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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2020年1月20、21日開催分)

2020年3月19日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2020年3月16日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2020年1月20日(14:00~15:16)
 
1月21日( 9:00~11:54)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
雨宮正佳 (副総裁)
若田部昌澄(  副総裁  )
原田 泰 (審議委員)
布野幸利 (  審議委員  )
櫻井 眞 (  審議委員  )
政井貴子 (  審議委員  )
鈴木人司 (  審議委員  )
片岡剛士 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 神田 眞人 大臣官房総括審議官(20日)
遠山 清彦 財務副大臣(21日)
 
内閣府 田和 宏 内閣府審議官(20日)
宮下 一郎 内閣府副大臣(21日)
(執行部からの報告者)
理事 前田栄治
理事 内田眞一
理事 池田唯一
企画局長 加藤 毅
企画局政策企画課長 飯島浩太
金融市場局長 清水誠一
調査統計局長 神山一成
調査統計局経済調査課長 川本卓司
国際局審議役 福本智之
(事務局)
政策委員会室長 松下 顕
政策委員会室企画役 山城吉道
企画局企画役 東 将人
企画局企画役 長江真一郎
企画局企画役 法眼吉彦

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(12月18、19日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、長期国債の買入れ等による資金供給を行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は-0.07から-0.02%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、年明け後に発行が相次ぐことが意識されるもとで、幾分上昇しているが、-0.2から-0.1%程度で推移している。

株価(日経平均株価)は、振れを伴いつつも、昨年初来の高値圏で推移しており、期間を通じてみれば概ね前回会合時点と同水準となっている。為替相場をみると、円の対ドル相場、対ユーロ相場とも、中東における地政学的リスクが高まった際には幾分円高となったものの、期間を通じてみれば前回会合時点から幾分円安となっている。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長している。先行きについては、成長ペースの持ち直しにやや時間を要するものの、その後は、各国のマクロ経済政策の効果発現やグローバルなITサイクルの好転などに伴う製造業部門の持ち直しを背景に成長率を高め、総じてみれば緩やかに成長していくとみられる。

米国経済は、製造業部門に弱めの動きがみられるが、緩やかに拡大している。個人消費は、良好な雇用・所得環境や消費者マインドなどに支えられて、増加している。一方、米中貿易摩擦の影響などから輸出は横ばい圏内の動きにとどまっているほか、製造業の業況感悪化などを背景に、設備投資は弱めの動きが続いている。物価面をみると、インフレ率(PCEデフレーター)は、総合ベース、コアベースともに、前年比+1%台半ばで推移している。先行きの米国経済は、当面は米中貿易摩擦の影響が残るものの、緩和的な金融環境などに支えられ、緩やかな拡大を続けるとみられる。

欧州経済は、製造業部門の調整を主因に減速した状態が続いている。輸出は、弱めの動きが続いている。設備投資は、製造業の業況感の悪化が続いていることなどを背景に、横ばい圏内の動きにとどまっている。個人消費は、良好な雇用・所得環境や消費者マインドなどに支えられて、総じてみれば増加基調にある。物価面をみると、インフレ率(HICP)は総合ベース、コアベースともに前年比+1%近傍で推移している。先行きの欧州経済は、製造業部門の持ち直しに伴い、次第に減速した状態から脱していくと予想される。この間、英国経済は、EU離脱を控えた動きの影響などから、弱含んでいる。

新興国経済をみると、中国経済は、総じて安定した成長を続けているものの、製造業部門では引き続き弱さもみられている。物価面をみると、インフレ率(CPI)は、前年比+4%台で推移している。先行きの中国経済は、米中貿易摩擦や当局による債務抑制政策の影響を相応に受けるものの、当局がマクロ経済政策を段階的に実施するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとみられる。NIEs・ASEANでは、輸出が中国向けを中心に弱めの動きとなっている一方、良好な消費者マインドやマクロ経済政策の効果などから、内需は底堅く推移している。ロシアやブラジルの景気は、インフレ率の落ち着きなどを背景に、緩やかに回復している。インドの景気は、個人消費や設備投資などが弱めの動きとなっていることから、減速した状態にある。

海外の金融市場をみると、中東における地政学的リスクの高まりを受けて振れる場面がみられたものの、米中通商交渉の進展などを背景に、市場センチメント改善の流れが続いている。こうしたもとで、米欧の株価は、前回会合時点と比べ幾分上昇している。長期金利は、米国では前回会合時点と比べて幾分低下した一方、欧州では幾分上昇している。原油価格は、中東における地政学的リスクの高まりを受けていったん上昇したあと、原油生産の増加観測などを受けて下落している。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。先行きについては、当面、海外経済の減速の影響が残るものの、国内需要への波及は限定的となり、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。

