除後の貸出利鞘が過去の平均信用コストを下回る中で、ミドルリスク企業向けの貸出等を増やしており、将来、仮に景気後退局面となって信用コストが顕在化した場合には、加速度的に収益悪化が進む可能性には留意が必要であると指摘した。また、複数の委員は、金融機関の収益悪化については、低金利環境だけでなく、人口や企業数の減少、それに伴う競争環境の激化など、構造的な要因も強く影響していることから、金融仲介の機能度についても、この点を踏まえ、より多面的に点検していくことが重要との認識を示した。ある委員は、金融システムに関するリスクを点検する際には、不動産市場における不動産投資信託(REIT)の拡がりなど、モデルでは必ずしも描写しきれない構造変化を含め、様々な要因に目配りする必要があると付け加えた。この間、一人の委員は、金融仲介機能の低下や金融面の不均衡の蓄積といった問題に対応するための政策ツールとして、金利変更などの金融政策に焦点を当てる見方も見受けられるが、金融システムの安定確保を目的とするプルーデンス政策の重要性を見落としてはならないと指摘した。そのうえで、この委員は、金融仲介機能は金融政策の重要な波及経路であるため、金融政策運営面からも、その持続性確保に配慮する必要はあるが、その場合でも、金融機関収益そのものの動向ではなく、金融緩和効果を全体として阻害するリスクや、マクロ経済全体にマイナスの影響を与えるリスクをどう評価するか、といった視点が重要であると述べた。

このほか、ある委員は、金融業の規模に対して十分な借入需要がないという構造問題は、過度にリスクを取ることではなく、利益のあがらない仕事を止めることで対応すべきであり、また、これは金融政策によっても解決することはできないと指摘した。そのうえで、この委員は、金融政策にできることは、十分な金融緩和を早期に行うことでデフレを防ぎ、名目GDPを拡大させることにより、全ての産業の名目の生産額を増大させ、経済の調整コストを引き下げることであると述べた。この間、一人の委員は、金融政策では財政の持続可能性や潜在成長率の低下という日本経済の課題を解決することはできないとの考え方があるが、現実には、「量的・質的金融緩和」の導入以降、景気の拡大を通じて雇用や財政は改善し、潜在成長率も安定しているとの見方を示した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

これに対し、ある委員は、長期金利がある程度変動しうるとすることは、政策委員会が決定する金融市場調節方針として曖昧であるため、オペの運営次第では金利が必要以上に上昇し、現在のイールドカーブ・コントロールが想定している効果を阻害するおそれがあるとの意見を述べた。別のある委員は、消費増税や海外経済を巡る不確実性が高く、需給ギャップが一本調子で拡大する可能性が低いことを踏まえると、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げ、需給ギャップに対する働きかけを強化することが必要であるとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとすること、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持すること、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、大方の委員は、(1)2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、(2)マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、(3)政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する、(4)今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行うとの方針を共有した。

これに対し、ある委員は、金融政策はカレンダーベースではなくデータディペンデントでなくてはならないと述べたうえで、政策金利については、物価目標との関係がより明確となるガイダンスを導入する方が望ましいと述べた。別の一人の委員は、「物価安定の目標」の早期達成のためには、予想物価上昇率に直接働きかけることが重要であり、そうした観点から、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には、何らかの追加緩和手段を講じるというコミットメントを追加することが必要との意見を述べた。

IV.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 今般、一連の災害の被災地の復旧・復興や、公立小中学校等へのエアコンの設置等に対応するため、平成30年度補正予算案を臨時国会に提出した。本補正予算の早期成立に向け、全力で取り組んでいく。
  • 消費税率については、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保する等の観点から、2019年10月1日に現行の8%から10%に引き上げる予定である。消費税率引き上げが経済に影響を及ぼさないように、あらゆる施策を総動員し、万全を期す。
  • 日本銀行には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、引き続き経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  • わが国の景気は、緩やかに回復している。先行きも、緩やかな回復が続くことが期待されるが、通商問題の動向が世界経済に与える影響や海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。また、相次いでいる自然災害の経済に与える影響に十分留意する必要がある。
  • 全世代型社会保障への改革や第4次産業革命の実現について、年内に中間報告を取りまとめ、3年間の「工程表」を含む実行計画を来年夏までに決定する。財政健全化についても、「新経済・財政再生計画」を着実に推進していく。
  • 2019年10月の消費税率引き上げについて、前回引き上げの際の経験を活かして、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応する。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて金融緩和を着実に推進していくことを期待している。

V.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
原田委員、片岡委員

原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、先行きの経済・物価情勢に対する不確実性が強まる中、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する、との資産買入れ方針とすることを内容とする議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員
反対:
なし

3.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、原田委員からは、政策金利については、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとの意見が表明された。また、片岡委員からは、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが必要であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

VI.「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、多数意見が形成された。

議長からは、こうした多数意見を取りまとめるかたちで、「基本的見解」の議案が提出された。

採決の結果、賛成多数で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、11月1日に公表することとされた。なお、片岡委員は、消費者物価の前年比について、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして、物価の見通しに関する記述に反対した。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
片岡委員

VII.議事要旨の承認

議事要旨(2018年9月18、19日開催分)が全員一致で承認され、11月5日に公表することとされた。

以上


  • 「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」 本文に戻る

別紙

2018年10月31日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. (1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。
      2. (2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。
  2. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う(注2)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:原田委員、片岡委員。原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、先行きの経済・物価情勢に対する不確実性が強まる中、10年以上の幅広い国債金利を一段と引き下げるよう、金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)原田委員は、政策金利については、物価目標との関係がより明確となるフォワードガイダンスを導入することが適当であるとして反対した。片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が重要であり、日本銀行としては、中長期の予想物価上昇率に関する現状評価が下方修正された場合には追加緩和手段を講じるとのコミットメントが必要であるとして反対した。 本文に戻る

  1. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。 本文に戻る