輸出は、弱めの動きが続いている。情報関連が増加基調にあるものの、自動車関連は大きめの減少となっており、資本財は基調としては弱めの動きを続けている。先行きの輸出は、情報関連は増加基調を続けるものの、当面は、自動車関連や資本財を中心に、なお弱めの動きとなると予想される。その後は、海外経済の成長率の高まりに伴い、緩やかな増加基調に復していくとみられる。

公共投資は、緩やかに増加している。公共工事出来高は、昨年1から3月以降3四半期連続で増加したあと、10月の7から9月対比もプラスとなっている。先行きについては、オリンピックの仮設施設工事の進捗に加え、今回の経済対策を背景とした災害復旧・復興関連工事や国土強靱化関連工事等の拡大から、緩やかな増加を続けるとみられる。

企業収益は、一部に弱めの動きがみられるものの、総じて高水準で推移している。業況感は、製造業がはっきりと慎重化している一方、非製造業は総じて良好な水準を維持している。設備投資は、増加傾向を続けている。資本財総供給は、海外経済減速の影響などから、足もとでは横ばい圏内の動きとなっている。建設工事出来高(民間非居住用)は、オリンピック関連需要のピークアウトもあって増勢を鈍化させつつも、やや長い目でみれば緩やかな増加基調を維持している。先行きの設備投資は、当面、海外経済の減速の影響から製造業の機械投資を中心にいったん減速するが、やや長い目でみれば緩和的な金融環境などを背景に、緩やかに増加していくとみられる。

雇用・所得環境をみると、労働需給は引き締まった状態が続いており、雇用者所得も増加している。失業率は今次景気拡大局面のボトム近傍で推移している。有効求人倍率は、2018年末以降、海外経済の減速の影響から小幅に低下しているが、なおバブル期のピークを超えた高水準を維持している。

個人消費は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかに増加している。各種の販売・供給統計を合成した消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、足もとでは消費税率引き上げ後の需要減に加え、自然災害の影響などもあって、大きめの減少となっている。先行きの個人消費については、各種の家計支援策や雇用・所得環境の改善が下支えとして作用する中で、消費税率引き上げ前の需要増の反動と実質所得の減少による下押し圧力は当面残るものの、次第に減衰していくと見込まれる。その後は、雇用者所得の増加と株高による資産効果に支えられて、基調としては、緩やかな増加を続けると見込まれる。

住宅投資は、横ばい圏内で推移している。新設住宅着工戸数をみると、持家は前回の消費税率引き上げ時より小幅ながら、需要減が生じている。分譲は、大型物件による振れを伴いつつ横ばい圏内で推移している。この間、貸家は、節税・資産運用目的の需要減退や金融機関の融資姿勢の慎重化などを背景に、減少傾向を続けている。

鉱工業生産は、海外経済の減速の動きが続くもとで、自然災害などの影響もあって、足もとでは減少している。先行きについては、当面は、自然災害後の挽回生産が押し上げ要因として作用するもとで、消費税率引き上げの影響が和らぎ、情報関連輸出も増加基調を辿ることから、緩やかな増加に転じていくとみられる。

物価面について、国内企業物価(夏季電力料金調整後)の3か月前比を消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、下落幅が縮小している。消費者物価の前年比は、除く生鮮食品は0%台半ば、除く生鮮食品・エネルギーは0%台後半となっている。先行きについて、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、既往の原油価格の下落の影響などを受けつつも、景気の拡大基調が続くもとで、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。

予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。長期金利から中長期の予想物価上昇率を差し引いた実質長期金利は、マイナスで推移している。

企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、大幅に緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。資金需要面をみると、設備投資向けや企業買収関連などの資金需要が増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%程度のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、9%程度の高めのプラスで推移している。企業の資金繰りは、良好である。

この間、マネタリーベースは、前年比で3%台前半の伸びとなっている。マネーストックの前年比は、2%台後半の伸びとなっている。

II.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、中東における地政学的リスクの高まりを受けて振れる場面もみられたものの、米中通商交渉やEU離脱問題の進展などを受けた市場センチメント改善の流れは続いており、先進国の株価は高値圏で推移し、為替相場は幾分円安方向で推移しているとの認識を共有した。そのうえで、委員は、米中通商交渉において第一段階の合意に至ったことは朗報であるが、第二段階の合意に向けた交渉の道筋はなお不透明であるほか、中東情勢を巡る地政学的リスクが高まるなど、引き続き不透明感の強い状況にあるとの見方で一致した。何人かの委員は、中東情勢は一時的に緊張が高まったものの、一段の悪化は回避され、資本フローや金融市場に大きな変調はみられていないと述べた。

海外経済について、委員は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。多くの委員は、グローバルな製造業PMIが2か月連続で節目となる50を上回ったほか、ITサイクルの好転や米中通商交渉の進展など、持ち直しに向けた兆しがみられ始めていると述べた。もっとも、ある委員は、市場センチメントの改善などと比べ実体経済指標は冴えないと指摘したうえで、今後、市場センチメントの改善に合わせて、実体経済指標も改善していくか注視していると述べた。海外経済の先行きについて、委員は、成長ペースの持ち直しにやや時間を要するものの、その後は、各国のマクロ経済政策の効果発現やグローバルなITサイクルの好転などに伴う製造業部門の持ち直しを背景に成長率を高め、総じてみれば緩やかに成長していくとの認識を共有した。何人かの委員は、製造業を含め世界経済が本年半ばにかけて回復基調を辿る蓋然性は高まりつつあるという見方を示した。もっとも、複数の委員は、海外経済の下振れリスクは依然として大きく、その回復時期や程度については、引き続き慎重にみておく必要があると述べた。

経済の現状と先行きを地域毎にみると、米国経済について、委員は、製造業部門に弱めの動きがみられるが、緩やかに拡大しているとの認識で一致した。多くの委員は、製造業の生産や設備投資は弱めの動きが続いているが、良好な雇用・所得環境のもと、個人消費を中心に成長する姿は続いているとの認識を示した。複数の委員は、雇用と消費は底堅く、年末商戦も好調であったと指摘した。米国経済の先行きについて、委員は、当面は米中貿易摩擦の影響が残るものの、緩和的な金融環境などに支えられ、緩やかな拡大を続けるとの見方を共有した。何人かの委員は、FRBによる政策金利引き下げは、住宅投資や自動車販売にプラスの効果を発揮しており、先行き経済を支えていくと述べた。

欧州経済について、委員は、減速した状態が続いているとの認識を共有した。何人かの委員は、ユーロ圏の製造業PMIは引き続き50を下回り続けるなど、ドイツを中心に厳しい状況が続いており、回復の動きははっきりしないと指摘した。欧州経済の先行きについて、委員は、製造業部門の持ち直しに伴い、次第に減速した状態から脱していくとの認識で一致した。複数の委員は、英国のEU離脱による影響や、ドイツ経済の動向については不確実性が大きく、引き続き注視していく必要があると述べた。

中国経済について、委員は、総じて安定した成長を続けているものの、製造業部門では引き続き弱さもみられているとの見方で一致した。もっとも、多くの委員は、これまで弱めの動きを続けていた製造業PMIが50を上回るなど、減速の動きに底打ち感がみられ始めていると指摘した。中国経済の先行きについて、委員は、米中貿易摩擦や当局による債務抑制政策の影響を相応に受けるものの、当局がマクロ経済政策を段階的に実施するもとで、概ね安定した成長経路を辿るとの見方を共有した。複数の委員は、米中間の通商問題が引き続き中国経済の成長を抑制するため、回復ペースは緩やかにとどまるとの見方を示した。ある委員は、中国経済に安定化の兆しがみられ始めているが、春節前の作り込みなど短期的な動きである可能性もあるため、その持続性を見極めていく必要があると述べた。

新興国経済について、委員は、一部新興国で減速がみられているものの、全体として緩やかな回復基調を維持しているとの認識を共有した。NIEs・ASEANについて、委員は、輸出が中国向けを中心に弱めの動きとなっているものの、良好な消費者マインドや景気刺激策の効果などから、内需は底堅く推移しているとの見方で一致した。複数の委員は、各国の技術水準や資源量の違いなどから、減速が続く国と、グローバルなサプライチェーン再編の恩恵を受ける国の間でばらつきが大きくなってきていると指摘した。先行きの新興国経済について、委員は、各国のマクロ経済政策の効果発現もあって、全体として成長率が高まっていくとの認識で一致した。複数の委員は、新興国経済は緩やかな回復が進むとみられるが、インドや香港の停滞が長期化する可能性は相応にあり、今後の動きを注視していると述べた。

わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にあるとの認識で一致した。委員は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているほか、大企業、中小企業のいずれからみても、金融機関の貸出態度は引き続き積極的であるとの見方を共有した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大しているとの見方で一致した。複数の委員は、昨年10月以降、弱めの経済指標が目立っており、2019年第四半期のGDP成長率は大きなマイナスになる可能性があるなど、全体として楽観できない情勢にあると指摘した。もっとも、多くの委員は、わが国の内需の基調はしっかりとしており、先行き、政府による経済対策の効果が加わることも踏まえると、わが国景気は緩やかな拡大基調が続くとみられると指摘した。複数の委員は、政府の経済対策は金融政策とのポリシーミックスにより、中期的に景気の拡大基調を支えるプラスの効果を持つと見込まれると述べた。

輸出の現状について、委員は、弱めの動きが続いているとの見方で一致した。ある委員は、世界貿易量の低迷が続き、輸出は弱めの動きが長引いているものの、グローバルなIT関連財の在庫調整の進捗を背景に、情報関連輸出は増加基調にあるなど、前向きな動きもみられていると指摘した。先行きの輸出について、委員は、情報関連の増加基調が続く一方、当面は、自動車関連や資本財を中心に、なお弱めの動きとなると予想されるものの、その後は、海外経済の成長率の高まりに伴い、緩やかな増加基調に復していくとの見方を共有した。何人かの委員は、先日の支店長会議においても、5GやEV(電気自動車)関係などの需要増加が期待できるとの声が多く聞かれたと指摘した。複数の委員は、半導体生産が回復基調にあることなどから、外需は今年の前半に底を打ち、年後半にかけて緩やかに回復していく蓋然性が高まってきていると指摘した。これに対し、ある委員は、海外経済の回復が小幅にとどまり、不確実性が大きいもとでは、当面、輸出の持ち直しに多くを期待することはできないと述べた。

公共投資について、委員は、緩やかに増加しているとの見解で一致した。先行きの公共投資について、委員は、オリンピックの仮設施設工事の進捗に加え、今回の経済対策を背景とした災害復旧・復興関連工事や国土強靱化関連工事等の拡大から、緩やかな増加を続けるとの見方を共有した。複数の委員は、人手不足などの制約もあり、経済対策の効果が出るまでには時間がかかる可能性があると述べた。

設備投資について、委員は、増加傾向を続けているとの見方で一致した。多くの委員は、12月短観の設備投資計画がしっかりとした内容であったほか、支店長会議での報告などによれば、省力化投資や5G関連などの能力増強投資、研究開発投資など、幅広い分野で設備投資意欲が旺盛であり、企業の積極的な投資スタンスは維持されていると指摘した。この間、ある委員は、企業の投資スタンスが積極化したこともあり、わが国経済の外的ショックに対する頑健性は高まっていると述べた。先行きの設備投資について、委員は、当面、海外経済の減速の影響から製造業の機械投資を中心にいったん減速するが、やや長い目でみれば緩和的な金融環境などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。これに対し、ある委員は、短観における非製造業の業況判断DIは緩やかながら低下傾向にあり、これが設備投資意欲の減退に繋がらないか懸念していると述べた。別の一人の委員は、先行指標の動きを踏まえると、設備投資の減速が長引く可能性に留意する必要があると指摘した。

雇用・所得環境について、委員は、労働需給は引き締まった状態が続いており、雇用者所得も増加しているとの認識を共有した。ある委員は、企業収益は減益傾向であるが、冬季ボーナスの水準が前年並みであったことはひとまず安心材料であると述べた。別のある委員は、日本ではルーティンタスクを担う就業者のシェアが欧米と比較して相対的に大きいとの試算があることも踏まえると、AIやRPAの活用が進む中で、平均賃金の上昇が抑制されたり、職のミスマッチが解消されずにいる可能性があると指摘した。この点に関し、一人の委員は、AIやRPAが知的労働をも代替するという懸念はあるが、産業革命以来、機械による失業はほとんど起きていないため、比較的楽観的な見方をしていると述べた。この間、ある委員は、希望・早期退職の増加の動きについて、現在のように企業の利益水準が高く、雇用環境が良い局面では、企業は退職金を積み増しやすく、労働者は新しい仕事を見つけやすいため、希望・早期退職が増えることは合理的であると指摘した。そのうえで、この委員は、より必要なところに労働力が移動することで、日本全体では生産性が高まるとの見方を示した。

個人消費について、委員は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかに増加しているとの認識で一致した。何人かの委員は、消費税率引き上げ後の需要減に自然災害の影響なども加わり、消費活動指数や自動車販売などが大きめに減少しているものの、家計が消費性向を恒常的に引き下げているとまでは考えられず、個人消費の基調に大きな変化は窺われないとの認識を示した。消費税率引き上げの影響について、何人かの委員は、概ね想定の範囲に収まっていると指摘した。個人消費を巡る環境について、複数の委員は、実質雇用者所得がプラスを維持している点は前回増税時と大きく異なると述べた。もっとも、ある委員は、消費税率引き上げ後の需要減からの回復や消費税率引き上げの実質所得下押しの影響を見極めるにはもう少しデータを待つ必要があると指摘した。別の一人の委員は、消費税率引き上げ後の指標をみると、消費の足取りは弱く、消費者マインドの改善も前回の消費税率引き上げ時と比べて鈍いと指摘した。先行きの個人消費について、委員は、各種の家計支援策や雇用・所得環境の改善が下支えとして作用する中で、消費税率引き上げ前の需要増の反動と実質所得の減少による下押し圧力は当面残るものの、次第に減衰していくとの見方で一致した。また、委員は、前回の消費増税時と比べると、税率引き上げ前の需要増の規模は総じて抑制されていたことに加え、家計のネット負担額の増加も小幅であることから、個人消費の落ち込みは前回増税時と比べ限定的なものにとどまり、個人消費の増加基調自体は維持されるとの認識を共有した。そのうえで、委員は、その後は、雇用者所得の増加などに支えられて、基調としては、緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。

住宅投資について、委員は、横ばい圏内で推移しているとの認識で一致した。また、委員は、先行きの住宅投資について、目先、消費税率引き上げの影響から、いったん減少することが予想されるものの、雇用・所得環境の改善や低水準の住宅ローン金利などが下支えとなり、振れを均せば横ばい圏内の動きが続くとの認識を共有した。

鉱工業生産について、委員は、海外経済の減速の動きが続くもとで、自然災害などの影響もあって、足もとでは減少しているとの認識を共有した。先行きの生産について、委員は、当面は、自然災害後の挽回生産が押し上げ要因として作用するもとで、消費税率引き上げの影響が和らぎ、情報関連輸出も増加基調を辿ることから、緩やかな増加に転じていくとの認識で一致した。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっているほか、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、企業の慎重な賃金・価格設定スタンスなどを背景に、0%台後半のプラスにとどまっているとの見方で一致した。委員は、消費者物価の前年比は、プラスで推移しているが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いているとの認識を共有した。ある委員は、昨年10月の消費税率引き上げ後も企業が緩やかに価格を引き上げようとする動きは続いていると述べた。別の一人の委員は、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の伸び率が緩やかに高まっていることや、上昇・下落品目比率が上昇超幅を維持するなど、過去とは異なる前向きな動きが継続しているとの認識を示した。別の一人の委員は、物価は、生産性上昇による物価抑制効果などから上昇しづらい状況が続いているが、デフレに逆戻りしないという意味で頑健性は強まっているとの認識を示した。

2.経済・物価情勢の展望

2020年1月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の作成にあたり、委員は、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、当面、海外経済の減速の影響が残るものの、国内需要への波及は限定的となり、2021年度までの見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くとの見方を共有した。わが国の輸出について、委員は、海外経済の成長ペースの持ち直しにやや時間を要するもとで、当面、弱めの動きとなるとの見方で一致した。もっとも、委員は、先行き、海外経済は、各国のマクロ経済政策の効果発現やグローバルなITサイクルの好転などに伴う製造業部門の持ち直しを背景に成長率を高めるとみられることから、輸出は緩やかな増加基調に復するとの認識を共有した。国内需要について、委員は、足もとでは消費税率引き上げや自然災害などの影響から減少しているものの、きわめて緩和的な金融環境や積極的な政府支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調を辿るとの認識を共有した。そのうえで、委員は、海外経済の減速の国内需要への影響は限定的なものにとどまるとの見方で一致した。こうした議論を経て、委員は、わが国経済は、足もとは潜在成長率を下回る成長となっているものの、その後は、成長率を高めていくことから、均してみれば、潜在成長率並みまたはそれを幾分上回る成長を続けるとの見方を共有した。そのうえで、委員は、2019年10月の展望レポートでの見通しと比べると、政府の経済対策の効果を背景に、2020年度を中心に上振れているとの見方で一致した。

続いて、委員は、わが国の物価情勢について議論を行った。まず、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて物価が弱めの動きを続けている背景について、委員は、基本的には、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っていることの影響が大きいとの認識を共有した。加えて、委員は、企業の生産性向上によるコスト上昇圧力の吸収に向けた取り組みや、近年の技術進歩、弾力的な労働供給などは、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに慎重な価格設定スタンスを維持することを可能にしているとの見解で一致した。

次に、委員は、先行きの物価動向について、議論を行った。大方の委員は、当面、既往の原油価格の下落の影響などを受けつつも、見通し期間を通じてマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。ある委員は、プラスの需給ギャップは、当面の物価を高めると同時に、それが適合的に予想物価上昇率を高める二次的効果をもたらすため、需給ギャップの物価への影響は、プラス幅にその継続期間をかけた「面積」で評価することが適当であると指摘した。複数の委員は、所得から支出への好循環が物価上昇を支えているが、この好循環を維持するためには、賃上げの継続とこれを支える企業収益の改善が必要であるという見方を示した。このうち一人の委員は、企業の内部留保に回っている利益が、賃金や設備投資に一層振り向けられなければ、経済成長率や物価上昇率は高まりにくいと述べた。ある委員は、当面、雇用や設備投資など実体経済の指標を確認しつつ、プラスの需給ギャップを維持することで、粘り強く物価上昇率の加速を待つことが重要であると述べた。これらの委員は、2019年10月の展望レポートでの見通しと比べると、概ね不変であるとの見方で一致した。

更に、委員は、消費者物価の前年比が2%に向けて徐々に上昇率を高めていくメカニズムを、一般物価の動向を規定する主な要因に基づいて整理した。まず、マクロ的な需給ギャップについて、大方の委員は、足もとでは海外経済の減速や消費税率引き上げなどの影響からプラス幅を縮小しているものの、その後は、見通し期間の終盤にかけて成長率が潜在成長率を幾分上回って推移することから、プラス幅は緩やかに拡大していくとの見方を共有した。次に、中長期的な予想物価上昇率について、大方の委員は、先行き上昇傾向を辿り、2%に向けて次第に収斂していくとの認識を共有した。その背景として、これらの委員は、(1)「適合的な期待形成」の面では、現実の物価上昇率の高まりが、予想物価上昇率を押し上げていくと期待されること、(2)「フォワードルッキングな期待形成」の面では、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に強くコミットし金融緩和を推進していくことが、予想物価上昇率を押し上げていく力になると考えられることを指摘した。この点に関し、ある委員は、プラスの需給ギャップを起点に物価・予想物価上昇率が高まるメカニズムは作動しているが、そのスピードは遅いと指摘したうえで、物価形成のメカニズムについては、引き続き、内外の研究成果も踏まえ、検討を深める必要があると述べた。この間、一人の委員は、消費者物価の前年比が先行き2%に向けて上昇率を高めていく可能性は低く、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが維持されているとは言いがたいと述べた。

委員は、経済・物価情勢の先行きの中心的な見通しに対する上振れ・下振れ要因についても議論を行った。まず、経済の上振れ・下振れ要因として、委員は、(1)海外経済の動向、(2)消費税率引き上げの影響、(3)企業や家計の中長期的な成長期待、(4)財政の中長期的な持続可能性の4点を挙げた。海外経済を巡る下振れリスクについて、委員は、米中通商交渉や英国のEU離脱問題の進展などにより、ひと頃よりも幾分低下しているとの認識を共有した。もっとも、委員は、米中通商交渉については、両国間になお対立点が残っているほか、ここへきて中東情勢を巡る地政学的リスクが高まっていること、また、新興国経済の動向、グローバルなIT関連財需要の動向などにも引き続き注意が必要であることから、海外経済を巡る下振れリスクは依然として大きいとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要があるとの見方を共有した。消費税率引き上げの影響について、委員は、政府による各種施策もあって、今回の消費税率引き上げ前後の需要変動は前回増税時と比べて抑制的だったとみられるとの認識で一致した。そのうえで、委員は、実質所得の減少による影響も、前回対比で小幅にとどまると考えられるが、その影響は、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得ることから、引き続き注意する必要があるとの見方を共有した。この間、複数の委員は、内外経済のリスクは依然として高く、消費税率引き上げ後の消費性向、金融市況の好調さの持続性、製造業と非製造業のデカップリングの動向などを慎重に見極める必要があると述べた。こうした議論を経て、委員は、経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に、下振れリスクの方が大きいとの認識で一致した。

次に、物価の上振れ・下振れ要因について、委員は、これまで議論したように、経済のリスク要因については、特に海外経済を巡る下振れリスクが依然として大きいとみられるもとで、これらが顕在化した場合には、物価にも相応の影響が及ぶ可能性があるとの認識で一致した。また、委員は、このほか、物価に固有の上振れ・下振れ要因として、(1)中長期的な予想物価上昇率の動向、(2)マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度、(3)為替相場の変動や国際商品市況の動向、の3点を挙げた。このうち、中長期的な予想物価上昇率の動向について、委員は、先行き上昇傾向を辿るとみているが、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるまでに予想以上に時間がかかり、現実の物価が弱めの推移を続ける場合には、適合的な期待形成を通じて、予想物価上昇率の高まりも遅れるリスクがあるとの見方で一致した。複数の委員は、短期インフレ予想の弱含みが、中長期のインフレ予想に影響しないか注視していると述べた。こうした議論を経て、委員は、物価の見通しについては、経済の下振れリスクに加えて、中長期的な予想物価上昇率の動向の不確実性などから下振れリスクの方が大きいとの認識を共有した。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。

金融政策の基本的な運営スタンスについて、大方の委員は、経済・物価の下振れリスクには留意が必要であり、「物価安定の目標」の実現には時間がかかるものの、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けるもとで2%に向けたモメンタムは維持されており、モメンタムが損なわれる惧れについても一段と高まる状況でないことから、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切であるとの認識を共有した。多くの委員は、プラスの需給ギャップができるだけ長く持続するよう、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、現在の政策のもとで、きわめて緩和的な金融環境を維持していくことが必要であると述べた。複数の委員は、予想物価上昇率の引き上げに時間を要していることなども踏まえると、息長く経済の好循環を支え、「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策運営方針を粘り強く継続すべきであると述べた。この間、一人の委員は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムはすでに失われており、追加緩和措置を講じる必要があるとの意見を述べた。

大方の委員は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な状況は続いており、金融政策は緩和方向を意識して運営していくことが適切であるとの見方を共有した。ある委員は、日本は世界的金融危機後の先進国で例外的にインフレ率の引き上げに成功したが、いわゆる「日本化」と呼ばれる、低成長、低インフレ、低金利が長期間続く長期停滞の情勢にあり、デフレ再発リスクにはなお注意が必要であると指摘した。そのうえで、この委員は、リスクシナリオの一環として次なる景気後退への備えを考えておくべきであり、政府の財政政策および成長政策との連携強化が一層重要になると述べた。

このほか、委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。何人かの委員は、金融システムは全体として安定性を維持しているが、低金利環境が長期化することによる累積的な効果と副作用のバランスについて引き続き留意する必要があると指摘した。このうちある委員は、強力な金融緩和政策を始めてからの時間の経過を踏まえると、累積的な効果と副作用のバランスを考慮しながら政策の持続性を高める努力を不断にすることが益々重要であると述べた。別の一人の委員は、構造問題や低金利環境の影響が累積し続けていることを踏まえ、地域金融機関の状況や経営上の取組みを注視すべきであると指摘した。

ある委員は、金利低下は、預金超過主体である家計の利子所得の減少の一方、借り入れ超過主体である企業の利払い費の抑制と、雇用・所得環境の改善を通じた家計へのプラス効果があると述べた。そのうえで、この委員は、最終的に経済全体の稼働率が重要であり、現状は、雇用が拡大し、家計所得や企業収益が増大しているため、現在の政策は所期の効果を発揮していると述べた。別の一人の委員は、企業の借入から預金を差し引いた残高は過去10年間で2割程度減少しており、金利水準の低下が経済・物価にもたらす効果が限定的である可能性を指摘した。

また、ある委員は、マイナス金利の副作用として、家計や企業が先行きにより慎重な見方を持つことでインフレ予想が低下する可能性を指摘する声もあると述べた。さらに、この委員は、昨年12月にスウェーデン中銀がマイナス金利を解除した背景として、住宅市場の過熱があったと指摘した。これに対し、何人かの委員は、低金利環境の長期化が金融仲介機能などに及ぼす影響には注意する必要があるが、スウェーデンでは、2017年以降、物価上昇率がターゲットである2%に近い水準で推移しており、わが国とは経済・物価情勢が異なることに言及した。

口座手数料について、複数の委員は、提供するサービスの内容とこれに対する適正な対価としての手数料をどのようにバランスさせていくかが課題であるとの認識を示したうえで、こうした課題と金融政策の効果・副作用の議論とは、区別すべきであると指摘した。

その他の論点として、複数の委員は、海外中銀において政策枠組みの見直しの議論が活発化しており、これらを適切にフォローしつつ、わが国への含意について考えていく必要があると述べた。別の一人の委員は、低成長・低インフレが長期化しているわが国においても、財政政策や成長戦略も踏まえ、欧米と同様に金融政策のレビューを行う必要があるのではないかと指摘した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合以降、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」

これに対し、ある委員は、長期金利がある程度変動しうるとすることは、政策委員会が決定する金融市場調節方針として曖昧であるため、オペの運営次第では金利が必要以上に上昇し、現在のイールドカーブ・コントロールが想定している効果を阻害する惧れがあるとの意見を述べた。別のある委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとすること、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持すること、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、大方の委員は、(1)2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、(2)マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、(3)政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している、(4)今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う、(5)特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じるとの方針を共有した。

これに対し、ある委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとの意見を述べた。

IV.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 昨年12月5日に閣議決定した「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」において、13兆円規模の財政支出を講じることとした。この経済対策の実行等のために、約4.5兆円規模の令和元年度補正予算を昨日国会に提出した。
  • 令和2年度予算についても、昨日国会に提出した。一般会計歳入・歳出総額は約102.7兆円となっており、その内容は、全世代型社会保障制度の構築に向け、消費税増収分を活用し、幼児教育・保育の無償化や高等教育の無償化を着実に実施すること、総合経済対策を実行するため、キャッシュレス・ポイント還元事業、マイナンバーカードを活用した消費活性化策等の臨時・特別の措置を講じること、歳出全般にわたって見直しを行ったことである。一般歳出等については、「新経済・財政再生計画」の目安を達成するなど、歳出改革の取組みを継続し、経済再生と財政健全化を両立する予算とした。両予算については、経済財政運営に万全を期するため、一日も早い成立に向けて取り組んでいきたい。
  • 日本銀行には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  • わが国景気は輸出が引き続き弱含む中で、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、緩やかに回復している。先行きについては、当面弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続く中で各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題を巡る動向や中国経済の先行き、英国のEU離脱、中東地域を巡る情勢等、海外経済の動向や金融資本市場の影響に加え、消費者マインドの動向に留意する必要がある。
  • 昨年末に取りまとめた「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」について、その効果の円滑かつ着実な発現に向け、関連する令和元年度補正予算および令和2年度予算の早期成立に努めていく。また、昨年末に全世代型社会保障検討会議において、厚生年金の適用範囲の拡大、70歳までの就業機会確保などを内容とする中間報告を行った。今後、夏の最終報告に向け、更に具体的な検討を進めていく。
  • また、先週17日に公表した中長期試算の成長実現ケースでは、名目GDPは2022年度中に600兆円に達し、プライマリーバランスの黒字化時期は2027年度と見込まれ、着実な歳出改革を進めることにより、2025年度のPB黒字化目標の実現が視野に入る姿となった。引き続き、成長戦略と同時に歳出改革等の取組を着実に進めていく。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて、金融緩和を着実に推進していくことを期待する。

V.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
原田委員、片岡委員

原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、次回金融政策決定会合まで、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする、(2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する、との資産買入れ方針とすることを内容とする議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員
反対:
なし

3.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

VI.「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、多数意見が形成された。

議長からは、こうした多数意見を取りまとめるかたちで、「基本的見解」の議案が提出された。

採決の結果、賛成多数で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、1月22日に公表することとされた。なお、片岡委員は、消費者物価の前年比について、先行き、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして、物価の見通しに関する記述に反対した。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、原田委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員
反対:
片岡委員

VII.議事要旨の承認

議事要旨(2019年12月18、19日開催分)が全員一致で承認され、1月24日に公表することとされた。

以上


  • (注)「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし 、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。」 本文に戻る

別紙

2020年1月21日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対2)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし1、買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する。
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. (1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。
      2. (2)CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。
  2. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる(注2)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員。反対:原田委員、片岡委員。原田委員は、長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき金融市場調節方針として曖昧すぎるとして反対した。片岡委員は、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、2%の物価目標の早期達成のためには、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と具体的に関連付けた強力なものに修正することが適当であるとして反対した。 本文に戻る

  1. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。 本文に戻る